2011年02月14日

瞳の奥の秘密

 どこか懐かしさを覚える画面づくりだ。
機内で見たせいか全体に黄色っぽく見えたからか。それとも女が走り出す列車に追いすがるという昔のメロドラマさながらのあまりに定番な別れのシーンのせいか。
 ラテン映画らしくきっと「濃いだろう」というこちらの期待を裏切らない。人間関係における愛憎。そのどちらもが強く激しい。
 かつて検察書記官だった男が、昔関わったある殺人事件を小説にするところから物語は幕を開ける。
 新婚間もなく殺された美しい若妻。男はアルバムに残された写真の人物の視線(瞳)から犯人を割り出す。男とその友人の活躍の末、犯人は捕らえられるのだが、その処遇を巡って当時のアルゼンチンの政治事情から、予想だにしない方向へと事件は展開することになる。
 瞳は黙っていても語る。
 男が上司である新米検事に寄せる少年のような初々しい憧れ。
 今でいうストーカーの犯人が新妻に向けるゆがんだ視線。
 犯人を求めて毎日駅に立ち続ける被害者の夫の献身。
 いつも酔いどれで情けない友人が見せる思わぬ侠気。
 様々な場面で色々な愛の形を見せられる。
 事件から数十年を経て男に突き付けられるのは衝撃の事実と、長い時間を経ても消えなかった大人の愛。そして憎しみ。
 単なるサスペンス映画ではない。人間の怖さと愚かさでいえばホラーよりもずっと怖い映画だ。主人公の男と検事の年を経て熟成した愛が救いになっている。
 どうにもならない感情に悩んだときに見ると、これに比べると大したことないかと思えます。あくまでもドラマチックな展開に身を委ねる快感を楽しめる一本。


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2010年10月13日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(5) NY―リベンジなる!

先ほども書いたように今回帰りに立ち寄ったNYでは男友達とほとんどの間一緒にいた。これは楽である。傍らに彼がいるだけで嫌なこと&変なアプローチをしてくる輩はゼロである。

これはカナダでも同じこと。エスコートがあるかないかの大きな違い。

結局まあ女一人だとなめられているわけだ。日本人にしてはでかい私も、海外ではただの細っこいアジアの女。こういう時はこうもっとでかくて怖そうでカンフーかなんかの達人に見えたいわ!

3C64.jpgそれでも三日目は一人でNY最後の時間を楽しんだ。今回ベジタリアンの友人のおかげでアメリカにしては例外的にヘルシーな、野菜をふんだんに使った美味しい料理を堪能した。モントリオールと比べるとやはりここは気候的にも地理的にも豊かなのだと思わざるを得ない。物が高いと言われるNYでも食べ物は安い。国内に供給先があるのとないのとの違いだろう。

そんな美味しいものに慣れた身で、一人だからとまずいものでこの旅を締めくくりたくない。というわけで目をつけていたマンハッタンの住宅街アッパーウェストにあるお店に一人でチャレンジ。八月半ばの NY は秋の初めのような涼しさなのに、店内は冷房が利いている。これは寒すぎる。一人だけどテラスでも良い? とテラスに座った。

昔懐かしいようなパリパリチキンと野菜のグリル (素朴だけど美味しい! ) を一人道路に面したテラスでつついていると向かいの車道に大きなトラックが駐車した。サングラスのお兄ちゃんと目が合う。にこっと向こうは口で、こちらは目で (食べてたからね) 笑う。

3C63.jpgちょっとあらぬ方を眺めているとクラクションが短く鳴った。みるとお兄ちゃんが身振りで「旨いかい? 」と聞いてくる。

「美味しいわよ。ありがと」こちらもサインを送る。

こういう時のニューヨーカーは粋である。

空港までの送迎車も帰りは一人だけだった。南米出身で NY に来てもう10数年と語るドライバーは、行きの愛想のかけらもないドライバーと雲泥の差。温かみのある笑顔で実に紳士的である。

「あと何軒かホテルを回るの? 」と聞くと「いいや、今夜は君だけの特別車だよ、baby! 」との返事。

常日頃から I’m not your baby! (あなたのベイビーじゃありません! )という可愛げのない私だが、こういう時のベイビーは悪くない。

お祭騒ぎだった前日の地下鉄でも素敵な baby を耳にした。

連休の地下鉄は満席でしかも良く揺れる。小さな娘を連れた黒人一家がナイタ―観戦の盛り上がりもそのままに賑やかに乗り込んできたが空席はない。そのまま発車したがかなりがたがた揺れる。すると私の近くの中年の疲れた顔の女性が席を立つと、背の高い父親に話しかけた。「お嬢ちゃんを座らせてあげて」

「お礼を言いな」と父親にいわれてThank youと可愛い声で言いながら女の子が腰かける。

次の駅で降りようとする女性に父親が Thanks baby! You’re beautiful. と声をかけた。

こういうbabyもまた粋である。

初めてのNYは嫌な思いをすることもあったが、今回は素敵な一面を拾えた旅だった。リベンジ成功!というわけでまた行きたいなーNYである。大人の街モントリオールにも。




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2010年10月12日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(4) あら、けっこう bitch なのね?

男が求められるものの重さからゲイに走るーというのは私の勝手な考えだが、ちなみにカナダはゲイフレンドリー謳う国である。しかし謳っているからといってそれが真に徹底しているわけではない。

事実新聞には「ヘイトクライム」の文字が載っていて、ゲイが襲われる事件が相次いだようでもある。結局ゲイフレンドリーと謳わねばならないということはそれが行きわたっていないからでもある。むろん謳うだけでもすすんでるって事だけどね。それ故か、かなりの数のゲイカップルを街でも目にしたし、学校にもちらほらいた。

初日、クラス分けのテストを待っている間に暇なので会話が始まる。同じテーブルの人々と会話をしていて、端に座ったおとなしくて頭の薄い、でも他は毛深い (よくある系ね)男性はアルゼンチンのドクターで英語を学びに来たと判明。ふらりと小柄な男性が別のテーブルから彼に近づいてきたので「あなたたち友達なの?」と礼儀よく訪ねると He is my boyfriend! (あたしの彼氏よ!) となんか冷たい顔で宣言された。暗に「彼に手だししないでよっ」とぴしゃりと言われた感じだ。

いやいや、いくらドクターだからってあなたの彼氏に興味ありませんから。手の甲まで毛むくじゃらの人とかに!! フン! (はい。単に私の好みの問題です。毛深いのが好きな人もいます)

しかし結構男もーっていうか男の方が bitchy (ヤな女)になれるのね、こういう時。

ゲイカップルも、いわゆる彼氏側 (chicken) と彼女側 (fish) に分かれるらしいけど、明らかにドクターが chicken で小柄なほうが fish っぽかった。にしてもかなり嫉妬深そうな「彼女」である。

まあ思うにこれまでもゲイゆえに嫌な目に遭ってきたが為のビッチィさかもしれないけどね。にしてもなーんか感じ悪い。そんなに熱くならなくても単なる社交上の会話じゃない? でも彼らにしたらそれをはっきり言ってしまうことは、ある程度危険を伴う一つの愛の宣言なのかもしれない。




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2010年10月09日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(3) おひとりさま in ケベック?

東部カナダを訪ねたならば欠かせない場所がある。ケベック・シティである。かつてイギリスとフランスの間でカナダの覇権をめぐり戦われたアブラハム平原の戦いの拠点ともなった城塞都市でもあり、また北米最古の商店街のある街でもある。
 
イギリスが勝利をおさめたのちも大多数を占めるフランス系移民の生活習慣までを変えるには至らず今でもケベック州における第一言語はフランス語である。彼らの誇りはケベックシティの人々の車のナンバープレートに刻まれた Je me souvien (私は忘れない)という言葉でも明らかだ。
 
3C40.jpgそびえたつシャトー・フロントナック(現在はホテル)を中心にしたアッパータウン(写真1)と、北米最古の商店街であるロウワー・タウン。その二つをつなぐ傾斜もきつい首折り階段。どうも足がーという向きにはフニキュレールがある。
 
フランスの小さな街を思わせる花々の飾られたバルコニーにカフェ。クレプリー。小粋な雑貨店(写真2)。小柄でお世辞の上手い男たち。―とここは間違いなくおフランスの子孫の街である。
 
徒歩で回れる可愛い街だがちょうど収穫祭と重なって町中のホテルはみな満室。ネットで適当にとったホテルは街からバスで一時間もかかると言われ、お祭で昔の衣装に身を包んだ人々(写真3)で心地よく盛り上がってる通りを急ぎ足でバス停に向かう。リュックを背負い(預ける場所が駅以外になかったのだ)いかにもバックパッカーな私になぜか二階の窓から陽気に手を振るお兄さん。「いや、こっちは急いでんねん」と思いつつも手を振り返してしまう無駄に愛想のよい私…
 
バス停で佇む姿が不安げに見えたのか、サングラスをかけたクールな美人が話しかけてきた。「何か探しているの?」
 
3C41.jpg「いや、このバス停で正しいのかなと思って…」というところから会話が始まり、純粋のケベッコワ(ケベック人)のTは、バスを待つ間、ケベックシティで尋ねるべき店や場所を地図にマークしてくれた。歌手やバンドのプロモーションをしているという。
 
意外だったのは自立してて格好良い彼女の一言である。

「勇気があるのね。一人で旅してて不安じゃない?」 
 
なんでえ、そっちは完璧なバイリンガル(英仏)やのに、不安なことなんかないでしょうに。しかし旅行と言うと彼氏と一緒に行ってしまうらしい。

いやいや、こちとらそんな何でもやってくれて数週間も休みが取れる便利な彼氏なんぞおらんからやん。

3C52.jpgでもそういう意味では実は頼りないと思われてる日本女子の方がしっかりしてるよなあと思うことがある。現に私の教え子も女子の方がそれほど言葉もできなくとも海外一人旅に出たりとしっかり者が多い。
 
この辺りは育った社会の安全度の違いでもあり、また西欧は完璧にカップル社会ということもある。すなわち女性が一人で歩いているのは不自然なわけで、危険度も確かに日本よりは高い。旅の計画から何から整えるのが男の甲斐性ってわけだ。

故に一人で歩いていると男性から不必要なアプローチを受けることがある。いや、ほっといてくれる? 別にあんたの助けはいらんから。

この辺りは「おひとりさま」の言葉もある日本社会に感謝である。行きたい所へ行ける自由。なんでも一人でできるもんね!という気概とそれをできる幸せである。―というか友人の言葉を借りれば、「日本男子はなにもしてくれないので自然にそうなる」らしいのだが。
 
確かに帰りに寄ったNY(写真4)では男友達(アメリカンね)がお店にショーの下調べに予約、荷物持ちからドアの開け閉めから、混んだ道では先導してくれーと何から何まで完璧にエスコートしてくれ、それはそれでもちろん大変に幸せである。

1.jpg日本でドアを開けると次々にオヤジが当然のように無言で通り過ぎて行き、ドアガール状態になっていることがあるのと大違いである。しかしこれに慣れたら怖いよなーという気もした。一見自立してお素敵なくせにその実「誰かがお膳立てしてくれるのを待つ女」にならないか。むろん「できるのにしないだけで、男がしてくれるからしてもらってるだけ」ーかもしれないけど、習い性は癖にならないか?

