「ヴェルサイユ、モナムール」は3000人分の署名の入った手紙をアヤゴン館長とフレデリック・ミッテラン文化相に送り、デモも行う予定だ。スポークスマンは「ヴェルサイユの館長は、金を儲けたいなら村上の作品をオランジュリー美術館に展示すればいい。スペースがたくさんあるのだから。王家の居室に展示する必要はない」。また村上のセックスを暗示するいくつかの作品を槍玉に挙げる。今回は展示されないが、例えば射精している少年のフィギュア「ロンサム・カウボーイ」という作品だ。それもアヤゴン館長は極右の典型的な性の妄想だと退ける。
「マンガにノン」はフランス作家国民連合のアルノー=アーロン・ユパンスキ Arnaud-Aaron Upinsky が中心になって結成されたが、ルイ14世の子孫であるシクスト=アンリ・ブルボン=パルム公 prince Sixte-Henri de Bourbon-Parme の支持を受けている。村上隆は何か大変な人たちを敵に回している感じだが、彼らには保守らしい言い分もある。「私たちは文化的な遺産を外国人の利益のために使うべきではない。フランスには4万人の恵まれないアーティストたちがいる。それなのに、宮殿はニューヨークの公認アートのプロモートをしている」とユパンスキは告発する。「ニューヨーク、今度は日本の村上だって?」
彼らはかつてのヴェルサイユの城主のことも気にかけている。「ヴェルサイユの傑作はルイ14世が理解できるものでなくてはならない。宮殿を村上の引き立て役のように使うことはルイ14世に対する冒涜だ」と反発する。これに対してアヤゴン館長は France 2 のインタビューで次のように反論していた。「ルイ14世は彼の時代のすべての革新と創造を見てきて、欧州全体で起こっていたこと全てを知りたがっていました。だから私はルイ14世が村上氏の作品により的確に心を動かされると思います。なぜならこれらのアプローチは何よりも適切で楽しいものだからです」
しかし興味深いことにアヤゴン館長は次の現代アート展を大居室群で行わないことを告知した。「小さな勝利」を歓迎する反対者たちをよそに館長はそっけなく答える。「私は彼らを喜ばせようとしているわけではありません。マンネリを避けるために宮殿のオペラ座のような別の場所が考えられるでしょう」。論争を避けるためじゃなくて?
この記事は下記の記事を参照した
□ガーディアン(英)に掲載された美術展の様子
□村上隆、フランスのラジオ、France Cuture に出演
★なぜかメアリー・ノートンも出演していて村上を絶賛していた。「私は何より彼のサイケデリックなところが好きで、特にキノコのイメージが大好き」。それに対して村上氏は「自分はドラックをやらないけど、ドラッグがもたらしたサイケデリック・アートは大好き」と。フランス人のインタビュアが村上氏に「今回の作品は、あの日本のカルト漫画『ベルサイユのばら』の幻想や記憶に呼応したものなのですか?」と聞いていた。フランスで「ベルばら」は「レディ・オスカル」というアニメによって知られているようだ。
★興味深かったのは「私はヨーロッパのアーティストたちとアイデンティティの在り処が違う」という発言。彼の場合、クライアントの依頼が最初にあり、それにいかに答えるか、いかにそれを超えるものを出していくかが問題なのだと。また村上氏のチームは100人くらいいて、彼らのコミュニケーションをとりながら作品を作ると。「芸術企業家」ならではの発想だ。また竹熊健太郎氏のツィート「今回のベルサイユ宮殿での村上アートに対する反発は、オタクの村上批判と真逆の立場からの反発だが、構造がまるで同じなのが興味深い。オタクはアートだから村上隆に反発し、フランス右翼はアートではないから反発している」も印象的だった。
cyberbloom

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