ボルドーのレストランで給仕係兼歌手として働いていたクレール・ドナミュールClaire Denamurは、MySpaceのページで公開した自作曲が関係者の関心を引いたことがきっかけとなり、Source ETCレーベル(ローズRose,イェールYelleなどが所属)と契約。ベンセBensé、ルナン・リュースRenan Luce、エミリ・ロワゾーEmily Loizeauなどの前座としてライヴ活動をするかたわら、2009年2月、ファーストアルバムClaire Denamurを発表する。1984年生まれの彼女は、5歳から15歳までの10年間をアメリカで過ごした。そのせいもあり、好んで聞いてきたのはもっぱら英語圏のポピュラーミュージック。好きなアーティストは、フランク・シナトラ、ビリー・ホリデイ、ビートルズ、マリリン・モンロー、ナット・キング・コール、バッファロー・スプリングフィールド....(フランス人の名が全然出てこない)。「私のiTunesにはアングロサクソンのアーティストの音楽しかはいっていない」、「シャンソンやヴァリエテ・フランセーズはちょっと苦手。アレンジが嫌い」、「アメリカ風にアレンジされたシャンソン・フランセーズ、それが私の音楽スタイル」ときっぱりと語る彼女のファーストアルバムは、たしかにアメリカっぽい。
このアルバムに収録された曲(作曲はすべて彼女自身が手がけている)は、おおむね2つの音楽的傾向に分かれている。ひとつはアコースティックギターをフィーチュアしたフォーク調の曲(Le prince charmant, Ah les hommes, Il y avait...)。もうひとつはブラスを多用したジャズ調――もう少し厳密にいうと、ヴォードヴィル調というか、ミュージックホール的というか、とにかくそういう雰囲気――の曲(L'amour éphémère, In the mood for l'amour, Je me sens nue, Mon bonhomme)。
この後者の数曲が出色の出来である。まず、曲が抜群にいい。スタンダードが持つ特別の輝きをすでに帯びているといってもいいくらいだ。また、ミニマルながらセンスのいいアレンジも好ましい。だがなによりも素晴らしいのは、これらの楽曲における、少しだけハスキーで個性的な彼女の声である。内に秘めた大いなるパワーを十分予感させつつノンシャランに歌い流すヴォーカルテクニックもなかなかのものだ。
それに比べると、フォーク調の数曲は―― Le prince charmant などの佳曲はあるものの――全体的に少しインパクトが弱いかなという気がする。決して悪くはないが、際だった個性もない。聴いたのがこのタイプの曲だけなら、私も「アコギを抱えたヌーヴェル・セーヌの女性歌手」がまたひとりふえた、という印象しか持たなかったと思う。
アルバムを一枚出しただけの新人歌手の将来など予想できるはずもないが、あえていえば「アーティスト」というよりはむしろ「エンターテイナー」の方向で大成するひとかもしれない。お酒の飲めるライブハウスでその歌声をじっくり聞いてみたい歌手である。
■In the mood for l'amourの弾き語りライヴ映像。ギターがあまりうまくないのはご愛敬。
■Le prince charmant のヴィデオクリップ。「ステキな王子様」と思って結婚したらじつは蛙のようなヤなやつだった、ア〜ア、という辛辣な歌。歌詞はココ。
クレール・ドナミュールの公式ホームページ(仏語)
クレール・ドナミュールのインタビュー動画(仏語)
MANCHOT AUBERGINE
↑クリックお願いします