これを常に求められる男性も大変である。もちろん全ての男がそんな紳士とは限らないし、常にやってくれるというわけでもないだろうが、しかしレディファーストの精神はまだ西欧の国々には残っている。逆に言うと男たるものーに求められるところも多いわけで、そのストレスからDVとかゲイに走る向きとかが多いのではと勘繰りたくなってくる。

日本では男たるものに求められるのは多分に経済面で、そのため職を失い自殺に走る中高年や、したくても結婚できない男たちが目立つ。稼ぎのない男は男じゃないわけだ。

どっちにしても男はつらいわけね。こうなってくるともう無理に肉食ぶらないで草食男子でいいじゃないーという昨今の日本のブームも無理もないと思ってしまう。

あ、ところでホテルにはローカルバスを乗り継ぎなんとか一時間後無事に到着。運ちゃんまでが交代するくらいローカル路線で、私の身は「彼女を○○で下ろしてやってくれ」と口伝えに次の運転手に委ねられた。親切なケベッコワと心優しい運ちゃん達にひたすら感謝である。

辿りついたのは車がたまに通るだけのだだっ広い道路とショッピングセンターの向かいにぽつんと立つ様に、思わずバクダット・カフェ(映画)の主題歌(Calling You)を口ずさんでしまうくらい Middle of Nowhere (どこなんよ、ここ)なホテルでした。今でこそ笑い話ですがその時は無事に着いてちょっとだけ泣いた…
 



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2010年10月05日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(2) 誰もが有名人??

久しぶりに生徒の立場になった語学学校だが英語の方が大半を占めているようで休み時間ともなればほぼみんな英語である。街でもカナダ人は親切で、親切ゆえにこちらのたどたどしいフランス語を聞くと瞬時に英語に切り換えてくれるので、あまりフランス語の勉強に良い環境とはいえない。しかも夏のモントリオールは観光客で溢れているので余計に英語の頻度が高まるのかもしれない。

70F3.jpg石の街モントリオールはやはりおフランスの香りを漂わせた大人な街である。日が差すとかなり暑いが木陰はしっとり涼しく快適である。小さなカフェでくつろぐもよし。素敵な街をアイスでも舐めつつそぞろ歩くもよし。

アイスクリームの注文もウィ、マダム/イエス、マアムと小粋なギャルソンは客の発する最初の一言でフランス語と英語を使い分ける。フランス語拒否の人はハローとかたくなに英語で通せばよいのである。わたしは練習を兼ねて拙いフランス語でシトロン(レモン味)を注文。

こんなお店での決まり文句は良いのだが、自由会話となるとがぜん苦しくなってくる。まあ意地でも下手なフランス語でしゃべればよいのだが、英語の方がどうしても話が早いのでついつい英語に頼りがちだ。

ここで学校主催のサイクリングに参加したのだが、二人のメキシカンと知り合いになった。英語の勉強に来たという。仕事は何してるの?と聞くと若いのがもう一人を指して「彼は有名な俳優だよ」と言う。「へええ…」

だって中肉中背で別にすごくハンサムというわけでなし、どちらかというとイーストウッド演じるガンマンにすぐ撃たれる多数のメキシコ人の一人って感じである(失礼)。

acteurmex01.jpgしかも英語はかなり初級レベルと見えて、お世辞を言おうと「You are beautiful with no eyes(君は目がなくて美しいね)」などと言ってしまい大爆笑をかっていた。

ただ大変にフレンドリーでスターを気取っていないあたりなかなかに素敵な人である。サイクリング後に、彼に会って大興奮のラテン系の女の子とイギリス女性、私とオーストリアの女の子を加えた六人で飲んだのだけれど、なぜか俳優氏がいきなり私に肩のマッサージをし始め(おさわりか??)普通なら顔面パンチを食らうところがそのまま任せてしまったくらい(長旅で強力に肩が凝っていたという話もある)、温かさを発している人であったことは確かです。実際 youtube を見ると役どころで全く別人のように見えることからなかなか良い俳優のようです。

ラテン系の女の子には「ええ、彼を知らないの。信じられない」

「そんなに有名なの?ラテン系で知ってるといえばリッキー・マーティンくらいだしなあ」「リッキー・マーティンと同じくらい有名なのよ!!」―と言われたのでかなりな有名人らしいです。ほんとに。濃いラテンのメロドラマで父親を刺し殺す悪役をやっていたらしいので、興味のある方は youtubeでご覧ください。

http://www.youtube.com/watch?v=YC9WeV6o1Qk

彼の他にもバンドを持ってるというアメリカ人(同じホテルに泊まっていた)やアンジェリーナ・ジョリーに会ったことのあるビデオ編集者ともお知り合いになったが、あらみなさん有名人なのね。私も「日本の女優よ」とか言っとけばよかったーなんでやねん!




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2010年10月03日

黒カナリアのMontreal & NY滞在記(1) トロント―モントリオール間、六時間

フランス語を習うのになんでまたカナダに? とよく聞かれた。フランスにはすでに結構行ってるし、今度は違うところに行ってみたかった。ついでに本業の英語のブラッシュアップもできることだしーという訳で一粒で二度おいしい的なフランス語圏はカナダ東部にしたのだ。
 
とはいうもののあまり日本人のメジャーな旅先ではないカナダ東部ケベック州。お上りさんとしてはナイアガラを見物してから VIA Rail で一番の大都市モントリオールに乗り込もうと計画した。
 
70E1.jpgナイアガラとトロント市内をぶらりとして、まあ落ち着いた良い街ですなあ。高層ビルが立ち並ぶ未来都市のようでありながら、ビルの谷間には小さな緑地があり、風が気持ちよく抜けて行く。絵になる街を走る鮮やかな車体の路面電車(写真1)。お外でランチもうなずける気持ちよさである。

トロントから車で二時間足らずのナイアガラは各国の観光客でにぎわっていたがここでも経済成長目覚ましいお隣さん中国人が目立っていた。やたら声が大きくてハッピーそうなのはトルコ人。滝のしぶきをたっぷり浴びて一家で叫びまくっていた。時差ボケが抜けきらないわたしはひとり静かに滝を鑑賞。船からよりは上からの方が滝全景が見えて良い(写真2)

トロントで泊ったヒルトンの朝食はお素敵である。色々言われる向きもあるが、やはりヒルトンブランドに間違いはない。フルーツ好きの私はボウルいっぱいのフルーツサラダにヨーグルト、ナッツにブラウンシュガーをぱらりとかけてたらふく頂いた。これは後々かなりの贅沢だったことがわかった。というのも寒い国カナダではフルーツ、野菜全般はかなりお高い。食料は日本より安いといつもの感覚でいると痛い目を見た。

タクシーで駅まで行って電車待ちの列へ。出発時間は9時半だが9:00なのにゲートが開かない。大きなかばんを抱えた人が前に並んだ人たちに「これってモントリオール行き?」と申し合わせたように聞くのがおかしい。わたしも聞いたけどさ。

70F2.jpg「ずいぶん待ってるよね」とちょっと不安になって隣の若い女性に聞いてみたが「それでも大抵定時に出るのよ」との言葉通りゲートが開くと意外にスムーズにホームまで移動、席に座れた。
 
新幹線に比べるとやたら停まるわ遅いわだし、景色もそれほど良いわけでもないが、まあ快適ではある。ただ後ろに座った派手な金髪のマダムが、大阪のおばちゃんも顔負けのマシンガントークで延々話し続け、隣の女の子はどうやらまだ中学生で一人でフランス語を習いに行くところらしいのだけれど彼女を餌食にまあしゃべるしゃべる!

六時間の間にマダムの家族構成から趣味、職業、自宅の内装、娘の彼氏、友人の病歴についてまで私の知るところとなった。満席でマダムのトークから逃れられないこの子があまりにも気の毒であった。

それにしても VIA Rail よ、なぜコーヒーを普通サイズで出してくれないのか。そんなに飲めないって。2ドルと格安なのはいいけど日本ではお目に書かれないくらいのメガサイズの紙コップで出さなくても。しかも結構揺れる車内でですよ。余ったらどうすんのよ。アメリカンほど薄くはないが、にしても量が多すぎ。
 
トロント―モントリオール間6時間も長すぎるし。カナダ政府、新幹線買いませんか。日本のメーカーよ!なんでここに売り込まない?! ビッグチャンスなのに。



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2010年09月20日

「インセプション」

inception01.jpgレオナルド・ディカプリオってこんな俳優だったっけ?―と首をひねってしまう。いつから常に眉間にしわを寄せてる役ばかりやるようになったのか。あの軽快な彼の持ち味はどこへやら、そんなにのめりこみすぎると壊れちゃうよって感じなのだ。演技力には疑問はないのだからそんなに全力投球しなくてもねえ…また横に広がり続ける顔も心配である。どうかマーロン・ブランドみたいにならないでね。

今回も又眉間にしわのレオである。映画自体は悪くない。巧みにデザインされた夢に相手を引き込み相手の考えを操作する。アイディアを盗むというより相手の潜在意識に小さな種子を植え付ける。それが自分が期待するように育つように。しかしもちろんそう期待通りには事は運ばず悲劇を招くこともあるし、夢もデザイン通りに進行するとは限らない。

この夢の世界の構築は良くできているし画面もはっとするほど美しい。ぐいぐい夢のまた夢に引き込む力とテンポは相当なものだ。退屈する暇はない。油断していると今誰の夢の、どのレベルにいるのかわからなくなる。

ただ核になるディカプリオ演じる男とその妻マリオン・コティヤールの相性はどうだろう。
 
男のデザインした夢に現れては事を妨害する完璧なほど妖しくも美しい女。役どころはマリオンにぴたりとはまっているのだがレオとの相性が良くないように思う。どうも対等に見えないのだ。奥さんー?ううん…似合わない。演技力だけではカバーしきれない化学反応みたいなものがこの二人では生じないような気がする。
 
むしろ夢の新たなデザイナーとして登場するエレン・ペイジの方が、役どころが彼女に合うかは別にして、レオとの相性は悪くない気がする。共に童顔だからか。

ハリウッドスターと言うものの、今一つな役どころの多い渡辺謙も今回はまあまあの役。ただアクションもできる人なのだからもう少し動かしてほしかったなあ…

クールに、無表情にアクションを演じたジョセフ・ゴードン・レビットはスタイリッシュだった。

作りこまれた夢の世界を体感するためだけに見ても損はしない作品。




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2010年04月08日

黒カナリアのぶらりベトナム一人旅―プチパリを探して??(3) 一体どっちが正しいのよー裸? 水着着用??

