2009年04月17日

『エンデの遺言』『エンデの警鐘』――地域通貨って「(1)地域通貨とは」

これまでに考えてきたことを整理しますと、

* 現代の貨幣は、モノ(=ヒト)とモノ(=ヒト)のやりとりを円滑にするという本来的な役割が十分に機能を発揮せず、「よりお金を増やす」ために選好されるといったように自己目的化している。
* 現代経済にとって当たり前すぎてあえて根源から意識されることのない利子が、大多数の人々の生活を圧迫している側面もある。

以上のように、貨幣というヒトとヒトとを円滑につなぐ人類最大とさえいえる発明品が、時代を経て主従関係が逆転し、もてるヒトももたざるヒトも「お金の奴隷」となってしまったことを、「不況」と「利子」というキーワードをつうじて考えてきました。

そして、今回紹介する地域通貨はこうした問題に対処するための1つの試みとなります。ところで、じつのところ地域通貨には明確な定義が存在せず、またその実施形態も多種多様なので、いまいち全容がつかみにくいところがあります。そこで、きょうのエントリーではまず「(1)地域通貨とは」というタイトルでもって、Q&A方式によってこの通貨の輪郭をつかんでみたいと思います。ついで、次回のエントリーを「(2)地域通貨の具体例」とし、実際の地域通貨にどのようなものがあるか紹介してみたいと思います。最後を「(3)地域通貨の問題点」とし、そのメリットが大きく注目されながら、残念ながらまだまだ広く浸透するにいたっていない地域通貨の問題点を探ってみたいと思います。

ではさっそく、地域通貨がどのようなものかみていきましょう。

Q:円やドルといった従来の通貨と地域通貨にはどのような違いがあるの?
A:一番大きな違いといえば、まず円やドルなどは「法定通貨」といって政府が発行し、これらを国民は決済手段として使うことを義務づけられていますが、これにたいし地域通貨は、この通貨を使う人々が自ら作るものです。参加者が、現行通貨によらず自分たちの決めたルールでモノやサーヴィスのやりとりをすることだと考えればいいかと思います。

Q:それって一種の偽金作りでは…?
A:かつてそのように判断され、政府により廃止に追いこまれたケースもありました。けれども現在では、地域通貨が地域の活性化につながるものとして日本も含めて世界各国の政府がむしろ奨励するようになっています(註1)。あるいは、地域通貨を幅広く解釈すれば、私たちがすでに日常的になじんでいるスーパーのポイントや割引券なども含むことになります。こうしたポイントや商品券をより流通通貨に近づけて、もっと幅広い決済手段につかえるようにしたのが地域通貨と考えることもできます。
(註1*地域通貨の利用目的がはっきりしていて(たとえば「地域活性化」など)通用地域がしっかり限定されているのなら、法律的にみてもまずは問題ないようです。もしかりに日本の通貨体制を脅かすような規模にでもなってしまえば、財務大臣からなんらかの停止命令を受けるのは間違いないでしょうが…)

Q:じゃあ具体的にどのように実施されるの?
A:実施方法はさまざまです。円やドルとおなじように、紙幣のかたちで流通するものもあれば、紙幣を発行せず各参加者が自分の通帳をもちこれを通じて取引の決済をする方式もあります。くわしくは次回のエントリーで紹介します。

Q:では、あらためて従来の通貨との違いがどこにあるのか説明してほしい。通貨ならすでに円があるのに、なぜあらためてつくる必要があるの? 
A:この点を押さえておくことが一番重要だと思います。まず地域通貨の2つの特徴を提示してから説明をつづけていきましょう。地域通貨は、この2つがうまく絡みあうことによって参加者に大きなメリットを与える可能性を秘めています。

@ この通貨は原則的に利子を生まないような制度になっている。それどころか、マイナスの利子がつき時間を追うごとに価値が目減りする制度を採用している地域通貨もある(たとえば1000単位の通貨が1ヵ月後に1%減価し、990の価値になるといった具合)(註2)。
A 地域通貨は、その名があらわすようにある地域(=コミュニティ)に限定された通貨であることに意味がある。
(註2*日本では、地域通貨=マイナス利子の通貨とまるでこれが等価のように考えられているようですが、個人的にはこれはこれで問題ではないかと思っています。理由は、マイナス利子の通貨制度を維持するのにコストがかかるからです。『エンデの遺産』にインスパイアを受けた身として忍びないのですが、日本では『エンデの遺産』が地域通貨をマイナス利子の貨幣であるかのようにみなしてしまう風潮を生み、逆説的に地域通貨が根付きにくくなっているのではないかと思います。この件については次々回の「(3)地域通貨の問題点」であらためてコメントしたいと思います)

