2010年10月31日

10月の一曲 “Je te veux” Jessye Norman の歌で

Jessye Norman - Classics言わずと知れた、エリック・サティーの名曲。もはやミューザックの定番。メロディーを聞けば「あ、知ってる」と言われるような耳馴染みの曲となり、歌もの、インストゥルメンタルといろんなタイプの演奏があるのですが、個人的に大好きなのはソプラノ歌手、ジェシー・ノーマンのもの。

本来のこの曲は、喧噪と紫煙の中、アダっぽい女性がさっと歌うような、フランス小唄なのだと思います。歌詞もあからさまではないけれど、淫らな空気を漂わせている。だから、オペラチックに歌い上げるのは似合わないし、あまりお行儀良く可憐に歌われてもピンとこない。だからといって、あまりコケットを強調しすぎると、曲が壊れてしまう。サティーのメロディは、歌謡曲のそれのたくましさは持ち合わせていない。どうやっても上品、なのです。明るくて馥郁とした色香があって、下品に落ちない。歌い手にはなかなか手強い曲なのです。
 
ジェシー・ノーマンは場末のカフェなんぞ全く似合わない雰囲気のベテラン正統派ソプラノ歌手。上品なのはもちろんですが、フェミニンを強調しないゆたかな声であるのもプラスに働いています(コンサートでシューベルトの『魔王』を歌ってしまうようなひとなのです)。そして、何よりも印象的なのが彼女の歌いっぷり。もともとたっぷりとした容姿のひとなのですが、いつもの貫禄を忘れて、目の前の愛するあなたを食べちゃいたい、てな勢いではじらいと余裕が入り交じったふうにに歌うとき、この歌の持つ官能性がさらに清らかな甘さに昇華されるように思います。スタジオレコーディングではなく、ぜひ、コンサートの映像をご覧あれ!

□きれいな映像ではありませんが、こちらでどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=yEC-qikckCY




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2010年10月23日

護衛艦「ひえい」に乗船

先週末、自衛隊の護衛艦「ひえい」が堺市大浜埠頭に入港、一般公開されるとのことで日曜日に見学してきました。(写真左、右舷側より撮影、写真右、後部甲板の哨戒ヘリ) 

senkan01.jpgsenkan02.jpg

なお、護衛艦に乗るのは久しぶりだったのですが、いつもながら興味をもったのは、実利一点張りで設計されたその居住性…(ミサイルや魚雷発射装置は一度見てしまうと、なんでだかあまり関心が向かなくなります…)。見学者の移動の列を止めると迷惑なので、艦内の写真は撮れませんでしたが、まぁ狭い狭い。階段なんてほとんどなく上層下層への移動ははしごじみたタラップのみ(時化のときだと転げ落ちるかもしれんぞ…)、通路=廊下にいたっては広くなったり狭くなったり(大柄の人だと半身にならないと通れないくらい狭いところもありました)と、『月月火水木金金』じゃありませんが、海の男の艦隊勤務ってはまったく大変なのがわかります。また、艦橋に入ることもできました。電車の運転室、飛行機のコックピット、管制塔などの「計器類」にフェチってしまい、車を選ぶときも計器類の配置具合を評価のポイントにしている身としては、ぷるぷる感動しました。「両舷微速前進」、「両舷全速前進」などと表示してあるところのシフトレバーを動かしたくて動かしたくてたまりませんでした。