買い物にグルメに観光にとあっという間のベトナム滞在だったのだが、最後は絶対スパに行くんだもんねーと決めていた。大体日本に帰る便は夜中発。ホテルは延長しなきゃ12時には追い出される。それなら一泊分の半額払って延長するのと、出てしまってからスパで最長五時間プランでも大して額は変わらない。荷物も貴重品もホテルで預かってくれることだし。じゃあスパの方がいいじゃない。

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というわけでスパを予約していたのだが、戦争証跡博物館の昼休みを計算に入れるのを忘れて、ランチを食べた店で電話を借りて予約変更をするなどちょっとしたごたごたはあったものの、無事間に合った。

ところで戦争証跡博物館はみなさん行きましょう。直視できないような写真もたくさんあるがあれは行くべきだと思う。日本人ジャーナリストたちも取材中命を落としているだけに日本コーナーもありますし(写真@)。

で、スパなのだがのっけから謎なことが。裸or水着?

わたしも水着はいるのかどうか悩んだ。通常海外の場合、ジャグジーも、スペインのハマムも男女混浴なので、要水着。が、ここは女性限定だし、案内係のお姉ちゃんはにっこりしながら下着も脱いでねーというのだ。あら、そうーとバスローブだけ羽織ったものの、確かにジャグジーには当然のように素裸で入るベトナム人女性が一人。あ、じゃあ裸でいいのかーとわたしもスチームバスにサウナを経て一人ジャグジーを楽しんでいたのだが、白人女性が現れてなんだか困った様子でうろうろしている。バスローブを脱いだ下は赤いビキニ。そのままジャグジーに入ってこられた。

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うううーん。どうなんでしょうねえ。日本でこれをやられたらかなり嫌な感じかも。温泉の中に手ぬぐいはつけないよね。サウナで水着なんて着てたら追い出されるよね。しかしここはベトナム。一体どっちのルールが適応されるんだ。わからん。でも先ほどのベトナム女性は裸だったし。ええい、わたしの方が正しいということで堂々と裸で入っておくことにした。

ジャグジーの後は肩こりがひどくて普通のオイルマッサージでは効きそうにないので、ベトナムなのにタイマッサージの名手Qさんの手で揉みほぐされ、夢のような五時間は過ぎ、かくして帰路に就いたのだった。いや、楽しかった(写真A)。

まあ店やタクシーでぼられるという話はよく聞きますが、別段イヤな目には遭わなかった。みんな道を聞くときちんと教えてくれ、中にはわざわざ外まで出てきて見送ってくれる親切な人も。基本的に女性の方がちゃんとしてる感はあったけど。道端で寝てるおじさんを多数目撃。まあ暑いからね。

唯一「まあなにこのアジアの小娘。なんでこんなところに泊ってるの」とホテルのエレベーターで白人のバアさんにじろじろ見られたのにむかついたくらい。まあこちらも、「若く見えてもこちとらマダムなんだよ。口ひげ生やしてたるたるの体でノースリとか着てんじゃないよ、はた迷惑やっつーの」と負けないくらい見返しておいたからいいんだけど。

そのばあさまとは逆に、日本の女の子たちが超ミニのワンピや短パンにハイヒール姿で五つ星で記念撮影にいそしんでいたが、こちらは夜の商売の人にしか見えないのが残念でした。変に生白い日本人が妙な肌の見せ方をすると自分で思っている以上になんかイヤラしいんだよね。なんだろうー全身に漂う日本人特有の湿り気のせいか??

ほぼ日本人に遭遇しない普段の旅と違って、今回は初海外や二回目あたりの初々しい学生さんたちにもよく遭遇した。みなさん礼儀正しく好感のもてる若者でした。きっとベトナムって距離的に行きやすいし、時差も二時間と初海外にはもってこいなのかも。なかなか外に出たがらない現代っ子の中では、たとえ送迎付きにガイド付きのオプショナルツアーに参加しても外に出てみようという意やよし。できればそんなツアーに参加せずにたとえば男三人とかなら少しくらい無茶してほしいところですが・・・ま、そんなの余計なお世話よね。





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2010年04月06日

黒カナリアのぶらりベトナム一人旅―プチパリを探して??(2) グルメ天国

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他にプチパリらしいところといえば、観光客は必ず写真を撮る聖マリア大聖堂(写真@)。おフランスからレンガを運ばせて建てたそうですが、まあ、普通に教会ですね。でも郵便局(写真A)の方が可愛くて好き。だってピンクですよ、郵便局が。このように街に並ぶ建物がカラフルで楽しい。南国の日差しにはよくマッチしている。ただ街全体が現在工事中みたいな感じであちこちほっくり返しているのが現状。まさに発展真っただ中の街なのだ。

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ついでプチパリらしいところ、これはやはり食でしょうねえ。まったく何を食べても美味しいこと!

もっと若くて無茶ならば道端のオバちゃんのやっている屋台フードにトライしたかったのだがなにせ寝付いたとて誰も面倒見てくれる人のない一人旅。食あたりで医者を呼んでもらうのもいい大人としてはかなりみっともない。そこはぐっとこらえて一応屋根&空調付きのお店限定で食べ歩き。

これがおいしーい!!のだ。

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もともとベトナム料理は好きだが、本当になんでも美味しい。ことにわたしのお気に入りはソフトシェルクラブのフライ(写真B)。殻ごとパリパリ食べられる。ガーリックとネギなどが絡み合ったソースがまたうまい!!

揚げものでも中華ほどしつこくなく胃にもたれない。ビールに氷を入れてくるのにはちょっと閉口するが、自分で薬味や野菜を調節できるフォーも日本人の口にはよく合います。

ご飯がそんなに恋しい人ではない私などは三度も米飯が続くと胃もたれしてくる。しかしここベトナムではがっつり米の飯を食べる人が多くてどーんとボウルに山盛り御飯にぶすりとしゃもじ代わりのスプーンを突き立てて持ってくる。

もしもしー、仏さんじゃないですよー。

三日も過ぎるとこれに飽きてパスタを食べたくなった。そこで出かけたカフェがポイント高かった。

ベトナムのサイトでも、カフェならここと人気だったHideaway café。確かに隠れ家的でちょっと奥まったところにあり、タクシーのおっちゃんはわからなかったのか(英語が読めない人が多い)適当に近くで下ろされてしまい、ちょっと歩く羽目になったのだが、それでも満足なくらいお素敵でした。

ボーイは小柄だけどジャニーズ系のイケメン揃いで英語も上手。こちらの気配を読んですっと必要時に現れるさり気なさはとっても優秀。

なんか空調が変にそこだけ暑かったけどトイレも清潔だ。

ここで食べたベジタリアン向けのパスタが思わず目を見開くくらい美味しかった。

シイタケに似たくせのないキノコがメインの具材なのだが味付けがイタリアンとアジアの見事な融合。普通イタリアンに生姜は使わないが、その生姜ともう一つ酸味の効いたハーブが使われていてそれが物凄くオリーブオイルとニョクマム(漁醤)とマッチしている。パスタのゆで具合も絶妙で思わず「お宅のシェフはイタリア人?それともイタリアで学んだベトナム人?」と聞きたくなるくらいの美味しさ。

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小さなテラス席で優雅に読書にいそしむ白人のマダムと、店内にはお金持ちらしきベトナム人の若者たちがまったりと流れていく時間を楽しんでおりました(写真C)。

いやあ素晴らしかった。オススメです。





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2010年04月05日

黒カナリアのぶらりベトナム一人旅―プチパリを探して??(1) サイゴン風物詩

なんか最近一人旅が板につきすぎて二度とラブラブ二人旅とかできないんじゃないのという若干悲しい予感を抱きつつ、いまだ寒さ厳しい日本を後にして向かった先はベトナムーホーチミンシティ。しかし誰ひとりその名前で呼ぶ人もなく、スーツケースにつけられたタグでさえも昔のままのSGN(サイゴン)なのだった。なんだろう。これも長年の内戦の賜物かも。あくまでもここはアメリカの傀儡政権のあった南部戦線側の首都だったわけだし。そう思うと人々が新しい名を拒否している気さえしてくる。

やる気のなさそうな入国審査を通りぬけ、いきなり出たとこでchange moneyと叫ぶ声。すでに国内でドルに換金してきたのでタクシー代や食事代に備えて1万円だけ換えてみる。現在100円=21122ドンということで一気に財布が分厚くなる。しかしなんでこうもゼロが多いかね。だって2112200ドンですよ。ミリオンですよ。なんか逆上しそうなゼロの多さである。わたしゃ鳩山首相か!!

今回はホテルとエア&空港までの送迎付きというご気楽旅。ホテルも王道のサイゴンの銀座?ドンコイ通りに面した五つ星。

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ベトナムでプチパリを探してきてねー(確かにかつてのフランス領だけどさ)ーなどとcyberbloomさんに言われたものの、そうねえ。排ガスを浴びながら嬉しげにコーヒーなぞ飲んでいる暇人(わたしを含む)があふれたカフェ(写真@)などはまさにプチパリって感じかしら。パリのカフェだって値段の高いテラス席は一昔前までは乾燥した犬のフンを被ってるようなものと言われたくらいだし。でもさすがにテラス席で飲んでいるのは観光客ばかり。お金持ちのベトナム人たちは空調の効いた室内でお茶してました。

その排ガスというのが現在のベトナムを語る上でどうしても外せない側面のように思われる。ほとんどが道路に、否、時折歩道にまで進出する切れ目のないバイクの群れから吐き出された排気ガスなのだ。誰しも中国の自転車部隊を見たことおありでしょう。あれをすべてバイクに置き換えてください。しかも誰ひとり交通ルールを守らないーと。信号もほとんどないとーはい、現在のベトナムの出来上がり(写真A)。

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この無法地帯の道を横断するのに慣れるのにしばらくかかったが、おそらく大抵の関西人は大丈夫かも。要は渡れるか渡れないか自分で判断しなさいよーと「わたし渡ってんねんから」と目と全身で威嚇しなさいよーってことらしい。

最初にバイクにまたがったベトナム女性を見たときは「あんたら集団銀行強盗か!!」と度肝を抜かれた。

サングラスにヘルメット、鼻と口をすっぽり覆う布のマスク。そこはベトナムのお洒落ギャルたちはそのマスクもかわいらしくアップリケ付きとか花柄とか乙女心も忘れない。しかしなんでまたそこまでの重装備??

