2006年10月15日

楽しい路面電車(2) LRT

strasbourg01.jpg最近、4歳の息子が乗り物マニアと化して、駅やバス停の名前を必死に覚えている。サイトから路線図をプリントアウトしてやると大騒ぎして喜ぶ。先週末は市バスを終点まで乗って、阪○電車に乗り継ぎ、さらに終点まで行った。「鉄ちゃん&小鉄」状態だ。本人はバスや電車に乗っているだけで楽しくてしょうがないらしい。まあ、遊園地や動物園に行くよりは安上がりだし、こちらも疲れないからいい。

事の始まりは、先月帰省したときからだ。彼の乗り物への興味に火をつけたのは市内を走る路面電車だった。毎日、目的もなく路面電車に乗るはめになり、終点まで乗っては引き返した。

路面電車が、クルマ社会によって空洞化した都市を再生する切り札になっている。地球温暖化の原因になるCO2の削減にもなる。しかし、これまで路面電車は渋滞の原因になるなど、モータリゼーションの邪魔者として次々と廃止されてきた。昭和32年に路面電車は延べ1480キロ走っていたのが、現在は219キロ、17都市のみとなっている。

私の帰省先とは富山市なのだが、富山市は、次世代路面電車、LRT(Light Rail Transit)が走っている市としてにわかに脚光を浴びている。日本で最も短い路線のひとつだった赤字ローカル線、富山港線が廃止され、そのあとに導入されることになった。これは先ほど話題に出した市内を巡る路面電車とは別物なのだが、近い将来につながり、環状化するらしい。

LRTの特徴は、乗降しやすい低い床の車両で、騒音や振動が少なく、ICカードを使った料金システムを採用している。現在、京都市や堺市がLRTの導入を検討しているが、富山市は地方都市のモデルケースになっている。やはり最大の問題は採算がとれるかということだ。しかし、収益は予想を50%も上回り、上々の滑り出しだという。重要な観光の対象にもなっていて、他県の地方自治体の視察も絶えない。

とういうわけで、小鉄を連れてライトレール(これが一般的な呼称)にも乗ってみた。始発の停留所にはいきなり人だかり。やがてライトレールがゆっくりとその姿を現す。鉄分(=鉄道マニア度)の低い私ですら魅惑されてしまうカッコいい洗練された車両だ。インテックや富山化学など地元発の有名企業のビルが立ち並ぶ市街地を抜け、緑の多い住宅地に入る。終点は海だ。

乗客の会話から察するに地元の見物客も多く、県外からの観光客と思われる人々も。線路沿いには三脚付のカメラを持った鉄道マニアの方々もチラホラ。昼間は割引で100円になる。ICカードが使えるのだが、みんなワンコインで払っている。

富山市がモデルにし、視察にも訪れたのがフランス東部、ドイツとの国境に位置するストラスブールだ。電車や駅のデザイン性の高さで世界に知られている。私もストラスブールを訪れとき(クリスマスの時期、クリスマス市が有名)、一度だけ乗ったことがある。魅力的なトラムだからこそ、自動車からの乗り換えが進んだのだろう。ストラスブールは街の中心部に大幅な交通規制を敷き、8つの停留所にパークアンドライド(駐車場)を整備した。路線のひとつでは平日の利用者が、市の人口のほぼ6分の1に相当する7500人(平均)に達したという。

人をひきつけるには移動手段としてだけでなく、何よりも乗ること自体を楽しめる必要がある。トラムが市民のあいだに定着するには、デザイン性、乗り心地、便利さ、どれが欠けてもいけないのだろうが、ストラスブールのトラムはそれをしっかりクリアしていた。個人消費主義者のミーハー心をくすぐりつつ、電車に乗ることの価値を底上げしていく。そこにはクルマ至上主義社会を意図的に作っていったのと同じくらいの戦略が必要なのだろう。

もちろん路面電車が現在の問題をすべて解決するわけではない。しかし、個人消費主義の象徴であるクルマとは違って、路面電車には人が再び結び合う公共的なイメージがある。人と人が関わりを持っていた昔を新しい形で再生する。未来のライフスタイルを先導する具体的なイメージ作りは重要だ。ノスタルジーと未来を同時に喚起する強力な武器は他にはない気がする。

■富山のライトレールの写真(富山じゃないみたい…)
http://blog.drecom.jp/manufactured_in_1969/archive/102
http://www.ne.jp/asahi/hamamatsu/seiji/tym_lrt/tanoshim/tanoshim.html

■ストラスブールのトラムの写真(下の方にフォトギャラリー)
http://tramateurs.free.fr/tram_strasbourg/tram_strasbourg.shtml




cyberbloom

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posted by cyberbloom at 11:17| パリ 曇り| Comment(4) | TrackBack(0) | サイバーリテラシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
弊Blogの記事をご紹介下さいまして、ありがとうございます。
中途半端に写真を趣味としている、若干、いや、かなりふざけた
サイトですが、お役に立てて光栄です。
ストラスブールの先進事例を参考にせよ、という学者の声に
対して、どうも僕自身は日本と欧州の文化の違いというのは
どうにも越えられるものではなく、日本のまちづくりにおいて
欧州の事例なんて参考にするのは無理があるだろう、と考えて
おりました。が、富山が実現しました。で、良い方向に向かって
いるように見えます、今のところ。今後が楽しみです。
Posted by Moto-ya at 2006年10月16日 01:51
Moto-yaさん、コメントありがとうございます。本当に渡りに船な写真をありがとうございました。電車一本で街の風景ってこんなに変わるものなんですね。個人的にはパーツにこだわったパンタグラフの写真が好きです。
Posted by cyberbloom at 2006年10月17日 21:21
2日程前、夕方のローカルニュースでも富山のライトレールが紹介されていました。私が見てもMoto-yaさんのBlogで見せていただいた写真と同様、富山じゃないみたいな「かっこよさ」でした。以前にNHKでストラスブールのトラムを取り上げた番組を見て、少々羨ましく感じたことを思い出しました。(特に鉄子さんというわけではありませんが・・・)
堺では三井物産交通システム(株)がフランス ロール社の「トランスロール」を新日鉄 堺の敷地内を試験走行させているそうです。やはり堺東駅前などの交通規制が課題のようですが、私個人としても、長崎の路面電車で体験したゆっくりと流れる車窓からの景色や乗降客のゆったりとした雰囲気みたいなものを新しい形で楽しませてくれるといいなあ、と思います。
Posted by at 2006年10月20日 12:33
先ほど名無しで書き込んでしまいました。申し訳ございません。
Posted by mandoline at 2006年10月20日 12:36
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