なお、ぼくはプラモデル作りが趣味でして(船、城、箱庭限定。また作るのが好きなだけで、所有欲はほとんどありません。部屋に置くところもなくなってきているので、興味のある方はもらってください…)、それで家に帰ってからさっそくいくつか引っぱりだしてきました。(写真左、速射砲と艦橋、写真右、プラモ)

senkan03.jpgsenkan05.JPG

「ひえい」は作ったことがないので、その代わりにほぼ同サイズ&排水量である旧日本海軍の軽巡洋艦「阿武隈(長さ150m、排水量5,000t)」を一番手前に、そのすぐ奥に戦艦「武蔵(長さ263m、排水量69,100t 大和を並べるつもりだったのですが見つからなかったので、姉妹艦の武蔵を置きました)」,一番奥に空母「赤城(長さ240m、排水量38,200t)」を並べてみましたが、まあしかし、日本一有名な戦艦大和なんてのはとんでもなくデカかったんだとわかりますね。なお、艦尾に海軍旗が掲げられていて、写真では見えにくいかもしれませんが赤城の後部に4本のアンテナが垂直方向に立っていますが、これはいずれも巡行時=平時のもの。この旗が艦橋近くのマストに掲げられたり、アンテナが水平状態になったときが戦時をあらわします。旗やアンテナはつねに写真のような状態にあってほしいものですね。





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2010年10月13日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(5) NY―リベンジなる!

先ほども書いたように今回帰りに立ち寄ったNYでは男友達とほとんどの間一緒にいた。これは楽である。傍らに彼がいるだけで嫌なこと&変なアプローチをしてくる輩はゼロである。

これはカナダでも同じこと。エスコートがあるかないかの大きな違い。

結局まあ女一人だとなめられているわけだ。日本人にしてはでかい私も、海外ではただの細っこいアジアの女。こういう時はこうもっとでかくて怖そうでカンフーかなんかの達人に見えたいわ!

3C64.jpgそれでも三日目は一人でNY最後の時間を楽しんだ。今回ベジタリアンの友人のおかげでアメリカにしては例外的にヘルシーな、野菜をふんだんに使った美味しい料理を堪能した。モントリオールと比べるとやはりここは気候的にも地理的にも豊かなのだと思わざるを得ない。物が高いと言われるNYでも食べ物は安い。国内に供給先があるのとないのとの違いだろう。

そんな美味しいものに慣れた身で、一人だからとまずいものでこの旅を締めくくりたくない。というわけで目をつけていたマンハッタンの住宅街アッパーウェストにあるお店に一人でチャレンジ。八月半ばの NY は秋の初めのような涼しさなのに、店内は冷房が利いている。これは寒すぎる。一人だけどテラスでも良い? とテラスに座った。

昔懐かしいようなパリパリチキンと野菜のグリル (素朴だけど美味しい! ) を一人道路に面したテラスでつついていると向かいの車道に大きなトラックが駐車した。サングラスのお兄ちゃんと目が合う。にこっと向こうは口で、こちらは目で (食べてたからね) 笑う。

3C63.jpgちょっとあらぬ方を眺めているとクラクションが短く鳴った。みるとお兄ちゃんが身振りで「旨いかい? 」と聞いてくる。

「美味しいわよ。ありがと」こちらもサインを送る。

こういう時のニューヨーカーは粋である。

空港までの送迎車も帰りは一人だけだった。南米出身で NY に来てもう10数年と語るドライバーは、行きの愛想のかけらもないドライバーと雲泥の差。温かみのある笑顔で実に紳士的である。

「あと何軒かホテルを回るの? 」と聞くと「いいや、今夜は君だけの特別車だよ、baby! 」との返事。

常日頃から I’m not your baby! (あなたのベイビーじゃありません! )という可愛げのない私だが、こういう時のベイビーは悪くない。

お祭騒ぎだった前日の地下鉄でも素敵な baby を耳にした。

連休の地下鉄は満席でしかも良く揺れる。小さな娘を連れた黒人一家がナイタ―観戦の盛り上がりもそのままに賑やかに乗り込んできたが空席はない。そのまま発車したがかなりがたがた揺れる。すると私の近くの中年の疲れた顔の女性が席を立つと、背の高い父親に話しかけた。「お嬢ちゃんを座らせてあげて」

「お礼を言いな」と父親にいわれてThank youと可愛い声で言いながら女の子が腰かける。

次の駅で降りようとする女性に父親が Thanks baby! You’re beautiful. と声をかけた。

こういうbabyもまた粋である。

初めてのNYは嫌な思いをすることもあったが、今回は素敵な一面を拾えた旅だった。リベンジ成功!というわけでまた行きたいなーNYである。大人の街モントリオールにも。




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2010年10月12日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(4) あら、けっこう bitch なのね?

