2009年12月23日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(2) 2009年のベストCD

Luciole “Ombres”
Ombres■リュシオールLucioleのOmbres。23歳のフランス人女性歌手のファーストアルバムだが、すごい才能の持ち主が現れたという印象。ケイト・ブッシュを最初に聞いたときとおなじくらいびっくりした。元々はスラム(ポエトリー・リーディング競技)をやっていた人で(全仏スラム選手権(!)で2回優勝しているらしい)、発音の美しさ、表現能力の高さはピカイチ。天性の声の美しさと相まって、非常に魅力的なパフォーマンスを披露してくれている(作詞は彼女が担当)。フランスの歌手でいえば、カミーユCamilleとちょっと似たところがある(影響も受けているらしい)が、彼女ほどエキセントリックなところはなく、もう少し幅広い音楽ファンにも受け入れられそうだ。プロデュース(および楽曲の大半の作曲)は90年代に活躍したポップの魔術師ドミニク・ダルカンDominique Dalcan。この人、こんなに作曲の才能あったかなー、と思わせるくらいいい曲を書いている。
Luciole - Ombres
(Manchot Aubergine)

■新譜で買ったCDといったら、なんと「ハンキーパンキー」しかないことに気づき、愕然としました。L⇔Rの黒沢兄弟による企画盤です。いろんな意味で懐かしい感じのするアルバムでした。あとはネッド・ドヒニーのファーストとかビートルズのリマスターとか、古いものの買い直しばかりです。レンタルして聴いたライムスターもしばらくお気に入りでした。
(bird dog)

ロリー・ギャラガー『ライブ・イン・アイルランド’74』
ライヴ・イン・アイルランド■今年の一枚、それはやはり、あえてロリー・ギャラガーの『ライブ・イン・アイルランド’74(別名アイリッシュ・ツアー)』にさせてください。IRAのテロが各地で暴発する70年代中期、誰もこわがってライヴを開催しなくなったアイルランドの街々で、<あえて>ツアーを敢行し、その音源のみを収録するというココロ意気、アイルランド兄ちゃんロリーのロック魂にふるえました。
■新譜に、「コレ」というのが見当たらない、というか、新譜は曲ごとにダウンロードする、という世の趨勢とも異なり、「おしなべて最近のロックを聴かなくなった」(というかロリー・ギャラガーを発見してしまったら他のオンガク全部が耳に入らなくなった)という一種病的な状態にはまり込んでしまっています。ロリーのいたテイストもいいですよね。活動期間が短く、惜しいバンドでした。
■未来への展望が見当たらず、物足りぬ報告になってしまいました。お許しください。 あと、これはなんなのかなあ:「ザ・チン・チンズ」という男女二人組のCDを友人に借りたんですけど、これはかなりよかった。いつのアルバムか分からないんですがね。あ、演奏者は西洋人です。
Rory Gallagher - A Million Miles Away(Irish Tour 1974)
(奈落亭凡百)

The XX
XX■加藤和彦の遺書に「今の世の人々は音楽を必要としているのだろうか」という趣旨の言葉があったそうですが、そんな悲壮な問いかけにうすぽんやりと共感する、そんな今日この頃。古馴染みの音とだけつきあう後ろ向けな自分に危機感を持つ一方、おもしろい音楽との邂逅もありました。
■例えば、イギリスの4人組のバンドThe XX。20才そこそこのアートスクールの学生仲間が奏でるドラムレスでミニマムな音楽は、「君たち本当に若者かい!」とつっこみたくなるほど気だるい。音数少なく、美メロもサビもなし。ネオ・ヤング・マーブル・ジャイアンツと括ってしまう人もいるかもしれません。しかしよくよく耳を傾けると、やはり2009年の音楽。子供の頃からフツーにヒップホップを聴いて育った世代が、バンドを始めてみたら体に染み付いた、ウェット感のない音の感覚が自然に出てきました、という感じでしょうか(故アリーヤの曲をカバーしてますが、わかりやすい黒っぽさは全くありません)。
■起伏の少ないメロディーに、派手じゃないけどちょっと色気のある音色のギター、そして淡々とした男女ヴォーカルのかけあい(女の子の声が、これまた耳元で囁かれたらたまらんという声)。中毒性高いです。あまり難しいことは考えていないらしいところもいいですね。
■もうやり尽くしたかに見える音楽の世界にも、まだまだ、開けるべきドアはあるようです。
The XX - Crystalised
(GOYAAKOD)

