2011年01月19日

Radiohead "OK Computer"

当サイト管理人さまに言われた締切りをひと月も過ぎてしまい、さらには2011年を迎えてしまい誠に恐縮なのですが、わたくしの「2010年のベストCD」を今ごろ挙げさせて頂きます。

OKコンピューター選んだ基準は、「2010年の夜を最も多くの過ごしたお相手」です。それがコレ、Radiohead の "OK Computer"でございます。おぉ我が徹夜仕事のお供、…いや我が心の友よ、くらいの勢いでこのアルバムをエンドレスでかけながら、独りパソコンちゃんに向き合ったあの夜この夜そんな夜…(年が明けてもそれはあまり変わらんが)。

Radiohead が何年のデビューでどういう流れを汲むグループで、とか、これが何枚目のアルバムで、この時代は音作りがなんちゃらだから云々…的な音楽通のコメントはわたしにはできん。とにかく、眠気もピーク、心の荒み具合もピーク、…いまどきノーエアコンの住環境で暑さ寒さもピーク(ちょっぴし生命に危険すら感じるし〜)…そんな極限状態の深夜労働の脳と身体に、コレが効くのだ、沁みるのだ。

このアルバムが出たの1997年。日本では若者の間でピッチ(PHS)がブームで、数十文字のメッセージがカタカナで気軽に送れて「画期的よね♪」ってな時代ですよ、あぁた。インターネットなんてまだまだぜんぜん一般に普及しておらず、「コンピューター」というものに脅威や違和感を感じることができたおそらく最後の(?)時代ですよ。そのせいかどうかは不明ですが、まるで日進月歩のハイテクワールドや電光石火に流れゆく現代人の時間に抗うかのように、このアルバムはどの曲もぜんぜんピコピコっとしていないのだ(*ピコピコ←流行の電子音ばりばりで軽快なテクノポップサウンドのことを差してるつもり)!うーん、タイトルは“OK Computer”なのにぜんぜんコンピューターぽくないっ! だいたい“OK Computer”って意味もよくわかんないけどさ?

いくつかの曲でシャンシャンシャン…と小気味よく入る鈴のような音なんて、こりゃもうローテク感たっぷり(褒めてるんだ!)。わたしゃあ図らずも、保育園のお歌の時間に、「ジングルベール!ジングルベール!…… ほら!みんなが大きな声で歌うからサンタさんのそりが近づいてきましやよぉおぉお!!」と保母さんがハイテンションに声を張り上げて、自らの背後に回した手に隠し持った鈴を必死こいてシャンシャン振っていたのを思いだしたよ(クラスメートの半分以上は気がついてたんだよ、せんせ…)。いやぁ、こんな音を秋以降に聴いちゃったら、ちょっとしたクリスマスソング気分だわね。特に5曲目の Let down なんか、シャンシャンと優しく繰り返される音が、まるで街にしんしんと降りつもる雪のよう。やーん、ラブリーちゃんとのハッピーなホワイトクリスマスのデート気分を(殺風景な仕事部屋で)イリュージョンして独り遊びしちゃうぅぅぅ〜。

…しかしながら、ひとたび歌詞に耳を傾けてみると、けっこうイメージが違うのである。アルバム全体の流れとしては、おおまかに 【1. 世界への違和感・慟哭】 「たすけてくれ〜!オラぁもうだめだ〜!」→ 【2.やけくそモード】 「いーよいーよ。もぅ落ちるとこまで落ちますから」→ 【3.諦念・悟り】 「だけどオレら、なんとかかんとかこんな世の中やり過ごすんだよね」…である(わたしの解釈は間違っているかもしれんが、そんなことは知らん)。これを一晩中ノンストップで部屋中に響かせてご覧なさいよ。もう脳みそが眠ってる暇なんかないですよ。お蔭で、2010年もなんとかかんとか期限に間に合わせて仕事に勤しむことができました(この原稿は大幅に遅れてしまいましたが…)。

さて、どうでもいい話でここまでスペースを取ってしまったが、最後にひとこと言わせてほしい(←こういうことを言う奴は、だいたいひとことじゃ済まないんだぜ)。

わたしはトム・ヨークの声が好きだ。あの絞るような、ちょっと普通の精神状態すれすれな感じの危うい声がたまらん。痛みや官能に不意をうたれてつい出てしまった声や、無垢な赤ん坊がこちらの予想外にあげる歓喜の声なんかに共通する、一種のエロティックさを感じてしまう。三省堂神保町店の音楽本コーナーに行くたびに、ひそかに『トム・ヨーク すべてを見通す目』(シンコーミュージック刊)をぱらぱらしては買おうかどうか悩んでいることもここに告白しちゃうぜ。

…そして、トム・ヨークに思いを馳せるときにきまって蘇ってくる。当サイトの「2009年のベストCD」企画で、ロリー・ギャラガー賛を寄稿した奈落亭凡百がわたしにくれたメールが…(おうおう!やっぱりひとことじゃ済んでねえよ)。

奈落亭凡百は、音楽ど素人のわたしをバンドの世界に引きずり込み、絶叫アメーバ系(?)ボーカリストにしたてあげた人物である。怪人とも渾名されたドラマーであった彼は、いつもその個性的なすっとこビートで超ビビリな性格のわたしをうまいこと高揚させ、ライヴの間じゅう背中を押してくれたものだ。ぼろぼろに疲れきった肉体を抱えた癌闘病の末期も、ほぼ毎月のペースでライヴに出演していた愛すべき音楽狂いであった。2009年初秋のこと、当時はRadioheadの"In Rainbows"ばかり夜中にエンドレスで聴いていたわたしに奈落亭はこうメールをしてきた。

「トムはチビでヤセだけど、印税のせいか、すごくオシャレなの。歌詞はみんなトムが書いているから… 貴女も、ソングライターなどおやりになるがよろし…貴女のことばには拍動があるよ」

嬉しかった。奈落亭もおなじく Radiohead が好きだった。そして我々のバンドの全ての曲は彼が歌詞を書いていた。

2010年5月、彼は逝ってしまった。生前に一度も歌詞を書いて見せなかったことが悔やまれる。あのメールの前も後も、なんども歌詞を書くように言われていたのに…。

目下、奈落亭最後のバンドで共に活動してきたギタリストと新ユニットの準備をしている。
「あたしチビでもヤセでもないし、印税も入んないし、トムみたいにエロスたっぷりの声も出ないけど、いまは全部の歌詞を書いてるのよぉー」時どき、そんな届かぬことばをつい虚空に呟いてしまう。

…なんちゅう、おセンチモードにもしてくれるのが、わたしの「2010年のベストCD」“OK Computer”である。




Mlle.Amie

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2011年01月11日

2010年の映画 『こまどり姉妹がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』

2010年の日本映画は、東京基準より1年遅れとなるが、片岡映子の『こまどり姉妹がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』を1番に挙げたい(大阪では10年にならないと見ることができなかった)。これは、こまどり姉妹の歴史を映像でたどりながら、その合間合間に現在の二人のインタビューが挿まれるドキュメントなのだが、テレビでその姿を見かけなくなって久しい姉妹の今を知るとともに、「こまどり姉妹」とは何であったのかを知らしめてくれる、昭和世代の人間にとっては、非常に興味深い映画であった。

komadori01.jpg姉妹の芸能界デビューは1959年(昭和34年)。最初は浅草姉妹という芸名で、「こまどり」姉妹(鳥の名前が取られているのは、美空ひばりからの連想)となるのは、翌60年のことである。筆者もこの頃は幼くて、さすがにデビュー当時の姉妹のことは知らないが、その後、大きくなるにつれてテレビで二人の姿をよく見かけるようになった、と言うよりも、親がテレビをつけるといつも歌っていたと言った方が正確かもしれない。もちろん、他にも橋幸夫(1960年デビュー)や仲宗根美樹(同)といった歌手もいたはずなのだが、何故か記憶に残っているのは、こまどり姉妹なのである。どうしてだろうか。親がファンだったから。もちろんその可能性は否定できないが、さらに親の世代(1930年前後生まれの世代)が、世代として支持したからと言いたい。それをこの作品は教えてくれる。

釧路の貧しい炭鉱夫の家庭に生まれた双子の姉妹は、門付けをして歩く母親の後をついて回り、やがて子供ながらに歌うようになる。そして、13歳で上京(1951年)、21歳でレコード・デビューをはたし、その後は紅白にまで出場する人気歌手となる。この略歴を見てわかると思うが、二人のメジャー化の軌跡は日本の高度経済成長の過程とほとんど重なっているのである。貧しいときは、貧しい生活の歌を歌い。生活に余裕が出てからは、それをまた歌のテーマとする。こまどり姉妹とは、日本の経済成長を地で行くデュオだったのである。しかもそれをメロディーに乗せて歌い続けていたのである。ここに、私の親たちの世代がこまどり姉妹を聞き続けた(支持し続けた)理由があったのだということを、片岡の作品は教えてくれる。

映画は、二人の昔の写真や記録フィルムを映し出すだけでなく、その時代、時代の彼女たちの持ち歌を聞かせてくれるのだから、高度成長する日本とともに育った世代の人間にはたまらないノスタルジーである。ましてや、今のおじいちゃん、おばあちゃんの世代においては、こうした感傷はなおさらのことであろう。作品の枠としては、1組の芸能人の軌跡を追うことによって、そこに当時の日本の姿を浮かび上がらせるという形式が取られているのだが、この映画は人間の創造行為が時代の流れとは切り離せない営為であったことをひしひしと感じさせてくれる作品であった。

人の営為が時代を作り出してゆくという意味においては、年末に封切られたミヒャエル・ハネケの『白いリボン』(2009年、ドイツ/オーストリア他)は、両大戦間のドイツのある村で起こった不可思議な事件(農夫の妻の死、村医者の事故、少年の虐待など)を描いて、それらの事件が来るべき次の時代(ナチスの時代)を準備するものであったということを描き出す秀作であった。

劇中で次々と事件が起こるその村は、一見ミス・マープルの登場しないセント・メアリーミードを思わせてのどかなのだが、ハネケはいつもの通り、それらの事件に解決を与えるつもりは毛頭なく、映画はカフカの作品世界を思わせて幕を閉じる。

ハネケを未発見の人にぜひ見ていただきたい1本である。




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2010年12月30日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(4) 2010年の重大ニュース

■1月27日のサリンジャーの訃報には、文学史的にはすでに故人になっていた作家が公式に亡くなった、という思いを抱きました。大学の仕事で、朝鮮籍の学生がフランスの入国ヴィザを取得できないことを知り、国家と個人の関係について、あらためて考えさせられたのも、大きな事件でした。個人的には、9月にパリで友人と会ったとき、フランス留学時代に知り合いだったアルゼンチン人学生が、大学寮にわざわざ戻ってきて飛び降り自殺したという話を聞いたのが、大変ショックでした。彼はベンヤミンの研究中でした。身近なところで起きた死は、いつも自分が生きていることの意味を問い直すきっかけになります。
(bird dog)

■頭の片隅にずっと残り続けているのは、ハイチのことです。エドウィジ・ダンディカが今は亡き父と叔父について書いた本を読む機会があり、地震前のハイチが背負っていた気の遠くなるような現実には頭を抱えたくなりました。ゼロに近いことしかできませんが、遠くから見守りたいと思っています。
(GOYAAKOD)

■サッカー日本代表のW杯ベスト16進出は、日本サッカー界にとって中長期的な観点からもたいへん意義深かったと思います。日本サッカー協会が中心となって、1980年代から本格的に「国際化」を目指した日本サッカー界は、

1993年:Jリーグ発足
1996年:28年ぶりのアトランタ五輪出場
1998年:フランスW杯初出場(3敗)
2000年:シドニー五輪ベスト8
2002年:W杯自国開催&ベスト16進出(2勝1分1敗)
2006年:W杯3大会連続出場(1分2敗)
2010年:W杯他国開催で初のベスト16(2勝2分(PK負けを含む)1敗)

と、着々とステップアップを続けています。世界的にみてもこれほど強化が順調に進んでいる国は稀であった&あるといえるでしょう。「坂の上の雲=W杯優勝?」まではまだまだ時間がかかるかもしれませんが、来年度以降も地道に日本サッカー界を応援していきたいとところです…。
(superlight)

■今年気になったのはやはり中国の台頭。フランスのニュースにも中国が話題に上ることが多くなった。2009年にフランスを訪れた中国人観光客による現地での買物額はロシア人観光客を上回り、フランスでの「ショッピング王」の座に輝いた。フランスのブランド品を買い漁り、ボルドーのシャトーを買収するのは、経済的な勢いのバロメーター。それはまさに80年代の日本の姿だ。
■1月末に、中国人がボルドーワインの蔵元を次々と買収しているというニュースを紹介した。ワインだけでなく、高級な肉や魚の旺盛な消費を牽引するのは、中国都市部に住む中産階層の人々。現在、約3億人に達し、年700-800万人のペースで増えている。今や世界経済はこれらの人々の消費に支えられている。
■フランス国内に目を向けると、パリだけで50万人の中国人が住んでいる。彼らは徐々に同化し、移民の第1世代に比べると経済活動も多様化している。第2世代の若者たちはフランスで生まれ、彼らはコンプレクスも持っていない。親の世代は中華料理の総菜屋だったが、2代目になると教育をきちんと受け、しかるべき仕事についている。公務員もいるし、プログラマーもいるし、ファション関係の仕事をしている者もいる。
■1年半前からパリの不動産に明らかな傾向がある。中国人の資金が入ってきている。中国人は最近では高級住宅街で知られる16区の建物にも興味を示し、ボナパルト一族所有の建物が香港のホテル経営者によって買収された。ニュースの映像を見る限りでは「シャングリラ」のようだ。現在ホテルに改装中だが、買収と改装の費用の総額は1500万ユーロ(約20億円)。108の部屋、35のスイートルーム。3つのフランス料理と中国料理のレストランが入る。中国本土でも中国人はますますお金持ちになり、フランスに旅行に来る。彼らを迎え入れるホテルを作っているわけだ。
■中仏両国は昨年12月、サルコジ仏大統領がチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したことに中国側が反発し、関係が急速に悪化したが、中国はその後も「フランス無視」を続けてきた。しかし、今年4月初めの金融サミット(G20)で中仏外務省が共同で 「フランスはいかなる形式でもチベット独立を支持しない」という声明を発表、同日晩に首脳会談が実現した。11月にはフランスに国賓として招かれた中国の胡錦濤国家主席がサルコジ大統領と会談し、旅客機や原発分野などで巨額の売買契約に合意した。総額を約160億ユーロ(約1兆8千億円)と見積もられている。最大の契約は、エアバス社の旅客機102 機(総額約98億ユーロ相当)の売買。また、仏エネルギー大手アレバが今後10年間で、中国の電力大手に計2万トン(約25億ユーロ相当)のウラン燃料を供与することでも合意した。
(cyberbloom)

T.サルコジ、ピンチか?! ドミニク・ドヴィルパン前首相に無罪判決!
■1月28日、クリアストリーム事件に絡んで虚偽告発などの罪で訴追されていたドミニク・ドヴィルパン前首相に対して、パリの軽罪裁判所が無罪を言い渡しました。ドヴィルパン前首相は、1991年にフランスが台湾に売却したラ・ファイエット級フリゲート艦(台湾海軍の名称では康定級フリゲート艦)にからむ収賄疑惑で、当時彼の最大のライバルで、与党・国民運動連合(UMP)内部で2007年の大統領選挙における有力候補と目されていたサルコジ財務・経済大臣(当時)が関わっているかのように装い、サルコジ氏を失脚させようとした疑いがかけられていました。
■この事件は、台湾へのフリゲート艦売却に関して、一部の政治家が受注した企業から仲介手数料を受け取り、それをルクセンブルクに本店を置くクリアストリーム銀行の隠し口座に預けていたのではないかという疑惑をめぐり、2004年7月に、クリアストリーム銀行に隠し口座を持つとされるフランスの政治家のリストを含んだ匿名の告発状が、捜査を担当していた予審判事に提出されたことがそもそもの発端でした。そのリストにはサルコジのみならず、野党・社会党の大物政治家であるドミニク・ストロス=カーンなど与野党の有力政治家の名前があったのですが、捜査の結果隠し口座は発見されず、このリストは偽物だという結論が出されました。
■ところが2006年に、当時シラク大統領の下で首相を務めていたドヴィルパンが、04年に告発状が提出された際に、諜報機関・対外治安総局(DGSE)の局長であったフィリップ・ロンド将軍を呼び、リストに関する調査、特にサルコジ氏に関する調査を密かに行わせていたことがロンド将軍の証言から明らかとなったのです。さらにロンド将軍は、サルコジにあまり良い感情を持っていないとされたシラク大統領も同様の調査を依頼していたと証言したことから、ドヴィルパンとシラクというフランスのツートップが揃ってサルコジの失脚を企んでいたのではないか、という疑惑が持ち上がりました。このロンド将軍の証言に加え、告発状を提出した人物がエアバスなどを傘下に持つ航空・宇宙関係の大手企業、欧州航空防衛宇宙会社(EADS)のジャン=ルイ・ジェルゴラン副社長であると明らかになったことも、ドヴィルパンを窮地に追い込みました。なぜならジェルゴラン副社長はドヴィルパンと親しい関係にあり、さらに告発状と共に提出されたリストは、ジョルゴランが偽造した物であったことが判明したのです。このためドヴィルパンは、偽造リストの情報を得ると諜報機関に依頼してサルコジを捜査し、さらにはそのリストを公開することでサルコジの失脚を図ったと疑われてしまったのです。
■しかし、今回こうして無罪判決が出されたことにより、一応はドヴィルパンの無罪が明らかになったわけです。検察が翌日に控訴したため、まだまだ予断を許さない状況ではありますが、この無罪判決は2012年の大統領選挙で再選を目指すサルコジ大統領にとって、大きな脅威となりそうです。現にドヴィルパン氏は、新政党「共和国連帯」を立ち上げるなど既に大統領選挙を視野に活動を始めていて、5月に行われた一部の世論調査ではサルコジ大統領の支持率が38%だったのに対してドヴィルパン氏の支持率は57%と、不人気が噂されるサルコジ大統領の支持率を大きく上回りました。サルコジ大統領も脅威を感じているのでしょうか。11月に実施されたフィヨン内閣の改造では、野党・社会党からの入閣で注目を集めたベルナール・クシュネル外相や、中道派のジャン=ルイ・ボルロー氏が外され、シラク大統領派の大物であるアラン・ジュペ元首相が国防大臣に就任するなど、サルコジ大統領がかつてドヴィルパン氏と考えを同じくしていたシラク派(シラキアン)の懐柔・取りまとめに懸命な様子がうかがえます。
■しかし、支持率があまり芳しくなく、2012年の大統領選挙での再選は難しいとも言われるサルコジ大統領にとってドヴィルパン氏は意外な強敵となるかもしれません。2007年の大統領選挙では、第1回投票で与党のUMPでも、最大野党の社会党でもない中道派の第三政党・フランス民主連合(UDF)のフランソワ・バイル党首が、UMPにも社会党にも飽き足らない層の得票をつかみ、意外な健闘を見せたのは記憶に新しいところですが、ドヴィルパン氏も「第二のバイル」的な存在になるかもしれません。来年以降も、ドヴィルパン氏の動向から目が離せません。