男が求められるものの重さからゲイに走るーというのは私の勝手な考えだが、ちなみにカナダはゲイフレンドリー謳う国である。しかし謳っているからといってそれが真に徹底しているわけではない。

事実新聞には「ヘイトクライム」の文字が載っていて、ゲイが襲われる事件が相次いだようでもある。結局ゲイフレンドリーと謳わねばならないということはそれが行きわたっていないからでもある。むろん謳うだけでもすすんでるって事だけどね。それ故か、かなりの数のゲイカップルを街でも目にしたし、学校にもちらほらいた。

初日、クラス分けのテストを待っている間に暇なので会話が始まる。同じテーブルの人々と会話をしていて、端に座ったおとなしくて頭の薄い、でも他は毛深い (よくある系ね)男性はアルゼンチンのドクターで英語を学びに来たと判明。ふらりと小柄な男性が別のテーブルから彼に近づいてきたので「あなたたち友達なの?」と礼儀よく訪ねると He is my boyfriend! (あたしの彼氏よ!) となんか冷たい顔で宣言された。暗に「彼に手だししないでよっ」とぴしゃりと言われた感じだ。

いやいや、いくらドクターだからってあなたの彼氏に興味ありませんから。手の甲まで毛むくじゃらの人とかに!! フン! (はい。単に私の好みの問題です。毛深いのが好きな人もいます)

しかし結構男もーっていうか男の方が bitchy (ヤな女)になれるのね、こういう時。

ゲイカップルも、いわゆる彼氏側 (chicken) と彼女側 (fish) に分かれるらしいけど、明らかにドクターが chicken で小柄なほうが fish っぽかった。にしてもかなり嫉妬深そうな「彼女」である。

まあ思うにこれまでもゲイゆえに嫌な目に遭ってきたが為のビッチィさかもしれないけどね。にしてもなーんか感じ悪い。そんなに熱くならなくても単なる社交上の会話じゃない? でも彼らにしたらそれをはっきり言ってしまうことは、ある程度危険を伴う一つの愛の宣言なのかもしれない。




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2010年10月09日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(3) おひとりさま in ケベック?

東部カナダを訪ねたならば欠かせない場所がある。ケベック・シティである。かつてイギリスとフランスの間でカナダの覇権をめぐり戦われたアブラハム平原の戦いの拠点ともなった城塞都市でもあり、また北米最古の商店街のある街でもある。
 
イギリスが勝利をおさめたのちも大多数を占めるフランス系移民の生活習慣までを変えるには至らず今でもケベック州における第一言語はフランス語である。彼らの誇りはケベックシティの人々の車のナンバープレートに刻まれた Je me souvien (私は忘れない)という言葉でも明らかだ。
 
3C40.jpgそびえたつシャトー・フロントナック(現在はホテル)を中心にしたアッパータウン(写真1)と、北米最古の商店街であるロウワー・タウン。その二つをつなぐ傾斜もきつい首折り階段。どうも足がーという向きにはフニキュレールがある。
 
フランスの小さな街を思わせる花々の飾られたバルコニーにカフェ。クレプリー。小粋な雑貨店(写真2)。小柄でお世辞の上手い男たち。―とここは間違いなくおフランスの子孫の街である。
 
徒歩で回れる可愛い街だがちょうど収穫祭と重なって町中のホテルはみな満室。ネットで適当にとったホテルは街からバスで一時間もかかると言われ、お祭で昔の衣装に身を包んだ人々(写真3)で心地よく盛り上がってる通りを急ぎ足でバス停に向かう。リュックを背負い(預ける場所が駅以外になかったのだ)いかにもバックパッカーな私になぜか二階の窓から陽気に手を振るお兄さん。「いや、こっちは急いでんねん」と思いつつも手を振り返してしまう無駄に愛想のよい私…
 
