ところで、そんななかから「フランス国営テレビ お笑い日本の実態!」という動画を発見しました。題名と裏腹に、日本のお笑いブームについてではなく、この時期に合わせて作られた民主党批判、というか、説得的な根拠を示さないデマゴギーの類いですが、面白いのは、それをフランスのニュース画像に合わせて、字幕とハメコミ合成で編集してみせた点です。いわゆる「MADムービー」と呼ばれるものですね。
面白いと言ったのは、内容がよく出来ているからではありません。内容は、どちらかというと、趣味の悪い冗談にすぎない。同じような批判動画は、たぶんどの政党を取り上げても、作ることはできます。僕が興味を惹かれるのは、ここでフランス語がどのような言語として機能しているか、という点です。フランス語を聞き取れる人には、内容が日本の政党に一切関係ない話であることはすぐ分かるでしょうし、フランスのニュース番組を多少なりとも知っている人なら、そもそもZone interditeを放送しているM6は国営放送ではないことに、すぐ察しがつくでしょう。このような動画を編集しようと思うためには、日本人のほとんどはフランス語を理解できないという前提に立たなければなりません。英語で同じことをやったら、デタラメすぎる、と非難されるでしょう。たぶん。
動画に付けられたコメントで興味深いのは、「翻訳は正確ではなくても、内容は真実だ」というもの。翻訳とは、ここでは字幕を指すと思われますが、上に述べたように、一行たりともキャスターの言葉と字幕は対応していません。このコメントは、そんなことはどうでもよくて、政党批判の字幕が正しければよいのだ、と言っているようです。どうせ分からないフランス語だから何でもいい。逆にフランス語がちょっと分かるからと言ってこの動画を批判するのは野暮な奴、ということになるのかもしれません。
どうせ分からないフランス語。しかし、これがフランス語であるのは、偶然ではないでしょう。作成者が誰かは知りませんが、この言語に何らかのオーソリティーを認めているような気がします。アル=ジャジーラのアラビア語のニュース画像や、フィンランド国営放送の画像を使って同じ編集をすることだって可能でしょうが、それではジョークの意味が変わってしまう。日本人が気になる「世界の大国」の報道である必要があります。しかも、アメリカや中国のように日本の政治的利害に直接関係がある国では、さすがにリアリティがなさすぎる。そこでフランス、ということになったのではないでしょうか。もしそうだとすれば、やはりフランスはいまだに「遠い国」なんだな、と思います。
ところで、メリッサさんが、本当は何を言っているか、みなさん分かりますか。ルポルタージュの紹介部分を切り貼りしているので、全体を通じた話題はありませんが、字幕やハメコミ動画をあえて見ないで、じっと聞いてみるのも、フランス語の練習としては面白いかもしれません。
bird dog
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