2006年11月04日

AIR−THE VIRGIN SUICIDES

ヴァージン・スーサイズエール(AIR)はニコラ・ゴダンNicolas GODINとジャン・ブノワ・ダンケルJean-Benoit DUNCKELによるフランスのユニット。ダフト・パンクとともに、いわゆるフレンチ・エレクトロの旗手として注目を集めた。彼らはベルサイユの生まれ。大学時代にインディ・ロックバンドをやり、大学卒業後も趣味的に音楽活動を続けていたところに、フランスのクラブ系レーベルから声がかかった。

「ベルサイユ生まれ」と「趣味的に」というところがミソである。フレンチ・エレクトロは富裕層の師弟によって担われているという説があるが、基本的にフランスの若者は貧乏なので、自宅にそれなりの機材を揃え、趣味で音楽をやれるのはお金がある証拠なのかもしれない。

この作品は映画のサントラである。THE VIRGIN SUICIDES なんて、耽美的なパンクバンドの名前みたいでかっこよすぎる。THE VIRGIN PRUNES というその手のバンドがいましたね。タイトルだけを聞いて、誰もガーリー映画を想像しないし、こういうサウンドも想像しないだろう。

air01.jpgエールの特徴は、レトロさと未来っぽさが同居していること。フランス語で書かれたものも含め、バイオグラフィーやレビューをいろいろ読んでみたが、みんな70年代とかレトロな雰囲気とか書いている。THE VIRGIN SUICIDES はどう聴いてもピンク・フロイドそのものだろう。1曲目を飾る名曲 Playground love の最初のハモンド・オルガンの深いタッチからすでに来まくっている。ついでにプログレを象徴する楽器、メロトロンも背後で炸裂している。

特に「狂気 The dark side of the moon」。もっと詳しく言えば、Time の終わりの部分(Breathe reprise)から、The great gig in the sky のピアノによる導入部。Playgroud Love にサックスを取り入れたのも Us and them が念頭にあったにちがいない。スーサイズの3曲目の「bathroom girl」なんて、ギターの感じがフランスのフロイドと呼ばれるピュルサー(Pulsar)そっくり。

いや、実はフロイドの「狂気」以上に一つ前のアルバム「雲の影 Obscured by clouds」だ。これはまさにサントラなのだが、「泥まみれの男 Mudmen」という曲がそのまんま(exquiseさん、ぜひ聴き比べてください)。THE VIRGIN SUICIDES は70年代を舞台にした映画なので、サントラを依頼された際に、フロイドの手がけた映画のサントラが真っ先に思い浮かび、聴き込んだのだろう。70年代、ロック、サントラとくれば、確かに思いつく重要な選択肢のひとつだ。そういえば、フロイドが使われているミケランジェロ・アントニオーニの「砂丘 Zabriskie point」をパリで見た。客は私しかいなかった。こういう映画を普通にぶらりと見れてしまうのもパリならではだ。

狂気 Obscured By Clouds

フロイドと似過ぎていると非難しているわけではない。やはりこのテイストはエールなのだ。フロイドっぽい音をやっても、やはり洗練されているし、どこかフューチュリスティック。明らかにハウスを経た音なのだ。オヤジバンドと化している今のピンク・フロイドこそが過去の自己をコピー(再生産)しているコピーバンドにすぎない(それでも昔のナンバーを演られると目頭が熱くなりますが…)。音に向かうあくなき実験精神とサイケ(トリップ感覚)。それがフロイドの本質だとすれば、エールの方がフロイド以上にフロイドなのだ。

友人のK氏によるとフランスのプログレファンは圧倒的にフロイド派が多いのだそうだ。日本はどちらかというとクリムゾン派が多い。その理由を論じてみたいと言っていた。フロイドの本質は「実験精神とサイケ」と書いたが、基本構造を見ればブルージーなポップロック。「狂気」がアメリカで長期間に渡って売れ続けた理由でもあるが、フランス人の好みは意外にアメリカ人に近いのかも。

本題に戻ろう。以前、ダフト・パンクのレビューでも書いたが、フレンチ・エレクトロは耳の肥えたリスナーの音楽だ。英米系のグループにような主流の音楽を作り出せないにしても、それらを聞き込み、多種多様な音源に精通しているコレクターの音楽なのだ。何よりもリミックスという過程に才能を発揮する。これは世界的に活躍する日本のミュージシャンとも共通する要素だ。

ソフィア・コッポラ監督の映画の方はexquiseさんの記事を参考にしてください。写真がキレイです。

音楽で観る映画(5)−「ヴァージン・スーサイズ」(by exquise)

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posted by cyberbloom at 20:10| パリ ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | サイバーリテラシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
早速 Mudmen を聴いてみました。たしかにエールに通じるところがあるかもしれませんね〜。私はアンビエント・テクノとかダウンテンポ系にルーツを感じていたので、この方面はなかなか新鮮です。

エールの人たちがどんな音を聴いているのか、あまり情報はないのですが、彼らが作ったコンピレーション(http://latenighttales.co.uk/  Airと表示されるジャケットをクリックしてください)は参考になるかも。ジャパンやキュアーや先日ご紹介したロバート・ワイアットまで入っていて、私には楽しい選曲です。

ところで片割れのジャン=ブノワ君がソロアルバム Darkel を発売しました。こちらも早く聴いてみたいです。
Posted by exquise at 2006年11月07日 01:12
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