バス停で佇む姿が不安げに見えたのか、サングラスをかけたクールな美人が話しかけてきた。「何か探しているの?」
 
3C41.jpg「いや、このバス停で正しいのかなと思って…」というところから会話が始まり、純粋のケベッコワ(ケベック人)のTは、バスを待つ間、ケベックシティで尋ねるべき店や場所を地図にマークしてくれた。歌手やバンドのプロモーションをしているという。
 
意外だったのは自立してて格好良い彼女の一言である。

「勇気があるのね。一人で旅してて不安じゃない?」 
 
なんでえ、そっちは完璧なバイリンガル(英仏)やのに、不安なことなんかないでしょうに。しかし旅行と言うと彼氏と一緒に行ってしまうらしい。

いやいや、こちとらそんな何でもやってくれて数週間も休みが取れる便利な彼氏なんぞおらんからやん。

3C52.jpgでもそういう意味では実は頼りないと思われてる日本女子の方がしっかりしてるよなあと思うことがある。現に私の教え子も女子の方がそれほど言葉もできなくとも海外一人旅に出たりとしっかり者が多い。
 
この辺りは育った社会の安全度の違いでもあり、また西欧は完璧にカップル社会ということもある。すなわち女性が一人で歩いているのは不自然なわけで、危険度も確かに日本よりは高い。旅の計画から何から整えるのが男の甲斐性ってわけだ。

故に一人で歩いていると男性から不必要なアプローチを受けることがある。いや、ほっといてくれる? 別にあんたの助けはいらんから。

この辺りは「おひとりさま」の言葉もある日本社会に感謝である。行きたい所へ行ける自由。なんでも一人でできるもんね!という気概とそれをできる幸せである。―というか友人の言葉を借りれば、「日本男子はなにもしてくれないので自然にそうなる」らしいのだが。
 
確かに帰りに寄ったNY(写真4)では男友達(アメリカンね)がお店にショーの下調べに予約、荷物持ちからドアの開け閉めから、混んだ道では先導してくれーと何から何まで完璧にエスコートしてくれ、それはそれでもちろん大変に幸せである。

1.jpg日本でドアを開けると次々にオヤジが当然のように無言で通り過ぎて行き、ドアガール状態になっていることがあるのと大違いである。しかしこれに慣れたら怖いよなーという気もした。一見自立してお素敵なくせにその実「誰かがお膳立てしてくれるのを待つ女」にならないか。むろん「できるのにしないだけで、男がしてくれるからしてもらってるだけ」ーかもしれないけど、習い性は癖にならないか?

これを常に求められる男性も大変である。もちろん全ての男がそんな紳士とは限らないし、常にやってくれるというわけでもないだろうが、しかしレディファーストの精神はまだ西欧の国々には残っている。逆に言うと男たるものーに求められるところも多いわけで、そのストレスからDVとかゲイに走る向きとかが多いのではと勘繰りたくなってくる。

日本では男たるものに求められるのは多分に経済面で、そのため職を失い自殺に走る中高年や、したくても結婚できない男たちが目立つ。稼ぎのない男は男じゃないわけだ。

どっちにしても男はつらいわけね。こうなってくるともう無理に肉食ぶらないで草食男子でいいじゃないーという昨今の日本のブームも無理もないと思ってしまう。

あ、ところでホテルにはローカルバスを乗り継ぎなんとか一時間後無事に到着。運ちゃんまでが交代するくらいローカル路線で、私の身は「彼女を○○で下ろしてやってくれ」と口伝えに次の運転手に委ねられた。親切なケベッコワと心優しい運ちゃん達にひたすら感謝である。