聞いてみると排ガスときつい日差しで顔が黒くなるのを避けているとのこと。色白がベトナム美人の条件らしく日焼けはご法度らしい。

確かに湿度は思ったより低く木陰に入ると意外に涼しい乾季のサイゴンではありますが日差しはうっかり日焼け止めなし、ノースリなどで歩いたものならたちまち真っ黒になりそうな強さではある。とはいえ相変わらず白人たちはまさにそんな格好で出歩いてたけど…

このベトナムの女の子たちがマスクとサングラスを外した姿はまあかなりのハイレベル!!小柄かつメリハリボディに情熱的な顔立ち。茶髪の横行する日本と違い、サラサラの長い黒髪。お好きな方にはたまらない感じです。なんか私も今回悲しいかなほとんどイケメンに出会う機会に恵まれずー途中から「オヤジ目線」を導入してみたところ(なんで?)大変幸せ地帯でした。行きあう子行きあう子がみんな可愛い!!

日本にいてもややデカめなわたしなんぞは大抵のベトナム人男性を優に上回り、女の子に至ってはかなり首を曲げて見下ろす感じでなんか女ガリバーになった気すらしてきた。平均身長は150センチないのではないか?

しかしこの小柄な体で彼らには巨人に見えたはずのアメリカ兵と、大量化学兵器を敵に回してベトナム戦争を戦い抜いた強靭さは恐るべし。小柄なのを逆手にとって長い長いトンネルを掘って身を潜め、ゲリラ攻撃を仕掛けーとまあ何ともタフでクレバーな戦術である。アメリカ人にあのトンネルに入れと言ったとこで窮屈さと圧迫感に10分ともたないでしょう。第一お腹がつかえて入れない人続出かも。




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2010年04月03日

ずっとあなたを愛してる Il y a longtemps que je t'aime

本来一刻も早く全国の飲食店が全面禁煙になるのを待ち望んでいる身なのだが、カフェでタバコをくゆらすクリスティン・スコット=トーマスを見ると、うわ、カッコいいーと思ってしまうのも事実だ。煙が出ないタバコをJTが開発したらしいけど、それでは紫煙をくゆらせるーという表現は使えない。人生に疲れた大人の女の格好良さはやはりタバコの吸い方一つにも現れるものだ。

longtemps-aime02.jpgイギリス人女優クリスティン・スコット=トーマスが全編フランス語で通すのだが、やや英語っぽいフランス語が聞き取りやすい。フランス語専攻のみなさんにはどう聞こえるのかわからないが。
 
あまり日本人には受けない骨美人と思っていたが、のっけからしわの目立つ疲れたすっぴんにたるんだ腹回り。サイズの合わない服。イングリッシュ・ペイシェントから過ぎた年月の重さをリアルに感じさせる気合の入った演技だ。

重い罪を犯して釈放されたばかり、人待ち顔で空港に座る彼女ジュリエットをやや若い女性―妹レアが迎えに現れる。二人の間に漂う緊張感。
 
話の展開は単純だ。無表情で人を寄せ付けないジュリエットがレアの家族―夫と夫の父(口がきけないというがミソ)、二人のベトナム人の養女たち―やその友人達と過ごすうちに次第に人間らしさを取り戻し、かつては医師だった彼女がなぜ息子を殺すという大罪を犯したのかーが最後にわかるようになっている。
 
しかし別に彼女の罪云々はどうでもよい。ジュリエットが再生していく過程が丁寧に、繊細に描かれている上質な映画造りと演技とを堪能すればいいのだ。

カフェで声をかけてきた知らない男と寝てーしかも「全然ダメ」なんて相手に言ってしまったり、妹の養女に本を読み聞かせてやったり、次第に女の部分と母親の部分―彼女が長年凍りつかせてきたものが溶け始める。

化粧をし、似合う色合いの服を身につけ、自分を長年待っていてくれた人に重い秘密を打ち明けた時、一人暮らしを始める彼女のアパートに差し込む光が印象的だ。

別に映画に3Dなんていらないよね。いい脚本と演出と確かな演技があればいい。そう思わせる静かな佳作。
 

□公式サイト http://www.zutto-movie.jp/




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2010年03月25日

「湖のほとりで」

イタリアらしくない映画ともいえるしイタリアらしい映画ともいえるだろうか。

湖のほとりで [DVD]というのもこれは「親子」の映画なのだ。湖の近くにある小さな田舎町。少女が行方不明になるが無事に見つかる。ところがこの少女の口から湖で若い女性が蛇の呪いで眠っているということが語られてから大騒ぎになる。

湖のほとりで全裸で発見された遺体はアンナ。恋人もいてホッケーの主力選手、父親に溺愛されていた美少女とわかる。

そこから犯人の捜査が始まるのだが、小さな町の町民はお互いに顔見知り、さまざまな憶測やうわさが飛び交う。そう多くない登場人物のほぼ全ての親子関係が顔を出す。

犯人と目される少女の恋人は父親を知らず母の手一つで育てられた。捜査の指揮を執る警部の妻は精神病で娘の顔もわからない。真実を知らされない娘はいつまでも子ども扱いと警部をなじる。遺体の第一発見者の男性には知的障害があり、その父親は足が悪く、容姿と才能に恵まれた被害者を憎んでいた。被害者と不倫関係にあったと目される男性には重い障害がある子どもがいたが亡くなっている。

人気があり、将来に何の問題もないと思われた被害者は実は処女で、脳腫瘍であと半年の命だったことがかなり早い段階でわかるのだが、犯罪捜査というのは実にその人の人生を暴きたてるものなのだなあと思いいたる。何が好きで、何が嫌い。どんな人と付き合い、どんな夢を抱いていたのか。殺されるのはもちろん嫌だが秘密にしておきたいこともすべて白日にさらされる。それもまた嫌な話だ。

ここで描かれるのは親子の悲劇だ。親だからといってすべての親が子供を愛せるわけではない。望まれぬまま生まれる子供も多い。たまたま美しく生まれつき、才能にも恵まれるか、障害を持って生まれ親に多大な負担を強いるか。それは蓋を開けてみないとわからない。また愛し合っていてもすれ違うこともある。溺愛もまた行き過ぎると病的なものを感じさせる。

懸命に親業を果たそうとしたけれど果たせなかったとき、それを責める事ができるのかー問いかけてくる映画だ。






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2009年09月27日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅(7) ダブリンの悪夢の夜

irelande10.jpg崖めぐりを楽しんだ西の地を後にして再びダブリン。ぶらっと夕食をとりに出たら方向音痴の私はまたしても迷ってしまった。人に尋ねつつ中心地テンプルバー界隈にたどり着く。そういえばここ入ってなかったなあ、と一度くらいテンプルバー(写真)入っとくか、とギネスは苦手なので少し弱めのキルケニーを頼んだがミュージシャンが見られる辺りはすごい混雑。入り口の止まり木が空いていたので座ってしばらくすると隣のスペイン人っぽい若者がカメラを手に話しかけてきた。「データを一斉に消す方法わかる?」

なかなか良い声のかけ方だ。世の男性陣は参考にしてください。旅行者なら誰でもカメラは持ってるし警戒されにくいでしょ。

それをきっかけに話が始まった。ポルトガル系カナダ人のD氏、仕事はキャビンアテンダント、モントリオール在住という。あら偶然。モントリオールに行こうと思ってたのよ。イタリアンの店に移動してラザニアを食べつつ話は続いた。ちなみに経験上お酒が入った男の話のまず7割は自慢である。これが日本のオヤジだと9割まで跳ね上がるが、Dも例に漏れず。でも「仕事でひとをたくさん助けたんだ」という話がなかなか面白かったので許す。五ヶ月の妊婦が飛行中圧力がかかるため出血しだし、乗客には看護婦が一人いただけで仕方ないから僕がこう両足を広げて・・・という話や、突然吐いて吐いて止まらなくなった女性の話、中にはやたらと喧嘩を挑んでくる男性もいるらしい。女の子の憧れの職業もなかなか大変そうである。

楽しくイケメンと食事をしてB&Bでさあ寝ましょと横になったら不意に地の底から這い上がってくる轟音とともに低周波でも出てるような振動が伝わってきた。

何これ???

したし不意にぴたっとやんだのでほっとして寝ようとすると五分後に又ぐぉぉぉぉん!!

冗談でしょ。耳栓をしてもいやな振動は伝わってくる。多分神経の太い人なら五分間に寝付いてしまえばわからないのだろうが、これでもそういうとこは繊細な私は眠れない。

ベケットの「いくら待てども待てどもゴドーは現れず」ならぬ「待てども待てども眠りは訪れず」などと一人天井を見上げてつっこんでみてもさっぱり楽しくない!

