各国の映画誌が続々と昨年度のベスト10を発表していますが、今回はフランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ Les Cahiers du cinéma」が選出した映画作品10本をご紹介しましょう。「カイエ」といえば、その昔フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールといったヌーヴェル・ヴァーグの作家たちが携わり、その後もアンドレ・テシネやオリヴィエ・アサヤスなどの映画監督を輩出した由緒ある映画誌です(数日前イギリスの出版社に買収されたというニュースが飛び込んできましたが・・・)。
自国の作品だけでなく、アジアや南米、またインディーズ系の作品にもいち早く注目するこの雑誌が選んだ10本は、他とはひと味もふた味も違うようです。
まずは執筆陣が選んだ10本(カッコ内は日本で劇場公開用(予定のものも含む)の邦題)。
1. Redacted (「リダクテッド 真実の価値」)/Brian De Palma(写真)2. En avant, jeunesse(「コロッサル・ユース」)/Pedro Costa
3. Cloverfield (「クローバーフィールド/HAKAISHA」)/Mat Reeves
4. No Country for Old Men(「ノーカントリー」)/Joel & Ethan Coen
5. Two Lovers /James Gray
6. Valse avec Bachir (「戦場でワルツを」)/ Ari Folman
7. Dernier maquis /Rabah Ameur-Zaïmeche
8. Hunger /Steeve McQueen
9. A Short Film About the Indio Nacional /Raya Martin
10. De la guerre/ Bertrand Bonello
ほとんどが昨年のカンヌ映画祭で上映されていた作品で、アニメもあればドキュメンタリーもある、バラエティ豊かな結果となっています。1位に選ばれたブライアン・デ・パルマの「リダクテッド 真実の価値」は、イラク戦争で実際に起こった事件を下敷きに、マスメディアや政府が隠す残酷な場面や不都合な映像に敢えて焦点をあてたドキュメンタリー仕立ての作品で、いつもは凝った映像が見どころのデ・パルマ監督が、意外にも反戦的なメッセージを打ち出し、ベネチア映画祭では銀獅子賞を受賞しました。アメリカでは絶対上位には入ってこないであろう作品がトップに選ばれたのがフランスらしい。
これとは反対に驚いたのは3位の「クローバーフィールド/HAKAISHA」です。人気TVドラマ「LOST」「エイリアス」を手がけ、トム・クルーズの「M:i:III」を監督したJ・J・エイブラムス製作の SF パニックもので、玄人好みな作品が並ぶなか、こういう娯楽性の強い作品がぽっと入っているのが面白い(「シックス・センス」以降アメリカではウケが悪い M・ナイト・シャマラン作品がよく選ばれていたりするし)。残念ながら未鑑賞なのですが、観た人の感想を読むと、こちらもドキュメンタリータッチの作りだそうです。今回はドキュメンタリーやドキュメンタリー風の作品が多く選ばれていたり、戦争をテーマにした作品が多いのも特徴的でした。良くも悪くも世相を反映しているのか。
さて「カイエ」では読者投票によるベスト10も発表されています。
1. Le Silence de Lorna (「ロルナの祈り」)/Luc et Jean-Pierre Dardenne(写真)2. No Country for Old Men (「ノーカントリー」)/ Joel & Ethan Coen
3. Valse avec Bachir (「戦場でワルツを」)/Ari Folman
4. Un Conte de Noël de Arnaud Desplechin
5. There Will Be Blood (「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」)/ Paul Thomas Anderson
6. Two Lovers / James Gray
7. Vicky Christina Barcelona (「それでも恋するバルセロナ」)/Woody Allen
8. Hunger/Steeve McQueen
9. La Vie moderne / Raymond Depardon
10. Entre les murs / Laurent Cantet
批評家の選んだものとはまた違った結果になりました。1位の「ロルナの祈り」はカンヌ映画祭で脚本賞を獲得したダルデンヌ兄弟の作品で、日本でも現在公開中。またフランス人はウディ・アレン好きと聞きますが、それを証明するかのように「恋するバルセロナ」が7位にランクイン。日本では6月公開予定です。またフランス人好みといえば、アルノー・デプレシャンも4位に入っています。カンヌでパルム・ドールを受賞したローラン・カンテの Entre les murs (壁の間で)は10位、また昨年末発表されたルイ・デリュック賞を受賞したレイモン・ドパルドンの La Vie moderne(モダン・ライフ、これも農家についてのドキュメンタリー)が9位に入りました。
ベスト10にもお国柄が表れていて面白いですね。ここに選ばれている作品は、日本ではこれから公開のものや未公開のものもあるので、今後作品を観るときの参考にしてみたいなあと思っています。
exquise@extra ordinary #2
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