2008年06月15日

Clémence & Johnny Hallyday 「On a tous besoin d'amour」 (2001) ―ヴァリエテ・フランセーズ散歩(2)―

besoin2.jpg 「ふたりの天使」という曲がある。曲名に覚えがなくても、冒頭の数小節を聞けばおおかたの人は「ああ、あの曲ね」と思いあたるはずだ。女声のスキャットで歌われる、メランコリックで印象に残るメロディを持った曲である。作者はサン=プルーSaint-Preuxというフランス人作曲家で、彼は1969年、弱冠19歳のとき、音楽フェスティバル参加のため滞在中だったポーランドでこの曲を作曲した。原題はConcerto pour une voix (一声のためのコンチェルト)、ダニエル・リカーリDanielle Licariという女性歌手が歌ったこの曲は短期間のうちに世界的な大成功を収め、サン=プルーの名は一躍有名となる。

このときからほぼ30年後の話。彼はあるとき、シングル用の自作曲を歌う少女歌手を探していた。小さいころから音楽の道に進みたいという希望を持っていた彼の末娘クレマンスClémence(1988年生まれ)がそれを聞いて父親に「私なんかどう?」と自分を売り込む。彼女が吹き込んだデモテープをジョニー・アリデーに聞かせたところ、彼女の声に惚れ込んだこのスーパースターは、ぜひこの少女とデュエットしたいと申し出る。50歳近い年齢差の奇妙なデュオの誕生である。

 ふたりが吹き込んだサン=プルー作On a tous besoin d'amour(みんなが愛を求めてる)は、曲自体の良さ、人類愛を歌った歌詞の格調の高さ、はかなげで透明感あふれるクレマンスの声の魅力などが相まって、非常に質の高い作品となった。彼女にとってデビュー作になるこの曲は、2001年末、仏ヒットチャートの4位まで上昇する大ヒットとなる。このとき彼女は13歳の誕生日を迎えたばかりであった。ヴィデオクリップでは、仲良く手をつないでデュエットするふたりの楽しげな姿を見ることができる(アリデーがやたらとタバコを吹かすのには少々閉口するが)。天使のような女の子と野獣のようなロックンローラーの意外な組み合わせが楽しい。

Concerto Pour Deux Voix クレマンスはこのあと約3年間のブランクを経て、2005年、音楽シーンに復帰。大ヒット映画Les Choristes(『コーラス』,2004)に主演した美声少年ジャン=バティスト・モニエくんとのデュオで、父親作のConcerto pour une voixConcerto pour deux voixと改題)を取り上げ、ヒットさせる。(ヴィデオクリップはここ。曲の良さは当然なのだが、アレンジが少々シツコイ感じがする)


その後彼女はソロシングルを三枚リリース。2007年にはダウンロード販売限定でファーストアルバムをリリースしたらしい(残念ながらまだ聞く機会には恵まれない)。まもなくCDの形でのアルバムも出るらしく、こちらは彼女の公式ホームぺージで一部を試聴することができる。歌はうまいし、声にも魅力はあるし、いい曲もあるのだが、正直言ってデビュー曲のすばらしさに比べれば決定的に物足りない。いつまでも少女歌手の面影を引きずっているわけにも行かないだろうし、今後の展開はなかなか難しだろうなという気がする。





MANCHOT AUBERGINE

rankingbanner_03.gif
↑クリックお願いします

FBN16.png
posted by MANCHOT AUBERGINE at 23:26| パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | いろんなふらんす―音楽を中心に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。