こうして五分ごとの不気味な音に見舞われる不条理な夜は更けていったのだった。

翌日「キャンセルするわ。こんなとこ泊まってられるか!日本製の最新型食洗器でも買ったらどうよ!」と言ってやろうとしたのにオーナーは不在。一泊分の泊まり賃を叩きつけて早々に飛び出した。タクシーを捕まえて、「とにかく静かなホテルに連れてって」

irelande11.jpg中国系の運ちゃんは哲学的な面持ちで考えた後、やや中心部から外れた高級住宅街に車を走らせた。「ここなら気に入るかも・・・・」と勧められたデザイナーホテルDは予算を軽く100ユーロはオーバーしていたけれど致し方ない。それに確かにそのくらいは仕方ないと思わせるお洒落さである。こんなとこ予約なしで泊まれるのかなーと思いつつ聞いて見るとお素適なホテルにありがちな高ビーさはなく「眠れなかったなんて可哀想に」とすぐに使える静かな角部屋を探してくれる気安さ。ここで一週間ぶりに豪華バス付きのオッシャレーな部屋でアイルランド最後の一日を過ごしたのだった。一人で過ごすにはもったいない素敵さだったのが唯一の心残り・・・

かくしてイケメンにはじまり高級ホテルに終わったアイルランド。なんでわざわざ毎年長いフライトやその他もろもろ不便なことを我慢して一人で旅に出るのかと聞かれたら「一人で何でもできるけど、一人では何も出来ない」ことを確認しに行っているのだと思う。日本だと自動的に過ぎていってしまうことが、戸惑ったり、考えてみないと進まない。一人で何とかなることと誰かの手を借りなければできないことがある。それを思い出すために行っているようなものである。とはいえ年を経てくると辛くなって高級ホテルに泊まるような真似をするわけだけれども。不便さに耐えられなくなったら本当に歳をとったんだと行くのをあきらめるだろう。―なーんて言いつつこぎれいな場所しか行ってないので偉そうなことは言えませんが、一人旅行ってみませんか? 結構楽しいけど。






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2009年09月20日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅(6) アラン島で崖、再び。

珍しく快晴に恵まれたアラン島でのサイクリングは格別だった。

乾燥しすぎで観光客で溢れたダブリンよりも、素朴な島の海岸線の小道を自転車で自由に走りまわれるのは最高だった。但しもちろん晴れてればーの話ですが。馬糞が臭うのはご愛嬌。土壌の乏しい島では牛糞、馬糞も貴重な肥料に違いない。

irelande07.jpg

うわさのドン・エンガス(写真、上)まではまだ?えー、まだなの?と何度も行きかう人に尋ねつつ、それでも自転車で飛ばせば40分くらいだろうか。たまに猛スピードで駆け抜ける妖精めいた島の少年が「ハイヤ」っと声をかけていく。それにしても崖はまだか?またしても「崖」である。なんか崖めぐりみたいになってきたなあ、今回は。

でもこれは40分こいで、またその上最後の一キロは徒歩で登るのだけれど行っただけのことはありました。モハー・クリフのようにロープでさえぎられていない、勝手に端まで行って落ちたら最後の、全くさえぎるもののない崖の上で海風にさらされていると嫌なこと全て吹き飛んでいくようである。(こんな風に書くとそんなに嫌なことがあるのかと思われそうですが別にそうではない)

崖に打ち付ける波の砕ける様はやはり大西洋の荒々しさである。あ、あ、あ、気持ちいいー! 崖で座っていると知的な感じの女性が声をかけてきた。ゲール語を学びにアラン島に五回も来ているという。ダブリンに長く住んでいるのでとお勧めの場所を教えてくれた。確かに何もない島だがなんとなく魅せられるのもわかる気もする、ちょっと妖精のクイーンのような女性だった。

irelande08.jpg

帰りのバスの中ではノルウェイの女の子Sと話が弾んだ。北欧の女の子はいいね。英語も聞きやすいし実に健康的です。きちんとした家庭で育てられた気立ての良い娘さんという感じ。医学生だという。同じくゴールウェイ(写真、下)に宿泊中とわかり、泊まっているB&Bがお勧めだと話すと「こんなこと聞いていいかしら、一泊いくらのB&Bなの?」と礼儀正しくたずねられた。60ユーロと答えるとえええっと驚かれた。今泊まっている所は20ユーロよーへえ!と今度はこちらが驚いた。ダブリンでは何と10ユーロのところに泊まったという。10ユーロってー

ひと部屋8人くらいのバックパッカー用の寮のようなところらしい。お姉さんにはもうそんなところに泊まる若さも気力もないが、学生ならば姉妹や友達と一泊10ユーロで二ヶ月くらい武者修行的な旅に出るのも楽しかろう。現にあちこちからたくさんの若者たちがきていた。EU内ならば1,2時間の国内旅行と同じ感覚で避暑に来られる。イタリア人は寂しがりやのイタリア人らしく友達同士でわいわいと、スペイン人は英語の勉強という名目で楽しく、アメリカ人は先祖の国を懐かしんで、でもまあ英語圏にしか行かない彼らはちょっとずるいけどね。





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2009年09月15日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅 (5)殿下とギネス

irelande05.jpgアイルランドに行くなら見たかったものがある。モハーの崖(写真、上)である。大西洋に臨むアイルランドの西の果て。よくCMにも使われる巨大な崖。それを見るのにレンタカーならぬ身にはバスツアーしかない。このガイドのルーニーがしゃべることしゃべること。ぼこぼこ道をたくみに走らせつつしゃべるわ、ジョークを飛ばすわ、歌も歌い、時には崖で馬鹿なことしそうなアメリカの青年に注意までするという正にアイルランド人らしい多芸多才ぶりだった。悲しいことにその解説が、歴史ウォーキングに参加した身には同じ話を結局三度聞かされたわけである。とうとうと語られる悲劇の連続に辟易しながらも車窓の景色は美しい。淡い緑にクリントと呼ばれる特殊な積み方の低い石垣。牛、馬、羊、ヤギがのんびり草を食むいかにもアイルランドなのどかな情景(写真、下)。海岸線も晴れならば楽しかろう。

休憩中に少し言葉を交わしたのでこちらが日本人とわかったルーニーが、わたくしの物腰がその優雅さゆえに美智子さまを思い起こさせたーのならいいけど当然そうではないが・・・

「今日は日本から来られた特別ゲストがいるので・・・」と25年前に陛下がアイルランドを訪問されたときの話をし始めた。まだ殿下だったこのとき、有名なギネスビールを本場のパブでテレビ取材なしで飲みたいと所望された。そしてキンバラの小さな村のパブが選ばれ、店主にその旨が伝えられた。あるVIPがギネスをこのパブで飲みたいとおっしゃってる。全て隠密にことを運んでくれるか。―へえ、そのVIPってのは一体どなたで?―日本の将来のエンペラーである。この件は極秘だぞ。−なんと!もちろん秘密にいたしますとも。

と一週間後、最少の警備だけを連れてパブの前で降り立った皇太子ご夫妻を村人二百人が総出で日本国旗を振って出迎えた。小さな村での秘密の扱われ方がわかるでしょ。というオチなのだが、なかなか粋な話ではないですか。村の中では全てツーカーでも彼らはテレビ局にはこの話を漏らさなかったので他所に伝わることはなかった。

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村人たちはプリンセス・ミチコの優雅な物腰と美しさにいたく感銘を受けたそうである。常に衆人環視にさらされるご夫妻もここでの村人の素朴な歓迎と絵のように美しい自然と小さなパブでのギネスの味には感激されたのではないかとわたしも思う。帰って聞いてみるとB&Bの主人もこの殿下のゴールウェイ訪問についてはよく覚えていた。

未だ独立国として日が浅いアイルランドの、しかも西の田舎の人々にとって、東洋から訪れた来賓は長く記憶に残っているようです。

そんなこんなでたどり着いたモハーの崖。あいにくの雨だったけれどスケールは大きかったです。




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2009年09月08日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅(4) アイルランドで中国を考える

ダンスの興奮も冷め遣らぬ翌日、荷物はホテルで預かってもらい、街をぶらつく。

バス待ちのアメリカ人の若者団体がたむろする道を通ろうとするとその中の一人が「チャイニーズだ。臭うぞ」とか言いながら臭いをかぐ仕草をした。赤毛の大柄なまだ少年といえるくらいの若者だが一気に不快になった。悲しいかなこういう輩が存在する。

Watch your mouth, young man! Are you a racist? Being like that, you look complete ass!「言葉に気をつけなさい、若いの! 人種差別主義者か? そんな風だと完全なバカにみえるわよ」

―とでも格好よく言ってやりたいところだが、多勢に無勢。20人あまりのサカリのついた犬みたいな連中を相手したらぼこぼこにされる危険がありそうなので、振り返って君、ダメダメやなあと首を振る程度にしておいた。それにしてもお隣さんは評判がよろしくない。今回何度かアメリカ人が「Chineseが!」というのを聞いた。成長著しさが、かつて日本がそうだったように恐怖に近い感情を抱かせ、また超大国の座を脅やかされて苛立っているのも事実なのだろうけど。これにはのちのち考えさせられることになる。

ireland03.jpg

セントジェームズ公園(写真)でぼおっとし、昼食にサンドイッチとフルーツを買い込みタクシーで駅に向かう。電車は黄色にグレイの線がスマートな車体で、向かい合わせのコンパートメント席の窓際がわたしの席である。もっさりしたカエル似のアイリッシュのお兄ちゃんが向かいである。

出るまでは静かだったのだがわさわさと話し声とともに賑やかに四人連れの中国人が乗り込んできた。隣のコンパートメント席にはアイリッシュの大学生くらいの女の子が一人かけていたのだけれど、そこへどやどやとなだれ込むように座る。こちらにも一人。あとから別の白人の女の子がやってきて、どうも席が違うのに座っていたらしく中国人が二人こちらに移ってきた。アイリッシュの子はほっとしたように隣に座った女の子と会話を始める。明らかに二人の視線は「なにこの中国人たち」という感じだ。それも無理もない。この四人がまあ賑やかなのだ。特にわたしの斜め向かいの女の子がしゃべるし食べるしーがさがさと袋から中国菓子を取り出しては食べ、「ふふふふーん」と笑い、マメを出してはみんなに配り殻を集めてまた「ふふふふーん」と忙しい。全くうるさい女だ。この時くらい向かいの兄ちゃんのアイポッドが羨ましかったことはない。

あきらかに傍目にはわたしも一員に映るのがかなりヤな感じだ。でもヤな感じだと思うわたしはなんだろう。

象徴的なのはわたしの前に置かれているのはマーク&スペンサーで買ったサンドイッチにフルーツサラダ。お茶こそ日本のペットボトルだが全てこちらのものだ。席は確認するし、ひと声挨拶もする。彼らはかたくなに中国茶に中国菓子、大声で話すのも中国語。気配りゼロ。周りに合わせようとする日本人と周りに配慮しない中国人との違い?

でもそんな事を感じるのはこちらだけで、アイリッシュや他の人々にしてみれば日本人も中国人もみな同じに見えるだろう。それが嫌なのか。わたしはマナーをわきまえた日本人ですよ、一緒にしないでーと言いたいのか。そこにあるのは何? 中国人にしてみれば何ひとりで気取ってんの、変な日本人―というところだろう。

トイレに行って帰ってくるとアイリッシュの女の子も向かいの兄ちゃんも降りていて、もう一人は別の席に移っていて、中国人たちは嬉々としてコンパートメントを独占していた。お互いめでたしーって感じだ。ゴールウェイ近くで白人が三人乗ってきてわたしのコンパートメントに座った。座席を確認して微妙なずれに気付いたか、わたしと中国人4人を比べ見て、「そういうdeal(取り決め)になってんじゃない?」と呟いていた。

そうなんです、この間には微妙な、しかし確かな距離があるのです・・・




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2009年08月29日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅(3) ヤル気のあるデヴィット・ドゥカブニー?

