ボサノヴァはオペラとかギンギンのロックとは対極にある、表現の持つ押し付けがましさ、暑苦しさとは全く逆の洗練に向かった音楽である。地中海のビーチでボサノヴァを聴いたとき、あまりに気持ち良くて死んでもいいと思ったが、ジョアン・ジルベルトの「三月の水」なんか、そういう瞬間にふさわしい、余計なものがとことんそぎ落とされた気持ち良さ、死の匂いさえするはかなさを兼ね備えている。
□CORCOVADO - EVERYTHING BUT THE GIRL
□DISAFINADO - GEORGE MICHAEL
80年代初頭のイギリスのネオアコもボサノヴァの影響を受けた音楽のひとつ。その代表格エヴリシング・バット・ザ・ガールが、90年半ば、当時の先鋭的なジャンルだったドラムン・ベースで「コルコヴァード」を料理したときの衝撃は忘れられない。「ドラムン・ベースは21世紀のボサノヴァだ」という彼らの発言もあったが、このヴァージョンはエイズのチャリティー・コンピ「RED HOT + RIO」に収められている。ボサノヴァのバッタもんと言う人もいるだろうが、このアルバムは実験として面白い曲が多い。ステレオラブによる「One Note Samba」やマッド・プロフェッサーによる「黒いオルフェ」のダブ・ヴァージョンも入っている。個人的にはジョージ・マイケルのDisafinadoもセンシュアルで捨てがたい。□POISSON DES MERS DU SUD - ISABELLE ANTENA
□SAMBA SARAVAH - PIERRE BAROUH
テクノな「イパネマの少年」でデビューしたイザベル・アンテナもニューウェーブ経由のボサノヴァである。「南の海の魚」が収録された「愛にエスポワール」はすっかりジャジーになっているが、このアルバムはうちのブログで最も良く売れている。フランス語はポルトガル語と相性が良いせいか、唯一、フレンチを冠したフレンチ・ボッサと呼ばれるジャンルを持つ。バーデン・パウエルや外交官としてパリに赴任していたヴィニシウス・ジ・モライスとの交流を通じてブラジル音楽にはまったのがピエール・バルー。バーデンとヴィニシウスのコラボ「祝福のサンバ」をフランス語で歌ったのが「サンバ・サラヴァ」で、バルーが出演したフランス映画「男と女」(1966年)にも使われ、映画のヒットがボサノヴァ人気につながった。□MOMENTO-BEBEL GILBERTO
□TANTO TEMPO-BEBEL GILBERTO
ボサノヴァはエレクトロとも相性は悪くない。ジョアン・ジルベルトの娘、ベベウ・ジルベルトのアルバムはエレクトロな味付けが独特の浮遊感を生み出している。陽光がきらめくような「MOMENTO」、夕暮れの海辺が似合うアンニュイな「タント・テンポ」。どちらも素晴らしい。



□QUIET NIGHTS(Corcovado) - BLOSSOM DEARIE
サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドなんかのジャズ・ボーカルの大御所よりも、ジャズの力量を持ったアメリカのポピュラー音楽の歌手によるボサノヴァのカバーが面白い。その一例がこのブロッサム・デアリーである。この「コルコヴァード」(Quiet Nights )はキュートでムーディーなお気に入りの1曲である。「May I Come In?」に収録。
□CHEGA DE SAUDADE - 小野リサ
日本のボサノヴァ・シンガーと言えば、小野リサの名前が真っ先にあがるだろう。彼女は62年にサンパウロで生まれ、10歳で日本にやってきた。小さい頃からブラジル文化に親しみながら育った一方で、その後はボサノヴァの本場ブラジルからは外国人として距離を置くという特殊な立ち位置のシンガーではある。そんな小野リサのアルバムの中でもボサノヴァの王道を行くのが1988年に発表された「Bossa Carioca」。アントニオ・カルロス・ジョビンの息子、パウロと孫のダニエルを迎えて製作された。ボサノヴァのスタンダードで押しまくる最高の癒し系。
