そういうシステム移行するためには「どのような手段で学んだにせよ、その学識は正統に評価される」必要がある。「MITから与えられた学位であれ、ウェブから学んだものであれ」同じように。ゲイツもそういう信念を持っているようだ。これは個人がどの大学を出たかという肩書きではなく、個人の能力をきちんと評価することにもつながるだろう。
大学のウェブ化の手始めが大学の講義のネット配信である。ネット上で講義を一般に無償公開するという考え方はMITが「オープンコースウェア(OCW)」という画期的な構想で5年前に先鞭をつけた。MITはその思想に共鳴したヒューレット財団やメロン財団などから大きな資金を調達してシステムを構築し、すべての講義を公開するという作業が進行している。
一方アップルは2007年に「iTune U」というサービスを開始した。スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、MITなど全米の大学の講義を無料公開するサービスだ。アップルは「iTunes」と「iPod」の組み合わせによって音楽のプラットフォームを押さえたが、同じ仕組みを使って大学の講義をいつでもどこでも受けることができるようにした。すでに世界で800以上の大学が参加、うち半数がコンテンツを一般公開しており、その大学の学生でなくても聴講できるというオープンな条件が何よりも重要なのである。すでに35万以上の音声/動画ファイルが利用でき、ダウンロード数は3億を超えたという(8月25日現在)。もちろん講義ライブラリはこれからも充実していくだろう。
「iTunes U」には東大を初めとする日本の大学も加わっている。東大は「東大 Podcasts」で公開してきた講義を配信し、話題のマイケル・サンデル教授の東大特別講義「ハーバード白熱教室 in Japan」も配信予定だという。明大は森川嘉一郎准教授による秋葉原とオタクに関する講義、慶応SFCは村井純教授などによる講義「インターネット2010」。各大学が特色ある講義を配信している。多様なコンテンツが集積され、使い勝手が良くなれば、個々の大学の枠組みを超えた別の学びの形や場が形成されることになるだろう。
cyberbloom
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