U.劉暁波氏がノーベル平和賞受賞、フランスはしたたかな外交を見せる
■10月8日、今年度のノーベル平和賞の選考を行っていたノルウェーのノーベル賞委員会は、中国の民主主義運動活動家である劉暁波氏に対して平和賞を授与することを発表しました。
■劉氏は現在、「国家政権転覆扇動罪」という罪で有罪判決を受けて投獄されており、現在の中国共産党政府からすれば「民主主義を主張することによって、共産党政権を転覆させようとした犯罪者」というわけです。そのため中国政府は、劉氏が候補となった時点からノルウェー政府に対して圧力をかけていたのですが、委員会がそれを事実上無視して授賞を決めると猛反発、ノルウェー政府に対して猛烈に抗議・批判したほか、あらゆる方面で事実上の報復と思われる措置をとっています。変わったところでは、10月30日に中国の海南島で開催されたミス・ワールドのコンテストで、中国側から選考委員に対して「ミス・ノルウェーは低い点に抑えるように」という露骨な圧力がかけられたという話もあります。
■また、中国政府は授賞式に劉氏本人はもちろんのこと、公安当局に命じて妻である劉霞氏が住む自宅の周りに厳しい規制線を張ったり、電話回線を遮断するなど劉霞氏が外部と接触できないような状況に置いたほか、日本やフランスを含む各国に外交ルートを通じて授賞式に出席しないよう求めました。この欠席要求に対しては、ヴェトナムやロシアなど17カ国が応じました。わが日本政府はというと迷いに迷ったあげく、ノルウェー側が出欠を知らせなければならない期限に指定していた11月15日が来ても結論が出ず、その2日後の17日に、ようやく城田安紀夫・駐ノルウェー大使が政府代表として出席することで決着させました。日本からはこの他に、中国の民主化運動を独自に支援し、劉霞氏や支援者による人選で劉氏の「友人」として招待された民主党の牧野聖修衆議院議員が出席しましたが、菅総理大臣など首脳・閣僚クラスは1人も出席しませんでした。その一方で、フランスはこの欠席要求を一蹴する形で11月9日にサルコジ大統領本人が出席することを発表、予定は変更されることなく大統領が出席しました。フランスは、特にサルコジ政権になってから中国とビジネス・商業分野で関係を深めていて、特にこの時は、大統領の出席が発表された前週に胡錦濤国家主席が訪仏し、エアバス機102機の売却を筆頭とする総額約200億ドル(約1兆6000億 円)の契約を結んだばかりだったこともあって出欠が注目されていました。
■迷いに迷ったあげく総理大臣などの首脳クラスが出席せず、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件などとあわせて「中国に対して遠慮している」、「中国の顔色をうかがっている」と批判される今の日本政府。その一方で、巨額のビジネスを成立させた直後、普通ならビジネスへの悪影響を恐れても不思議ではない状況でも平然と大統領の出席を決めたフランス政府。今の日仏両国の外交スキルの差、特にフランスのしたたかさが明らかになった瞬間だったように思われます。

V.イギリスのウィリアム王子結婚へ!
■11月16日、イギリスのチャールズ皇太子(王太子)の長男であるウィリアム王子が、かねてより交際が噂されていたケイト・ミドルトンさんと2011年に結婚する予定であることがクラレンス・ハウス(ウェールズ大公チャールズの公邸)から発表された。
■ウィリアム王子自身はフランスとはあまり縁がないのですが、彼の母でチャールズ皇太子の前妻であるダイアナ妃はフランスと浅からぬ縁があることはよく知られています。チャールズ皇太子と離婚してからほぼ1年後の1997年8月31日、ダイアナ妃はパリで、当時の恋人で当時イギリスの老舗百貨店・ハロッズのオーナーだったモハメド・アルファイド氏(エジプト系イギリス人)の息子であるドディ・アルファイド氏と共に交通事故に遭い、36歳の若さで帰らぬ人となりました。アルファイド氏と共に乗車していたハイヤーがパパラッチに追跡され、その追跡を振り切ろうとした際の事故だったと言われています。当時、イギリス国内のみならず世界中で人気のあった「永遠のプリンセス」の急死は、世界中に大きな衝撃を与えると共に、この事故をきっかけに有名人を執拗に追いかけるパパラッチに対して強い批判が集まったことや、バッキンガム宮殿に半旗が掲げられないことから「王室はダイアナの死を悼んでない。」との非難が上がり、当時の世論調査で王室廃止賛成派が反対・存続派を上回ったことは有名な話です。
■あれから12年余り、ウィリアム王子は弟のヘンリー王子と共に成長し、今ではチャールズ皇太子を上回る人気があります。チャールズ皇太子のカミラ現夫人との結婚も大きな要因とされていますが、何と言っても彼の顔、最近でこそ髪の毛が若干後退してきていますが、彼の顔に残るダイアナ妃の面影も、彼の人気の1つの要因でしょう。さらに、この結婚報道を機にウィリアム王子(さらにはケイトさんも含めて)に対する人望は高まっているようで、イギリスの新聞「サンデー・タイムズ」が行った世論調査の結果によると、調査に答えた人の56%が「次期国王はチャールズ皇太子ではなく、ウィリアム王子がふさわしい。」と考えているとのことだそうです。ダイアナ妃の死で批判を浴び、何とかカミラ夫人と再婚にこぎ着けたものの、国民からあまり良く思われていないチャールズ皇太子や、本来であればチャールズ皇太子(ウェールズ公)の夫人であるので「ウェールズ公夫人(プリンセス・オブ・ウェールズ)」という称号を名乗れるはずのところを、国民感情に配慮して別の称号「コーンウォール公爵夫人」を名乗らざるをえなかったカミラ夫人とは対照的な印象です。
■ウィリアム王子&ケイトさんカップルの動向には、今後とも目が離せません。それにしても、どうもチャールズ皇太子夫妻は再婚後不運なのでしょうか?先日(12月9日)には観劇に向かっていたチャールズ皇太子&カミラ夫妻が乗る専用車が、大学の学費値上げに反対するデモ隊の一部と遭遇し、暴徒化したデモ参加者によって襲われたそうです。幸い夫妻にケガは無かったものの、2人の結婚式の際にも使用された専用車は窓ガラスを割られたりペンキをかけられたりで散々な有様だったそうです…お気の毒としか言いようがありません。
(Jardin)



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2010年12月27日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(3) 2010年のベスト本

『意識に直接与えられているものについての試論』
意識に直接与えられているものについての試論 (新訳ベルクソン全集(第1巻))■今年、本当に驚かされた一冊は竹内信夫訳ベルグソン『意識に直接与えられているものについての試論』(白水社)である。何と個人全訳による『新訳ベルグソン全集』の第1巻だそうで、全7巻+別刊1の構成になるとのこと。これから恐らく10年くらいに亘って続々と新訳が刊行されることになるのだろう。竹内氏は東京大学教授を務められたフランス文学者であり、マラルメ研究の泰斗として、長く後進の指導に当たって来られた。と同時に、仏教・インド哲学の研究者としても知られ、空海に関する著書もある。その竹内氏が、今度はベルグソンの個人全訳に挑むというから驚かされない訳には行かない。実は竹内氏は遥か昔からベルグソンを愛読していたそうで、この仕事は彼の集大成になるのかもしれない。まさに彼ならではの翻訳が生み出されて行くと思われ、いまから全集の完成が期待される。
(不知火検校)

■今年もいろんな本を読みましたが、ウェルギリウスとかジョイスとか、古典的な書物が大半です。比較的新しい本では、ヴィクトル・ペレーヴィン『チャパーエフと空虚』とオルガ・トカルチュク『昼の家、夜の家』が印象的でした。前者はソ連創成期のロシアとソ連崩壊後のロシアを時空を超えて繋げたうえで、そのすべてが妄想=フィクションであることまで見せてしまう、現代小説らしい力業です。後者はポーランドの女性作家による、キノコ的エクリチュールとでも呼ぶべき、中心をもたない不思議な小説。ずっと愛読者だった詩人の長田弘さんと仕事でお話する機会を得たことも、嬉しい思い出として付け加えておきます。
(bird dog)

チャパーエフと空虚昼の家、夜の家 (エクス・リブリス)

『天国は水割りの味がする−東京スナック魅酒乱』
天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~■今年も様々な本との出会いがあり、至福のひとときも味わいましたが、今年出版された本の中でお世話になったのがこの一冊。One and Onlyな感度で未知の世界への扉を開く都筑氏(広島での企画展もおもしろかった)ですが、今回はスナックです。ミシュランと銘打たれている通り、48軒ものお店が粋なコメント、写真多数で紹介されていて、ガイドブックとしても十分楽しい(会社四季報よりぶ厚いのが難点ですが)。しかし、都筑氏がカウンター越しに聞き出したマスター、ママ達のとわず語り、昔語りがなんとも酔わせてくれます。スナック開店までのいきさつも本当に様々、「波瀾万丈」という滅多に使いたくない四文字言葉がぴったり。(昔はお酒が全然ダメだった、という人が多いのはオドロキでした。)営業している街の変遷・時代の移ろいが透けて見えるのもおもしろい。何より、この商売を選び毎晩店を開けるマスター、ママの「人が好き」なホスピタリティーが通奏低音になっていて、読んでいる方も相づちうちながらなんだか元気になってしまうのです。これも、あくまで「お客さん」の立場で、でしゃばらず聞き役に徹した都筑氏のいい仕事のおかげかと。
■なんだかやる気がなくて、という時に気に入ったお店、まだあまり「訪問」していないお店の頁をめくってました。しんどい時にはいつでもおいでヨ!っていうこの本のスタンスこそ、スナックそのものでしょうか。カットに使われているオトナの漫画家 小島功の『まぼろしママ』がこれまたいい感じ。
虹色ドロップPlus 1
『虹色ドロップ』
■昨年紹介した夏石鈴子さんのエッセイ・書評をまとめた本がでました。エッセイを読むと、書き手の生活と意見を通じて良くも悪くも書き手に「触れ」てしまうものですが、いろいろあった日々(かなりな事態が進行してゆくのです!)をさらりとユーモラスに綴る文章から、夏石鈴子という心底気持ちのいい人がくっきりと浮かびあがります。読むといつのまにか気持ちがぐっと明るくなる、元気の出る一冊。
(GOYAAKOD)

『フレンチ・パラドックス』
フレンチ・パラドックス■今年最も話題になったフランス関連本のひとつに榊原英資の『フレンチ・パラドックス』が挙げられるだろう。「フレンチ・パラドックス」はもともとフランス人が肉や脂肪をたくさんとっている割には肥満が少なく健康的である医学上の不思議のことを言うらしい。この言葉が最近使われたのは2001年にITバブルが弾けたとき、ほとんどその影響を受けなかったフランスを評するために米『フォーチュン』誌が「フレンチ・パラドックス」というタイトルで特集を組んだ。当時のジョスパン首相は「フランスは今や世界経済の機関車になった」と息巻いていた。
■一方榊原氏の「フレンチ・パラドックス」は大きな政府で、公費負担が大きいのに(さらにあれだけの大規模なデモやストをやってw)なぜ文化的にも経済的にもうまくいっているのか、という経済上の不思議だ。折りしも米の中間選挙で共和党が躍進したが、我々日本人の「小さな政府」信仰は本当に正しいのだろうかと問うている。「ミスター円」と呼ばれた元財務官の「大きな政府」礼賛論なので、多少は割り引く必要があるのかもしれないが、日本とフランスを比較した興味深いデータや指摘も多い。例えば、国が再分配する前の相対貧困率はフランスが24%、日本は16%。市場段階では仏の方が格差が大きい。しかし日本の所得再分配後の貧困率は13%だが、フランスは6%と半分以下になる。日本は市場ベースで欧州の国々よりも貧困率が低いにも関わらず、再配分後にはアメリカに次ぐ最低の貧困国家になる。経営者や金融機関のトレーダーが莫大な報酬を受け取る一方で、その日の食事にも事欠く人々が数千万人もいる国に追随しているわけだ。
COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 01月号 [雑誌]■フランスではGDPの3分の1に相当する4000億ユーロの年間売上高が仏の上位50の大企業に集中している。つまり再編で大型化した企業が国の経済を牽引しているわけだが、政府が出資して発言権を確保しているからこそ、男女差別の禁止や産休制度、企業の保険料の大きな負担など、様々な規制がスムーズに実施できた。そういう大企業は国際競争力が弱いのかと思いきや、最近、日本の高速道路の建設や運営に仏建設最大手ブイグ Bouygues や仏高速道会社エジス Egis が進出しようとしているニュースがあったし、すでに千葉県・手賀沼の浄水事業を水メジャー、ヴェオリア Veolia が受注したり(これに対し石原都知事が「フランスごときが」と発言)、「親方トリコール」企業は海外にも強いことが証明されている。
■社会保障が整備されていない状態で雇用を流動化している日本は、一旦解雇されると裸で放り出されることになり、個人にかかるストレスが非常に大きい。それを見てビビりあがった既得権益者は、既得権益にいっそうしがみつくようになってしまった。それが今の状態で、そうなるとますます変化に対応できなくなる。競争によって効率性を高めるためにも、スムーズな産業転換のためにも社会保障は必要なのだ。フランス社会は低所得者の比率が高く、少し前に森永卓郎氏が言っていた年収300万円時代がとっくに到来している。それでも生活に豊かさが感じられるのは社会保障が充実しているからだ(この豊かさをフランス人の具体的な生活において実証すべく Courrier Japon も特集を組んでいた)。フランスの「やや大きな政府を持ちつつ、子育てと教育に予算を傾斜配分し出生率を高め、国力を伸ばすという戦略」は日本でも可能だと榊原氏は言うのだが。
■榊原氏は今年『日本人はなぜ国際人になれないのか』も上梓。明治以来の翻訳文化が日本人を内向きにしているという議論である。翻訳文化は欧米に追いつけという段階では合理的なシステムだったが、外国に情報発信していくという観点からは弊害になると。
(cyberbloom)




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2010年12月25日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(2) 2010年のベスト映画

■今年の一本、それは若松孝二監督の『キャタピラー』です。ベルリン映画祭で寺島しのぶが主演女優賞を受賞したことでも話題になりましたが、私の関心はむしろ彼女の相手役の演技でした。戦争で四肢をもぎととられたその夫は村の中でお国のために戦った「神」と崇め奉られます。パロルも奪われ、ただ本能のまま生き続ける彼の姿は奇妙な事に「滑稽さ」と「グロテスク」を融合させ、純粋な「狂気」へと昇華されます。パロルから遊離した純粋な身体表現がこれほど衝撃的だったとは!何回も見てみたい映画です。60年代、70年代の若松映画の中の身体表現は私の興味のひとつで、女体だけではなく男の身体表現に於いてもこの問題の映画で完成の域に達しています。もし若松映画に興味を持たれた方は、『ゆけゆけ二度目の処女』(1969)や『犯された白衣』(1967)や『水のないプール』(1982)を是非みて下さい。先日、監督に直接伺った話では、(高齢にもかかわらず)「俺はまだまだ映画を撮るよ。次は三島をテーマにした映画だよ」と豪語していました。私は、彼が映画の中でいかに身体の可能性に挑戦するか、つまり先鋭な身体の皮膚感覚の表現に密かに注目しています。
(里別当)

息もできない [DVD]■今年もいろんな映画を見ました。こちらはほとんどが映画館で見た新作です。このFBNでも何作か感想を述べたので、それは省くと、『息もできない』を挙げたいと思います。暴力が惰性になるのは、人間としていちばん悲しい光景です。リヴァイヴァル上映の『動くな、死ね、甦れ!』も衝撃的でした。とくにラストシーン、こんな映画は見たことがありませんでした。あとは『SRサイタマノラッパー』も、意外に心に残っています。『アンヴィル!』と見比べると面白いかもしれません。
(bird dog)