□WAVE - ANTONIO CARLOS JOBIM
アントニオ・カルロス・ジョビンと言えば、ボサノヴァ・ブームが過ぎ去った67年にアメリカで製作された、「Wave」。シルキーなストリングスがフィーチャーされた、インスト中心のアルバム。贅沢この上ないイージーリスニング。



□CORCOVADO - GETZ & GILBERTO
□BESAME MUCHO - JOAN GILBERTO
「Wave」と並んで世界で最も有名なボサノヴァアルバムが「Getz & Gilberto」。ボサノヴァを理解しないアメリカのミュージシャンが手掛けたアルバムと典型と言われる。自国の音楽シーンが手詰まりになると他文化の音楽に接近して、搾取の対象にするのはアメリカの常套手段。ジョアン・ジルベルトの方も適当に手を抜いていれば、こんなアルバム聴かずに済むのだが、ジョアンの歌もギターも超クールときている。Disafinado の始まりなんか鳥肌が立つ。それだけにスタン・ゲッツのサックスに余計にいらだつ。「ブラジル勢のオトナの態度に対し、足元を見透かされているのを恥じもせずに、オレが主役だとばかり勇んでテナーを吹くゲッツのアホむき出しのソロ」とは音楽評論家、中村とうよう氏の言。的確である。ジョアンの「AMOROSO」に収められた「BESAME MUCHO」のロング・ヴァージョンも素晴らしい。ラテン系のベタベタのラブソングだが、こんなに切なくドラマティックな「ベサメ・ムーチョ」を私は知らない…たくさんキスして(=ベサメ・ムーチョ)、まるで今夜が最後のように、たくさんキスして、後であなたを失ってしまうのが恐いから…余計なことを先に書いてしまったが、ジョアン・ジルベルトを最初に聴くならば、「ジョアン・ジルベルトの伝説」だろう。ボサノヴァなら、とりあえずこれを1枚もって無人島へって感じの充実した一枚。
□VOCE E MINHA - CAETANO VELOSO
ボサノヴァによって盛り上がった音楽シーンに水を差すように、1964年に軍事クーデターが起こり、ブラジルは軍事政権下に入る。厳しい言論統制が敷かれ、音楽も取り締まりの対象となる。カエターノ・ヴェローゾは軍事政権から若者を扇動する危険分子とみなされ、3年間の亡命生活を余儀なくされた。もちろん彼もジョアン・ジルベルトの圧倒的な影響のもとにあったのだが、サンバやショーロなどの伝統音楽を踏まえ、ビートルズやジミヘンなどの新しい同時代の音楽を取り込みながら独自の音楽を追及したトロピカリスモと呼ばれるポスト・ボサノヴァの動きの象徴だった。軍事政権下でブラジルの多くの歌手が自分の国のことに直接言及できなくて、それをラブストーリーに置き換えたりして歌っていた。「お前の歌は何かの暗号だろう」と取調べを受けたりもしたようだ。詩のダブルミーニング(=両義性)や多義性を論じることは今や当たり前のことだが、有閑ブルジョワ文学の言葉遊びではなく、こういう命がけの表現に迫られるとき美しさと深みを備えた詩が生まれるのだろう。
ところで、先日、息子の保育園時代の担任の先生にばったり会い、そのときに「KIDS BOSSA」というアルバムを教えていただいた。かわいい子供の歌声による童謡、映画音楽、ポップスのボサノヴァ・カヴァー集だ。バックの演奏にはブラジルのボサノヴァの精鋭を迎えている。シリーズとしていくつか出ているようだが、この「PEAK-A-BOO」がベスト。「ABCの歌」や「森のくまさん」などの子供の歌に加え、「大きな古時計」やビートルズの「オブラディ・オブラダ」も収録。おしゃれパパママ中心に売れているようだ。amazon で試聴可。
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