まず@の説明をご覧ください。地域通貨はすくなくとももっているだけではなんの意味もないため、現行通貨にくらべてどんどんつかわれていきます。そしてそれに比例して地域での人的交流がどんどん活発になることになります。より具体的にいうとこの通貨には炊事家事といったような「無報酬労働」をも取引の対象とする可能性も秘められています。つまりお金の回りがいいということは、従来の通貨では給料の支払われなかったであろう労働が「労働報酬」を得る可能性も高くなります。くわしくはこちらのゲームをご参照ください。
http://www.sawayakazaidan.or.jp/chiikitsuka/game/taiken/index.html?Submit=%91%CC%8C%B1%83Q%81%5B%83%80%82%F0%82%CD%82%B6%82%DF%82%E9
このように利子を生まない通貨は、一方で「もっているだけではどうにもならない」とこの点については従来通貨にくらべてデメリットがあります。ただし、他方で貯めこむことによるメリットがほとんどないため市場にどんどん供給され、それだけ雇用機会もアップすることになります。さらには前回のエントリーで触れたように現行貨幣制度下ではモノやサーヴィスの価格の30%に利子分が反映されていますが、この通貨圏内部にかぎっていえばそのようなことはありません(註3)。このように、利子のつかない通貨というのは常識的に考えるとなんともしっくりこないような気がしますが、すくなくとも地域全体を活性化することにつながりますし、とくに現在の不況下などにおいて大きな効果をおよぼす可能性を秘めているのです。

(註3*前々回のエントリーで「(現在の不況下において、経済成長率が10%低下したというが)なにが10%減ることになったのでしょうか? この間、ヒトやモノが10%減るかといえばぜんぜんそんなことはありません。(…)10%減るのは、このヒトとヒト(=ヒトとモノ)の出会う機会だといえます。あるいはこうした出会いをつなぐお金のシステムになにか10%分だけ不具合が生じているともいえます」さらに「人類は総体としてみれば「守銭奴」であり、つまりお金を「つかう」ためでなく「貯めるため」もっといえば「増やすため」に持ちたがる傾向にある」と述べましたが、こうした利子を前提とした現行通貨の倒錯した面を補完する役割を果たすのがこういった地域通貨のアイディアとなると考えればいいでしょう)

ついでAについてですが、一見デメリットにみえる地域限定という性質は、じつはこれこそがおおきなメリットとなります。この通貨は当然のことながら外部に流出しません(つかえません)。そのため、たとえばA市で流通している地域通貨を手に入れた人はA市でこの通貨をつかうことになり、A市の経済活動に貢献することになります(註4)。つまり「地域を限定する」という意味を「地域で同志=仲間をつくる」というふうに発想の転換をすれば理解しやすいでしょうが、ある地域の地域通貨はそっくりすべてがその地域のためにつかわれることになるのですね。

(註4*じつはここは微妙な議論でもあるので、すこし説明を加えておきます。私たちは「経済活動」という概念を円などの法定通貨で数値化してあらわすこと(たとえば「10万円の取引」といったように)になれてしまっているので、このA市における地域通貨をつかった経済活動は、円ベースで取引額を表示できないのでじつは経済活動になってないのではないかという疑問がでてくるかもしれません。まったくお金にまつわる議論はたいへんややこしいと実感できますが、経済活動の実質はモノやサーヴィスのやりとりであり、これが名目的にたとえば「円」という数値で表されているにすぎません。そのためA市における地域通貨をつうじたモノやサーヴィスのやりとりは、たとえば円ベースで表示されるGDPにも反映されませんし、この意味ではたしかに経済活動ではないかのようにみえます。けれどもこれは立派な経済活動です。
たとえば、A市において、Aさん(無職)、Bさん(八百屋さん)、Cさん(農家)がいるとして、Aさんが地域通貨を支払ってBさんから野菜を買う。Bさんはおなじ地域通貨でCさんから野菜を仕入れる。Cさんは野菜収穫の繁忙期にAさんを雇って給料を地域通貨で支払う。と、これはこれで地域全体が潤うことにつながりますし立派な経済活動になっていることがわかりますね。円(通貨レートが設定されている外国通貨もふくめて)は円以外の通貨で取引された経済活動を計量できないという欠陥(?)があるので、こういうややこしい話になるのですね(よく議論の対象になる、「家事は労働か?」というのも本質的にはおなじ問題でしょう)。

そしてここで@とAの特徴をまとめて説明しますと、地域通貨の基本的な考え方はおおざっぱにいってしまえば、互助組織あるいは擬似的大家族をつくることといってもいいでしょう。たとえば家族内では、だれかに自分の余っているお金を貸すときに利子をつけて、自分だけ利益を出そうとだそうとはしません。それどころか、ある者は炊事をし、ある者は掃除、洗濯、会社に出てお金稼ぎ、といったふうに家族全体で協力して家計が向上するように努力していますね。こういった考え方をコミュニティ全体に押しひろげ、コミュニティ全体を活性化しさらに利益をたがいに共有しあう、これを生みだす原動力として地域通貨は期待されています。

Q:なかなかよさそうな制度だけど、では、実際にどのような成果を残しているの? またこれだけメリットがおおいのなら、もっと日本中のあちこちに地域通貨ができているはずなのに、あまり目にすることはありません。なにか問題があるのですか?
A:地域通貨の現状についてですが、こちらは次回「(2)地域通貨の具体例」で紹介します。ついで地域通貨の問題点ですが、これはいったん根付いてしまえば実際十分にその機能を発揮しているようで、地域通貨そのものに欠陥があるわけではありません。むしろ、「なかなか根付かない」ところに問題があります。この点については、次々回「「(3)地域通貨の問題点」で考えてみたいと思います。





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