辿りついたのは車がたまに通るだけのだだっ広い道路とショッピングセンターの向かいにぽつんと立つ様に、思わずバクダット・カフェ(映画)の主題歌(Calling You)を口ずさんでしまうくらい Middle of Nowhere (どこなんよ、ここ)なホテルでした。今でこそ笑い話ですがその時は無事に着いてちょっとだけ泣いた…
 



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2010年10月07日

レストランとは何か

初級フランス語を教えるときに、誰でも知っているフランス語の好例として、僕はよく「レストランrestaurant」を引き合いに出す。この単語がいいのは、フランス語の発音に欠かせない規則が三つも含まれていることだ。
1)rは、英語のように舌を巻くのではなく、喉をうがいするときのように鳴らしてください。
2)anは「鼻母音」です。口を閉じてしまわずに鼻から音を抜いてください。
3)語末の子音字tは発音しません。
さあ、これでみなさんもフランスのレストランに入れますね。というような口上をつけて、学生の興味を惹こうと努力するわけである。

CIMG5086.JPG

というわけで、誰でも知っていて、かつ発音も決して簡単ではない「レストラン」だが、この言葉の意味も、よく考えてみると、なかなか興味深い。これは restaurer という動詞の現在分詞形で、本義は「元の状態に戻すこと」。たとえば、明治維新は Restauration du Meiji と訳されるのが普通だ。これは「維新」という言葉にはそぐわないように思われるかもしれないが、「大政奉還」、すなわち「まつりごとをおおもと(天皇)に還す」という意味をうまく訳している。ちなみに19世紀前半のブルボン王朝の王政復古も Restauration と言う。一方、小文字で始まる普通名詞の restauration は「修復」という意味で日常的に用いられるが、restauration rapide といえば、「早い修復作業」ではなく、「ファストフード」のことである。

つまり、レストランには、空腹で活力を失った身体にエネルギーを補填して元の状態に戻す、というニュアンスがあるわけだ。逆に言えば、ガソリンのように「満タン」の状態が「基本状態」と見なされている、とも言える。フランス料理辞典によると、「1765年頃、パリのブーランジェという料理人が、自分の店のスープを『元気を回復させる』という意味でレストランと名づけ、『素敵なレストランを売ります』と看板に書いたこと」が、レストランの語源だという。ホッチキスやキャタピラーみたいに、商標名が一般化したものだったのだ。

CIMG5060.JPG

ミシュランの旅行ガイドには、où se restaurer ? という項目がある。「お薦めレストラン」ということだが、直訳すれば「どこで自分自身を立て直すか」という風になるだろう。これをあえて拡大解釈すれば、フランス人は空腹で倒れそうになるまで食事をしない、ということかもしれない。大量のサラダやスープの後に、肉とポテトを平らげ、チーズでワインの残りを流し込み、クリームのたっぷり詰まったデザートを食べる人たちを見ていると、レストランというのは、美食のためではなく、まずは空腹を徹底的に駆逐する場なのだ、と思わずにはいられない。空腹が満たされるという前提があったうえで、それをいかに愉しく満たすか、という付加価値が成立する。

これを日本の誇る懐石料理、つまり「懐に温かい石を入れた程度に空腹を和らげる料理」と比較したとき、そのコンセプトの違いの対称性に、思わずため息が出てしまう。禅宗を背景にもつ禁欲的な茶席の食事は、そもそも自分自身を立て直すためではなく、自分を忘れるためにある。自分を取り戻すどころか、「自我の放下」が問題であり、茶席という「場」における一期一会の流れに身を委ねるのが、茶の道である。満たされるべき自分を忘れたとき、わずかな舌先の味が場全体と呼応し、自己の輪郭が場の全体へ溶け出すような境地が訪れる。そこには、デカルト的な個人を規定する自意識と、日本の武道にも通じる無我の境地が鮮やかに対比されている…。

