数日前,或は数ヶ月前に店頭で見かけた商品をいざ購入しようと店舗へ向かったものの,いつのまにか在庫切れになっていたという経験は誰にでもあるだろう.
当然,「あのとき買っておけば」と落胆する.
消費社会における喜怒哀楽.
出版において,古典と位置づけられる著作も,そうした流通サイクルと決して無関係に存在するわけではない.もちろん,岩波文庫や新潮文庫の刊行リストから夏目漱石の「こころ」や「我輩は猫である」といった作品が外れることはないだろう.
しかし,一般的に代表作とみなされるタイトル以外は,常時,増刷されるわけではなく,在庫切れとなる場合も多い.
というわけでクラシックなものでさえ,うたかたな消費社会と無縁ではないわけだが,先日書店に立ち寄ると,夏目漱石のマイナーなタイトルが充実していることに気が付いた.
岩波文庫で,文学論(上,下),文明論集,日記,書簡集,俳句集と並ぶ.
そこで以前より気になっていた俳句集を購入する.
滑稽な句もあれば叙情的なものもある.
例えば,いささか時候にそぐわぬが「貧といえど酒飲みやすし君が春」
同感である.
また「春の夜の雲に濡らすや洗ひ髪」
色っぽい.
私事になるが,寝る前に俳句を読むと,眠りへの入りが極めてスムーズであることを発見した.
基本的に眠れなくて困るということはほとんどないのだが,枕許で俳句を読むと,まさに「落ちる」という感覚と共に眠ってしまうのだ.
リズムのせいだろうか.
いずれにせよ,寝る前に小説を読む場合とは,感覚は全く異質である.
キャベツ頭の男@どうってことない風景
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