1.三池崇史『十三人の刺客』
2.クリストファー・ノーラン『インセプション』
3.クリント・イーストウッド『インビクタス―負けざる者たち』
■今年は話題作が目白押し。イーストウッドの上記新作の他、ティム・バートン監督『アリス・イン・ワンダーランド』、リュック・ベッソン監督『アデル―ファラオと復活の秘薬』などのベテラン勢が健在ぶりを示し、ジブリからは米林宏昌監督が『借り暮らしのアリエッティ』でデビューを果たすなど、明るい話題もあった。その一方、邦画は相変わらずテレビ番組からの派生物が多く、竹内美樹監督『のだめカンタービレ最終章(後篇)』、本広克行監督『踊る大捜査線3−やつらを解放せよ!』、波多野貴文監督『SP野望編』などが次々に公開されたが、これらには新しい観客を獲得しようという意気込みが欠けているように思われた。そんな中、フランス映画ではパスカル・ボニツェール監督『華麗なるアリバイ』が久々に見ごたえのある演出を見せてくれたのが嬉しい。さて、本来なら鬼才C・ノーラン監督の最新作『インセプション』が文句なしでBEST1になるべきところなのだが、最終段階で三池崇史監督『十三人の刺客』をどうしても推したい気分になった。実際、これまで挙げた10本の中で最も強烈な印象を受けたもので、とりわけラスト30分以上に亘って続く戦闘シーンは日本映画史の上でも記念碑的なものとして長く語り継がれることになると思われる。
(不知火検校)

インビクタス / 負けざる者たち [DVD]インセプション [DVD]ニューヨーク, アイラブユー [DVD]

”New York, I Love You”
■パリを舞台にしたオムニバス「パリ、ジュテーム」の続編。ニューヨークの街角で出会う様々な男女、恋人たち、夫婦たちのそれぞれの小さくて静かなドラマはより人間臭く感じました。様々な人種、宗教、文化、言葉が交錯するニューヨークを舞台に、いろいろな国の監督たちが撮ったこともあってか、「パリ、ジュテーム」とはまた一味違う愛の形を見せてくれます。
■個人的なお気に入りはブレット・ラトナー監督のセントラルパーク(モテない君のプロムの夜編)とジョシュア・マーストン監督のブライトン・ビーチ(老夫婦のお散歩編)です。ちなみに岩井俊二監督が撮ったオーランド・ブルームはある意味『テッパン』と言ってもいいでしょう(笑)。女子にとっては王子さま…なんですね。
(mandoline)

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]ペドロ・コスタ『何も変えてはならない』
ウニー・ルコント『冬の小鳥』
ジョニー・トー『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
■映画。とりあえず3本。
(MANCHOT AUBERGINE)

『海の沈黙』 
■ジャン・ピエール・メルヴィル監督の人と作品に惚れ込んでいるものとして、幻のこの作品をついに劇場で見ることができたのは、何よりの収穫でした。代表的なレジスタンス文学で、戦中密かに読まれた小説の映画化。自らもレジスタンスであったメルヴィルにとって、重い意味を持つ作品です。
海の沈黙 HDニューマスター版 [DVD]■ドイツ占領後のフランスの片田舎。突然同居人になったドイツ軍将校に、まるで彼が存在しないかのように振る舞い、完璧な沈黙で抵抗する叔父と姪。しかし、知的で好人物の将校は、毎晩炉辺の二人に流暢なフランス語で真摯に語りかけます。私はフランスとその文化を深く愛している、こういう形になったけれどもドイツとフランスが結ばれればきっと豊かな収穫がある。無視を決めこんではいるものの、二人の気持ちは揺らいでゆきます…。
■結局何事も起こらず将校は去ってゆくのですが、この沈黙の下のせめぎあいがとてもスリリングでおもしろい。姪に対し、将校はあきらかに好意を持ち、その優しい一瞥を心待ちにしている。姪の方も、こういう状況でなければ非礼な振る舞いを受けるに値しない紳士を拒絶し続けることが苦しい。しかし、沈黙を捨てることは許されない。表情一つ、仕草一つに、見る方はドキドキさせられっぱなしです。
■出来事らしいことは何もなく、若い二人の間にも何も生じず、地味この上ない映画です。しかし、その削ぎ落とした設定と濃密な時間は、これでもかという派手な展開と作り込んだ画面の最近の映画に曝されている身には、とても新鮮でした。
■姪を演じる女優に、家族ぐるみの友人で映画未経験のニコル・ステファーヌを起用したことも、メルヴィルの偉いところ。将校があこがれるフランスの美を暗に象徴する姪に、わかりやすい美人女優が扮していれば、別の映画になっていたかもしれません。繊細で澄んだ眼差しの彼女が将校に見せる横顔は、映画に静かな興奮と緊張感をもたらしてくれています。
(GOYAAKOD)

0655&2355
■映画作品ではありませんが、今年一番多く観た「映像」ということで選ばせてもらいました。NHKの洒落た時報じみた番組で、朝の6時55分と夜23時55分から5分間放送されています。なんともほのぼのとした映像で、「0655」だと『忘れもの撲滅委員会』『2度寝注意報発令中』などの「おはようソング」や「日めくりアニメ」、読者投稿の犬や猫の写真、「がんばれ weekday」という写真映画(この作品の蒼井優がめちゃくちゃかわいい)、そして「2355」だと番組構成は「0655」とほぼおなじですが、たとえば「おはようソング」が「おやすみソング」にかわり1日の終わりをテーマとしたものになります。ぼくはどちらかというと「2355」をおもに視聴していますが、みなさんもぜひ一度ご覧ください。1日の疲れがどっと抜け、ふにゃっと全身の力が抜けて、すっと眠りに入りこんでしまいます。なお、公式HPはこちらです。http://www.nhk.or.jp/e2355/
 
『トイレット』
映画「トイレット」オリジナルサウンドトラック■私の今年一番印象に残った映画は、『バーバー吉野』『かもめ食堂』でおなじみの荻上直子監督、3年振りの新作『トイレット』だ。私は荻上監督の映画のファンの一人である。私が、荻上監督の作品に興味を持ったのは、母の影響である。私が高校生のときだったと思う。夕方家に帰ると、真っ暗な部屋の中でTVを見つめる母がいた。それは私にとって異様な光景だった。というのも、母は普段、せかせかしている。朝から夕方まで仕事でバリバリ働き、夜は5つくらいある習い事を日替わりで通っていた。その年になって馬みたいによく動いているなぁと関心するほどの人だった。しかしそのときの母は、普段のせかせか母とは明らかに違っていた。母はTVの画面をただただじっーと見つめていた。私は怖くなって、急いで電気をつけ、母の隣に座った。TVでは、子供たち吉野刈り(いわゆる坊ちゃん刈り)にされることに激しく抵抗するシーンが流れていた。その映画は荻上監督の作品『バーバー吉野』だった。この出来事は荻上監督の映画を見る大切なきっかけになった。
■『トイレット』は、友達を誘って平日の映画館で見た。月曜日の昼だったので、人が少ないことをかなり自信を持って予測していたが、満席に近い人がいた。若い男女もいたが、ほとんどが年配の奥様、オジ様達だった。上映が始まると、すぐに映画の世界に引き込まれていった。ふと客席から笑い声が聞こえてくることに気がつく。この映画では、客席の人たちが躊躇せずに笑う。しかもその声が聞こえても、嫌な感じが全くしない。むしろ笑い声によって客席の人たちと映画を共有している感じがした。この映画は、コメディでもなく、シリアスなものでもなく、一言でいうと、「シンプル」な映画である。余計なものが一切ない。だから、素直に心に入ってくる。今自分自身に足りないものを上手に補ってくれるような映画だった。
(よーちる)
http://www.cinemacafe.net/official/toilet-movie/




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2010年12月20日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(1) 2010年のベストCD

マニフェスト■今年もいろんな音楽を聴きましたが、新譜はほとんどありません。ふだんの生活圏にCD屋がないせいでしょうか。近所のレンタルショップで借りたCDをiPodに入れて、通勤のバスで聴いていました。今年出たものの中では、ライムスターの新作『マニフェスト』が面白かったです(「K.U.F.U.」とか)。あとは「キャベツ頭の男」さんに音源を貰った数百曲を楽しませてもらいました。エグベルト・ジスモンティの音楽は、嬉しい驚きでした。
(bird dog)

■CDではないが、ピアニスト小山実稚恵の活動を今年のベストに挙げたい。小山は1982年チャイコフスキー・コンクール3位、1985年ショパン・コンクール4位という快挙を成し遂げ、今年デビュー25周年を迎えるベテランのピアニストである。10月にショパン・コンクールの審査員を務めたことも去ることながら、2006年から『音の旅』と題した全24回、12年間に亘って続く壮大なシリーズもののピアノ・リサイタルを続けていることに喝采を送りたい。今年は秋に第10回目のリサイタルが開かれたが、素晴らしいものだった。毎回のコンサート毎にテーマが決められ、それに沿った曲目が選ばれている。今回は「究極のロマンティシズム」と題し、シューマンとショパンが演奏された。来年は春が「研ぎ澄まされる耳・指先」と題し、ドビュッシーなどが演奏され、秋が「音の洪水」と題し、ラフマニノフなどをやるらしい。24回目のリサイタルが開催されるのは2017年の秋。その時、小山はどんな音を聞かせてくれるのだろうか。
(不知火検校)

Peter Wolf "Midnight Souvenirs"
Midnight Souvenirs■告白します。ロックは所詮若いもんが作る音楽と思ってました。ローリング・ストーンズという絶対の例外は別として、いい年になったロックの人の作るものは、Good Musicであってもロックじゃないよなと。
■そんな私をとっても恥ずかしい気分にさせてくれたのが、ピーター・ウルフのアルバム。今はなきJガイルズ バンド(Centerfold!)のフロントマン、フェイ・ダナウェイの元旦那という、絵に書いたようなロックスター。まだレザーパンツが似合う姿ながら65に手が届かんとする彼が、久しぶりに放ったこの一枚は、いやーカッコよいです。ほどよい抜け感があって、これでもかというくらいロックのツボをスパーンと押してきます(こんな絶妙なタイミングで放たれた”C’mon!”を聞くのは久しぶり)。しかしベテランの味、年寄りの役得とレッテルを貼るのは大間違い。いい日も悪い日もあったけど自分の本当に好きな音を大事にしてきた人が、ふっと肩の力を抜いて気の向くままにやってみたら凄いことになりましたよ、という感じです。豊穣とかコクという大げさな言葉より、軽やかさとひとつまみのストイシズム、が相応しい。
■説教なし、自讃なしの気負わない歌詞も、素直に耳に届きます。カントリー界の大兄イ、マール・ハガードと低音で囁くラストナンバー、Is it too late to love? なんて、人生の穴ぼこを覗いているようです。(日本ではこういうことは望めないもんかね、と嘆いていたらこの曲を耳にしました。http://youtu.be/5vEwXCwvA0Y 作者は若者みたいですけれど、Julie with The Wild Onesがプレイすることで、同年代の千々に乱れる心もようの歌になっていて、身もふたもなくて、すごくおもしろい。)
(GOYAAKOD)

Chateau RougeLa Demarrante

■CD、とりあえず3枚。
□Diving with Andy,"Sugar Sugar"
http://youtu.be./KV5A2fuZnVo
□Abd Al Malik,"Chateau Rouge"
http://youtu.be/06S7oMLvl2w
□Marie Espinosa,"La demarrante"
http://youtu.be/F-AP7Id4Tjc
(MANCHOT AUBERGINE)

アニメンティーヌ~Bossa Du Anime~■なんやかんや言って2010年は『アニメンティーヌ~Bossa Du Anime~』がいちばん話題性があったのではないか。クレモンティーヌは何か吹っ切れた感じがする。「ゲゲゲの鬼太郎」のカバーが入った2枚目ももう出ている。7月にリリースされ、オリコンの週間アルバムランキング(全体)で18位まで浮上したのは9月6日。洋楽チャートでは1位の快挙。忘れてはいけない、このアルバムはフランス語で歌われているのだ。ポルナレフ以来の出来事かもしれない。学生と一緒に聴いたが、これほど世代を超えて共有されているネタはないだろう。いつしかイントロ当てクイズ大会となっていた。アレンジも悪くない。クレモンティーヌは来日して「ほぼ日刊イトイ新聞」で Ustream ライブも配信していた。今年は坂本龍一や宇多田ヒカルのように大掛かりなライブを中継するというのもあったが、「ほぼ日」内の小さな会議室で気軽に演奏して、その映像を Ustream で流してしまうというのも、今年の象徴的な風景だった。
■今年から Twitter を本格的に始めたが、TL 上ではいろんな人が #nowplaying! していた。毎日レアな音源をアップする人をフォローしたり、ピンポイントで音楽の話が出来たり、昔同じシーンを共有していたことを確認したり。それは明らかに音楽の新しい共有の形だった。
■日本では平沢進の名前が目についた。『けいおん!』とかいうアニメのサントラをやっていたり、今年亡くなったアニメ作家、今敏とは親友だったり。8月にやっていたNHK・FMの12時間特別番組「プログレ三昧」でP-Model の前身バンド「マンドレイク」が最高得票数を獲得していたが、それは若い平沢ファンの投票によるものだった。
■ときどき youtube には思いがけない動画が見つかる。今年最も萌えたのが ”Mika plays Tarkus”。この若くて美しいマリンバ奏者のことはよく知らないのだが、ELP の組曲「タルカス」に合わせてマリンバを演奏している。やる気がないのか、楽しいのかよくわからない表情も良いが、マリンバの軽やかな、かつ呪術的な響きがこの曲にすごくあっている。プログレのカバーアルバムを作って欲しい。
(cyberbloom)

Lisztomania: Remixes [12 inch Analog]■今年の一枚?に出会うまでの短くも膨大な道のり:「今年の一枚、ということでおすすめの音楽について書いてみませんか?」2010年11月、cyberbloom さんからのお誘いに喜び勇んで「ぜひ!」と名乗りを上げたはいいけれど、そういえば今年はほとんどCD買ってなかった…エディタを前にハタと困ってしまった私。さてどうしよう。振り返ってみれば今年はネットラジオと音楽紹介サイトの恩恵を享受し続けていた1年でした。
■今年の1枚、を語れないのでその辺のご紹介を少し。洋楽(主に踊る系)が好きな私が今年特によく活用していたのは海外のネットラジオステーションの http://www.filtermusic.net/ です。CMとMCは一切なし、厳選した音を流し続ける局が世界中から集められているのですが、その数およそ340局。セレクトがツボにはまれば好みの局は一日中でも聴いていられるのですが、ほとんどの局がリアルタイムのプレイリストを公開していて、流れている曲名、アーティスト名をすぐにチェックできるのも魅力の一つです。
■音楽紹介サイトについてはこちらも海外のものになるのですが、http://www.etmusiquepourtous.com/ こちらのサイトをよくのぞいていました。ほぼ毎日のように更新され、美しいビジュアルイメージとテーマに関する記事、そしてMP3音源がアップされています。「最新の音楽、素晴らしい音楽をお届けするために日々奔走している」と述べる彼らのピックアップしている曲は多少の偏りがあるように思えるもののエッジが効いたクールなセレクト(私見です。スミマセン)。どっぷりはまる音がしばしば上がっていてダウンロードもできるため時々チェックしています。ちなみに「Et musique pour tous」は訳すと「そう、みんなのための音楽」みたいなニュアンスでしょうか。大らかで自由な雰囲気の、音楽好きにはありがたいタイトル。こんなふうにフリーの音源をどっぷり満喫していた偽物音楽ジャンキーの私なのですが、とはいえフリーで楽しめるものばかりを駆使する愛好家が増えると「CDが売れない」→「アーティストが食っていけない、アーティストが育たない」→「音楽好きも困る」、ということにならない?という疑問は浮かびます。
■また、上記のような大規模なネットラジオアーカイブや音楽紹介サイトは海外のものばかりで日本で同様なものは見つけられませんでした。音源をダウンロードできる後者にいたっては著作権法でNGがかかって訴訟沙汰になりかねない。では日本の音楽は著作権法によるプロテクトが厳しいけど海外は無法地帯だからこうなっているの?そうだとすれば、日本の方が音楽業界の成長的には望みがあるといえる?うーん…。どうもそうではないように思えるのです。
■Et Musique pour tous、また同様の音楽紹介サイトでは「ミュージシャンをプロモートする」というコンセプトをあげています。このようなサイトにとりあげられる最近のアーティストを見ていると、アーティスト自らが音源をアップロードし、最初から最後までを聴く事ができるようにしているものもしばしば見られます(ダウンロードできる場合も有り)。有名アーティストではありえないかもしれませんが、プロモーションのために音源をアップすることを厭わないアーティストがやはり増えているように思えます。Youtubeであれ、http://soundcloud.com/ であれ、最後まで聴ける音源がどこかにあがっていればリスナーとしては嬉しいし、口コミもしやすい。気にいった音楽をよりよい音質で聴きたければiTune storeで探して1曲単位で買うこともできるしもちろんCDだって買うかもしれない。私について言えば今ライブに行きたいと思っているアーティストはほとんどがネット経由の情報によるものだったりします。
■音楽を売るために、プロダクションが宣伝するだけではなく、アーティスト自らがリスナーに向けて情報発信し、それらを世界に向けてプロモートするサイトがどんどん増えてきている、こんな土壌がじわじわと広がってきているように思います。2000円のCDが1万枚売れなくなっても、100円の1曲が世界中で20万枚売れれば良い。ライブに来てくれるファンが増えれば良い。そんな環境を整えるために出し惜しみせず音を紹介するサイトが存在するというと理にかなっているように思えます。
■音楽を「モノ」の形で所有するメリットが薄れ続けている今、人々が情報に恵まれた環境下でより音楽を知って気軽に曲をバラ買いする、アーティストへの敬意をこめてどこかからコピーするのではなくきちんと買う(もちろんコピーは違法ですが。)、そんなリスナーの変化が目に見えて変化(弱体化?)している音楽業界にとっての生き残りのキーとなるかもしれません。偉大な過去の音楽のアーカイブが膨大にあることを考えると、アーティストだけでなく業界全体にとっても悪い話ではないように思えます。音楽がデータになった時点で「買わないと聴かせないように囲い込む」のは法律があっても到底無理!なんですから。
■一見どうやって採算をとるのかわからないフリーの音楽紹介サイトですが、サイトのファンの数が膨大になり、無名アーティストを有名にするようなムーブメントを作ることができるのであれば収益のモデルは捻出できるはず。情報サイトはとかく長続きしないと言われますし、データが削除されたらしき跡などもしばしば見られ違法ギリギリ?な感も否めないものの、「良いと思う音楽、最新の音楽、を紹介する」スタイルで(スポンサー色がついたりしないで)がんばって欲しい、と思う1ファンなのでありました。さて、この動き、日本においてはどうなるのかしら…
■今年一番のヘビーローテーション:今さらながら、このリミックスで Phoenix にハマりました。
Phoenix - Lisztomania (Shook Remix)
■今年一番はっとした Music Video : ちょっと懐かしいアナログな手描きのアニメーションはめくるめく色彩と展開に目を奪われっぱなし。Breakbotは11月に日本に来てたけど(そして行けなかったけど)今一番聴きに行きたいアーティスト。アルバムが出たら買おうっと。
Breakbot - Baby I'm Yours
(Tatamize)