翌晩良い席が取れたのでガイエッティ・シアター(写真)に行く。歩きつかれたのでタクシーを拾おうとするも、運ちゃんは「どこに行きたいの?」となぜか窓越しに道を教えてくれようとする。いや、疲れて歩きたくないから乗るっつってんのよ。未だに小娘に見えるのがいけないのか、タクシー代くらいあるわっ!と乗ってみるとどの運ちゃんもアイルランド人らしく話し好きである。つり銭も細かいのは切捨てと適当である。日本にいた人も多かった。コウベにいた人が多かったのは船員か?

ireland04.jpg昨日のトリニティ・カレッジのオールドライブラリィー、ある意味キリスト教徒ならぬ身にはアイルランド唯一の至宝という「ケルズの書」よりもこちらの方が見ごたえあったけどーそこの守衛のB氏にスウィフト像はあれよね?と確認したのがきっかけで話が始まったのだが、彼も日本に行ったことがあるといっていた。

素敵な図書館ねーというとまたいらっしゃいと入場券をくれ、後で追いかけてきて携帯の番号も教えてくれたおじさんである。元ミュージシャンだが年金が欲しいのでこの仕事についたと話していたが握手が非常に温かい人で、時間があればぜひ電話して、よいパブに案内してあげるーといってもイタリア人の下心みえみえなねばっこさと違って親切さのほうが勝っていた感じの人だ。

アイリッシュはとにかく話し好きで親切なひとが多いようだ。多くの同胞を送り出し、自らも移民としてあちこちで働いた経験がある人が多いので、見知らぬ土地で暖かく迎えられたいという気持ちが、返しては旅人を暖かく迎えるという行為となっているのかもしれない。

話がそれたが、リバーダンスである。どういうわけか、総勢24人だというドイツからの集団の中ポツンと一人だけ間にはまってしまい、ごっついけど気のよいドイツおやじとおばちゃんに挟まれて見た。

前の列に座ったのが多分ドイツ人だと思うノッポ一家である。運悪くわたしの前にものすごく背が高くしかも板のような肩幅のお兄ちゃん(推定年齢17歳)が座ってしまった。やれやれ何もみえないじゃないの。この辺は劇場を作る際、もう少し考えるべきである。確かにアイルランド人は小柄だが、こうあちこちから観光客が来ては、でかい人間が前に座ったら後ろのものは見えないぞ。ちゃんと段差か角度をつけて設計しなさい。

幸いお兄ちゃんは妹 (10歳くらい)と席を替わったのでわたしはよく見えたが代わりに隣のドイツおやじはちょっと見づらそうだった。

かくしてダンスは始まり、どうも流れでいくと、アイルランドで誕生したダンスはいろいろなタップやフラメンコの起源である。我々アイルランド人は嵐にも何にも決して打ちのめされないのだー等々が言いたいらしい。それにしても本当に足技が素晴らしい。特に主演の男性がすごい技術で力も入っているのだが、彼があのXファイルのモルダーを演じていたデヴィッド・ドゥカブニーに良く似ているのに気付いてからおかしくてたまらなくなってきた。

ドゥカブニーといえばモルダーを演じていたときも驚いているのに全然驚いているように見えないという無表情ぶりがうりだったのだが、このリバーダンスのドゥカブニー似のダンサーはものすごい気合いの入った笑顔なのである。アクロバティックなステップにジャンプを繰り出してはその度に「ほおら、こんなこともできるんだよ。僕ってすごいでしょう」と拍手を要求する満面の笑みを見せるのである。確かにすごいけど笑顔がたまらなくおかしい。

おまけに前列のお兄ちゃんといえば、白熱したステージにもかかわらず、途中でこっくりしだしパパにつつかれる始末。ど真ん中の良い席だけにそんなでかい身体で寝ると目だって仕方ない。ドゥカブニーがものすごい笑顔でおにいちゃんに「どうだっ」というアピールをするが起きない。そして兄がやっと起きると今度は隣の弟が寝る始末である。するとまたドゥカブニーがすごいアピールをする。でも起きない。

そんなこんなでこっちはダンスに集中したいのにいらんことが気になって仕方ない。パパ、興味のない子にダンスを強要するのはやめましょう。お兄ちゃんたちはホテルに放置しておくか、公園に放し飼いにしとけばいいのである。誰もあんなでかくてかさばる子達誘拐せんわ。いや、パパはほおって置くと彼らが何を壊すかわからないから目が離せないのかも知れない。やれやれみなさん、お疲れ様でした。





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2009年08月24日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅(2) ダブリン幻影

ダブリンは雨だった。雨が時折ぱらつくのに湿気を感じさせないこのドライさはなんだろう。つけたリップクリームがすぐさま乾いていく乾燥ぶりである。空港の表示から何からゲール語の下に英語表記というところからして他の英語圏の国にはない特殊な感じが漂う。全体の印象はチャコールグレイ(写真、上)。人も街もくすんでいる。スコットランドに似ているといえば似てるけど、あの石造りの苔むした重厚さはない。独立運動下破壊されたこともあり、結構建物は新しいものが多いのだ。小さな街なので時差ぼけがまだぬけないからぼちぼちにしとこうと思うのについ歩いてしまう。

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ヒストリカル・ウォーキング・ツアーに参加してみた。名門トリニティカレッジ(写真、下)の歴史学科の院生が案内してくれるツアーである。日本人はわたしだけ。今回これが多かった。まあいつものことなんだけど。

博士論文を執筆中という緑の瞳も涼しいB女史は、話し出したら止まらないというアイルランド人について自らジョークを飛ばしつつ、実にクリアに関係箇所を訪れながら解説してくれ、歴史オタクっぽいアメリカ人の男の子の細かい質問もさばき見事なガイドぶりだったが、わたしはアイルランドに来る前に、一応下調べにと司馬遼太郎の「街道を行くシリーズ」の「アイルランド紀行」を読んでいた。それとまあ見事に同じなのである。そりゃあ歴史なんだから語る人によってしょっちゅう違ったらまずいのだが、イギリスに対する積年の恨みやじゃがいも飢饉による餓死と移住、血の日曜日を経ての北アイルランド分断と、国の苦難の記憶をこんなにも若い世代が当たり前のように滑らかに語るというあたり、さて太平洋戦争でアメリカと日本は敵でしたー「ウソー!」と驚く学生が少なくない日本との差はどうだろう。確かに彼らの場合完全に独立してからまだ日が浅く未だに北アイルランドを巡ってすっきりしていない事情はあるにしても、いささか日本の歴史教育は大丈夫かと疑問を抱いてしまう。それにしても苦難の歴史を日本人にもわかりやすくまとめた司馬遼太郎がさすがというべきか、博論書くだけあるとベスをほめるべきか。

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さてこの日の夕食はなぜかイタリアン。やたらイタリアンのお店が多かったように思う。イタリアにも移民したのかしらん? EUから避暑に観光客が詰め掛けてダブリンはすごい混みようである。雨で冷え込むイマイチの天気のこの夜も、テンプルバーの辺り (Bによると、規模は違うけどNYでいうとソーホーに当たる)はすごい人ごみである。料理にはあまり期待していなかったアイルランドだが、意外や各国料理が楽しめる。アイリッシュは当然ながら、タイ、インド、フランス、中華、そして和食。この日のイタリアンも美味でした。

この後は無料のアイリッシュダンスを見たがなかなか見事なものだ。中心で踊る女の子は細くて緑の瞳が美しく、男の子は赤毛にちょっと妖精っぽいそばかすの青年。これを見るとやはりリバーダンスを本場で見なければという気がしてくる。

しかしここでも日本人は一人である。同じテーブルにきた女の子たちはスペイン人で英語があまり話せない。客はアメリカ人が結構多くて、ミュージシャンに「ウェルカムホーム!(アメリカは最大の移住先)」と言われていた。なんとなく自分が場違いな気もしてくる。

この日ホテルに帰ったら金曜の夜ということもあってか夜中一時半までへったくそながなり声のカラオケパーティでうるさくて眠れなかった。受付に電話しても「今日は金曜ですからねえ・・・もうすぐバーが閉まりますから」と実にのんきな返事。着いたときに、地下にカラオケバーがあると知り嫌な予感はしたけれど、前の晩は木曜なのでそんなにうるさくなかったのだが・・・・便利な立地のホテルも考え物です。




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2009年08月19日

黒カナリアのぶらりアイルランド一人旅(1) イケメンに始まりイケメンに終わるーのか?

本来はモントリオールに行くはずだったのだが、新型インフルで連休に旅行をあきらめた人たちが、夏場に絶対行くぞと決め込んだらしくカナダ便がとれない。ならば電車で旅するアイルランドかー満席です。じゃ一人でも不自由しないパリかミラノかー日本人の大好きな旅先はどこも一杯で、半ばやけでチェックしたKLMで本当に嘘のように取れたのがアイルランド行きだった。飛行機さえ取れれば後は何とかなる。
 
というわけで成田空港。荷物を預ける人の列。前に並んでいたくりくり巻き毛の青年が振りむいた。たとえばダビデが黒髪だとして、肩の筋肉も露なタンクトップに短パンをはかせて情熱的にしたような美青年がにこっと笑う。
 
海外生活の長い人たちはアジア系でも実に素敵ににこりとする術を身につけているけれど、能面社会のアジアにいるとさりげなく笑うというのはかなり難しい。これも慣れだろうか。
 
オンラインチェックインをしたのに荷物を預けるのに結構時間がかかった。前のワイルドダビデが癖のある英語でバックパックを指して「オンリー・マイ・プレイステーション」と言っているのがまことに可愛らしい。
 
もうさっさと搭乗口へ行って寝ようー(五時半起きだよ全く)と出国管理へ向かうと白人の青年がやってきて横に並んだ。今度はブルーアイズに黒髪、白皙の美形が粋に微笑む。なんか幸先いいね今回は。

個人的な趣味を言うとブルーアイズは苦手なのだが黒髪にブルーアイズは別。ダイナミックなコントラストになんかぐっときません?

