
90年代に三人組のバンド、レ・チャーツLes Chartsを率いて活動していたカロジェロCalogero(本名Calogero Maurici、1971年生、グルノーブル近郊の出身)は、1998年のバンド解散後、ソロ活動を開始。セカンドアルバム(
CALOGERO,2002)とサードアルバム(
calog3ro,2004)のビッグヒットがきっかけとなり、ロック系ヴァリエテ歌手として不動の地位を築く。
EN APESANTEUR([アナプザントゥール]。「無重力状態」の意)は、セカンドアルバムからシングルカットされてヒットした曲。メロディも声もサウンドもいいが、むしろ特筆したいのは
ヴィデオクリップのバカバカしいおもしろさ。閉じかけたエレベーターの扉から滑り込む怪しげな目つきの男。先客は妙齢の女性ひとり(女優メラニ・ドゥテーMélanie Doutey)。彼女に一目惚れした男の妄想は限りなく暴走し...という、ほんとうにどうでもいい内容の歌詞、映像だが、カロジェロのマヌケな表情がなかなかいいし、エレベーター内のあちらこちらの装飾もよく見ると???という感じで、全体的にいかがわしさにあふれた怪作クリップとなっている。何度見ても吹き出してしまう。このオバカクリップでの迷演技が功を奏したのかどうかはわからないが、セカンドアルバムは超ロングセラーを記録、彼は大スターへの道を歩んでいく。

だが、セカンドアルバム以降の彼の音楽を、私はじつはあまり評価していない。個々の曲の出来の問題ももちろんあるのだが、どのアルバムも全体を通して聴くと、似たようなマイナー調で重厚なタイプの曲ばかりがならび、どうも単調で重苦しい感じがして退屈してしまうのだ。彼の作品のなかでは、むしろあまり売れなかったファーストアルバム
AU MILIEU DES AUTRES (1999)が一番好きである。人気・実力の両面で当時ひとつのピークを迎えていたパスカル・オビスポPascal Obispoをプロデューサーに迎えて制作されたこのアルバムは、幅広い曲調の名曲の数々――
DE CENDRES ET DE TERRE, UN MONDE EN EQUILIBRE,
LE SECRETなど――、ストリングスをはじめとするアレンジの切れのよい美しさ、カロジェロのヴォーカリストとしての卓越した力量が相乗効果を上げ、ヴァラエティに富んだスケールの大きい傑作になっていると思う。どうしてこの路線を続けなかったのかな。まあ結果的には売れたわけだから、セカンド以降の短調&重厚路線の強化策は間違っていなかったということだろうが。

レ・チャーツ時代にも名曲は数多くある。
HANNIBAL(1994)というアルバムに入っているTOUT EST POUR TOIとか
LES MOUSTIQUESなんかを一度聴いてもらいたい。彼のメロディメーカーとしてのずば抜けた――そして残念ながら最近はちょっと影を潜めている――才能がわかるはずだ。
MANCHOT AUBERGINE

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posted by MANCHOT AUBERGINE at 21:33| パリ |
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