Mr.children「HOME」
HOME(通常盤)■12月12日の京セラドーム講演の3日前くらいに、古い知人から「一緒に行く人がいけなくなったから、一緒にどう?」ということで、なんやら棚ボタな感じで(チケット代は払いましたけど)コンサートに行ってきました。しかし、ライブに行くのに曲を知らないのはまずい、ということで、最新の「supermarket fantasy」をレンタルしようと思ったら、全部貸し出し中。仕方ないので、すこし前の「HOME」を借りました。
■ミスチルは、以前(10年前くらい?)やたらとドラマやら何やらでそこらに溢れすぎて、じっくり聴こうと思う前に食傷気味になって、なんとなく聴かず嫌いになっていましたが、もったいないことをしたと思いました。歌詞が良いです。結局曲がわからないままライブへ行ったのですが、すごく歌が上手で、安心して聴けました。

BEATLES - ACROSS THE UNIVERSE
レット・イット・ビー■友だちとメールで音楽の話をするとき、youtubeのURLを貼り付けておくと、話がスムーズに運ぶし、予想もしない共感を生むことかある。まるでyoutubeで会話をしているような、記憶を知覚のレベルで共有するような新しいコミュニケーションの感覚だ。人間は言語=シンボルだけでなく、イメージや知覚的なものによって、よりシンクロ率が高いコミュニケーションを行うようになっている。やはりイメージや音楽がデータベース化され、まるで言葉のように操作できるようになったことが大きい。
■今年は小熊英二の「1968」(まだ精読中)が出たり、山本直樹の「レッド」が話題になったりして、1968年を意識した年だった。フランスでは去年、五月革命40周年記念で盛り上がっていたようだが、反応の鈍い私には68年は1年遅れでやってきた。今年の9月にビートルズのリマスター盤が出て、ビートルズとジョン・レノン(エントリー「Jealous Guy」参照)を通して68年を再発見。9月に紹介するのを忘れていた Across The Universe を今年の1曲に挙げておく。この曲は69年に出たので、今年で40周年だ。この曲は1968年にジョン・レノンがインドで受けたマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの教えにインスピレーションを得たと言われている。"words are flowing out like endless rain into a paper cup" というインスピレーションにとりつかれて言葉があふれ出す感じもいいし、"Nothing gonna change my world" というリフレインの力強い宣言は、宇宙に裸で放り出されるような厳しい時代にあっても、カッコ良く芯を通して生きたいものだと思わせてくれる。
Beatles - Across The Universe
Love 2■日本語回帰の時期もあって、初期の井上陽水(紅白出場が流れて残念!)をよく聴いた。「傘がない」がグランド・ファンク・レイルロードの「ハートブレーカー」のパクリだということを今更ながら知った。さらになぜか中国語のサイトに、「君に会いにいかなくちゃ」の「君」は実はグランド・ファンク・レイルロードのことだと書かれていた。大雨の中で「ハートブレーカー」を全員で合唱したという伝説の来日コンサートが始まるのを、陽水が喫茶店で待っていたときの体験がもとになっているようだ。このあまりに整合性のある話に妙に感動してしまった。同世代の斉藤和義(66年生)もかじった。彼は歌だけでなく、多彩なギターも聴かせてくれる。
■フランスに関しては、クラブ=ダンス系の音に触れておこう。今年は、エール Air、ローラン・ガルニエ Laurent Garnier、DJ Cam がそれぞれ新譜を出していた。エールの "Love 2" に収録された Heaven's Light は Cherry Blossom Girl に続く名曲かもしれない。新譜 "Tales Of A Kleptomaniac" はまだ聴いていないが、ローラン・ガルニエと言えば、初期の曲「Acid Eiffel」(アシッド・エッフェル)はテクノチューンの傑作。映画や小説につけたくなるようなタイトルだ。ヒップホップ&ジャス系の DJ Cam はジャズメン4人を従えたバンド・プロジェクト Dj Cam Quartet で新境地を打ち出している。今年3枚目 "Diggin" が出たが、サンプリングやカバーの元ネタとなっているジャズやソウルをカバー。これもむちゃくちゃ良いですよ。特に Everybody Loves the Sunshine にはシビれます。Neburosa の流麗なピアノにも。
Air - Heaven's Light
DJ Cam - Everybody Loves the Sunshine
Laurent Garnier - Acid Eiffel
(cyberbloom)




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posted by cyberbloom at 22:22| パリ 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 投稿−WEEKEND CAFE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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