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2009年12月28日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(4) 2009年の重大ニュース

晴天 LIVE IN TOKYO 1989 [DVD]■今年はマイケル・ジャクソン、忌野清志郎などミュージシャンの訃報が相次ぎましたが、個人的には加藤和彦が亡くなったニュースには驚かされました。彼は何をやっても成功する奇跡的な人で、今度は何をやってくれるのだろうかと常に期待させてくれる存在だったからです。まさかこういう形で逝くとは…。その活動の内、特に第二次サディスティック・ミカ・バンド(1989年、ボーカルは桐嶋かれん)のライブ演奏は衝撃的なものでした。このような破天荒ながら煌めくような音を聞かせてくれるバンドには今後はもうお目にかかれないような気がします。亡くなる間際の彼の様子を伝えた報道から察するに、才能がありすぎると、やりたいことが何なのか分からなくなってしまうのかもしれないとも感じました。
(不知火検校)

■個人的には自分の子供が生まれたことが最大の出来事でした。これからの人との付き合い方にも微妙に影響が出てくる気がします。以前フランス語を教えたことのある学生が逮捕されたのにも驚きました。振り返ると、温故知新と言えば聞こえはいいけれど、新しいものをフォローする努力に欠けた1年だったようです。やはり新聞とテレビのない生活では、こうなってしまうのでしょうか。
(bird dog)

■やはり政権交代?正直、どこの政党も選べなかったというか、選びたくなかったというか…。問題山積み状態ですが、どうなるのやら。
(tk)

性悪猫■個人的に思い入れのある人が世を去った年でしたが、ショックだったのは漫画家やまだ紫さんの突然の訃報でした。
■作品に出会った学生の頃、やまだ作品のヒロイン達—シングルにせよ、妻で母にせよ、離婚したシングルマザーにせよ、自分をひたと見つめながらしなやかにマジメに生活する、甘さ控えめな女たち–は仰ぎ見る存在。彼女達が吐露することばのひとつひとつに、いちいちほーっとなったものです。
■それなりの時間が経過したものの、やまだ作品のヒロイン達からはやっぱり遠いところにいるわけですが、台詞や絵の深さが身にしみてわかるようになりました。スクリーントーンを巧みに使った流れるような独特な線の絵と、詩人でもあった作者が選び抜いた言葉のコンビネーションは、マンガが到達した一つの高みだと思います。
■子供が巣立ち老いを見据える頃になったヒロインの日々を読める日も近いと期待していたのですが、とにかく残念です。
■他界されたことがきっかけになったのでしょうか、最近長らく入手困難だった作品のうち代表作が復刻されました。個人的には『性悪猫』をお薦めします。猫が主役で台詞をしゃべるマンガ、ときいてなごみ系愛猫マンガかい、と敬遠してはイケマセン。猫であるからこそヒトを動かすときの面倒くさいお約束から解放され、微妙なことが霧が晴れたように伝わることがあるのです!だまされたと思って、ぜひ手に取ってみてください。
(GOYAAKOD)

■INFO-BASEの「週刊フランス情報」から2009年の主要ニュースを拾ってみました。
■23 - 29 NOVEMBRE:2010年ワールドカップ・南アフリカ大会欧州予選プレーオフ、フランス対アイルランドの試合でフランスは辛うじてW杯出場を決めたが、決勝ゴールをアシストしたアンリ選手がハンドの反則をしていたことが発覚。サッカーを越えた問題に発展。フランスの1,003人を対象に実施したアンケート調査では、回答者の81%が「フランスはワールドカップに出場する資格がない」と答えた。
■9 - 15 NOVEMBRE:今年のボジョレー・ヌーヴォーに、1000円を切るペットボトル入りのボジョレーが登場。ボジョレー・ヌーヴォーのユニクロ化とも言われた。フランスではペットボトルなんてボジョレーの品格を落とすようなことをするなという生産者からの批判も。
レヴィ=ストロース入門 (ちくま新書)■2 - 8 NOVEMBRE:20世紀を代表するフランスの文化人類学者・思想家で、西洋中心型の近代的思考法を内側から批判する「構造主義」を発展させ、『悲しき熱帯』『野生の思考』などの著作で知られるクロード・レビストロースが10月30日死去。100歳だった。同じ週にフランスで最も権威のある文学賞の一つであるゴンクール賞に、マリー・ヌディアイの小説『トロワ・ファム・ピュイサント(3人の強い女)』が選ばれた。ヌディアイさんは、セネガル人の父とフランス人の母をもつ黒人女性。黒人女性がこの賞を受賞するのは初めて。
■19 - 25 OCTOBRE:パリ郊外の公的機関トップへの就任が取りざたされていたニコラ・サルコジ大統領の次男、ジャン・サルコジ氏が22日、就任を取りやめることに。就任する可能性が報じられてから、贔屓の引き倒しと、激しい批判の声が上がっていた。
■12 - 18 OCTOBRE:10月15日に仏通信最大手のフランステレコムの従業員が首を吊って自殺し、2008年2月以降25人目の自殺者になった。これまで自殺した従業員らは、経営陣の決定を非難したり、職場でストレスにさらされていたと主張する遺書を残している。かつて国営の独占企業だったフランステレコムは、ここ数年で何度か大規模なリストラを余儀なくされている。現在は約10万人の従業員をかかえ、携帯電話子会社オレンジ(Orange)は国際的に事業展開を行っている。(⇒関連エントリー「フランステレコムで何が起こったのか」)
■5 - 11 OCTOBRE:フランスのミッテラン元大統領のおいで、6月に入閣したフレデリック・ミッテラン文化相が、過去に買春した経験などを書いた自叙的小説をめぐって、極右政党から辞任を求められる騒ぎになった。この本は2005年に出版され、タイで複数の少年に金を払って性的な関係を持ったことが記されている。淫行つながりで、ちょうど前の月にローマン・ポランスキー(『戦場のピアニスト』(2002年)でアカデミー監督賞を受賞)が、チューリッヒ映画祭の「生涯功労賞」授与式に出席するためスイスに滞在中、アメリカでの少女への淫行容疑(1977年)に関連してスイス司法当局に身柄を拘束された。
戦場のピアニスト [DVD]■10 - 16 AOUT:パリ郊外エムランビルにあるプールが、全身の大部分を覆うイスラム教徒の女性向け水着「ブルキニ」を着用した女性の入場を拒否し、ライシテ(laïcité 政教分離)の問題が再燃。折しもフランスでは、サルコジ大統領が6月、全身を覆う衣服ブルカについて「フランスでは歓迎されない」と発言し、ブルカ着用禁止の是非を検討する議員32人からなる特別委員会が設立されるなど、イスラム教徒女性の服装をめぐる論争が激化しており、この一件が火に油を注ぐ格好となった。
■18 - 24 MAI:フランスの大学では2月からデモやストが断続的に続き、5月からはデモ隊の占拠で授業もなし。学生らが反対しているのはサルコジ政権が力を入れる大学改革。「大学の自由と責任に関する法律(LUR)」(2007年8月制定)によると、「魅力ある大学」「運営の硬直化からの脱却」「国際的評価の回復」を3大目的に大学の自治を認め、予算や人事で自由裁量を与える一方、責任も課すという内容だった。改革により、大企業や政府の息がかかった学長が選出され、資金が潤沢になった大学に生徒が集中するなどの弊害が出てくるというわけだ。地方大学の一部は、生徒の減少により廃校になる可能性もあるという。(⇒関連エントリー「『クレーブの奥方』事件」)
■30 MARS - 5 AVRIL:若者はルーブル美術館、オルセー美術館など、パリの有名美術館の入場がタダになった。サルコジ大統領は4月4日から25歳以下の美術館と国立の記念建造物の入場を無料にすると1月に発表。大統領は「美術館の無料化は美術館を殺すことにはならない。反対に、若いうちに美術館に行く習慣ができることで、大人になっても行くことになるだろう」と主張。太っ腹。それに引き換え、日本の美術館の入場料は内容が貧相なのにベラボーに高いよね。さらにサルコジ大統領は18歳の国民を対象に、新聞購読を1年間無料にすると発表。若者の新聞離れを憂い、「若いうちに新聞を読む習慣をつけるべきだ」と。
■5 - 11 JANVIER:昨年の12月末にイスラエルが突如としてパレスチナ自治区のガザに侵攻。フランス全土で数万規模のデモが行われ、パレスチナへの支持を表明。パリでは散会の際に警官との小競り合いも。一部の人々はイスラム武装勢力(ハマス)への支援とイスラエルへの憎しみを表明することを憚らなかったが、大多数はおだやかなデモを行った。デモには労働組合と左派政党が結集したが、社会党は参加せず、左翼のあいだで微妙な温度差があった。LCR(極左)のスポークスマンは「フランス国民の立場は、イスラエルに好意的なサルコジ大統領の立場に還元されるものではない」、緑の党の書記は「私たちは決してハマスへの支持を求めているわけではない。過激化は誰の役にも立たない」と。
(cyberbloom)





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2009年12月26日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(3) 2009年のベスト本

『世界は村上春樹をどう読むか』
世界は村上春樹をどう読むか (文春文庫)■今年の重大ニュースは、『1Q84』を発端とした一連の村上春樹ブームだった。熱烈なハルキストというわけではないものの、村上作品は出版されたらだいたい読むようにしている。それにしても今年久しぶりの新刊が社会現象となるほど突然のベストセラーになったのは不思議であり、違和感を覚えるほどだった。個人的には、最近は村上作品そのものよりも、彼の作品を他の人たちがどう読んでいるのか見聞きする方に関心が向いている。
■そういう意味で各国の村上作品の翻訳者を集めたシンポジウムの記録である『世界は村上春樹を どう読むか』(文春文庫)は、作品の受容が国によっていろいろであることが紹介されていてとても興味深かった(翻訳本の表紙を見るのも楽しい)。とりわけひとつの短編を数カ国語に翻訳するワークショップでは、ひとつの言葉の訳し方でも翻訳者によってさまざまなアプローチが見られるのが面白い。さらにはこの本の編者のなかには村上氏の支持者でない人も入っている、というのもミソである。
■もちろん来年公開されるトラン・アン・ユン監督の「ノルウェイの森」も彼らしい読み方が提示されることを期待して今から楽しみである。
(exquise)

James W. Nichol Transgression(罪)
Transgression: A Novel of Love and War■偶然にもまた第二次大戦下のフランスが舞台。2008年の出版ですが、翻訳が今年中に出るのではということで。
■主人公はルーアンのフランス人少女アデル。ドイツ兵マンフレッドと恋に落ちた彼女が辿る数奇な人生の変遷と平行し、1946年カナダの片田舎で発見された人間の指を巡っての捜査が描かれる。捜査をするのは息子を戦争でなくした警察署長ジャック。ミステリーとロマンスを掛け合わせつつ戦争が世界中にもたらしたあまりにも大きな傷を描いた作品。
■前半はアデルの恋が彼女にもたらす身の破滅が重い。家族からも「祖国を裏切った敵国協力者」として追われ、マンフレッドを探す中で目にした戦渦と老人のようにやせ衰えたユダヤ人の子供たち。彼の故郷ドレスデンは廃墟と聞いて絶望し、全てから逃れるためにカナダ兵アレックスとの結婚に踏み切った彼女だが、彼もまた戦争の中、心に深い傷を負っていた。
■発見された指の持ち主は? なぜその捜査が海と時間を隔てたアデルの物語と平行して描かれるのか?「敵国協力者」と辱められ髪を切られさらし者にされた女性たち。彼女達がその後どんな人生を辿ったのかー時と場所が違えば微笑ましい恋愛でしかないものが許し難い忌むべき罪とされた時代。彼女達のその後の人生に救いがあってほしいと思わずにいられない。すべての謎が解けた後にほのかな希望が見える壮大なミステリー。
(黒カナリア)

佐藤正午『身の上話』
身の上話■佐藤正午の最新作。これまでの彼の最良の作品群――『彼女について知ることのすべて』『Y』『ジャンプ』....――に比べても遜色のない出来。よく練られた文体と精緻を極めたストーリーテリングも健在。ほんのちょっとした偶然に支配されのっぴきならない方向に動いていくひとつの人生を、ときに慈しみ、ときに突き放しつつ、丹念に描いていく。
■後藤明生が亡くなって以降、新刊が出たらすぐに飛びついて読むのはこの人だけになってしまった。デビュー作『永遠の1/2』(1984)以来ずっと読み続けている、一番好きな作家。
(Manchot Aubergine)

小熊英二『1968』
1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景■今年の一冊、これはもう、小熊英二『1968』につきます。出すたびに本が分厚くなる小熊さん。ここまでやるとは、誰が予想したでしょうか。あと、安岡章太郎にはまっています。『私説聊斎志異』がよかったです。
(奈落亭凡百)

夏石鈴子『逆襲!にっぽんの明るい奥さま』
■昨年末に出版された夏石鈴子さんの短編種『逆襲!にっぽんの明るい奥さま』は、今年繰り返し読んだ1冊です。「普通の奥さま」がしまいこんでいる、つぶやき、煩悶、怒り、嘆き、その他もろもろがこれ以上ない的確さでむき出しにされています。感情は強いほど捕らえ所がなくなり、使い古しの言葉で描写しお茶を濁すことが少なくありません。しかし作者は、奥さま達の中でふつふつ沸き立つ暗い思いも正面から受け止め、きちんと言葉にしてしまった。思いが形成された過程もきっちり描かれていて、すとんと納得できる。誰しも自然と奥さま達の思いを追体験できてしまうのです。
逆襲、にっぽんの明るい奥さま■強い思いを抱える一方、奥さま達は意外なほど冷静に、自分と自分の背負っているものを見据えています。その語り口は時にユーモアすら感じさせるほど余裕を見せつつ、少しの無駄もない。だからこそ、安心して、奥さま達の独白に身を任せられるのです。
■再読してしまう本にはもう一度体験したい何かがあります。ハッピーな気分を確約する本ではないのについ読んでしまうのは、こんなはずではなかった人生を前を向いて生きる奥さま達の独白を引き受けることで、何かしら自分自身も浄化され、強くなれるからかもしれません。「人生捨てたもんでない」と大見得切れるような見通しはたたないけれど、一日一日生きてゆく。そんな精神的なタフさに共感します。奥さまも、そうでないひとにも、おすすめ。
(GOYAAKOD)

イーユン・リー『千年の祈り』
千年の祈り (新潮クレスト・ブックス)■何かと注目を浴びる大国、中国。天安門事件から20年が経った。イーユン・リーは北京に生まれ、当時天安門のすぐそばの高校に通っていた。彼女はその後アメリカに渡り、大人になり、成功し、小説を書いた。その処女作である短編集『千年の祈り』は英語で書かれ、数々の賞を取った。彼女の強い意志により、中国本土での出版はしないという。それは彼女の書いた文章にいかなる手も加えられることなく、祖国の人々に読んでもらえる日が来てほしい、という彼女の「祈り」なのだと思う。祖国の何代もの、名もない人々の、慎ましやかな生活を彼女は淡々と描いている。主人公たちは孤独である。それは受け入れがたいものではあるけれど、最終的には静かに受け入れる、そんな姿が切なく、美しくもある。
■天安門事件当時、私は隣の国、日本でのんびりとした学生だった。20年という年月が経ち、いい大人になるべき歳になった。天安門にいた学生たちのその後を私は知らなかった。事件そのものが封印されることが可能な社会の恐ろしさも知らず、祈り続ける人々の内なる強さや広さを知らない私は大人になれているのだろうか?
■ちなみに、表題の「千年の祈り」は早速アメリカで「スモーク」の監督ウェイン・ワンによって映画化され、公開中である。彼の要望により、イーユン・リー本人が脚本を担当している。
ウェイン・ワン インタビュー
(mandoline)

映画館と観客の文化史 (中公新書)■こちらも新しい本はあまり読んでいません。なにしろ去年の正月休みには『イーリアス』を読んでいたくらいですから。堀田善衞の『ゴヤ』は、画家の内的発展以上に、18世紀ヨーロッパを知るうえで、大変参考になりました。加藤幹郎の『観客と映画館の文化史』(2006)も面白く読みました。ドライブインシアターの誕生が1950年代アメリカにおける住宅ローンの成立とリンクしていたことをはじめて理解しました。
(bird dog)

