すでに最終週となってしまったが,3月26日よりポンピドゥー・センターで吉田喜重のレトロスペクティブが行われている.「エロス+虐殺」,「煉獄エロイカ」,「戒厳令」.魅力的なタイトルが並ぶ.
長い間ずっと興味を持っているものの,吉田喜重の作品で観たことがあるのは65年の「水で書かれた物語」と2003年の「鏡の女たち」のみ.
この2つの作品.
40年近い時差があるが,共に作品の冒頭,画面は人気のない通りを日傘を傾けて歩く岡田茉莉子を執拗に映し出していたように思う.
例えば,夏の日に喫茶店で無為に時を過ごす.目の前に置かれたアイスコーヒーの透明な氷が音を立てて崩れる.
ふと外に目をやると,日傘を傾けた女の人が通り過ぎる.
そうした瞬間,いつも吉田喜重の映画のことを思い出してしまうから不思議だ.
吉田喜重は,あるインタヴューで小津安二郎の「父ありき」について,ストーリーは忘れてしまったが,父と子が渓流で流し釣をしているショットのみ記憶に残っていると語っているが,吉田喜重の作品も,時に物語性を排除してしまうほどの,強い断片の美学によって支えられているのではないだろうか.
キャベツ頭の男@どうってことない風景
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