2008年09月12日

テクトニック TECKTONIK

ネットでフランスの若者たちと交流している学生のCazさんから次のようなメールが…

「ところで、今のフランスの流行ってどうよ?」って聞いてみたら、 Tecktonik(テクトニック)というものが若者の間で大流行しているそうです。雑誌でちらっと見たことはあるものの、なんじゃそりゃ?と聞くと、「ヒップホップとテクノをあわせたものよ」とのこと。mixiの方でもフランス人と一度話したこともあって、その人は「フランスも今じゃR&Bやらヒップホップに飲まれて悲惨だよ」と言ってました。もしかしたら、フランスの大事な「いかにもフランス」な音楽文化を守っているのは実は日本なのかもしれません…。たぶん、現代のフランスっ子が日本のタワレコやHMVのフレンチ欄を見たら、「うわっ、ダッサ!」って言うのかも…。 「まぁ、たぶん流行だからすぐ廃ると思うけどね」とのことなので、日本で言う「パラパラ」ブームみたいなもんかなぁ。今パリのクラブじゃみんながこんな感じと聞いて…入った瞬間吹き出しそうな予感が。ボルドーの友だちも、「今Tecktonikが流行ってて、近所でよく男の子たちが踊りの練習してるよ」って前に言ってたのを思い出しました。そのときは、「あぁ、ブレイクダンスみたいなのかな。日本でもよく路上でやってるよ」と思ったのですが、まさか、このダンスを大勢で練習してるとは…!

とりあえず、見てみましょう。



バックの音楽はYELLEのA Cause des Garçons(remix)。YELLEもテクノ=エレクトロにラップ風のボーカルと言う構成だが、この手の音にフリースタイルの振り付けがついた感じだろうか。パラパラは日本らしく生真面目にマニュアル化&求道化していたが、適当にやってて、いかにもこなれていないダサさが残っているのがフランス流?

現地の若者が言うように、Tecktonik(テクトニック)はヒップホップとテクノがブレンドされたダンス。Electro Dance、Danse Electro、Milky Way、Vertigoとも呼ばれる。ジャンプスタイルJump Styleというベルギーの動きとハードスタイルHardstyleという音楽のリズムが合わさった特異なスタイルである。まだ独自の音楽ジャンルを築くには至っていないが、口コミで広がり、DailymotionやYoutubeのような動画共有サイトによって人気を集めていったようだ。ラジオやテレビや雑誌に代わって、動画共有サイトが音楽シーンを作るのは面白い現象だ。とりわけ音楽とダンスは言葉の制約がない。動画は見ればわかるので、言語の壁を簡単に越えて、グローバルなシーンを作り出せる。Youtubeが普及したのはつい最近のことだが、早くもこういう新しい動きを媒介し始めている。Youtubeには韓国での動画(大学の講義をジャック?)もあるが、Cazさんによると、

韓国に飛び火してるくさいですね〜。日本も、地味に注目はされてるみたいなんですが、有名なTecktonik DJユニット&レーベルKitsuneの片割れが日本人です。どうも、パーッと流行りはしてないようで…。

日本人からすると従来のフランスのイメージと全くかけ離れたものだ。ヨーロッパでテクノと言えば、やはりクラフトワークなどテクノの伝統があるドイツだろう。ベルギーやオランダもまた先鋭的なダンスシーンを作ってきた。フランスは世界標準の文化国としての時代が長かったせいか、新しいもの(特に音楽)をうまく取り込む技がいまいちで、「よりによって何でこんなにダサくなるの」といつも思わされてきたが、フレンチ・エレクトロというジャンルや、以前紹介したテクノ・パーティー Teknival など、フランス発のグローバルな動きが目に付くようになってきた。

Tecktonikも第一印象は、やめときゃいいのにっていう感じだったが、それでも何回も見ているとカッコよく見えてくるし、ダンスを習得するのもなかなか難しそうだ(YELLEの曲もノリノリ♪)。この映像なんかみるとTecktonikの浸透ぶりがわかる。小さい子供も参加していて、何だか集団でやっている中国の太極拳みたいだし、日本の夏休みのラジオ体操にも見える。しかし、先鋭的なダンスシーンの裾野がひろがって、こういうふうに幅広く人々を集める場=公共性を生み出すという動きは非常に面白い。ところで、Cazさんが言ってたが、

実は、大学で1回生のときに語学選択をするときのプロモーションが、「ドイツ語は、音楽文化とも密接に繋がっていて、テクノやDJを目指す人には最適の言語!」と売り込みされてたんですよ。

近頃のドイツ語はこういう路線で受講者集めをしているのか!それならフランス語もTecktonikやTeknivalを売りにするしかないだろう。

ちょっと補足すると、Tecktonikは2000年にパリ郊外のランジス Rungisにある「メトロポリス」というナイトクラブで生まれた。当時、そこでTecktonik Killerというパーティーが行われていた。元はといえば、Tecktonikはダンスのスタイルではなく登録商標だった。Tecktonikブランドのクリエーター(とりわけ「メトロポリス」のアートディレクターのシリル・ブラン Cyril Blanc)はこの名称でTシャツやCDや栄養ドリンクなどのオフィシャル・グッズを売っている。

Tecktonikを大流行させるきっかけになったのは、2007年9月15日に行われた「テクノ・パレード」。フランス全土にひろがり、ベルギー、スイス、カナダにも飛び火した。2007年の11月にはテレビ局のTF1がTecktonikを世界に広めるための国際エージェントとなった。今や世界中にTecktonikが拡散しているが、この名称(または省略形のTCK)を使ってパーティをやる場合はシリル・ブランの許可がいる。

「テクノ・パレード」はゲイ・パレードの一環として行われる音楽イベントだが、特にTecktonikがゲイ・カルチャーと結びついているわけではない。Tecktonikを踊るときはトップスもボトムスもタイト&スリムにきめる。フューチュリスティックな志向性もあり、ときにはゴシック・ヘアにし、ときには目のまわりに星のかたちのメークをする。シャツにネオンカラーを施したりするが、それはロンドンのNu Raveのファッションシーンと繋がっている。


関連記事(フランス語)
Electros rivaux, Le Nouvel Observateur, 25 mai 2008
La Techno Parade connaît un succès monstre à Paris, Le Matin, 15 septembre 2007





cyberbloom

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posted by cyberbloom at 23:57| パリ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイバーリテラシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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