第1位
クエンティン・タランティーノ『イングロリアス・バスターズ』
第1章の冒頭から、スケールの大きな映像が目前に迫ってきて、何が次に起こるんだろうと自然とワクワクさせられる・・ ぽつりと建つ家の横で洗濯物を干したり、薪を切ったりする人々や、その家から草原へ駆け出していく少女をとらえた場面を見ていると、舞台はフランスであってもこの作品が西部劇へのオマージュであることがしみじみとわかってくる。マカロニ・ウェスタンのリメイクと聞いていたが、こんなにヒネリのあるリメイクだとは思わなかったし、戦争映画という体裁をとっていても、いたるところに「映画」への言及が散りばめられていて、やはりこの作品は「映画のための映画」なんだなあと思う。タランティーノという監督はこの媒体が本来持っている魅力をじゅうぶんに知っていて、近年の作品では私たちにも存分にそれを味わわせてくれている。『デス・プルーフ』ほどのはじけっぷりはなかったものの、長丁場を感じさせない楽しい作品だった。
もちろん、この面白さは、黒カナリアさんも指摘していたように、クリストフ・ヴァルツの怪演に寄るところも大きい。カンヌ映画祭で男優賞を獲得したのも納得の、ブラピがかすんでしまう存在感だった。アカデミー賞でも助演男優賞にノミネートされたし、ぜひオスカーも穫ってもらいたい。
第2位
ジム・ジャームッシュ『リミッツ・オブ・コントロール』
待望のジャームッシュの新作は、ロードムーヴィーというおなじみのスタイルでありながら、これまでになく抽象的で難解な作品であり、ファンの間でも好き嫌いが分かれたようである。事実、ネット上に載せられたいくつかの感想を見ても、あまり好ましいものがなかったし、一緒に観に行った家人ですら横の席で何度かウトウトしていたほどである。私は『デッドマン』やジャームッシュ作品で最も好きな『ゴースト・ドッグ』、果てはデビュー作『パーマネント・バケーション』を思い出させる雰囲気と、非常にスタイリッシュな空間を背景に、クールなスーツを着こなして黙々と歩く殺し屋の姿に魅せられて、退屈することはなかった。ラストに現れるメッセージが示すように、想像力は何の制限も、何の制御も課せられるべきものではなく、「映画でできないことは何もない」ということを体現したかのような作品だった。
アレックス・デスカス、ビル・マーレイそして工藤夕貴など、これまでのジャームッシュ作品に出演してきた俳優たちが次々と登場してくるのも嬉しいが、今回はブリジット・バルドーへのオマージュと思われる謎の女性、パス・デ・ラ・ウエルタが大変印象的だった。
第3位
クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』
80歳を過ぎてさらに活動が加速化しているイーストウッド監督、次から次へと映画を撮影しているが、それがどれも一定のレベルを保っているのがすごい。投稿させてもらった『チェンジリング』もよかったが、現代のアメリカが抱える諸問題をこんなにもさりげなく取り込み、無理に力むことなく軽やかに描ききったこの作品は、今まで観た彼の作品のなかでもベスト3に入る(アメリカでは2008年公開なのだが、なんでこの映画が昨年のオスカー候補になっていないのか??)。あんな結末を迎えたにもかかわらず、観終わった後は実にすがすがしい気分だった。とくに今回は脚本が秀逸で、会話の場面の多くが記憶に残っている(なかでも床屋のシーンはどれもよい)。憎まれ口ばかり叩いて終始渋面の俳優イーストウッドもよいが、何といってもこの映画ではモン族の姉弟を演じた二人の少年少女たちが光る。映画に負けず劣らず若々しくのびのびとした演技だった。
今回はすべてアメリカ映画になりました。昨年は、ほかにも惜しくもここに入らなかったけれども、mandolineさんの選んだ『ラースと、その彼女』や『ベンジャミン・バトン』などアメリカ映画に面白いものが多かったです。今年はフランスやヨーロッパものをもっと観たい。まずはペドロ・アルモドバル監督の『抱擁のかけら』を観に行きます!
exquise@extra ordinary #2
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