一昨年のカンヌ映画祭で「ゾディアック」が高く評価されたデヴィッド・フィンチャー監督の最新作「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を観に行きました。もうすぐ永遠の眠りにつこうとしているデイジー(ケイト・ブランシェット)に頼まれて、娘キャロライン(ジュリア・オーモンド)が読み始めた古い回想録。第一次世界大戦終結のニュースが流れる1918年のニューオーリンズ、初めての子供が生まれたバトン氏(ジェイソン・フレミング)が家に飛んで帰ってみると、妻は力つきて息絶えてしまった。残された子供を一目見るなりバトン氏は抱きかかえ、老人ホームの玄関先に置き去りにする。子供を見つけたクイニー(タラジ・P・ヘンソン)は、その老人のような風貌に驚愕するが、引き取ってベンジャミンと名付け育てることにした。ベンジャミン(ブラッド・ピット)はホームの老人たちと生活をともにするが、成長するにつれて次第に若返っていくのだった・・
1918年から約80年間にわたり、人とは逆向きに人生を歩む男を描いた物語ですが、その時代時代の雰囲気がセットや小道具などで自然にわかるようになっていて、まず背景の表現がしっかりしているなあと感じました。またデイジーが死の床にある現在とベンジャミンの過去の人生という二つの時間を行き来するという、普段ならうるさく感じられる構成も、編集の技のためかすんなり受け入れることができました。ストーリー自体は一種のファンタジーで、ツッコミどころも多い(なぜベンジャミンの背丈と精神は普通に成長するのか、等々)けれども、それを忘れさせるような印象深いシーンの連続で、3時間近くあった上映時間も気にならずあっという間にエンディングを迎えていました。
ベンジャミンとデイジーの恋物語を軸に、彼を取り巻く人々との挿話がちりばめられ、彼の家が老人ホームだったということが象徴するように、特に「別れ」の場面に重きが置かれています。とりわけ彼と「親たち」ー実の父親であるバトン氏、育ての母親、そして人生の師ともいえるキャプテン・マイク(ジャレッド・ハリス)ーとのエピソードは胸打たれるものばかりです。ベンジャミン自身は特異な体に生まれついたものの、何かを成し遂げたわけでもなく、英雄的存在でもありません。デイジーは好きだけれど売春宿にも行けば他の女性ともつきあうし、酒もやるし、バイクやヨットで遊ぶし、いわゆる普通の男として描かれています。80年間という長い時間の描き方もスピーディーというよりまったりという感じで、そういった要素が作品に奇妙なリアリティを与えていて、ファンタジーが苦手な私でも楽しめたのでしょう。
原作はスコット・フィッツジェラルドだそうですが、時代設定などかなり監督の手が加えられているように思います。前作「ゾディアック」のときのように、今回も奇をてらったような演出や仕掛けはほとんどなく、誠実に作られた作品になっていて、今年のアカデミー賞に多数ノミネートされているのもうなずけます。作品、脚本、編集あたりで受賞してもらいたいなあ。
日本ではブラッド・ピットの主演が強調されているようで、アカデミー賞でも主演男優賞の候補になっていますが、彼の演技はそれほど・・という感じに見えました(もちろん悪くはなかったし、ビジュアル的には文句はないですが)。一方でケイト・ブランシェットの奔放なバレリーナ、ティルダ・スウィントンの陰のある人妻など、女優陣の存在感が大きかったです。とりわけ印象的だったのは、慈悲深く心から息子を愛する母親クイニーを演じたタラジ・P・ヘンソンで、アカデミー賞でも助演女優賞にノミネートされています。exquise@extra ordinary #2
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興味を持っていただき、嬉しいです。ちょっと長い映画ですが、時間を感じさせない作りになっていると思います。ご覧になったらまた感想をお聞かせくださいね。