岡本太郎『壁を破る言葉』
壁を破る言葉■岡本太郎『壁を破る言葉』(イースト・プレス)ほか、岡本太郎関連(一冊じゃないですが)。家の本棚に埋もれていたのを読んでみたり、同じ研究室の先輩が岡本太郎研究をしている関係で、本を借りたりして読みました。岡本太郎の言葉は、短くてもひとつひとつがエネルギーの塊です。優しく諭すというタイプの言葉ではなく、むしろ突き放される感じですが、元気が出るという生ぬるい感じではなく、火がつけられるというか闘志が沸いてきます。「いつも危険だと思うほうに自分を賭ける。それが生き甲斐だ。」
■へこまされ続けると、無性に悔しくなってかえって腹がすわってくるような、また、追い詰められて妙に感覚が研ぎ澄まされるような(レポート締め切り間近でまだ真っ白の心境?)そんな時の感じです。(どんな感じだ?)
(tk)




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2009年12月23日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(2) 2009年のベストCD

Luciole “Ombres”
Ombres■リュシオールLucioleのOmbres。23歳のフランス人女性歌手のファーストアルバムだが、すごい才能の持ち主が現れたという印象。ケイト・ブッシュを最初に聞いたときとおなじくらいびっくりした。元々はスラム(ポエトリー・リーディング競技)をやっていた人で(全仏スラム選手権(!)で2回優勝しているらしい)、発音の美しさ、表現能力の高さはピカイチ。天性の声の美しさと相まって、非常に魅力的なパフォーマンスを披露してくれている(作詞は彼女が担当)。フランスの歌手でいえば、カミーユCamilleとちょっと似たところがある(影響も受けているらしい)が、彼女ほどエキセントリックなところはなく、もう少し幅広い音楽ファンにも受け入れられそうだ。プロデュース(および楽曲の大半の作曲)は90年代に活躍したポップの魔術師ドミニク・ダルカンDominique Dalcan。この人、こんなに作曲の才能あったかなー、と思わせるくらいいい曲を書いている。
Luciole - Ombres
(Manchot Aubergine)

■新譜で買ったCDといったら、なんと「ハンキーパンキー」しかないことに気づき、愕然としました。L⇔Rの黒沢兄弟による企画盤です。いろんな意味で懐かしい感じのするアルバムでした。あとはネッド・ドヒニーのファーストとかビートルズのリマスターとか、古いものの買い直しばかりです。レンタルして聴いたライムスターもしばらくお気に入りでした。
(bird dog)

ロリー・ギャラガー『ライブ・イン・アイルランド’74』
ライヴ・イン・アイルランド■今年の一枚、それはやはり、あえてロリー・ギャラガーの『ライブ・イン・アイルランド’74(別名アイリッシュ・ツアー)』にさせてください。IRAのテロが各地で暴発する70年代中期、誰もこわがってライヴを開催しなくなったアイルランドの街々で、<あえて>ツアーを敢行し、その音源のみを収録するというココロ意気、アイルランド兄ちゃんロリーのロック魂にふるえました。
■新譜に、「コレ」というのが見当たらない、というか、新譜は曲ごとにダウンロードする、という世の趨勢とも異なり、「おしなべて最近のロックを聴かなくなった」(というかロリー・ギャラガーを発見してしまったら他のオンガク全部が耳に入らなくなった)という一種病的な状態にはまり込んでしまっています。ロリーのいたテイストもいいですよね。活動期間が短く、惜しいバンドでした。
■未来への展望が見当たらず、物足りぬ報告になってしまいました。お許しください。 あと、これはなんなのかなあ:「ザ・チン・チンズ」という男女二人組のCDを友人に借りたんですけど、これはかなりよかった。いつのアルバムか分からないんですがね。あ、演奏者は西洋人です。
Rory Gallagher - A Million Miles Away(Irish Tour 1974)
(奈落亭凡百)

The XX
XX■加藤和彦の遺書に「今の世の人々は音楽を必要としているのだろうか」という趣旨の言葉があったそうですが、そんな悲壮な問いかけにうすぽんやりと共感する、そんな今日この頃。古馴染みの音とだけつきあう後ろ向けな自分に危機感を持つ一方、おもしろい音楽との邂逅もありました。
■例えば、イギリスの4人組のバンドThe XX。20才そこそこのアートスクールの学生仲間が奏でるドラムレスでミニマムな音楽は、「君たち本当に若者かい!」とつっこみたくなるほど気だるい。音数少なく、美メロもサビもなし。ネオ・ヤング・マーブル・ジャイアンツと括ってしまう人もいるかもしれません。しかしよくよく耳を傾けると、やはり2009年の音楽。子供の頃からフツーにヒップホップを聴いて育った世代が、バンドを始めてみたら体に染み付いた、ウェット感のない音の感覚が自然に出てきました、という感じでしょうか(故アリーヤの曲をカバーしてますが、わかりやすい黒っぽさは全くありません)。
■起伏の少ないメロディーに、派手じゃないけどちょっと色気のある音色のギター、そして淡々とした男女ヴォーカルのかけあい(女の子の声が、これまた耳元で囁かれたらたまらんという声)。中毒性高いです。あまり難しいことは考えていないらしいところもいいですね。
■もうやり尽くしたかに見える音楽の世界にも、まだまだ、開けるべきドアはあるようです。
The XX - Crystalised
(GOYAAKOD)

Mr.children「HOME」
HOME(通常盤)■12月12日の京セラドーム講演の3日前くらいに、古い知人から「一緒に行く人がいけなくなったから、一緒にどう?」ということで、なんやら棚ボタな感じで(チケット代は払いましたけど)コンサートに行ってきました。しかし、ライブに行くのに曲を知らないのはまずい、ということで、最新の「supermarket fantasy」をレンタルしようと思ったら、全部貸し出し中。仕方ないので、すこし前の「HOME」を借りました。
■ミスチルは、以前(10年前くらい?)やたらとドラマやら何やらでそこらに溢れすぎて、じっくり聴こうと思う前に食傷気味になって、なんとなく聴かず嫌いになっていましたが、もったいないことをしたと思いました。歌詞が良いです。結局曲がわからないままライブへ行ったのですが、すごく歌が上手で、安心して聴けました。

BEATLES - ACROSS THE UNIVERSE
レット・イット・ビー■友だちとメールで音楽の話をするとき、youtubeのURLを貼り付けておくと、話がスムーズに運ぶし、予想もしない共感を生むことかある。まるでyoutubeで会話をしているような、記憶を知覚のレベルで共有するような新しいコミュニケーションの感覚だ。人間は言語=シンボルだけでなく、イメージや知覚的なものによって、よりシンクロ率が高いコミュニケーションを行うようになっている。やはりイメージや音楽がデータベース化され、まるで言葉のように操作できるようになったことが大きい。
■今年は小熊英二の「1968」(まだ精読中)が出たり、山本直樹の「レッド」が話題になったりして、1968年を意識した年だった。フランスでは去年、五月革命40周年記念で盛り上がっていたようだが、反応の鈍い私には68年は1年遅れでやってきた。今年の9月にビートルズのリマスター盤が出て、ビートルズとジョン・レノン(エントリー「Jealous Guy」参照)を通して68年を再発見。9月に紹介するのを忘れていた Across The Universe を今年の1曲に挙げておく。この曲は69年に出たので、今年で40周年だ。この曲は1968年にジョン・レノンがインドで受けたマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの教えにインスピレーションを得たと言われている。"words are flowing out like endless rain into a paper cup" というインスピレーションにとりつかれて言葉があふれ出す感じもいいし、"Nothing gonna change my world" というリフレインの力強い宣言は、宇宙に裸で放り出されるような厳しい時代にあっても、カッコ良く芯を通して生きたいものだと思わせてくれる。
Beatles - Across The Universe
Love 2■日本語回帰の時期もあって、初期の井上陽水(紅白出場が流れて残念!)をよく聴いた。「傘がない」がグランド・ファンク・レイルロードの「ハートブレーカー」のパクリだということを今更ながら知った。さらになぜか中国語のサイトに、「君に会いにいかなくちゃ」の「君」は実はグランド・ファンク・レイルロードのことだと書かれていた。大雨の中で「ハートブレーカー」を全員で合唱したという伝説の来日コンサートが始まるのを、陽水が喫茶店で待っていたときの体験がもとになっているようだ。このあまりに整合性のある話に妙に感動してしまった。同世代の斉藤和義(66年生)もかじった。彼は歌だけでなく、多彩なギターも聴かせてくれる。
■フランスに関しては、クラブ=ダンス系の音に触れておこう。今年は、エール Air、ローラン・ガルニエ Laurent Garnier、DJ Cam がそれぞれ新譜を出していた。エールの "Love 2" に収録された Heaven's Light は Cherry Blossom Girl に続く名曲かもしれない。新譜 "Tales Of A Kleptomaniac" はまだ聴いていないが、ローラン・ガルニエと言えば、初期の曲「Acid Eiffel」(アシッド・エッフェル)はテクノチューンの傑作。映画や小説につけたくなるようなタイトルだ。ヒップホップ&ジャス系の DJ Cam はジャズメン4人を従えたバンド・プロジェクト Dj Cam Quartet で新境地を打ち出している。今年3枚目 "Diggin" が出たが、サンプリングやカバーの元ネタとなっているジャズやソウルをカバー。これもむちゃくちゃ良いですよ。特に Everybody Loves the Sunshine にはシビれます。Neburosa の流麗なピアノにも。
Air - Heaven's Light
DJ Cam - Everybody Loves the Sunshine
Laurent Garnier - Acid Eiffel
(cyberbloom)




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2009年12月21日

FRENCH BLOOM NET 年末企画(1) 2009年のベスト映画

クエンティン・タランティーノ『イングロリアス・バスターズ』
■ブラピというのは常に脇役に食われる気の毒な人だ。ベンジャミン・バトンでも達者な女優陣に食われ、今回も彼が取り立てて悪いのではないのだが、常々脇に来る人がうますぎる。顎を突き出して頑張ったのに今回は完全にハンス・ランダを演じたクリストフ・ヴァルツの映画だ。
■タランティーノは久しぶりに良かった。胸やけする行き過ぎのアクションや無理な展開が姿を潜め、ナチスドイツ占領下のフランスを舞台にしながら、昔の戦争映画と、家族を皆殺しにされたユダヤ少女の復讐という西部劇的展開を貼り合わせた作りに、必要最小限かつ的確なアクション。一見ミスマッチな音楽の組み合わせも粋だ。
■それにしてもユダヤ・ハンターであるランダ大佐の人物造形が最高だ。嫌味なくらい語学に長け身振りも優雅。冒頭のシーンでのフランス語から英語に切り替わる滑らかさ。乱暴な振る舞いなどみじんもないのに、ペンをインクつぼに浸す仕草一つでぞっとするほどの冷たい才気と残酷さを感じさせる。しかも笑い出したくなるおかしさをも感じさせる稀有なキャラクター。彼が現れると画面がぴりりとひき締まる。
■史実からすれば荒唐無稽な「嘘」なのだが、短編としても別々に楽しめる五つの章を、第二次大戦を舞台に最後まで飽きさせない復讐劇に仕立てたあたり、まさにお帰りなさい!タランティーノだ。彼の才気と、黄金時代の戦争映画を思い出しつつ痛快なでっちあげに酔える一本。
(黒カナリア)

オリヴィエ・アサイヤス『夏時間の庭』
夏時間の庭 [DVD]■今年はクリント・イーストウッドの新作が二本も(『チェンジリング』、『グラン・トリノ』)公開される奇跡的な年でした。本当はこの二本のどちらかを選ぶべきなのですが、甲乙つけがたいので、フランス映画からオリヴィエ・アサイヤスの『夏時間の庭』を選んでおきます。久しぶりにフランスの田舎の緩やかな時間を感じさせてくれたことと、安易な解決を放棄した映画作りの姿勢に敬意を表しました。ちなみに全くの偶然ですが、この映画ではジュリエット・ビノシュの恋人役をイーストウッドの息子カイルが演じています。『センチメンタル・アドベンチャー』(1982年)の少年もすっかり渋い男に成長しましたので、ご覧ください。
(不知火検校)

クレイグ・ギレスピー『ラースと、その彼女』
ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]■悩んだ挙句、公開は2008年の年末でしたが、今年劇場で観たこともあり、今年の1本にしました。原題は「 Lars and the real girl 」。
■小さな田舎町に住む主人公、シャイな青年ラースは、ある日、恋人ビアンカを食事に招待し、兄夫婦に紹介する。しかし、その彼女は、ボディコンを着せた等身大のリアル・ドールだった・・・。
■簡単に言えば、青年ラースが周囲の見守りの中、「心を再生させるドラマ」なのですが、そう言ってしまうのはとても野暮に感じてしまいます。ラース役のライアン・ゴズリングの演技は透明感があり、登場する医師(女性)や近所のおばさまたちの広くて深い愛情が伝わり、観ている私が癒されるようでした。くすっと笑わせてくれて、ジーンとさせられっぱなしでした。
■今、様々な要因で心を病む人は多いですが、ありのままを受け入れること、こんな風にそっと心に寄り添うことが出来る家族やコミュニティーがあれば、どんなにか人も社会も救われることでしょう。私もそうありたいと思わせてくれる映画です。
(mandoline)

クリント・イーストウッド『チェンジリング』
チェンジリング 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD]■迷うことなく、クリント・イーストウッドの『チェンジリング』。久しぶりに、場内が明るくなってからも立ち上がれませんでした。
■細やかで誠実な描写を積み重ねてゆくことで、「昔のアメリカで起こった信じられないような実話」は、過酷な運命に翻弄される女性についての、今に繋がる普遍的な物語に昇華されました。いなくなった一人息子を探し求め、結果的に世間を動かすことになるシングルマザーのヒロインの思いに寄り添えたのは、映画の冒頭に彼女がどんな人であり息子とどんな関係にあるか、ふとした表情や会話をさりげなく使ってきっちり描写されていたからと言えます。嘘がないんですね。イーストウッドの映画は、この人はこう、とキャラクターを強調するのではなく、少し距離を置き人物の周りの空気感も含めた絵にするところがありますが、そうしたアプローチがこの映画では言葉にならなかった情感を手触り、肌触りのレベルで伝えることに成功しています。映像も演技も音楽も、無駄がなく、けっして喚かない。
■幼い子供を平気で手にかけるシリアルキラーを題材としたことが災いしてか(またその禍々しさを後でうなされそうになるほどきっちり描いたせいか)、何となく遠巻きにされた感があるけれど、時が経てばちゃんとした評価を受ける映画だと思います。(おそらく、評判になった『グラン・トリノ』以上に)。つらい話だけれど、希望が残される。そんな映画です。
(GOYAAKOD)

チャーリー・カウフマン『脳内ニューヨーク』
去年マリエンバートで  HDニューマスター版 [DVD]■フランスでは、もっぱら古い映画ばかり見ていたので、今年の映画といって挙げるほどは本数を見ていないのですが、それでも、シネマ・コンプレックス全盛の時代に、チャーリー・カウフマン(『マルコビッチの穴』の脚本家、本作が監督デビュー作)の『脳内ニューヨーク』(2008年、米作品)のような作品がが公開されたことは、それなりに意義があったと思います。
■『脳内ニューヨーク』は、劇作家が主人公の物語で、彼が生きている現実と彼の書く芝居の世界が、話が進むに連れて、徐々に融合してしまい、どちらが本当の世界かわからなくなってしまうという映画です。観客の眼前に展開されるイメージは現実のものなのか、それとも彼の「脳内」で想像されていることなのか。ついぞ判断の基準は明確にされません。こうした構成は、レネ = ロブ・グリエの『去年マリエンバートで』(写真)の世界を彷彿とさせて、見ていて嬉しくなってきました。作品自体は、件の劇作家がニューヨークを舞台とした作品を仕上げることができるかどうかが大きなテーマとなっており、そのことがサスペンスを生み出して、最後まで飽きさせない展開となっていました。
■今年の関西の映画状況について、もう一言いわせていただければ、京阪神地区では、未だ『こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』(片岡英子監督)が公開されていない(多分)ことが不満です。
(MU)

ロシュフォールの恋人たち デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]■映画はいろいろ見ましたが、新作よりも旧作の見直しに印象的なものが多かった一年でした。デジタルリマスター上映の『ロシュフォールの恋人たち』は楽しかったです。ほかには、金沢21世紀美術館で『AKIRA』の爆音上映会に参加しました。ロックコンサート並みにスピーカーを積み上げての上映、芸能山城組の音楽が心臓を直撃し、耳を聾しました。音量が映画鑑賞に与える影響をあらためて考えてしまいました。
(bird dog)

ジョン・ウー『レッドクリフPartU−未来への最終決戦−』
【初回生産限定】レッドクリフ Part I & II DVDツインパック■周瑜が『三国志』のイメージより格好良すぎるのですが、今回の主役だから仕方ないか(笑)。美男で才知に長けてはいるのですが、何かと諸葛亮に煮え湯を飲まされてるイメージだったので…。ストーリーとかキャストとか、ポイントは何かとあるはずなんですが、一番印象に残ってるのは合戦のシーンでした。
(tk)

粟津潔『ピアノ炎上』
■2009年映画館で見た中の私の最高傑作。この作品は大阪で10月に「日独仏実験映画祭3」が開かれ、その時に日本の70年代実験映画の作品として上映されました。私は寺山修司の作品を見に行ったつもりが、なんと粟津氏の作品に衝撃を受け、その場で頭をハンマーで殴られたような感じでした。ストーリーは簡単。ヘルメットをかぶった1人の男(山下洋輔)が原っぱで燃えさかるピアノを弾き続ける、というもの。単純な話だが、私が注目したのは即興のピアノのメロディが時間の経過とともに妙なノイズ(「パチ、パチと炎が弾ける音)と一種の共生状態に入り、我々を既成の時空を飛び越えた、別次元にいざなってくれること。私は恍惚状態になり、ふと小学校時のキャンプファイヤーのワンシーンを思い出す。赤々と照らされた仲間の顔に、火花に熱された我々の歌声がゆっくりと舞い上がる、何ともいえない神々しい瞬間。映画の終りは、男も画面から消え、ただ黒い残骸が残るのみ。今でも私の頭の中で「パチ、パチ!」といった炎の戯れる音がこだまする。
(里別当)