CIMG5062.JPG

などというのは、大袈裟な文明論のパロディーでしかない。なぜこんなことを思いついたかというと、フランスに仕事で1ヶ月ほど滞在して、3キロ近く肥ってしまったからだ。「元の状態に戻る」どころか、過剰を抱えて帰国した。その理由は、明らかにレストランにある。自炊設備の貧弱なレジデンスにいたものだから、結局は外食に頼らざるを得なかった。フランス料理ばかり食べていたわけではないが、と言い訳しても仕方ない。この秋はせいぜい運動に励むことにしよう。と決意したところに、フランスから郵送したジャムや菓子類の箱が届いた。レストランから離れても、煩悩の秋は去りそうにない。

□写真は上から「鴨の砂肝のサラダ」「鴨のコンフィのチーズ漬け・フォアグラ添え」「プロフィットロール」



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2010年10月05日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(2) 誰もが有名人??

久しぶりに生徒の立場になった語学学校だが英語の方が大半を占めているようで休み時間ともなればほぼみんな英語である。街でもカナダ人は親切で、親切ゆえにこちらのたどたどしいフランス語を聞くと瞬時に英語に切り換えてくれるので、あまりフランス語の勉強に良い環境とはいえない。しかも夏のモントリオールは観光客で溢れているので余計に英語の頻度が高まるのかもしれない。

70F3.jpg石の街モントリオールはやはりおフランスの香りを漂わせた大人な街である。日が差すとかなり暑いが木陰はしっとり涼しく快適である。小さなカフェでくつろぐもよし。素敵な街をアイスでも舐めつつそぞろ歩くもよし。

アイスクリームの注文もウィ、マダム/イエス、マアムと小粋なギャルソンは客の発する最初の一言でフランス語と英語を使い分ける。フランス語拒否の人はハローとかたくなに英語で通せばよいのである。わたしは練習を兼ねて拙いフランス語でシトロン(レモン味)を注文。

こんなお店での決まり文句は良いのだが、自由会話となるとがぜん苦しくなってくる。まあ意地でも下手なフランス語でしゃべればよいのだが、英語の方がどうしても話が早いのでついつい英語に頼りがちだ。

ここで学校主催のサイクリングに参加したのだが、二人のメキシカンと知り合いになった。英語の勉強に来たという。仕事は何してるの?と聞くと若いのがもう一人を指して「彼は有名な俳優だよ」と言う。「へええ…」

だって中肉中背で別にすごくハンサムというわけでなし、どちらかというとイーストウッド演じるガンマンにすぐ撃たれる多数のメキシコ人の一人って感じである(失礼)。

acteurmex01.jpgしかも英語はかなり初級レベルと見えて、お世辞を言おうと「You are beautiful with no eyes(君は目がなくて美しいね)」などと言ってしまい大爆笑をかっていた。

ただ大変にフレンドリーでスターを気取っていないあたりなかなかに素敵な人である。サイクリング後に、彼に会って大興奮のラテン系の女の子とイギリス女性、私とオーストリアの女の子を加えた六人で飲んだのだけれど、なぜか俳優氏がいきなり私に肩のマッサージをし始め(おさわりか??)普通なら顔面パンチを食らうところがそのまま任せてしまったくらい(長旅で強力に肩が凝っていたという話もある)、温かさを発している人であったことは確かです。実際 youtube を見ると役どころで全く別人のように見えることからなかなか良い俳優のようです。

ラテン系の女の子には「ええ、彼を知らないの。信じられない」

「そんなに有名なの?ラテン系で知ってるといえばリッキー・マーティンくらいだしなあ」「リッキー・マーティンと同じくらい有名なのよ!!」―と言われたのでかなりな有名人らしいです。ほんとに。濃いラテンのメロドラマで父親を刺し殺す悪役をやっていたらしいので、興味のある方は youtubeでご覧ください。

http://www.youtube.com/watch?v=YC9WeV6o1Qk

彼の他にもバンドを持ってるというアメリカ人(同じホテルに泊まっていた)やアンジェリーナ・ジョリーに会ったことのあるビデオ編集者ともお知り合いになったが、あらみなさん有名人なのね。私も「日本の女優よ」とか言っとけばよかったーなんでやねん!




