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浅野素女『フランス家族事情』が描くように、フランス的性愛の外見的な緩さは、非倫理性を表さない。流動的な関係の中で、にもかかわらず揺らぐことのない「代替不可能なもの」「取替え不可能なもの」を倫理的に模索していると見られるからである。自堕落どころかむしろ求道的に見えるブシェーズの佇まいは、こうしたモチーフを具現しよう。対照的に、映画に描かれた「米国人たち」は、米国人たちがフランス人たちに馬鹿にされがちな点なのだが、関係の流動性という外形を、短絡的に非倫理性の兆候と見なそうとする。

またジャックはフランス人の食文化があまりに「むき出し」なことに耐えられない。ウサギを頭まで食べることが信じられないし、市場で生きたままの姿の豚や子羊がさばかれているのを見て気分が悪くなる。アメリカ人は本当にそういうのが嫌いなのかもしれない。「ザ・コーブ」が日本バッシングを誘発したのもむべなるかな。結局は同じ残酷なことをやっていても、ハンバーガーのように元の姿や過程を隠し、「見た目」を整えろってことなのだろう。それでもジャックは「ブッシュ・キャンペーン」のTシャツを着て、キリスト原理主義的な関心によって「ダビンチ・コード」ツアーをしているロボットみたいなアメリカ人観光客たちに対して、「あいつらは愚鈍な政治や文化の象徴だ」と吐き捨てる。
「街は臭くて、人々はいいかげんで、男は女を口説くことしか考えていない」とマリオンは言う。ある意味、見た目を気にしない、なりふりかまわない健全な世界だ。生身の人間どうしがぶつかりあい、とりとめなく紡ぎだされる言葉。それはとことん甘いか、激しい口論かのいずれかだ。フランス映画はこの古典的なパターンを永遠に反復すればいい。そのたびに少しずつ違ったフランスの姿が見える。クールジャパンなんか気にもとめない、愛の国を地で行くフランスが温存されていい。
『恋人たちの二日間』には「何でこれがアートなわけ?」というアイロニーも感じられる。フランスはアートに理解があるというより、アートを補助金=税金で底上げして、アートの物語を回している国だ。マリオンの父親の書く絵は下品だし、友人のアーティストにとってアートは女性を口説く口実に過ぎないように見えるが、すべてアートの名のもとに許されてしまうのだ。
また言葉がわからなくて状況を把握できていないのはジャックだけではない。映画に登場するタクシー運転手はこぞって差別主義者だ。昔はパリでは英語が通じないとうのが定説だったが、今はむしろ英語がまかり通る状況だ。外国人を頻繁に相手にするタクシー運転手が英語を話せないとすれば、反動的になっていくのもわかる。
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