そういえばスカーレット・オハラが黒髪に緑の瞳。アイリッシュ・アメリカン・ビューティの代表だ。「素敵な帽子だね」とまたにこり。不思議なことにお洒落なスーツをだらりとハンガーごと腕にかけている。「それって面倒じゃない?」と聞いてみたが肩をすくめていた。「どこまで行くの?」「アイルランド」「へええ、なんでまた」

結構この反応は多かった。確かにねえ、なんでアイルランドなのかと普通は思うよね。あまりポピュラーな旅先ではない。「だって文学史上においては大きな島(面積は北海道とほぼ同じくらい)でしょ」「確かに。へえ、君は文学に興味あるんだ。僕は実はハーフアイリッシュだよ」なるほど、それで黒髪にブルーアイズなのね。鼻の先の赤い、ひょろっとしてて髪がしょぼしょぼしたイギリス人とは違うわけだ(極端なイメージで申し訳ない、でもイギリス人ってなんかそんな感じじゃないですか?チャールズ皇太子に代表される)

ロンドンまでというイケメンハーフアイリッシュに見送られてのアイルランド行き。これまた幸先よし。

それがまた機内で、今回は非常口横のエコノミーの中では一番良い席を母のおごりで確保したのだけれど、あら、さっきのダビデだよ。隣は。

もう一つ予備の枕を要求したけれど枕はもうないとの返事に自分のをどうぞと差し出す紳士ぶりである。さすがダビデ。

しかしダビデ、そんな肩も脚もむき出しで寒くはないのかー。パーカーに靴下を重ねばきして毛布にくるまる私の横で、ダビデはラテンの血が熱いのか、十一時間の空の旅の間中その格好だった。折角イケメンが隣だったのだけれどこちらは仕事をとにかく片付けてなんとか間に合った旅である。しかも5時半おき、音楽も聴かず眠らせてもらいました。ダビデはバーン・アフター・リーディングを見て時折くくくと笑っていた。そうそう、ブラピのアホっぷりが笑えるよね、その映画。

一緒に降りながらダビデ君と話してみるとスペイン人で姉さんが東京でフラメンコダンサーをしているので遊びに来たそうだ。本名はA君。またスペイン人!どうもスペイン人と縁がある。しかもセビリアに住んでるって、去年行ったよセビリア。すごく暑かったけど(40度くらい)美しい街でした。

その容貌からてっきりフラメンコギターでも弾くのかと思いきやパーカッションくらいでプロとは程遠いと恥ずかしそうに言っていた。本人は消防士とか。なるほどイイ身体のはずである。トランジットの間A君の簡単スペイン語講座に夢中になっていた私はムービングウォークの下り口で派手に転ぶという失態をやらかしました。

そうです、みなさん!アムステルダム空港のムービングウォークですっ転んでいたアジア系の女はわたしです。まあなんともなかったけど。幸いにして。

残念ながらマドリッド経由でセビリアに向かうA君とはここでお別れ。入国審査の向こうに出た彼に手を振って私は一路ダブリンへ。

なんかイケメン続きでツイてたのか、でも思い切り転んだしなあ、ツイてないのか、さてどうなることやら・・・




黒カナリア

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2009年07月07日

「あなたになら言える秘密のこと」

あなたになら言える秘密のこと [DVD]辺見庸氏が現代は全てがコーティングされた世界だと語っていたがその通りかもしれない。恐ろしいこと、ひどいことが身近に起きていても人はすぐにそれに慣れてしまう。それを直接に感じられなくなっているのだ。当事者を除いて。考えみるとひどい事件がいくつもあったのにその一つ一つを思い出せなくなっている。しかしそれに巻き込まれた人たちの時間は止まったままだ。

サラ・ポーリーはハリウッドから距離を置いている理由について、インディペンデント系の映画や出身国カナダへの思い入れを語っていたが、ハリウッドが取り上げないような、しかし忘れがたい秀作にあの静謐さをたたえた深いブルーの瞳で登場する。
 
映画をみているとカラーなのに色のない映画だと気付く。色がないといってもモノトーンなわけではないのだが彼女の身につける服の色、景色、職場の工場、強制的に取らされた休暇中の旅先から不意に飛び込んだ北海油田の掘削所。全てがくすんだ、華やかな色合いが抜け落ちた世界。ヒロインの生活もただ工場と自宅の往復のみ。交わされる会話もない。食べるのはいつもチキンと米だけ。

透明な何かで周囲から切り離されたような彼女ハンナは、油田の事故でひどい火傷を負い、後遺症で目が一時的に見えなくなった男に出会う。目が見えずに彼女の看護に身を任せる男は苦痛を紛らわせるためか彼女に話しかける。答えない彼女。

周囲の口の重い仲間達たちから少しずつ事故の詳細を聞いた彼女もわずかずつ男に打ち解け始める。

ティム・ロビンスというとまずあの大きな体とそれに似合わず威圧感のないキューピーのような顔が目に浮かぶ。その大きな体を今回は動かせない。目の演技も封じられた難役を体のわずかな動きと声、表情のみでこなす。体と心の両方の痛み、男は彼女にひとつずつ秘密を打ち明ける。たわいもない話題から思わぬ少年時代の心の傷と事故の原因。

対する彼女も少しずつ変わり始める。二人がつい噴き出すシーンではこちらもなんだかほっとしてしまう。そして彼を病院に移す前日、ついに彼女も自らの秘密を語りだす。


ショックだったのはなんと簡単に人間は忘れてしまうのかということだ。癒えない傷を抱えてそれでも生きていかねばならない人がいるのに、そんなことあったっけと簡単に忘れてしまう。傷を受けた当人は傷の深さゆえ語らない―語れない。ティムの大きな体がここで活きてくる。すべてを語っても彼ならばひょっとして受け止めてくれるかもしれないーと。

ラストシーンで草原を歩いてくる子供たちの身に着けた鮮やかな赤が目に入る。かすかな希望の証として。


あなたになら言える秘密のこと [DVD]
松竹ホームビデオ (2008-11-27)
売り上げランキング: 34221
おすすめ度の平均: 5.0
5 外見からはわからない
内面の苦しみを表現しきった良作




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2009年04月02日

チェンジリング

changeling03.jpg村上春樹は『壁と卵』があるとして、たとえ卵がどんなに間違っていても僕は脆く弱い卵の側につく。壁の側から書いた小説に意味があるだろうかーとエルサレム賞の受賞に際して語ったが、イーストウッドも常に、アーティスト、監督として、卵の側から作品を作っている人だ。
 
しかも今回の作品では卵にあたる母親は間違ってもいなかったのである。

ある日突然いなくなった9歳の息子。半年後警察が息子が見つかったと連れてきたのは見知らぬ少年だった。しかし誰も彼女の言葉を信じない。当のナゾの少年までが「マミー」と抱きついてくる。

あらゆる権力に、世間に間違っていると言われても彼女は叫び続ける。「わたしの息子を取り戻したいの」−と。

秀逸な作品を撮り続けるイーストウッドゆえに楽しみにしていた反面、不安でもあった。主役のシングルマザーにA・ジョリーという起用が、である。これまでイーストウッドはあまり色のついていない、というかどんな役でもこなせる本当にうまい役者しか使ってこなかった。それをアンジーである。下手だというのではないが、あまりにも知られすぎた女優。しかも今まで強い役を演じているのに不意に内側から崩れ落ちるような脆さがあったジョリーである。しかし今回はその逆をいって、こんなに華奢な人だったのだと思わせるか細い体に決して折れない芯の強さを全編を通じて感じさせる。

「責任」−父親がいない理由を彼女が息子に語るシーンがある。パパは責任が怖くて逃げたのよーと。この責任―が後々まで響いてくる。責任を果たさない人々が息子を求める彼女の前に立ちはだかる。ミスを認めない警察。その警察のいいなりの精神科医。息子を捨てる父親。しかし彼女は精神病院に閉じ込められても「母」であることの責任から逃げない。息子のために戦い続ける。そして彼女の息子もまたー戦っていたのである。

息子の失踪は連続少年猟奇殺人事件へとつながっていくが、静かで美しい30年代のLA郊外から、土ぼこりの舞うケンタッキーのうらぶれた農場へ、場面の切り替えも鮮やかで登場する人々全てがまたぴたりとはまった見事な演技だ。一見間が抜けた犯人の、常に笑っているしまりの悪い口元。ねばつく話し方。その鳥肌の立つような気味の悪さも本物なら、彼に利用される従弟の少年の大きな瞳の絶望と恐怖の深さ。こんなひどい警官ってあり?と思わせる憎たらしい刑事部長の造形もまた巧みだ。

この犯人や彼を追う刑事の存在が、ヒロインを支える側が正義で警官たちが悪―となりがちな単純な図式に陥らせない。

むかつく刑事部長に「女ってやつは」と感情的で非論理的、倫理的に弱いと評される女性たちの強さ。ことに精神病院で出会う、同じように警察とのトラブルで収監された女性とヒロインの交流は、男でたとえればダイハードのブルース・ウィリスと、あの黒人警官にも負けない。「女の友情もありますよ、さて感情的なのは一体どちらで?」と言いたくなる。
彼女たちに注がれる視線にイーストウッドの女性への深い敬意が感じられる。思えば最初にアカデミー賞をとった「許されざるものーUnforgiven」でも顔を傷つけられた売春婦の復讐から話が始まった。

1935年度のアカデミー賞のエピソードも挟んで、ちらりと和むシーンを配するらしさもあり、重い話ではあっても勇気ある母と子に希望が感じられる、じっくり見たい見事な一本。


CHANGELING -trailer




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2009年02月24日

ダークナイト

ダークナイト 特別版 [DVD]最近のハリウッド映画はある程度当たりが見込めるシリーズ物が多い。確かにスーパーヒーロー物の2や3が目に付く。しかし当たることを意識したヒーロー物とは明らかに違う仕上がりなのがこのダークナイトだ。
 
邦題もダークナイトだけ、何の映画だかわからない。「暗い夜」なのか「闇の騎士」なのかー。バットマンビギンズで派手な路線から原点に回帰したバットマンシリーズの最新作なのだが、バットマンと冠に抱かないタイトルからもわかるようにこれはバットマンの映画ではない。これはジョーカーの映画なのだ。
 
惜しくも薬物死したヒース・レッジャー演ずるジョーカーはまるでシェイクスピアの悲劇に登場する「純粋悪」だ。しかも悪を背負った自分に対する悲しみー幾度となく細部を変えて語られる顔の傷の訳―不気味なメイクを通しても強烈に伝わる色気と絶望を感じさせる目の演技。

作品自体もヒーロー物の枠を超えた複雑で重厚な悲劇に仕上がっている。シェイクスピアの悲劇、オセロの悪役イアーゴーがなぜオセロを陥れたいのか自分でもわからないように、ジョーカーが何を目的として悪行を重ねるのか、見る者は理解不能なままその悪逆非道に翻弄される。

金が目的で、悪の世界で名を上げたいー最初はありがちな目的かと思われた、顔に消えない笑顔を刻まれた男。しかしそんな判断はすぐ覆される。仲間内からも「狂犬」と呼ばれるジョーカーは策を弄して手にしたはずの山と詰まれた金に惜しげもなく火を放つ。

