カンヌ映画祭が閉幕してからかなり時間があいてしまいましたが、出品された映画からいくつか気になるものをご紹介します。

まずはコンペティション部門に出品され、脚本賞を受賞したロウ・イエ監督の「スプリング・フィーバー Nuits d'ivresse printanière」から。夫が青年と浮気をしているのではないかと疑う妻に雇われた探偵は、次第にこの二人の男の関係に魅了され、恋人ともどもその官能的な狂気に巻きこまれていく・・という多分にエロティックな内容ですが、嫉妬と妄想の描き方に秀でていて、同性愛版「突然炎のごとく」のようだという高い評価も見られます(一方で観客受けは今ひとつみたいですが)。ロウ・イエ監督は前作「天安門、恋人たち」が、その激しい性描写のため、本国中国で上映禁止となっており、今作も検閲の目を逃れつつ撮影が行われたのだとか。それでも果敢にタブーに取り組もうとする監督の姿勢は、カンヌでも注目を集めました。

久々に長編作品を発表したオーストラリアのジェーン・カンピオン監督。19世紀イギリスの詩人、ジョン・キーツとファニー・ブラウンの恋物語を描いた「ブライト・スター Bright Star」は、ファニー役のアビー・コーニッシュの演技も含め、批評家からも観客からもおおむね好意的に受け入れられたようです。美しい詩を生みだした若い二人の恋というロマンティックな内容に加え、スチール写真がどれもこれも美しく、監督独特の鮮やかでフワフワした映像がこれらからも想像できます。大きなスクリーンでじっくり観たい映画ですね。

お次はコンペ外の映画から。今年はシャネルを取り上げた映画が数本作られましたが、カンヌでもフランスのヤン・クーネン監督による「ココ・シャネルとイゴール・ストラヴィンスキー Coco Chanel et Igor Stravinsky」がクロージング作品として上映されました。すでに名声を獲得したココ・シャネルが、ロシア革命のためにパリに逃げてきたストラヴィンスキーの家族を自分の別荘にかくまったことで、二人の間に恋が芽生える・・というもので、批評家筋にはウケが悪いようですが、観客には好評です。何といっても、シャネル役にアナ・ムグラリス(彼女自身シャネルのイメージ・キャラクターでした)、ストラヴィンスキー役にマッツ・ミケルセン(「007 カジノ・ロワイヤル」で血の涙を流す悪役だった人です)、という魅力的なキャスティングがこちらの興味をそそります。カンヌのレッド・カーペットでもこの麗しき二人は華々しいオーラを放っていました。

監督週間に出品されたジョン・レクアとグレン・フィカーラによる「アイ・ラヴ・ユー・フィリップ・モリス I love you Philip Morris」は実話をもとにしたコメディーで、妻子もちの詐欺師が刑務所で同じ房の男と恋に落ちてしまい、一緒に脱獄をしようとする物語。先行して上映されたサンダンス映画祭でも大いにウケたそうです。ブラック・コメディ「バッド・サンタ」を手がけたコンビによる映画で、おまけにこの二人の男を演じるのがジム・キャリーとユアン・マクレガーということですから、毒が効いていて相当楽しそう。ヨーロッパでは秋に公開ということですから、日本でも今年中にお目にかかれるかもしれませんね。
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posted by exquise at 22:44| パリ |
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