『宇宙戦艦ヤマト、復活編』
■今年、唯一映画館で見た映画。映画館に行ったのは何年ぶりだろう。もちろん、子供の付き添いです(笑)。最初の日曜だというのにシートは半分も埋まっていない。子供は少なく、客層は私と同年代くらいのマニアックな風貌のオッサンばっかり。それでも私が小学校6年生のときに夢中になっていたアニメシリーズを子供と見に行くなんて感慨深いものがある。いきなり、原案「石原慎太郎」という文字が浮かび上がって唖然とした。確かに特攻シーンが多かったが、これはヤマトでは反復されているモチーフなので目新しくはない。あとは民族自決のメッセージが石原風なんだろうか。
■地球がブラックホールに飲み込まれるという話だが、人間だけが意識する宇宙という空虚。それをイデオロギー=物語で埋めなければ不安でしょうがないのが人間の性だ。イデオロギーの本質はこういうB級映画の中でこそ浮き彫りになる。そのやり方があまりにもご都合主義で、もう一度太平洋戦争をやり直したいという欲望が見え隠れする(アメリカが映画の中でベトナム戦争をやり直したがるように)。宇宙に逃げようとじたばたする人間たちとは裏腹に、地上の動物たちがいちばん潔い(それを象徴させるようなシーンがある)。特定の環境にのみ適応するようにプログラミングされている彼らは、宇宙の果てを思い巡らすこともないし、地球が滅びようがお構いなしだ。そういう環境を持たない人間は虚空に向けて、虚妄に満ちた言葉=物語を紡ぎ続けるしかない。
■ところで、最近映画を見ているとやたらとベタなセリフや演出が目に付く。つまり必要以上に言葉で説明したり、演出に関しても紋切り型に依存する。「おくりびと」を見ていてそれを強く感じた。あるシーンを映画の文法にのっとってさらりと見せるのではなく、わざわざシーンの解説を上からかぶせるような無粋さを感じてしまうのは私だけだろうか。おそらく映画の文法の共有度が落ちてきていて、それを補わなければ観客にアピールしなくなってきているのだろう。
(cyberbloom)






★みんなで選ぶ FRENCH BLOOM NET の年末企画です。このあと、2009年のベスト・アルバム、2009年のベスト本、2009年の重大ニュースと続きます。ぜひ読者の皆さんもコメント蘭に自分のベスト映画を書き込んでください。

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2009年09月09日

リマスター発売記念 私の好きなビートルズ

2009年9月9日、つまり今日、ザ・ビートルズの全オリジナル・アルバムがデジタル・リマスターされ、全世界で同時発売される。発売を記念していろんなイベントや企画があるようだが、うちのブログもそれに便乗してビートルズのベストアルバムとベストソングを選んでみることにした。選者は Manchot Aubergine さん、bird dog さん、GOYAAKOD さん、cyberbloom の4名(exquise さんのは後日お届け)。

ビートルズは国境を越え、世代を越えて共有されている数少ない音楽のひとつでもある。かつて教養と呼ばれたものはそれ自体の価値以上に、多くの人に共有されていたから意味があった。コミュニケーションのチャンネルとして機能していたのだ。いまやそれに変わるものはビートルズであり、宮崎駿であり、iPodなのだろう。

フランスのニュースを見ていても、今日の発売に向けて、レア映像を紹介するなど連日ビートルズの話題で盛り上がっていた。


Manchot Aubergine 編
ベストアルバム:REVOLVER
リボルバーレノンのキャリアのピークといえる名盤。RUBBER SOULもSGT.PEPPER'SもABBEY ROADのB面もいいけれども、粒ぞろいという意味では、本作が一番。レノンの代表曲と言っていい"She Said, She Said"、"Tomorrow Never Knows"の2曲を筆頭に怒濤のような名曲の数々。マッカートニーの曲では"For No One" "Here,There and Everywhere" "Got to Get You into My Life"が出色。"Eleanor Rigby"もいい(この曲は一般に「マッカートニーもの」と認識されているが、実はことのほかレノンの貢献が大きい)。

ベストソング:No Reply
意表を突くコード進行、ハーモニーのすばらしさ、ほろ苦さをたたえたストーリー性のある(しかも、かわいい)歌詞。レノンの名曲。マッカートニーの曲で一番好きなのは"Lovely Rita"。曲全体が日光を浴びた雪の結晶のようにキラキラきらめいている、超一流のポップソング。ついでにいうと、カラオケでの私の愛唱曲は"She's a Woman"と"Oh! Darling"。


bird dog 編
ベストアルバム:RUBBER SOUL
ラバー・ソウルビートルズは、子供の頃から全アルバムを聴き続けてきました。なので、どれか1枚というのは難しいのですが、なじみの深さからRubber Soulを選びました。

ポールのベースがDrive My CarやThink For Yourselfで暴れまくり、ジョージがNorwegian Woodでシタールを初めて披露し、ジョンがGirlでため息を歌の一部にしてみせ、リンゴがWaitで激しいタム連打と焦燥感あふれるタンバリンを聴かせる、という風に、それぞれのミュージシャンシップが遺憾なく発揮されているのもいいですし、Nowhere ManやIn My Lifeでジョンが一級の作詞家であることを証明したのも、このアルバムの特筆すべきところでしょう。コード進行やベースラインなど、タイトル通り、全体にソウルミュージックからの影響が色濃い作品だと思います。

またThe Wordの見事な三声ハーモニーや、Girlの「ティティティティ」、You Won’t See Meの「ウーラッララ」というユニークなコーラスなど、ビートルズのトレードマークであるコーラスアレンジも冴えています。(ただし、「ウーラッララ」に関しては、同じパターンをNowhere Manでも使い、しかも曲順が続いているのは、アイデアの使い回しを極力避けたビートルズらしからぬ失態だ、とイアン・マクドナルドが著書『ビートルズと60年代』のなかで批判しています。そう言われてみれば確かにそうで、おそらくレコーディング締切に追われたためでしょうが、アルバムの完成度という点でやや残念な部分です。)

ステレオ録音は、まだ過渡期であるため、やや分離が悪い部分もありますが、これ以降はライブで再現不可能な音像の追求へ邁進していくことを思えば、これはロックンロールバンドであることをまだやめていないビートルズの最後のアルバムという気がします。そして、やはりビートルズはロックンロールバンドとして、自分のなかでは輝き続けていることを考えると、このアルバムに対する自分の愛着も説明できるように思うのです。

ベストソング:You’re Going To Lose That Girl
聴くたびに胸を締めつけられるのは、Golden SlumbersからCarry That Weightに続くメドレーですが、これはビートルズの終り(それは同時に彼らの青春の終りであり、キャリアの頂点の終りでもありました)をそのたびに確認するからで、曲としての完成度やロックバンドとしての輝きとは、少しずれたところに感動があります。

ヘルプ!ロックンロールバンドとしてのビートルズ、というところにこだわれば、案外You’re Going To Lose That Girlあたりがベストトラックかもしれません。なんといっても、出だしからジョンのヴォーカルが冴えていて、お得意のファルセットもきれいに出ています。ポールとジョージが一つのマイクでコーラスを録音しているのも(少なくとも映画『ヘルプ!』ではそうなっています)、ライブのビートルズを彷彿とさせます。ジョージのギターソロも、この時期にしてはかなり良い出来と言えるでしょう。リンゴのドラムスは、曲への入りが最高にかっこいい。ボンゴもうまく絡んでいます。アレンジはシンプルですが、これ以上どこを工夫して欲しい、ということのない、4人だけで作り上げた最高のロックンロールだと思います。


cyberbloom 編
ベストアルバム:MAGICAL MYSTERY TOUR
マジカル・ミステリー・ツアー私がロックを聴き始めたのはハードロック(特にツェッペリン)からで、その後すぐにプログレにはまった。そのせいかビートルズは甘ったるい安易なロックだという先入観が抜けなくて、「クリムゾン・キングの宮殿」はビートルズがやろうとしていたことだ、というような批評を読んで、そんなわけないやろって頑固に思ってた。

ところがどっこい大学生になってビートルズ好きの彼女が聴けというから聴いた「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」にびっくり。ビートルズってこんなことやってたの?60年代後半から70年代前半のサイケ系をマニアックに聴いてたのに肝心なものを聴いてなかった。不在の中心の周囲をぐるぐる回っていたわけだ。それでも、ピンク・フロイドが裏「サージェント」とも言うべき「夜明けの口笛吹き」(⇒当時のアンダーグラウンドな雰囲気を伝える鳥肌モノの映像)を隣のスタジオで録音していて、様子をのぞきに行ったポールが「彼らには打ちのめされた」と漏らしたという逸話には救われた思いがしたものだ。

その後、アルバムとしてよく聴いたのは、「マジカル・ミステリー・ツアー」。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」に代表される、サイケな浮遊感ときらめくポップセンスが融合した名曲が揃っている。「ハロー・グッバイ」や「フール・オン・ザ・ヒル」なんかも大好きだが、やはり「ストロベリー」のイントロのメロトロン(フルート)にしびれてしまう。

ベストソング:A Day in the Life
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドこの前、あるアーティストの「ジェラス・ガイ」のカバーを聴いたとき、ジョンの曲だとすぐに思い出せずに、何だかビートルズの A Day in the Life と似た曲だなあと思った。どちらもジョンのボーカルとピアノが特徴的だが(A Day の中間部はポールが歌っている)、もしかしてコードパターン(GとかEm)が似てる?A Day in the Life は60年代サイケの金字塔、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の最後をしめくくる曲である。ビートルズの中でいちばん好きという人も意外に多い(坂本龍一もこれを挙げていた)。

世界を傍観するような淡々とした歌もいいが、やはりあのコーラスの部分にグッとくる。もっともこのアルバムは曲の切れの目のない史上初のコンセプトアルバムで、これをひとつの曲として捕らえるのは間違っているのかもしれない。実際、テーマ曲のリプライズ(これもカッコいい!)のあとに続き、めくるめくホットなインナートリップを最後にチルアウトするようなところも、この曲の魅力を高めているのだろう。この曲の最終コードはある音楽評論家によると「音楽の歴史の中でも最も決定的な最終コード」ということらしいが、曲の途中でドロドロしたオーケストラの音が入るのも印象的だ。表向きのコンセプトは架空のブラス・バンドのショーという形式になっているが、裏のテーマは Lucy in the Sky with Diamonds だ。ノリピーとオシオ君のおかげで風当たりの強いテーマになってしまったので、深入りはやめておこう(笑)。しかしながら、アニメーション映画『イエロー・サブマリン』での「ルーシー」とアニメーションの組み合わせは怖いくらいの映像&音響ドラッグ。脳みそがとろけそうになる。

フレンチ・ブログとしては、bird dog さんが挙げている「ラバー・ソウル」を推奨せねばなるまい。唯一フランス語で歌われている「ミシェル」、現在フランス人監督によって映画化されている村上春樹の小説のタイトルになった「ノルウェイの森」が収録されている。


GOYAAKOD 編
王道ではなく脇道ばかり歩いて音楽を聴いてきたものにとって、ビートルズとはさしずめ世界文学全集のようなもの。ということで、コメントする立場にはないのですが、ビートルズの音楽が一人歩きして「化け」たケースを、この場を借りて勝手に紹介させて頂きます。

カントリーのコーナーにアルバムが並べられているエミルー・ハリスが、70年代にレコーディングした”Here, There and Everywhere”は、名曲である原曲とはまた違う場所へ連れていってくれます(アレンジはニック・デカロです)。



☆青い部分は youtube へのリンクになっているので、いろいろ視聴してみてください。よかったら、みなさんのベストアルバム、ベストソングをコメントに書き込んでください。
ビートルズ国民投票の結果発表!(さらに結果を見る)
 ベストアルバム「アビイ・ロード」
 ベストソング「レット・イット・ビー」
「あの人に聞く、ザ・ビートルズと私!」(日本のアーティストが選ぶビートルズ)






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2009年05月13日

パリ大学はストの真っ最中

スト中のパリ大学の写真です。スト中といっても、ブロックしている学生たちはのんびりしたもので、入り口のドアの所に机や椅子を置いただけで、後は1日中音楽を聴いたり、友達同士で話したりしているだけです。ただ、他の学生たちがこのブロックを通ろうとすると、「今日は、学生は通れませんよ。授業はありません」と言って普通は通してくれません。

DSCF0132.jpg

私などは、年を食っているので、先生か職員に間違えられて何も言わなくても通してくれますが、若い学生達は事務手続きに行くにも大変なようです(授業以外の用件を言えば、通してくれます)。

この blocage (大学封鎖)も多分今週までで、来週から試験期間に入りますので、自由に出入りできるようになるのでは思っています。2月以降一切授業をストップしたわけですから、試験も中止に追い込むのが筋だろうと思うのですが、そうすると影響が大きくなりすぎるので、大学側は試験だけはやるようです(まだ情勢はわかりませんが・・・)。ただ、私が聞いている範囲では、ほとんどの科目がレポートのようです(修士課程の場合)。

次の最初の写真は、地下鉄ドアに貼られているメッセージを写したものですが、

DSCF0131.jpg

Au signal sonore j'éloigne des portes.

「発車ベルが鳴ったら、私はドアから離れます」となっていて、乗客への注意広告が1人称で書かれていることに驚きました。日本語だったら、「発車ベルが鳴りましたら、ドアから離れてください」と2人称の命令(=お願い)文になるところですが、それが je を主語にして書かれているとこころが、いかにも個人主義の国フランスだと思います。

※留学中のMUさんから写真とお話をいただきました。大学の blocage と学生のレポートの話題はニュースでも大きく取り上げられています。

Report des examens en septembre ? La galère(15 MAI, TF1)





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2008年10月31日

「宇宙エレベーター」

夏にinSEA(国際美術教育学会)が大阪で開催され、卒論のネタ探しに潜入(?)してきました。その中での一講演だったのですが、なぜか美術及び美術教育関係者の話より、専門外のセルカン氏(科学者)の話が圧倒的に面白かったです。
 
宇宙エレベーターインフラに依存しない(インフラフリー)住宅の話をききました。ゴミからエネルギーを作るので、ゴミはでない。町はサバイバルの基本で、平時には町があるけど、災害時にはインフラフリーの住宅が必要になるかも。そこでロボットが自分の感覚を使って歩く、この技術を応用して住居に適用するとエネルギーがいらないとか!?(専門知識がないので、正確にお伝えできてないと思いますが…)

そんなものをアートの人と作ったらきっと面白い、と言ってたかと記憶しています。技術者が作ると変な形になると。余談で、「ロボット」というと、トルコでは「殺戮マシン」のイメージで、とても「asimo」のようなものは思い浮かべられないとか。「asimo」はまさにアート的だとも。

ちなみに世界(進化の段階?)を、level 0「Industrial Evolution(revolution?)」→level 1 「Energy(エネルギー)」→level 2 「Light(光)」→level 3「 Dimension(次元)」→ level 4「Final Integration(?場の統一理論のこと?)」とすると、現在は Energyの時代にいるそうです。人間が使えるのはまだまだここまでなんですね。

で、こんな感じで面白かったので「宇宙エレベーター」を読んでみました。すごく難しい物理の内容が書かれてるはずなんですが、とても読みやすいです。「次元」の話は、3次元の人間の限界で理解に苦しむところもありますが、世界はあやふやなものかもしれないと思いました。

物理の世界は理解できないけど、「極小=極大」が矛盾しないというか、宗教的ですが「無」の境地とかそんなとこに行き着くような気がして、何だか楽しそうです。理系知識云々というより「誰かが作った決まり事に拘らず、自分の頭でもっと自由に考えてみよう」っていう思いを感じました。

タイムマシン著者の少年時代のエピソードで、学校でボヤ騒ぎを起こして退学になり、一緒に退学になった仲間とタイムマシンを作った、というものがありました。これは同じくセルカン氏の本「タイムマシン」の元ネタなのでしょう。

退学で世界に散り散りになった少年達が集結し、タイムマシンを作る話です。少年たちだけの物語かと思いきや、その少年たちの父親達もカッコ良いのです。

主人公のお父さん(著者のお父さん)が、退学時に校長に向かって言った言葉が男前すぎます。「ウチの息子の悪口を言っていいのは僕だけだ。二度と言うな!!」作中、いろんなお父さんが出てきますが、こんな親子の信頼関係って良いな。現在の少年、かつての少年。未来の父親、現在の父親。同じ場所にさまざまな時間を持った存在があって、同じ夢を見ている。そんな場所そのものがタイムマシンなのかも。

こういう少年たちのストーリーって、女の子にはなんとなくのけ者感がありますが、主人公の母親が「良い仕事」してますので、ラストは痛快です(ネタバレになるので訳がわかんないでしょうが)。この本もとっても読みやすいので、子ども(中学生くらい?)でも楽しめるとおもいます。

□ア二リール・セルカン氏は東京大学大学院工学系研究科建築学専攻助手、エール大学客員教授。ドイツ生まれのトルコ国籍の人で、2001年NASAジョンソンスペースセンター宇宙構造・材料系客員研究員として宇宙飛行士プログラムを終了、2004年、トルコ人で初の宇宙飛行士候補に選ばれま した。

□セルカン氏のブログ:http://blog.anilir.net/



tk

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2008年09月15日

デトロイト・メタル・シティ

デトロイト・メタル・シティ 1 (1) (ジェッツコミックス)「デトロイト・メタル・シティ」っていう漫画、ご存知ですか?

