『愚か者、中国をゆく』(星野博美、光文社新書)
中国返還前の香港へ留学していた筆者が、中国内部を友人と二人でバックパックを背負って鉄道旅行した記録。若さゆえの無謀な計画に挑んだものの、1980年代中国の融通のきかない交通事情から生じた、快適な旅行に慣れた私たちには思いもつかない問題が次々とふりかかり、次第に疲れ果て二人の仲も険悪になっていく。カメラマンとして独り立ちしている今だから、その頃を冷静に見つめ直すことができるのでしょう。彼女の文章はごつごつとしていて無骨でとっつきにくいのですが、それだけに噛みごたえがあって、味も濃いです。中国という国がそんな彼女を引き寄せるのもわかる気がします。『役にたたない日々』(佐野洋子、朝日新聞出版)
絵本作家でもある佐野さんのエッセイは毒があって、おかしくてたまらない。毒は毒でも金井美恵子のような知性に裏打ちされたプライドから出てくるものではなくて、もっと人がもともと持っている本能的なもので、読んでいてもすうっと自然に体に入ってきて、スカーッといい気分になる不思議な毒なのです。実の母に冷たい仕打ちを受けていた少女時代、二度の離婚、そしてガンで医者に余命わずかと宣告されている現在と、「大変ですねえ」と思わず同情の声をかけてしまいそうになる人生を歩みながらも、そんな薄っぺらい同情心を蹴散らすような痛快な文章で、逆にこちらを圧倒するようなパワーを彼女は発しています。母親についてのエッセイ『シズコさん』と並行して読むのをおすすめします。『芝生の復讐』(リチャード・ブローティガン、新潮文庫)
まずキャベツ頭の男さんが投稿で触れていた『アメリカの鱒釣り』の表紙の写真が気になって(本人の写真だったんですね)読んでみたところ、その奇妙でかつ詩的な内容に衝撃を受けました。不勉強でこれまでこの作家のことを全く知らなかったのですが、たちまち虜になり他の作品も読んでさらにファンになりました。そのなかから今年文庫化されたこの作品を。シュールで斬新な文章なのにどこか懐かしくてほのぼのとしている。おかしみもあるのになぜかひっそりとしていてさみしい。今まで味わったことのない感覚を体験させてくれたこれらの美しい作品に出会えてほんとうによかった(キャベ男さん、ありがとう)。今は訳者藤本和子さんの書いた彼の伝記を読んでいます。毎年読む幸せを感じさせてくれる作品に巡りあえるのは嬉しいことです。今年もその巡りあいを願って一冊でも多く本を読みたいです。
exquise@extra ordinary #2
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「アメリカの鱒釣り」は,カヴァーデザインのカッコ良さが脳裏に焼き付いていたのみで,実は未読で.
というわけで,読んでみます,「アメリカの鱒釣り」.
ブローティガンは「フランス人の批評家が自分の作品を初めて理解してくれた」みたいなことを言っているんですね。たしかにフランス人好みかもしれません。
「東京モンタナ急行」は未読なので、探してみます〜。