
音楽以外にもジュエリーやカジュアルウェアのデザインを手がけ、多彩なスタートして知られるファレル。ルイ・ヴィトンとは、パーティで演奏したり、日本のファッションデザイナーNIGOと共同でアイウェアをデザインするなど関わりはありましたが、最低2000ドルは下らない最高級のアクセサリーを発表するとは。驚天動地、とまではいきませんが衝撃的なニュースです。
マーク・ジェイコブスのクリエイティヴ・ディレクター就任後、ルイ・ヴィトンは確かに「冒険」を続けてきました。例えば、村上隆を初めとする現代美術のアーティストとのコラボレーション。今話題の女優を国籍を問わず起用する広告キャンペーン(「ヴェルサーチのきわどいドレス」で有名になったジェニファー・ロペス含む)。ゴルバチョフ等非ファッション界の有名人を使った広告も記憶に新しいところです。これまでの保守的なおハイソイメージに揺さぶりをかけ、ポップでリアルな「今」のブランドへ世間の抱くブランドイメージを改めさせる、有効な戦略といえます。しかし、今回の「冒険」は、これまでのチャレンジに比較して格段の重みがあります。本流のファッション業界の旗頭である老舗が、亜流とみなされてきたアメリカのヒップホップ・ファッションを公に認めたことになるからです。
ラップが世界のヒットチャートに食い込むようになってから、ビデオクリップに登場するラッパー達のファッションは時に音楽以上に世間の注目を集めてきました。スポーツブランドのアイテム等、デザインが主張しない出来合いのアイテムを組み合わせたストリート流の着こなしと、成功の証として誂えたbling-bling(ギンギラ)なアクセサリーの悪趣味寸前なコンビネーションは、従来のファッション業界にとって思いもつかない、インパクトのあるものでした。また、「人と違う常識破りのスタイル」をラッパー達が競ったおかげで、ヒップホップ界のファッションから、これまでの常識やトレンドをひっくり返す発想も生まれました。例えば、毛皮への執着。動物愛護の観点から野暮の象徴とされていた毛皮を着倒し、ティファニーのギフトボックスのような青やスニーカーとお揃いの赤に染めてみたり、スリーブレスのフーデッドパーカなど毛皮である必然性がないものわざわざ毛皮であつらえたり。ヒップホップ界のスター達が立ち上げたファッション・レーベル(パフ・ディディのSean John、ジェイ・ZのRocawear等)は、業界も無視できないほどの売り上げと人気を誇っています。
今や世界レベルのトレンドでヒップホップの要素は欠かせないものとなっており、程度に差こそあれ、ファッションブランドは何らかの形で意識し、また取り入れざるを得ない状況にあります。スポーツウェアブランドの格上げや、それを意識したデザインの登場はもちろんのこと、ヒップホップ・ファッションを表面的にいただいたりつまみ食いしたようなデザインは今やそう珍しい物でなくなりました。しかし、ヒップホップ界のファッションと本流のファッションとは依然として住み分けされています。地位と名誉を手にしそれなりの洗練を求められるようになったヒップホップ界のスターたちも、オーダーメイドで自分のテイストを誇示するか、自分好みのビッグ・メゾンの商品を取り入れる程度で、ファッション業界とヒップホップの世界との表立った提携はありませんでした。そうした状況で、ファレル・ウィリアムズのデザインによるジュエリーが、フランスを代表するビッグ・メゾンであるルイ・ヴィトンから発表されることはいろいろな意味で大きな一歩と言えます。
□Pharrell Williams×Louis Vuitton =“Blason”Jewelry
(CM from youtube)
GOYAAKOD@ファション通信NY-PARIS

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