最近映画化されて、コンビニにも白塗りの顔の男のポスターが貼ってありますが、内容は結構…というかかなり、お下劣系で笑いを取る系漫画です。

特筆すべきは、主人公が「フレンチ好きの渋谷系青年」なこと!
フレンチな音楽に憧れて路上ミュージシャンをしたり、大学ではフランス語専攻したり、カヒミカリィのCDを全コンプリートしてたりするんですが、全然自分の音楽が売れなくて…

アメリ漫画の作品中に、「アメリ」が出てきて、主人公があまりの自分の音楽の売れなさに、「このっ!!なにニヤニヤ笑ってんだ!!このアメリがぁぁ!!」みたいな感じでアメリのポスターにキレてみたり。

間違って売れっ子になってしまったデスメタルバンドの方では、フランスのデスメタルバンドと対決して(第3巻)、フランスのお株を奪っちゃうくらい爆笑のフレンチネタ(攻撃)を炸裂させたり。フレンチな知識があると主人公のズレっぷりと物悲しさが伝わってきて爆笑度がUPします。

改めて、 ストーリーのあらすじなんですが、

主人公の根岸くん(23歳童貞)は、ポップでオシャレなミュージシャンに憧れて大分から上京してきます。
上京するまでの車窓がパリのようだ…と思う根岸くん。
で、東京の大学で知り合ったオシャレな友達や後輩と仲良くして、卒業後に本格的にミュージシャンを目指して路上活動を始めるのですが、
お客さんは誰一人立ち止まってくれず…
しかし、ある日目に入った「デモテープ募集」のポスターを見て、自分の曲を送ってみることに。
結果は見事合格!これでオシャレポップミュージシャンへの道は開かれた!

Three Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった私の好きなサラヴァ ― セレクテッド・バイ・カヒミ・カリィ

カヒミにも会える!フリッパーズみたいになれる!
が、しかし…
合格したレーベルは、怖い女社長率いるバリバリのデスメタルレーベル…。
気弱な根岸くんは嫌々ながら、顔面白塗りにメイク、カツラをかぶり、鎧を背負ってステージへ。
そこでデスメタルを演奏したところ、思いのほかお客さんが熱狂。
一晩にして、デスメタル界のカリスマ、クラウザーU世の座に君臨してしまいます。
ホントは、ポップな音楽をやりたい。優しい性格で、意中の女の子とも仲良くなりたい。
でも、日に日にクラウザーさんとしての性格も顔を出すようになり、
ついには何かあればクラウザーさんに変貌して、悲劇(という名の喜劇)を地獄の技(という名のマグレ)で乗り越えたり、また、抑圧していた怒りをぶつけてみたり。
とにかく根岸くん(クラウザーさん)が動けば伝説(しかし読み手は爆笑)が起こるという事態に!

かわいそうな根岸くんはフレンチでスウェディッシュで、アメリにカヒミな生活に戻れるのか!?果たして…


「デトロイト・メタル・シティ」映画版公式サイト
「デトロイト・メタル・シティ」-trailer(from youtube)
□「 デトロイト・メタル・シティvsシブヤ・シティ~渋谷系コンピレーション」(CD)




Caz

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2008年09月11日

黒カナリアのぶらりスペイン一人旅(5)

*勘弁してーもう入りません!!

スペインといえばグルメの国。−というか一日五回の食事を楽しむ人々・・・@朝(コーヒーだけとかビスケット、シリアルとかの軽いもの)、A朝(11:00くらいにサンドイッチなどを食べる。ちゃんと会社にもその時間があるらしい )B昼2:00から3:00あたり。お昼がメインという人も多い。Cメリエンダ7:00くらいか(夕食までのいわゆるおやつ)、D夕食(9:30から11:00)

cordoba01.JPG

友人も「あなたたちはいつも食べる話ばかりしている」と言われ、そんなことないわといったすぐその直後に「何食べようか」と話してたわーと笑っていたし、メニューを選ぶのも真剣そのもの。もう今日は面倒だしそばでさらさらっと済まそうかーという感じはありえない。

ハマムで盛り上がったテンションのまま、ホテルも近いので水着を適当に拭いてその上にコットンのワンピースを着て、街をぶらつく。

セビリャの可愛いアクセサリーと布バッグ(日本の布だった)を作っていたおばあちゃんと片言で会話したときに、この後コルドバに行くと言ったらぜひ行ったら良いと勧められたレストラン(Bodegas Campos)も近いようだし、覗いてみた。コルドバは、メスキータ(モスクを大聖堂に改装したもの。850本の柱が並ぶ、写真上)を中心にしたこぢんまりした街。徒歩で見て回れる。

昔の酒蔵を改装したお店は大変に雰囲気があり、前の王妃のサイン入り樽(ボトルキープならぬ樽ごとキープ、写真中)を含め世界の有名人のMy樽が飾られている。

barrelkeep01.JPG日本の女一人は珍しいのかソムリエ自ら店内を案内してくれ、写真もとってくれるサービス振り。少しずつ色々味わえて、それに合ったお酒も飲めるというのでデギュスタシォンメニューにしたのだが、これが出るわ出るわ。後に後悔するはめに・・・

前菜のホワイトアスパラのスープ。緑と赤の葡萄を二粒と軽くグリルしたグリーンアスパラがアーティスティックに配された皿に白いスープを注いでくれる。こくがあり、塩加減も正に絶妙。葡萄とも完璧にマッチする。

スープ好きの私はガスパチョやサルモリーエスといったスープも今回何度か飲んだけれど、こくはあるのに塩加減が薄めでちょっと物足りなかったのだがこれは本当に美味しかった。

アーティスティックといえば、グラナダで食べたお店のつきだしもとてもお洒落。驚いたことに筍が使われていた(写真下)。


次はタラのオレンジソース。ソムリエの選んでくれた白ワインとも良くあいます。

その次が生ハムとマメのソテー。

この辺りから「ん?まだ出るの?」と思い始めた。普段わたしはかなりよく食べる方なので、あまり心配していなかったのだが、すでにハマムに入る前にバルでコーラとタパスを一品(ちびイカの串焼き)食べていた。それにデギュスタシォンにしては一品の量も結構ある。

しかもこのとき着ていたものが悪かった。10年前くらいに買った綿のワンピが(そんな古いの着ていくなよって話ですがそもそも。別に体型が変わってないのよーという自慢ではない)、濡れた水着の上に着ていたものだから乾くと縮みはじめ、元々かなりぴったりした形なのだけれど、胃の辺りが苦しいのなんのって。「しまった」と思うもまさか脱いでビキニで食べるわけにも行かない。正に後の祭り状態。

bamboo01.JPG

次は鯛と野菜のグリル。鯛を1/4となんとか野菜は平らげる。で、もうさすがに終わりかなと思ったら今度は牛肉のタルタルステーキ。もう勘弁してー!!

しかも味はどれも本当に美味しいのだ。ソムリエも給仕してくれる人々も大変感じが良いだけに申し訳ないのだがどうしても食べられない。

「本当に美味しいんだけれどもう食べられないの」と何度繰り返したか。

デザートはライムのシャーベットとりんごの小さなタルト。

それになぜかもう一品オレンジのシャーベットのオリーブオイルがけ。これがあまりにも美味しくて大和撫子の意地を見せてデザートは全て平らげました。

ソムリエのおじちゃんは「気にしないで。全部食べたら太っちゃうもんね」と慰めてくれたけどあーん悔しい!もっとゆるゆるの服を着て昼とか抜いてたら食べられたのに!!他の客は絶対全部軽く平らげたでしょう。でもみんなおなかはかなり立派だったのも確かだが。

誰か胃袋に自信のある方、そうねえ、ギャル曽根ちゃんとか行って、日本女性代表でリベンジしてきてくれませんかね。






黒カナリア

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2008年09月07日

黒カナリアのスペインぶらり一人旅(4)

*誰でも友達―chico/chica?

sevilla001.JPGしかしスペインでは旅していて一度もいやな思いをしなかった。みんなあまり英語は出来ないが、一生懸命スペイン語で返事をしてくれ、例えば道を聞いてもこちらがわからないと見るや「一緒に行ってあげる」とみんなそこまで連れて行ってくれる始末である。バルでもどこでも気軽に声をかけてくるし、ことにアンダルシアではみんな人懐っこい。セビリアでバスの予約をした帰りのバルで、となりにふらっと並んだちょい悪おやじとの会話などはー

「Hola! Chica=(よお、おねえちゃん)、わりこんじまったかい?こいつはごめんよ、元気かい」
「元気よ、ありがとう」
「セビリアはきれいなところだろ。大聖堂(写真上)にアルカサル(写真下)によ」
「そうね。本当にキレイだわ」
「色々見所があるだろう。あ、俺のサンドイッチがきちまった。俺はあっちで彼女と食うからよ、邪魔したな。楽しんでいきなよ」
「じゃあね」

えーこれはスペイン語の会話なのでかなり適当な訳ですが、大体こんなことを言っていたみたいなので。しかしchica(少女)ねえ。ま、友人達によるとスペイン人は年齢問わず誰にでもchico/chicaなんだと言っていたが、それにしても、アジア系はかなり若く見られるようで、アルハンブラで写真を撮ってもらったフランス人マダムにも「このjeune fille(女の子)」と言われたし(さすがにフランスでは誰彼なしにjeune filleとは言わないでしょ?)、スペイン新幹線に乗ろうとすると、窓口の職員は一等席は空いているのにこんな娘っ子にはお金がないと思ってか勧めようとしないし。友人宅近くでは車に乗っていた大学生みたいな男の子達に口笛を吹かれたが、私は教員なのでいわば自分の学生に口笛を吹かれたようなものである。

sevilla002.JPGおいおい君たち、おねえさんが一体いくつだと思っているのかね? 
まあ、そんなことは言わぬが花であろう・・・


*これは極楽ハマム(アラビア式風呂)をはしご

あまりの暑さにスペイン人はシエスタ。しかしホテルの部屋でシエスタも少しわびしい。そんな時時間の有効利用にはハマムがいいのでは。

水着(マッサージを受ける女性はビキニが必須)さえ持っていれば予約を入れて後は体一つで行くだけ。入り口のシャワーで体を洗い、まず水風呂、ぬるめの風呂、熱い風呂と三種類のプールが続く。マッサージを受ける場合は番号の書かれた札を手に巻いてそれまで風呂でくつろいでいればよい。お香の焚き染められた室内、モスクを模した天井からは星や、月の形にくりぬかれた穴から光が差し込む。神秘的な薄明かりの中、恋人といちゃつくのもよし、一人静かに瞑想するもよし。ドイツ?の若者たちはばっしゃばっしゃ子犬のようにはしゃいで物静かなスペインマダムに嫌われていた。

乾燥に弱いわたしは水辺にいるだけでテンションが上がる。マッサージはアロマオイルを使ったもので、背中中心に、コリをとるというよりは筋肉を正しい位置に戻すという感じのソフトなもの。マッサージしてくれるのもいかついおやじではなく、細身の美女か、とってもハンサムな青年ですのでご安心を。確かにビキニのトップまでとるんだからオヤジに撫で回されたくないわな。

あまりに気に入ったのでグラナダとコルドバと二回も行っちゃいました!他に誰もアジア系のいない中、いちゃつく相手もいない一人旅、浅めのお風呂でヨーガのポーズをとったり、プールに降りる石段を利用して青竹ふみをしていた怪しい東洋の女がいたらそれはほかならぬ私です。




黒カナリア

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2008年09月02日

黒カナリアのぶらりスペイン一人旅(3)

*恐るべしスペイン食事時間

しかしこの日はバスツアー9:00終了では終わらなかった。Mが彼氏と夕食をする約束をし、その待ち合わせが9:30。後々までわたしはこのスペイン時間に苦しめられた。そもそも日本でのわたしの夕食時間は六時と早い方なのでかなり辛かった。

granada03.JPG

不意にMがトイレを借りるとバルに駆け込んだ。えー、もうすぐだから待ち合わせた店で行けば良いのにといいかけたわたしの目には鏡の前で必死に身づくろいするMの姿が。

そうか、女心ね。この日の気温は40度くらい。二階建てバスで汗はかくわ、日には当たるわ、靴擦れするわのままで、知り合って半年の彼氏に会いたくなかったんだ。可愛いじゃないの!

とはいうものの、ブラシすら持っていないMは私のグロスとチークをつけ、「輪ゴムはまずくない?」という私のアドバイスに従ってゴムを取り、いざデートへと洒落込んだのであった。

でも私は夕方のデパートのトイレにくるくるカーラーまで持ち込んで、一からばっちり化粧直しして出かけていく日本の女の子たちよりも、なーんにも持って来なくて鏡の前で慌てるMの方が好感持てますが。

かくして彼氏の友人も交えた夕食は11:30辺りまで続き、腹ごなしのながーい散歩がその後に続き、散歩の後の一杯があり、そして家にたどり着いたのは午前3:15だった・・・。死ぬー!!


*アンダルシア編

方向音痴には辛いです。広すぎるよこの庭園・・・

グラナダに着いたのは朝の8:00。だからだろうか、涼しい風が吹き抜けて、大阪の汗まみれの目覚めとえらい違い。しかし日が昇りきったときの暑さをわたしは知らなかっただけのことである。10:00にはもう眼もくらむばかりの日差しが照りつけて、ドライなだけに木陰に入ると涼しいが、湿気がないぶんダイレクトにじりじりくる。焦げそうな感じである。

granada02.JPG

予約していたアルハンブラ。確かに予約はしておくべきである。すごーい人が並んでた。予約してても引き換えるのに少し並ぶのだから。

まず離宮ヘネラリッフェとその庭園。この時点の気温はすでに40度を越えていたのではと思うが、あまりの美しさ(写真上)に暑いのも忘れるくらい。庭園をくまなくめぐる水路の水がとても冷たいのにも驚かされる。シェラ・ネバダの雪解け水らしいが、まさに水を制するものは全てを制していたわけで、当時のイスラムの王の力と文化の高さを思い知らされる。

ちょっと興奮して写真を撮ってしまう。進むごとにまた美しい景色が広がるのでシャッターを次々押してしまうのだけれど、もうきりがない。

granada01.JPG

アルカサバ(要塞)からの白いアルバイシン(城塞都市、写真中)の眺め。ナスル宮の見事な装飾(写真下)。全てが素晴らしいが、ナスル宮に入るまでさんざん日差しの中を待たされるのが辛い。しかもなんでみんな帽子なし、タンクトップのむき出し状態なんでしょうか?中には火傷みたいになっている人を多々見たぞ。ベビーカーの子供なんて干上がるぞ。この時代になっても白人の日焼け信仰はまだ根強いみたいです。

この暑さでも宮殿の中はひんやりと涼しい。正に夢の宮殿・・・




黒カナリア

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2008年09月01日

黒カナリアのぶらりスペイン一人旅(2)

*お素敵なアパート到着&スペインファッション事情?

友人の自宅は空港から車で40分近く。バルセロナ郊外の静かなアパート(日本でいうところのマンションです)。新築なので全てが新しくゲスト専用のシャワールームもある。

早速スーツケースを解いてお土産の浴衣(ありがち?)、焼き物のワイングラスなどを手渡す。

barca01.JPG

翌々日、バルセロナバスツアー(これは便利です。20ユーロで三コースあって、乗り降り自由。少し待てば次のバスにすぐ乗れる。景色も良いし、8ヶ国語対応のイヤホン付き)に出かけようとした私とMではあったが、お洒落なブルーのタンクトップに踵の高い木製のサンダルで決めたMの後姿になんとなく違和感が。

んんっ?Mのゆるいウェーブのかかった黒髪をがっちり一つにまとめているその飴色の物体はー。

それって私がお土産のワイングラスを入れた木箱を止めてたぶっとい輪ゴムではないかっ!

繰り返すがMは黒髪にぱっちり情熱的な黒い瞳の美人である。会計士で素敵なアパートは持ち家だし、お洒落で趣味は絵を描くこととウィンドーショッピング。でも髪をまとめてるのは輪ゴムの親玉。いいのかそれで、Mよ。一応聞いてみたが「そうよ。でも便利なの、これ」とすましてたからきっと良いんだろう。


そしてバスツアーに向かう我々には駅に着く前に問題発生。歩くたびに「からんころん」と鬼太郎のような音を立てていたMだが案の定駅に着く頃にはでかい靴擦れが。バスツアーよりもまずスペインのデパートチェーン、エル・コルト・イングレースでバンドエイドを買うはめに。ここで男子諸君にアドバイス。

たぶんアナタもデートでそういう状況に陥ることがあるかもしれない。しかしそういうときに絶対「なんでそんな靴履いてくるの」などと愚問をすべからず。女の子がその靴を選んだのには色々事情があるのだ。Mの場合だと今日は日本から来た友達と一緒だし、この木製のサンダルが和物っぽくてお洒落、背も高く見えるし、(Mは小柄である)ぴったり!―と思ったのに違いないのだ。

女の子にはこういう微妙な諸事情があるのだから、そんな時は「大丈夫?なんならお姫様抱っこでもしようか」と言ってれば良いのだ。まあ彼氏ならぬ私は抱っこは申し出なかったけど、黙ってバンドエイド貼らしてもらいました(しかも何度もはがれるちゃちいバンドエイド)。
で、この日のメニューはバスツアー&シューズハンティング(何軒靴屋を回ったか・・・)。最終的に友人は靴下と秋物のスニーカーを手に入れ、私はいかにもバルセロナーな写真を撮り(写真↑)、新しいショッピングセンターで買い物もしたのでめでたしめでたしーか?