ただ自分の前に立ちはだかるバットマンが憎い。しかし殺したいのではなく彼の意思をくじきたい。一番大事なものを奪って苦しめたい。「お前は俺のおもちゃだ」―その一言が彼の存在理由のヒントかもしれない。イアーゴーが嫉妬に狂うオセロを見て楽しむように、バットマンが守りたいと願う人の心の善き部分を人質に、究極の選択を迫る。

対するバットマンは純粋善ではありえない。その心の葛藤を映画は二人の騎士を登場させて表す。バットマン(C・ベイル)=正体を明かさない闇の騎士。表看板=光の騎士 (A・エッカート)。人々とバットマンの希望を背負った光の騎士は、ジョーカーの仕掛けた残酷な罠にはまりひどい火傷のトゥー・フェイスとなり、悪と化す。落ちた光の騎士をバットマンはどうするか。

ビギンズで原点に帰ったバットマンはジョーカーという敵役を経て初めて闇にこそ生きる騎士となる。表と裏、闇と光、善と悪、全ては対照ではなく混在する。哲学をも感じさせる作品となった。前前作のように派手で楽しい作品を期待してきた観客は???となってしまうだろう。闇と光二人の騎士に愛されるヒロインがずいぶんと地味なのも、悲劇にはふさわしいのかもしれない。
 
故人の受賞として史上二人目となったアカデミー助演男優賞。それを言うのもむなしい、惜しい才能が失われた。


ダークナイト 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-12-10)
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おすすめ度の平均: 4.5
5 ヒース!オスカー受賞おめでとう
3 正義と悪の物語
5 これ以上のバットマンは無いです。
5 アメコミ・キャラは進化する。
4 狂気のエンターテイメント




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2008年10月01日

「つぐない」

つぐないのっけから流れるタイプライターの音の使い方がとてもうまい。小説家を夢見る少女、ブライオニーの足取りに合わせてマーチのように響き、時にはマシンガンのようにも聞こえる。タイプライターってこんなに鋭い音がしたっけ?と思わせると同時にそれを操る小説家が持つ暴力的なまでの「力」の暗示になっている。

「香水」という映画があって本当に匂いがスクリーンから出るとかいうふれこみだったが、それよりもこちらの方がわたしにはキーラ・ナイトレイ演ずるセシリアの香水の香りとか、屋敷に満ちる夏の重くだるい空気とか、戦場のきな臭さや血のにおいが漂ってきたように思う。

監督ジョー・ライトは300ページ近いイアン・マキューアンの原作を「語らない」ことで成功させている。やたらとキャラクターが能弁だったりナレーションが入ったりするのではなく、俳優たちの演技力を信じて、ふとした肩の上げ下げや、開きかけて思いなおした唇などで心情を語らせることで美しい一本を生み出した。

キーラはうまいし、とても綺麗な女優だと思うのだけれど、いつもなんか口元が気になって仕方なかったのだが(なんか噛みつかれそうじゃないですか?)今回それがなかった。なぜだろうと思っていたら、あまりしゃべらないし笑わなかったからなのだ。それもまた台詞の少なさが生み出した思わぬ効果の一つかも。

贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)台詞は少なくとも抑えてもほとばしる情熱をキーラはその細身から漂わせ、相手役ロビーを演じた今旬のジェームス・マカヴォイ(ペネロピや現在ウォンテッドに主演中)もまた、白いシャツの下に、熱を持った確かな肉体を感じさせるのにどこか「はかない」という、矛盾する役どころにぴったりはまっていた。「はかない」という表現が合う男優は少ないでしょう。他にはトビー・マクガイアぐらいか(そう思うのはわたしだけかもしれませんが)。

この二人を見るだけでも価値があるくらい美しく仕上がっている。またイングランドの片田舎の夏の屋敷から突然の第二次大戦中のロンドン、フランスへの画面のがらりとした切り換え。ここでも長回しのシーンが戦争というものがどれほど無駄で愚かしい行為かを訴えてきて、反戦映画として見ても優れている。

Come back to meとセシリアがロビーにささやく一言がキイワードでもあるのだが、どれだけ多くの女たちがそれをささやき、母や妻や恋人の元に無事に帰れたものは本当に限られたラッキーなものだけだったのだろうと思うと胸が詰まる。

最後のシーンは賛否分かれるところだろうと思うが、わたしには「つぐない」というよりも小説家の「業」の傲慢さが鼻についてちょっと褪めてしまいました。


□「つぐない」ジョー・ライト監督、イギリス、2007年
ATONEMENT-trailer(from youtube)
□「贖罪」(原作)、イアン・マキューアン、新潮文庫



つぐない
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ジェネオン エンタテインメント (2008-09-26)
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おすすめ度の平均: 4.5
4 思ったよりも良かった。
4 思春期の少女の「男性への嫌悪感」
5 言葉の重みを感じる
3 悪い予感が……
5 衝撃と感動の大河ロマンス



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2008年03月12日

パンズ・ラビリンス

pan's01.jpgスペイン映画はそこに流れる空気が濃密だ。アルモドバルなどはカラッカラに乾いていながらねっとりという不可能をやってのける達人だし、スペイン・メキシコ合作のこのパンズ・ラビリンス、ギレルモ・デル・トロ監督の映像からは、しっとり甘く濃密な空気が流れ出してくる。映像を見ているだけで、深い森の湿った空気、鳥の鳴き声、虫達の羽音まで聞こえくる。

舞台は内戦後も抵抗運動の続く山岳地帯。独裁的で残酷な大佐の元に子連れで嫁いできた身重の貧しい女。

その連れ子のヒロインの少女とともに苔むした森をさまよっている間にダーク・ファンタジーが展開する。といっても決して子供向きのファンタジーではない。

片方には残酷な現実―森に潜む抵抗勢力と、それをいぶりだそうとする大佐率いる軍人の見せる残酷さー生々しい拷問、殺人、流れる血。弟にひそかに物資を流す女中メルセデス。彼女をじわじわと追い詰めてなぶる大佐の視線のいやらしさ。

母親は冷酷な夫に失望し日に日に弱っていく。その悲惨な現実を何とかパン(牧羊神)に言われた試練を乗り越えて立て直そうとする少女。普通ならばそこから逃れる手段が別世界と決まっているのだけれど、この映画の場合別世界(ラビリンス)の方も決して美しいだけの世界ではない。一歩間違えばまだ見ぬ兄弟もろともに母の命も自らの命も失う危険な迷宮。

残酷な現実界と、美しいけれど同じように危険で残酷な迷宮の世界。二つの世界が重なって、そこを行き来する少女が、生まれてくる弟に注ぐ愛と、館の女中メルセデスが抵抗運動に身を投じる弟を案じる気持ちもまただぶってくる。

母と生まれてくる弟のためにパンの難題に立ち向かう少女と、エプロンにひそませたかみそり一本で大佐と渡り合うメルセデスのりりしく美しいこと。

振り返ると、ああこれは美しい姉たちが可愛い弟たちに注ぐ無償の愛の物語だったのか、と思えてくる。

他には迷宮に住む子供を食らうモンスターの恐ろしくも見事な造形と、不気味でありながらユーモラスなパンも見所の一つ。

残酷さの中に父親の影から抜けられない弱さ、複雑さを見せた大佐の演技も見逃せない。

ファンタジー嫌いな人にも勧めて間違いのない一本。少女のけなげな成長と、思いがけない結末を見守ってください。


□公式サイト http://www.panslabyrinth.jp/


パンズ・ラビリンス 通常版
アミューズソフトエンタテインメント (2008/03/26)
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おすすめ度の平均: 5.0
5 見た人と話したくなる映画
5 ファンタジーとは実現しなかった
悲しいパラレルワールド、素晴らしいです
5 傑作です。


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2007年05月06日

かげろう LES EGARES

lesagares01.jpgなぜ日本の中年女性はハンカチ王子だの、ちょっと前ならヨン様だのを前にすると見事に少女化するんだろう?

「年下の男にいれあげる」ーというねっとりした欲望など存在していないかのようなー実際はしてるんだろうけどー子供っぽいというか、乙女状態へ突入である。

もちろん実際には乙女になぞなるわけがないので、あくまでも自分たちの頭の中にしか存在しない乙女になっているわけなのだけれど。どうみても大人の女が年下の男を欲するとかって感じじゃないのである。日本文化の若ければ若いほどいいという影響か、若いーといわれる時期を過ぎてから「母」ではなくて、大人の女になっていく人というのはなかなか日本人には少ないような気がする。だから年下―といってもせいぜい松島菜々子か長谷京がタッキーに入れあげるのが精一杯なのだ。その点キョンキョンが一人、気を吐いている…か?

フランスは中年男が若い娘にのぼせるのは当たり前、しかし「年下男にいれあげる」パターンも結構好きな国なのでは。そこにはちゃんと大人の女が存在している。

エマニュエル・ベアールがそんな大人の女を演じた「かげろう」。ちょっとショックだった。ベアールがデビューした頃は本当に「天使降臨」って感じだったのだ。ふわふわの金髪に大きな潤んだブルーアイズ。歩いていても足に羽が生えてるんじゃないのというくらいで、実際天国から落ちてきた天使を演じたことも。

そんなベアールも年をとった。とったけど良い年のとり方で、生身の人間になったというか、人造人間みたいなアジャーニと違って、「かげろう」の中では地に足がついた生身の大人の女になって、人生の岐路に不意に現れた青年(ギャスパー・ウリエル)に戸惑う。

時代が本来は出会うはずのない二人を出会わせる。第二次大戦下、都会から逃れてきた子連れの女は麦畑で空襲に会い、不意に現れた青年に救われ、住人が疎開した家で勝手に暮らし始める。乱暴に振舞うかと思えば女や子供たちのために鶏を盗んできたり、大人ぶってみたかと思えば子供のように甘えてみせる。反発しながらも青年を慕う息子。青年の不意のプロポーズ。静かな田舎にも常に漂う死の気配。

二人の微妙な距離は立ち寄った帰還兵の存在によって急接近する。ついに結ばれる女と青年。

暗い森で青年は何度もマッチをする。
「なにしてるの?」
「女の身体を見てみたいんだ」

この台詞が後で効いてくる。赤い下着、追い詰められたような目つき。謎が解けたとき、女の目に、心に浮かぶのは・・・

生と死は隣りあわせでも、死と性は反対のもののような気がする。この映画でも戦争という「死」が常に存在しているからこそ「性」に惹かれていく人間がいとおしい。

考えてみればそんな緊張感が今のここにはないから、みんな性を感じさせない乙女に戻れるのかもしれない。

かげろう
かげろう
posted with amazlet on 07.05.05
ポニーキャニオン (2005/07/06)
売り上げランキング: 6441
おすすめ度の平均: 5.0
5 お勧めのフランス映画です^^



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