イギリス人女優クリスティン・スコット=トーマスが全編フランス語で通すのだが、やや英語っぽいフランス語が聞き取りやすい。フランス語専攻のみなさんにはどう聞こえるのかわからないが。あまり日本人には受けない骨美人と思っていたが、のっけからしわの目立つ疲れたすっぴんにたるんだ腹回り。サイズの合わない服。イングリッシュ・ペイシェントから過ぎた年月の重さをリアルに感じさせる気合の入った演技だ。
重い罪を犯して釈放されたばかり、人待ち顔で空港に座る彼女ジュリエットをやや若い女性―妹レアが迎えに現れる。二人の間に漂う緊張感。
話の展開は単純だ。無表情で人を寄せ付けないジュリエットがレアの家族―夫と夫の父(口がきけないというがミソ)、二人のベトナム人の養女たち―やその友人達と過ごすうちに次第に人間らしさを取り戻し、かつては医師だった彼女がなぜ息子を殺すという大罪を犯したのかーが最後にわかるようになっている。
しかし別に彼女の罪云々はどうでもよい。ジュリエットが再生していく過程が丁寧に、繊細に描かれている上質な映画造りと演技とを堪能すればいいのだ。
カフェで声をかけてきた知らない男と寝てーしかも「全然ダメ」なんて相手に言ってしまったり、妹の養女に本を読み聞かせてやったり、次第に女の部分と母親の部分―彼女が長年凍りつかせてきたものが溶け始める。
化粧をし、似合う色合いの服を身につけ、自分を長年待っていてくれた人に重い秘密を打ち明けた時、一人暮らしを始める彼女のアパートに差し込む光が印象的だ。
別に映画に3Dなんていらないよね。いい脚本と演出と確かな演技があればいい。そう思わせる静かな佳作。
□公式サイト http://www.zutto-movie.jp/
黒カナリア@こんな映画あんな映画
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