黒カナリア

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2008年08月29日

黒カナリアぶらりスペイン一人旅(1)

スペイン人の友人達がいるし、彼らも昨年年明けを挟んで日本襲来(本当にそんな感じだったので)してきたし、今度は私の方が行こうかなということで今回はスペインを巡る旅。厳密に言うと、友人宅に泊まったりもしたので全日程が一人旅ではないのですが。

バルセロナ到着までは問題なく、アムステルダムで乗換えが一時間しかなかったのでちょっと心配したけれど、空港職員はいたってのんびりしたもので、何、間に合うさってな感じで、確かに余裕で間に合いました。

問題は到着してから。そもそもまずい予感はしていた。友人のMはとても気立ての良い美人さんなのだが、いかんせんまさにスペイン時間を地で行くタイプ。待ち合わせをして時間通りに来たためしがない。しかも出国直前のメールで「仕事がバカンス前の最終日で待たすといけないから弟をよこす」と言って来たのだ。弟って・・・わたしはあんたの弟の顔なんぞ知らんし・・・まぁ弟にすれば東洋の女を捜せばよいからわかるのか?

しかしわたしの名前の書かれた紙を手にした、それらしき人物を探すも見当たらず。まあこんなこともあろうかとしばらく待っては見たものの、やはり誰も現れず。

喉は渇くし、計15時間座り詰めの腰は痛いし、他の人たちは次々迎えの人と抱き合ってるし。とりあえず隣のカフェで水を買い、飲みながら弟の携帯に電話をするも、英語が通じたのか通じなかったのか、「今出るところだから」「黒い車だよ」などと冗談のような断片情報しかない。「黒い車」って言ったって・・・しかも弟をよこすといったはずの友人からは「わたしが行くから」という更にナゾなメールが。

これは待っててもなかなかだぞと覚悟を決めてカフェテラスに腰掛けてほぼ一時間。目の前にMが。いきなり謝ってる姿がとてもチャーミングであった。

いくら待たされても見知らぬ異国の空港で、知った顔に会えた時の喜びは一入ですね。(続く)



黒カナリア

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2008年06月20日

日本のオートクチュール?

kimono01.jpg最近、和服に興味があって、家の着物で着付けを練習してます。
家にたくさん眠ってるのに一人で着られないのも寂しいし、結婚式なんぞに呼ばれると、これから年をとるとドレスやワンピースは肌の露出がしんどいかな〜とおもったのがキッカケです。

ファッション業界でも着物の展開が広がっているもよう。「こむさでもーど」とか良くみかけます。「ユナイテッドアローズ」も和装の展開してますね。男物も女物もあります。今は浴衣の季節なので、おなじみの洋服メーカーやブランドの浴衣をよく見かけます。

ネットで着物を見てると、「H.L」(アッシュ・エル)というブランドがよく出てきます。フランス人デザイナー「アンリ・リュック・シャピュイ Henri-Luc Chapuis 」のブランドだそうで、フランスと和服の意外なつながりが。華やかで上品な花柄が多く、和服にマッチしてて良いと思います。

カンヌ映画祭で木村佳乃さんが黒い振袖着てましたが、最近の結婚式のお色直しでも黒振袖の人気が高いそうです。
成人式の振袖の帯結びも、こだわる人は「ふくら雀で!」という人も多い。(皇室がこの結び方らしいので)

しかし、呉服屋さんは敷居もお値段も高い(しかも適正価格なのかどうか怪しい)。とくにブランド品や作家物だと、良いパソコンが余裕で買えます(周辺機器セットでもお釣りがくるかも)。なので気軽にお店には行けません。スーツやワンピース買うのとは訳が違います。また、新品じゃなくても、リサイクルや古着もあります。
相当悪質な商法もあったり、「格」やらTPOのしきたりが結構面倒くさかったり、手が出ないくらい高価だったり、着物にうるさいオバ樣方の視線が怖いし、そもそも着付けられないし動きにくいので、庶民から遠い世界になってます。(庶民の私には当然よくわかりません)

cannes0801.jpgでも、京都に行くと若い着物の人が多いです。着物をレンタルして着付けてくれるところもあるし、和服の人に割引があったりします。

着物はさすがに日本の季候には良く合ってて、構造も合理的。知恵の結晶です。布1枚で体を包むので、天然素材のありがたさがよくわかります。
生地の産地も地方ごとにそれぞれ名産があって、まさに「地方分権」の様相。現代で言うところの「都市」より「地方」の方が圧倒的に面白そうです。

柄にもマジメな意味があるものや、思いっきり遊んでるものもあって面白いです。たとえば、「麻の葉」だと、成長を意味するので子どもの衣服に多かったとか(子どもの剣道着の模様に見受けられます)。植物の麻は成長が早いそうです。
武士の裃の柄が起源の江戸小紋は、元々柄が細かいのですが、(細かいほど格が高いそうな)遊びのデザインだと、よく見ると「家内安全」っていう文字が意匠化されてそのまま細かく描かれてたりします。ぱっと見はわかりません。

ただ、着物は反物の巾が決まってるそうなんで、長身の人にはあまりやさしくないと思います。

だいぶ前に某着物展示会で見かけた、大物らしい着物作家(芸能人の着物のデザインを手がけてたり、文化勲章だか何だかよくわかんないけど、とりあえず何らかの評価がある)とお客のマダム。やり取りを眺めてると、フランスのオートクチュールの世界もこうなのかなと思いました。




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2008年04月21日

パリでサッカー観戦

もう先月のことになりますが、初めてフランスでサッカーの試合を観戦しました。コルシカのチーム、バスティア対パリ・サンジェルマン、場所はメトロの10番線の西の端、 16区にある Parc des princes です。私の家からはパリの端と端でちょっと遠いかなとおもいましたが、メトロの駅を出ると目の前がすぐにスタジアム。案外行きやすい場所にありました。

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この日の試合開始時間は夜の6時。実は、わたしは日本でもサッカーの試合をほとんど見たことがなく、京都と大阪に住んでいたので、地元チームの京都サンガとガンバ大阪の試合をそれぞれ一戦ずつ観戦して以来です。今回、パリ・サンジェルマン戦を見て、地元チームの試合を一度見るという、特に決めているわけではないのですが、慣例行事をこなしました(?)。

PSG01.JPG

あまりサッカーを知らなくても、選手やボールの動きを追っているうちに迫力とスピードに引き込まれ、試合時間90分があっという間に過ぎたのでびっくりしましたが(選手の名前など、知らないままですいません・・・)、合間に観客席も観察、観察。女の子はあまり見かけず、ほぼ男衆。友達とグループで来ていたり、父子で応援に来ていたり、子供、若者、大人と各世代。とくにおじさんたちは年季が入っている様子で、ゴールが入ったときに、大喜びなのはもちろんですが、ゴールが外れたときの悔しがり方も本格的で、真剣で、こちらはつい笑ってしまいそうでした。ちなみに、入り口で持参のビールを没収されましたが(その場でちょっと飲みました・・・)、実際、ビールを飲んでのんびり試合を見ている人はいませんでした。

パリ・サンジェルマンは20チーム中18位であまり成績がよくないようですが、この日の試合は2対1でパリ・サンジェルマンの勝ち。得点が入る試合で、勝ち試合だったので、楽しい観戦となりました。


□パリ・サンジェルマン公式サイト http://www.psg.fr/



ubucoucou

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2008年04月16日

暁斎 (京都国立博物館にて)4/8〜5/11

河鍋暁斎 河鍋暁斎の作品展示です。
「泣きたくなるほどおもしろい」というコピーのとおり、泣きと笑い、その他に恐怖やおどろき、やさしさなど、あらゆる感情を存分に堪能できました。

 幽界・冥界、俗世界。森羅万象。物語に鳥獣戯画。地獄の閻魔と美しい仏。
 技術面では、ごちゃごちゃ言わずとも、圧倒的に上手い。タッチだけでなく、画面の大きさも構成も意図的、効果的に使い分けられていて、表現世界の広さがすごい。なにより観察眼の鋭さが桁違いだと思いました。
 
 幽霊といえば、円山応挙が有名ですが、応挙の幽霊がどこか幽玄なのに対し、暁斎の幽霊は、本気で怖かったです。これ以上ないくらい恨めしげな目つきは忘れられません。
 蟹や、踊る猫、蛙、お茶目な妖怪は現代でもマンガとして通じるんでは?微笑ましいです。よく観察されているせいか、戯画化しても嘘くさくない。
 骸骨のモチーフが結構出てきます。「九相図」(死んでから土に還るまでの過程)のリアルなものから、踊ったり三味線弾いたりしてるものも。
 お弟子さんのために描いた手本もありました。コンドル(お雇い外国人。鹿鳴館の建築家)も弟子だったので、お手本もいろいろ試行錯誤の跡がありました。
 
 閻魔大王は、地獄で審判を下す、こわーい絵ばかりではなく、「こんなはずでは」とうろたえる閻魔さまもありました。今は、子どもを叱る時に閻魔大王は引き合いに出されるんだろうか?(私は祖母に閻魔さまを引き合いに出され、よく叱られました。)
 パンフレットなどに一休さんが載っていますが、とても高僧とは思えないおどけた(そして何気にエロ爺な)一休さんです。
 若くして死んだ少女のために描いた絵は、絵本のように優しくて愛らしい、繊細な感じ。
 インパクト大だったのは「放屁合戦」。…なんか凄まじい光景です。後ろにいたおじいちゃんが笑ってました。

 同じ会場で見ていた外国人の二人組が「crazy painter」とか、「amazing」とか何度も呟いてました。
 
 めちゃくちゃ精巧なのに、飄々としてる。目一杯勉強してるけど、ガリ勉に見えない。
 作品を見てると、豪気で粋な、遊んでるけどまじめなのか、まじめに遊んでるのか、そんな感じのおじさんを想像してしまいました。
 今年は没後120年だそうですが、120年経ってもこの迫力と存在感。
 芸術に限らないですが、物理的な意味ではなく、今あるもので120年の時間に耐えられるものって何だろう?
 

京都国立博物館「絵画の冒険者 暁斎」



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2008年03月27日

いのちの食べかた OUR DAILY BREAD

以前、ブログ(infobase)で紹介されていた「いのちの食べかた」を観てきました。世界中の映画祭で大反響を呼んだドキュメンタリーで、監督はオーストリア出身のニコラウス・ゲイハルター。

野菜、果物、お肉、お魚。いつも食卓に並ぶ食品がどうやってつくられてるのか。

延々と繰り返しの光景が、淡々と綴られていく。
ベルトコンベアに乗せられ、これでもかと詰め込まれるひよこの群れ。
逆さ吊りにされ、チェーンソーで解体される豚や牛。
ハウスのなかで整然と、たわわに実ったトマトが、ただ機械的に収穫されていく。
ぷかぷかとプールのコースのような水に浮く大量のリンゴたち。
ホースで大量に吸い上げられ、ベルトコンベアであっさり解体されて行く魚たち。
そして、そこで働く人たちの機械的で無機質なこと。会話のシーンはすこしあるけれど、セリフらしいセリフはない。音楽もない。

家畜や野菜果物にしろ、人間にしろ、「生き物」はたくさん出てくるのに、すでに単なる「モノ」にしか見えず、ありがたみのかけらもない(ように見える)。
生産の営みは、単なるルーティン・ワーク。食肉解体や、まるで破壊行為のような収穫現場は凄惨で残酷なはずの光景なのに、あまりの単調さに、時々眠気が襲って来るほどだった。(寝不足で観たせいもある・・・)

最初にこのタイトルを見たとき、観賞後は食の安全とか自給率とか食料問題、生命の大切さとか考えたりするのかなと思っていたら、ちょっと脱線してしまった。
確かに生命について考えた。けれど、「生命の尊さ、重さ」そんな言葉が、何て陳腐に響くのか。尊い命。だけど、ありふれていて、軽い…。何とも言えない切なさ。
ふと、この食料生産のドキュメンタリーを通して、現代の何かと問題になってる労働現場や戦場に置き換えて考えてみると、どこかそら恐ろしい比喩にも思える。

食べて、生きる。死ぬまで延々と続く繰り返し。宗教に造詣は深くないけれど、何やら生命の「業」を感じた。

映像は、パンフレットやチラシに書いてる通り、画面が絵画的で綺麗でした。特に色が美しかったです。


□公式サイト http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/
□公式サイト(英語版 OUR DAILY BREAD)
予告編

□森達也による「いのちの食べかた」(パンセシリーズ)




tk

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2008年03月14日

ぼくの好きな先生 Etre et avoir

Etre et avoir ぼくの好きな先生いきなり牛が吹雪の中にいるという、この季節には寒々しいシーンから始まります。
スクールバスに乗っていく生徒たち、年齢はさまざま。
カメ2匹がのんびりと歩く、あったかい教室。
ここは小さな村の小学校、超少人数。
みんなが兄弟のように過ごしています。
同じく小学生の子供が出てくる「エコール」とは、また違ったほのぼのとした雰囲気。
(一般ウケするのは確実に「ぼくの好きな先生」の方。)

おおよそ13人の子供たちが、ただひたすら勉強したり、遊んだり。
定年退職前の厳しくも優しいロペス先生に、
幼稚園から小学6年までに習うことを、一貫して教えてもらっています。

子供はそれぞれ個性があり、中には日系(?)の子もいます。

この映画の見どころは、ドキュメンタリー映画として良い点である、
「自分もその場所にいるような感じがする」ところです。

特に、フランス語習い始めで、しかもどうやってフランス語を覚えたらいいのかさっぱり、
現地の人はどうやって覚えているのだろう…という疑問は、
この映画を見るとスッキリ解決するかもしれません。

何のことはなく、日本と同じような教え方をしているのです。

「あん、どぅー、とろわ…」と、数字を覚えたり、
文字を書いて覚えたり、お絵かきしたり、先生の言うことを書き取ったり。

宿題が出れば家で家族みんなで大奮闘。
お母さんに「そこ違うでしょ!」と叱られながら、ああでもない、こうでもない…

ケンカもするし、「あの子わたしの消しゴムとった!!」と文句もたれます。

ほとんど、日本の小学校の風景と同じなのです。
むしろ、家で算数の宿題をしていて親に「違うでしょ!!」と言われて、
最後は親まで宿題にまいってしまうシーンは、懐かしささえありました(笑)

(算数のシーンでは、数字もたくさん出てくるので要チェック!)

そして、Etre と Avoir、タイトルにもなっているこの二つの動詞から見ても、
フランス人にとってのフランス語の始まりも、
日本人がフランス語を始めるときと全くと言っていいほど同じなんだな、と分かります。

子供たちは可愛いし、風景もとてもきれい。
子供を一生懸命思いやる先生と、リアリティあふれる小学校の毎日。

のんびり見てもいい映画ですが、フランス語をしている人には、
まるで自分も小学校に入学したかのような気分になり、
子供たちと一緒に「うぃぃ〜!」「ぼんじゅ〜る、むっしゅ〜」と言ってしまいそうになります。

フランス語を習いながら、「こんな難しいの、どうやって覚えるんだ!?」となってる人が、希望を持てそうな、おススメ映画です。


Etre et avoir ぼくの好きな先生
バップ (2004/04/07)
売り上げランキング: 15162
おすすめ度の平均: 4.5
5 素朴な人は素朴さを伝えられない
5 日本人が忘れてしまったもの
5 教育関係者のかた! ぜひ観てください。


Kaz

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2008年03月02日

ヴェルサイユで迷子

旅行でパリに来ていたときにはヴェルサイユ宮殿まで足を伸ばしたことはなかったのですが、こちらに住み始めてから二度ほどヴェルサイユに行きました。RERのC線に乗って30分ほどで着きます。街中の建物は低く、整然と綺麗な町並みで、パリとはまた違う地方都市の景色。思い立って普段生活している街とは別の街に来てみると、実際にはそう遠くはないのに遠くに来た気がして、旅行気分が心地よいです。通りをちょっと散策して、やはりヴェルサイユ宮殿を見に行くかア!

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宮殿に着くと、宮殿よりも広大な庭のほうに目を奪われます。幾何学式庭園のまわりにはなにもないだだっぴろい土地が広がっているのですが、地平線まで見渡すと、奥のほうに見える巨大な四角い池が鏡のようにきらきらと光っていて、とても不思議な光景。前回はこの写真を撮ったあたりからこの景色を眺めて退散したのですが、今回は庭園の奥のほうまで歩いて、巨大な池に近づいてみることにしました。池まで行くと、プチ・トリアノンの方角をしめす標識があったので、ソフィア・コッポラの映画『マリー・アントワネット』でのプチ・トリアノンのシーンもかわいかったなあと思い出しながら、プチ・トリアノンにあるイギリス式庭園と田舎風の家を目指しました。

友人とはヴェルサイユ宮殿に着くまでにはぐれてしまって単独行動をしていたのですが、しばらく歩き、プチ・トリアノンを散歩し、そろそろひきかえしたほうが…と思ったときには、出口の方向がわからず、わたしはひとり広大な敷地内を小走り。この時、林に沈む夕日がとても綺麗でしたが、閉館時間ぎりぎりでプチ・トリアノンに閉じ込められそうでちょっと怖かったです。ヴェルサイユ宮殿は広いなあと思い知りましたが、敷地内を出ても迷子のままで、RERの駅はもはや歩いて戻れるような距離ではないらしく、地元の人に「パリに帰りたいです〜」と助けを求めて、バスと電車を乗りつぎ帰ってきました。ヴェルサイユからパリに行く路線は複数あるのですが、到着した駅RERのC線のVersailles-Rive Gaucheではなく、モンパルナス行きの電車が出るVersailles-Chantiersから帰り、フランス国鉄の長距離列車は10分であっという間にパリに着きましたが、ひさしぶりに心細く迷子になったおかげで、充実した遠足になり、満足しました…。

ヴェルサイユ宮殿HP



ubucoucou

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