とはいえ、村上隆展に対する批判勢力のニュースはトーンダウンしている。反対派は2年前に同じ場所で行われたアメリカ人作家、ジェフ・クーン Jeff Koons の美術展の際も、作品の展示を禁ずることを求めたが、ヴェルサイユの裁判所と国務院 Conseil d'Etat に却下されている。一方で、村上展のようなイベントがないと宮殿の維持管理費をまかなえないのも現実なのだ。ヴェルサイユ宮殿は今のところ財政的に潤っていて、随時修繕が行われている。今年はすでに宮殿に600万人が訪れ、去年より50万人増えている。 とりわけ新興国からの訪問が増え、中国だけでなくロシアやインドネシアからも客がやってくる。入場料は宮殿の収入の3分の2に達するほどだ。
最近、ルーブル美術館とポンピドゥーセンターがそれぞれランス Lens とメッス metz に分館を作ったが、分館の誘致には美術館側の財政的な利点がある。分館の敷地や建物は経済効果を当てにする地方自治体が用意してくれる。有名美術館も今や厳しい国際競争にさらされる時代だ。政府からの補助金も削減され、財政的に厳しい状態に置かれている。それゆえ独自のアイデアで財源を確保しなければならない。ヴェルサイユ宮殿も例外ではない。
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ヴェルサイユ宮殿では企業の資金による修復も行われていて、例えば、あるコニャックのブランド会社によって天井の壁画が修復された。それを見て資金提供しようという個人もいる。「これは私の寄付で直したのよ」と庭園の彫像を指差すマダムがニュースに登場し、小さなパネルには彼女の名前が記されていた。このようなスポンサーに応えるためにも、目をひく美術展やイベントが必要になる。古典的な作品とともに、村上隆のような現代的な作品が新しいお客を引き寄せている。古今東西の文化を混ぜ合わせ、多くのお客を楽しませるのが今のヴェルサイユの姿だ。アヤゴン館長のしたたかな戦略なのだろう。宮殿はとっくにブルボン王家のものではない。国が財政を切り詰める中、独自の収入がなければ巨大な文化遺産の維持もままならないのだ。
ヴェルサイユ宮殿ではまだ公開されていない部屋の修復が進められている。宮殿のすべての部屋を公開し、音楽のための部屋とか、夕食のための部屋とか、宮殿全体における各部屋の機能を訪れる人々に知ってもらうという大きな計画があるようだ。
cyberbloom

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