2011年01月19日

Radiohead "OK Computer"

当サイト管理人さまに言われた締切りをひと月も過ぎてしまい、さらには2011年を迎えてしまい誠に恐縮なのですが、わたくしの「2010年のベストCD」を今ごろ挙げさせて頂きます。

OKコンピューター選んだ基準は、「2010年の夜を最も多くの過ごしたお相手」です。それがコレ、Radiohead の "OK Computer"でございます。おぉ我が徹夜仕事のお供、…いや我が心の友よ、くらいの勢いでこのアルバムをエンドレスでかけながら、独りパソコンちゃんに向き合ったあの夜この夜そんな夜…(年が明けてもそれはあまり変わらんが)。

Radiohead が何年のデビューでどういう流れを汲むグループで、とか、これが何枚目のアルバムで、この時代は音作りがなんちゃらだから云々…的な音楽通のコメントはわたしにはできん。とにかく、眠気もピーク、心の荒み具合もピーク、…いまどきノーエアコンの住環境で暑さ寒さもピーク(ちょっぴし生命に危険すら感じるし〜)…そんな極限状態の深夜労働の脳と身体に、コレが効くのだ、沁みるのだ。

このアルバムが出たの1997年。日本では若者の間でピッチ(PHS)がブームで、数十文字のメッセージがカタカナで気軽に送れて「画期的よね♪」ってな時代ですよ、あぁた。インターネットなんてまだまだぜんぜん一般に普及しておらず、「コンピューター」というものに脅威や違和感を感じることができたおそらく最後の(?)時代ですよ。そのせいかどうかは不明ですが、まるで日進月歩のハイテクワールドや電光石火に流れゆく現代人の時間に抗うかのように、このアルバムはどの曲もぜんぜんピコピコっとしていないのだ(*ピコピコ←流行の電子音ばりばりで軽快なテクノポップサウンドのことを差してるつもり)!うーん、タイトルは“OK Computer”なのにぜんぜんコンピューターぽくないっ! だいたい“OK Computer”って意味もよくわかんないけどさ?

いくつかの曲でシャンシャンシャン…と小気味よく入る鈴のような音なんて、こりゃもうローテク感たっぷり(褒めてるんだ!)。わたしゃあ図らずも、保育園のお歌の時間に、「ジングルベール!ジングルベール!…… ほら!みんなが大きな声で歌うからサンタさんのそりが近づいてきましやよぉおぉお!!」と保母さんがハイテンションに声を張り上げて、自らの背後に回した手に隠し持った鈴を必死こいてシャンシャン振っていたのを思いだしたよ(クラスメートの半分以上は気がついてたんだよ、せんせ…)。いやぁ、こんな音を秋以降に聴いちゃったら、ちょっとしたクリスマスソング気分だわね。特に5曲目の Let down なんか、シャンシャンと優しく繰り返される音が、まるで街にしんしんと降りつもる雪のよう。やーん、ラブリーちゃんとのハッピーなホワイトクリスマスのデート気分を(殺風景な仕事部屋で)イリュージョンして独り遊びしちゃうぅぅぅ〜。

…しかしながら、ひとたび歌詞に耳を傾けてみると、けっこうイメージが違うのである。アルバム全体の流れとしては、おおまかに 【1. 世界への違和感・慟哭】 「たすけてくれ〜!オラぁもうだめだ〜!」→ 【2.やけくそモード】 「いーよいーよ。もぅ落ちるとこまで落ちますから」→ 【3.諦念・悟り】 「だけどオレら、なんとかかんとかこんな世の中やり過ごすんだよね」…である(わたしの解釈は間違っているかもしれんが、そんなことは知らん)。これを一晩中ノンストップで部屋中に響かせてご覧なさいよ。もう脳みそが眠ってる暇なんかないですよ。お蔭で、2010年もなんとかかんとか期限に間に合わせて仕事に勤しむことができました(この原稿は大幅に遅れてしまいましたが…)。

さて、どうでもいい話でここまでスペースを取ってしまったが、最後にひとこと言わせてほしい(←こういうことを言う奴は、だいたいひとことじゃ済まないんだぜ)。

わたしはトム・ヨークの声が好きだ。あの絞るような、ちょっと普通の精神状態すれすれな感じの危うい声がたまらん。痛みや官能に不意をうたれてつい出てしまった声や、無垢な赤ん坊がこちらの予想外にあげる歓喜の声なんかに共通する、一種のエロティックさを感じてしまう。三省堂神保町店の音楽本コーナーに行くたびに、ひそかに『トム・ヨーク すべてを見通す目』(シンコーミュージック刊)をぱらぱらしては買おうかどうか悩んでいることもここに告白しちゃうぜ。

…そして、トム・ヨークに思いを馳せるときにきまって蘇ってくる。当サイトの「2009年のベストCD」企画で、ロリー・ギャラガー賛を寄稿した奈落亭凡百がわたしにくれたメールが…(おうおう!やっぱりひとことじゃ済んでねえよ)。

奈落亭凡百は、音楽ど素人のわたしをバンドの世界に引きずり込み、絶叫アメーバ系(?)ボーカリストにしたてあげた人物である。怪人とも渾名されたドラマーであった彼は、いつもその個性的なすっとこビートで超ビビリな性格のわたしをうまいこと高揚させ、ライヴの間じゅう背中を押してくれたものだ。ぼろぼろに疲れきった肉体を抱えた癌闘病の末期も、ほぼ毎月のペースでライヴに出演していた愛すべき音楽狂いであった。2009年初秋のこと、当時はRadioheadの"In Rainbows"ばかり夜中にエンドレスで聴いていたわたしに奈落亭はこうメールをしてきた。

「トムはチビでヤセだけど、印税のせいか、すごくオシャレなの。歌詞はみんなトムが書いているから… 貴女も、ソングライターなどおやりになるがよろし…貴女のことばには拍動があるよ」

嬉しかった。奈落亭もおなじく Radiohead が好きだった。そして我々のバンドの全ての曲は彼が歌詞を書いていた。

2010年5月、彼は逝ってしまった。生前に一度も歌詞を書いて見せなかったことが悔やまれる。あのメールの前も後も、なんども歌詞を書くように言われていたのに…。

目下、奈落亭最後のバンドで共に活動してきたギタリストと新ユニットの準備をしている。
「あたしチビでもヤセでもないし、印税も入んないし、トムみたいにエロスたっぷりの声も出ないけど、いまは全部の歌詞を書いてるのよぉー」時どき、そんな届かぬことばをつい虚空に呟いてしまう。

…なんちゅう、おセンチモードにもしてくれるのが、わたしの「2010年のベストCD」“OK Computer”である。




Mlle.Amie

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posted by cyberbloom at 03:53| パリ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 投稿−WEEKEND CAFE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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