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2010年10月03日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(1) トロント―モントリオール間、六時間

フランス語を習うのになんでまたカナダに? とよく聞かれた。フランスにはすでに結構行ってるし、今度は違うところに行ってみたかった。ついでに本業の英語のブラッシュアップもできることだしーという訳で一粒で二度おいしい的なフランス語圏はカナダ東部にしたのだ。
 
とはいうもののあまり日本人のメジャーな旅先ではないカナダ東部ケベック州。お上りさんとしてはナイアガラを見物してから VIA Rail で一番の大都市モントリオールに乗り込もうと計画した。
 
70E1.jpgナイアガラとトロント市内をぶらりとして、まあ落ち着いた良い街ですなあ。高層ビルが立ち並ぶ未来都市のようでありながら、ビルの谷間には小さな緑地があり、風が気持ちよく抜けて行く。絵になる街を走る鮮やかな車体の路面電車(写真1)。お外でランチもうなずける気持ちよさである。

トロントから車で二時間足らずのナイアガラは各国の観光客でにぎわっていたがここでも経済成長目覚ましいお隣さん中国人が目立っていた。やたら声が大きくてハッピーそうなのはトルコ人。滝のしぶきをたっぷり浴びて一家で叫びまくっていた。時差ボケが抜けきらないわたしはひとり静かに滝を鑑賞。船からよりは上からの方が滝全景が見えて良い(写真2)

トロントで泊ったヒルトンの朝食はお素敵である。色々言われる向きもあるが、やはりヒルトンブランドに間違いはない。フルーツ好きの私はボウルいっぱいのフルーツサラダにヨーグルト、ナッツにブラウンシュガーをぱらりとかけてたらふく頂いた。これは後々かなりの贅沢だったことがわかった。というのも寒い国カナダではフルーツ、野菜全般はかなりお高い。食料は日本より安いといつもの感覚でいると痛い目を見た。

タクシーで駅まで行って電車待ちの列へ。出発時間は9時半だが9:00なのにゲートが開かない。大きなかばんを抱えた人が前に並んだ人たちに「これってモントリオール行き?」と申し合わせたように聞くのがおかしい。わたしも聞いたけどさ。

70F2.jpg「ずいぶん待ってるよね」とちょっと不安になって隣の若い女性に聞いてみたが「それでも大抵定時に出るのよ」との言葉通りゲートが開くと意外にスムーズにホームまで移動、席に座れた。
 
新幹線に比べるとやたら停まるわ遅いわだし、景色もそれほど良いわけでもないが、まあ快適ではある。ただ後ろに座った派手な金髪のマダムが、大阪のおばちゃんも顔負けのマシンガントークで延々話し続け、隣の女の子はどうやらまだ中学生で一人でフランス語を習いに行くところらしいのだけれど彼女を餌食にまあしゃべるしゃべる!

六時間の間にマダムの家族構成から趣味、職業、自宅の内装、娘の彼氏、友人の病歴についてまで私の知るところとなった。満席でマダムのトークから逃れられないこの子があまりにも気の毒であった。

それにしても VIA Rail よ、なぜコーヒーを普通サイズで出してくれないのか。そんなに飲めないって。2ドルと格安なのはいいけど日本ではお目に書かれないくらいのメガサイズの紙コップで出さなくても。しかも結構揺れる車内でですよ。余ったらどうすんのよ。アメリカンほど薄くはないが、にしても量が多すぎ。
 
トロント―モントリオール間6時間も長すぎるし。カナダ政府、新幹線買いませんか。日本のメーカーよ!なんでここに売り込まない?! ビッグチャンスなのに。



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