そこで18日からスウェーデンのイエテボリで世界選手権が開催されるにあたって、注目すべき選手を何人か挙げて・・・と行きたいところ、そういう企画はいろんなところでされているでしょうから、ここでは今季使用されている音楽に着目してみたいと思います。フィギュアスケートの音楽、というとチャイコフスキーやラフマニノフといったクラシックの名曲や、「タイタニック」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のようなドラマ性のある大ヒット映画のサントラが定番なのですが、ここではそういった路線からちょっとはずれた音楽を取り上げてみましょう。
まずは最初に行われるショート・プログラムから。
使用曲(選手名、国籍)
"Mélodie en Crépuscule" and "Gypsy Swing" by Django Reinhardt (Tomas VERNER, CZE)

昨年あたりから急速に成長してきたチェコの若手トマシュ・ベルネルが選んだのは、何とジャンゴ・ラインハルトの「たそがれのメロディー」と「ジプシー・スウィング」です。ジャンゴ・ラインハルトのギターはルイ・マルの「ルシアンの青春」の冒頭に流れる「マイナー・スウィング」が有名ですが、ほかにも多くの映画に使われていて、この曲は「革命の子供たち」という映画のサントラから、ということになっています。振付も個性的で、軽快なギターにのって繰り出される力強いジャンプと陽気なスケーティングは見ていてとても楽しい。あの渋いジャズの名曲が若々しい彼にピッタリというのは意外な発見です。
"La Valse D'Amélie" by Yann Tiersen
"Belleville Rendez-Vous" by Ben Charest (Kristoffer BERNTSSON, SWE)
映画「アメリ」と「ベルヴィル・ランデヴー」というフランス映画のサントラを選んだのはスウェーデンのクリストファー・ベルントソン。あのおなじみのワルツに合わせて寸劇を演じているかのような楽しいプログラムを披露してくれます。彼はフリー・プログラムでは「サタデー・ナイト・フィーバー」を選ぶなど、エンターテインメント性の強い内容が好きなようです。
"Stairway to Heaven" by Led Zeppelin (Stephen CARRIERE, USA)
弱冠18歳の昨年度世界ジュニアチャンピオン、スティーヴン・キャリエールは彼が生まれる前に作曲されたロックの名曲、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」を選択(ただし、オリジナルではなく Rodrigo y Gabriela という人がスパニッシュ・ギターでカヴァーしたもの)。美しいギターの旋律をそのままをスケーティングに置き換えたかのような繊細な演技が見ものです。彼はアメリカではまだ3番手あたりの選手ですが、スケート技術もすばらしいので2年後のオリンピックでは上位に来そうです。
そして忘れてはならないのが、日本の高橋大輔選手。チャイコフスキーの「白鳥の湖」という王道中の王道の音楽をヒップホップ調にアレンジしたもの(クラシックの名曲を現代的に味つけする趣向だとか、あのベースラインを聞いているとどうしてもセルジュ・ゲンズブールを思い出してしまいます)で、振付も非常に大胆。今季のベスト・ショート・プログラムだと思います。高橋選手はエキシビションでもビヨークの曲を使うなど、先鋭的な志向が感じられますね。
さてお次はフリー・プログラムから。
"Moments in Love" by Art of Noise (Shawn SAWYER, CAN)
アート・オブ・ノイズは、今から20年ほど前、当時売れっ子だった音楽プロデューサー、トレヴァー・ホーンの仕掛けたテクノ系のグループ。日本ではMr.マリックのBGMに使われているので、聞き覚えのある人も多いのではないでしょうか。ビートのきいた音楽を背景にカナダのショーン・ソーヤーが、非常に柔軟性のあるスケートを見せてくれます。男子ではあまり見られない I 字スパイラルやスピンはお見逃しなく。彼はショート・プログラムではピンク・フロイドの "Another Brick in the Wall" を使うなど面白い選曲をしています。"Ararat (soundtrack)" by Michael Danna (Jeffrey BUTTLE, CAN)
その甘いマスクで女子に人気のジェフリー・バトルが昨季から使用しているのが、アトム・エゴヤン監督の映画「アララトの聖母」のサウンドトラック。アルメニアの歴史的悲劇を主題にした映画だけあって、音楽もオリエンタルかつ荘厳。抽象的ともいえる難解なこの曲を定評あるスケーティングで美しく表現しています。
"Poeta (Flamenco)" by Vicente Amigo (Stephane LAMBIEL, SUI)最後は実力者スイスのステファン・ランビエールがこれも昨季から用いているフラメンコ曲。トリノ・オリンピック以降不調だった彼が、昨年この曲で復帰してきたとき、ジャンプの失敗があったにもかかわらず会場はその熱い演技に魅了されました。だんだんと盛り上がっていく音楽と並行して彼のスケートも次第に激しくなっていき、終盤の情熱的なステップへとつながる構成もすばらしく、音楽がうまく活かされたプログラムだと思います。
男子シングルは21日(ショート)、22日(フリー)に行われる予定。ここでご紹介した選手の演技が地上波で全員放送されればいいなあと思っています(日本のテレビはどうしても日本選手中心の放送になってしまうのが残念・・)。ほかの種目や選手についても、演技とともに音楽にもぜひご注目ください。
exquise@extra ordinary #2
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