愛知県の豊田市美術館でまた面白い美術展が催されているので早起きして行ってきました。今回は移民百周年を記念し、「 Blooming : ブラジル ー 日本 きみのいるところ」と題してブラジルの現代美術を紹介した展覧会です。ブラジルというと、コーヒーとサッカーとボサノヴァといったおきまりのイメージしかわかず、正直アートシーンについては、いくつかの美術館で見たエルネスト・ネトの作品くらいしか知りませんでした。今回はそのネトの名前のほかはほとんど初耳のアーティストばかり参加していたので、「ハズしたらどうしよう」と幾分不安を抱えながら入場したのですが、そんな不安は会場に足を踏み入れたとたん消え失せ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
エントランスに登場するキアラ・バンフィやパウロ・クリマシャウスカ/アナスターシャ・ハチステレファチオらの作品は、額縁といった枠組みから飛び出して壁を大きく覆っているものでした。クリマシャウスカ/ハチステレファチオの「フォレスト ー オール 豊田市美術館」はこの企画のために制作され、この美術館を滝や木々と組み合わせて描いた作品ですが、線のように見えるのは引き算の式になっていて、デザインとして見ても美しいものでした。バンフィは壁面を流れるように色彩や素材の違う木材を組み合わせたデザイン感覚豊かな平面作品だけでなく、ハンモックに寝ながら歌うパフォーマンス作品(そのハンモックに実際に私たちも横になることもできるのです!)も展示しており、センスを感じさせるアーティストでした。
展示された作品全体を通して、スケールの大きさと、色使いの美しさが感じられました。また人びとの生活と結びついた作品や、土着的なものや古代文明からヒントを得た作品が多く、私たちが通常「芸術」に対して抱く近づきがたいというイメージを覆し、身近にあって、懐かしさすら覚えるものばかりでした。
最も印象的だった作品を2点。ラウラ・ベレンによる「生物画 Natureza viva」と題された写真シリーズは、日常的な生活の風景の一部に、紙くずなどを加えて可愛らしい花を生みだしたもの。解説には「『静物画 Natureza morta(フランス語だと Nature morte=「死んだ自然」)』を逆手に取って、死物を組み合わせることで『生』を生み出そうとする試み」とあります。そのアイデアの面白さと使い古された家具やタイルの色合いが新鮮でした。もうひとつは、日本の島袋道浩がタコを主題に制作したビデオ作品を、ブラジルのヘペンチスタ(もともと文字を読めない人たちの瓦版的な存在だそうで、楽器を手にリズミカルに物語を伝える朗誦者)のペネイラとソンニャドールに歌ってもらった、その名も「ヘペンチスタのペネイラ・エ・ソンニャドールにタコの作品のリミックスをお願いした」。実際の作品と、ヘペンチスタのパフォーマンスが2分割されたスクリーンで同時に映されますが、作品の内容とヘペンチスタが歌う内容が結構食い違っている(島袋さんが漁師、ということになっていたり)のがかえっておかしい。そして何よりもヘペンチスタの二人が、タンバリンだけでこんなにファンキーで楽しいパフォーマンスを行うことに驚かされました。彼らの歌が関西弁で訳されているのも何故か納得。島袋さんは、ほかにもミュージシャンとのコラボ作品も出品していて、こちらもボサノヴァの音が心地よく響く面白い作品でした。
興味深い展覧会は今までにいくつも見ましたが、今回は「愉快だった」と素直に思える企画でした。夏らしい楽しいアートを鑑賞した後で食べたひつまぶし(土用の丑の日の前日だったので)の味も格別でした。
* ヘペンチスタのパフォーマンスはこんな感じです。
exquise@extra ordinary #2
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