まずはアルノー・デプレシャンの Un conte de Noël(あるクリスマスの物語)。骨髄移植の適合者が誰一人いなかったために難病の子供を救えなかった家族のその後の不和を描いたもので、マチュー・アマルリック、エマニュエル・ドゥヴォス(あの「ブスオーラ」の方です)といったデプレシャン作品におなじみの俳優のほか、カトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストロヤンニ親娘、メルヴィル・プポー、イポリット・ジラルドなど豪華な面々が出演しています。フランスではとても人気のあるデプレシャン監督(特に男性に人気があるように思います)なのに、カンヌでは今まで無冠で、今回も周囲から高評価を得たにもかかわらず、作品自体は賞を逃しました。それでも家族をテーマにした力作のようですから、公開が待ち遠しい映画であることには間違いありません。
国際批評家賞を受賞したハンガリーの若手コーネル・ムンドルッツォの Delta も印象的でした。20年ぶりに故郷に帰って初めて会った実の妹と恋に落ちた男が、父親が母親とその愛人に殺されたことを知って、復讐にむかうという穏やかならぬ内容ですが、映像だけ見ていると静かな雰囲気で、構図が美しく一部分だけを見ても興味をそそられる作品でした。難しい役どころをこなした俳優の演技も評価が高いようです。昨年のカンヌの審査員でそのミステリアスな雰囲気が記憶に残っていたアルゼンチンの女性監督ルクレシア・マルテルが今回はコンペティションに La mujer sin cabeza(頭のない女)を出品しました。運転中に何かをはねたヴェロニカは、その後周囲に違和感を感じるようになり、自分がはねたのは人ではないかと思うようになるが、事故現場には犬の死骸しかなかった、というストーリーで、メディアの評価を見ると、かなり難解な作品のようです。どことなくルイス・ブニュエルやデヴィッド・リンチをイメージさせる映像で、個人的にはそのミステリー仕立ての物語ともどもかなり惹かれました。
初めてコンペティション対象となったフィリップ・ガレルの La frontière de l'aube(夜明けの境界線)は評価が真っ二つに分かれました。ハリウッドに行った夫がいるスター女優キャロルは、取材に訪れたカメラマンと愛し合うようになり、ホテルで取材を行いながら一緒に暮らすようになる・・という物語です。「ゴダールの再来」と言われるガレルのモノクロームの映像は、新しいというよりも何かノスタルジーを感じさせるものでした。そして何よりも注目を集めるのは、監督の実子であるルイ・ガレルの出演。カンヌでも常にクールだった彼のデカダンな風貌は一見の価値あり。
最後はチャーリー・カウフマン監督の Synecdoche, New York(シネクドキ・ニューヨーク)。『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』、『アダプテーション』などユニークな物語を提供してきた脚本家による初監督作品です。味気ない生活をしている舞台演出家の男が、自分の劇団の場所をそっくりニューヨークへ移動させ・・という物語で、カウフマンのことですからここからひとひねりもふたひねりもある展開をしていることでしょう。実際批評においても「観ていると疲れる」という表現が見られるので相当あれこれ詰め込まれた作品のようです。しかし出演がフィリップ・シーモア・ホフマン、ミシェル・ウィリアムズ、キャスリーン・キーナーですから、俳優を観るだけでも価値がありそうな映画です。昨年のカンヌでご紹介した映画が今頃公開中であったりするので、一年後このエントリーを見ていただいたほうが実用的かもしれません。ここで取り上げた作品が一つでも多く日本で公開される事を願っています。
exquise@extra ordinary #2
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