フランス語のタイトルよりは、英語版の方がわかりやすい。確かに唇の動きを読むというのがみそだから。濡れ場などないのに色っぽい映画だ。
男と女の絡みといえば、ただ男の唇をひたすら遠くから読唇術のある女が読む。女の目に映るのは男の濡れた唇のアップ。それだけなのに、ドキドキする。この辺りはとにかく裸が出でくれば良いと思っている某監督とか某作家とかにも見てもらいたい。
この色っぽさは役者の実力に負うところが大きい。とにかく主役のエマニュエル・ドゥボスの見事なブスオーラがすごい。本人は分厚い唇がセクシーな個性派美人なのに、役の上で彼女から漂うこの不幸なブスオーラが本物なのがすごい。猫背気味でいつも不満げに突き出した唇。野暮ったい伸びたカーディガンにイライラ補聴器を直すしぐさ。休み時間といえば、ひがんだ目でよりそうカップルの会話を盗み見(聞き?か)する。あっぱれな不細工女ぶりといえる。どんな役をやっても常に綺麗な○木瞳とかに見せたい「役者魂」である。
でも黙って不幸に甘んじている女ではない。この辺りはフランス女っぽい。上司の弱みに付け込んで、ちゃっかり部下を要求する。その条件が「とにかく若い男にして、背が高くて…」ってちゃっかりしすぎ!
現れた年下男を演じるのはヴァンサン・カッセル。この人の特徴と言えばカマキリにみえなくもない風貌と、妙に薄くて紅い唇(これはこの作品にぴったり!)。そしてキレのある動きが持ち味だと思うのだけれど、この作品ではそのキレを封じ込んで、不器用であまり頭も回らないチンピラを好演している。コピーすらまともにとれず、着たきりすずめでこっそり事務所に隠れて住む。どこか荒っぽい過去を隠した男に惹かれていく女。地味に、身を縮めるようにして生きていた女が次第に男の過去に巻き込まれるうちに解き放たれていく。どんどん自由になっていく女の表情の変化が実に色っぽい。
次第に羽を伸ばしつつあった女がバーで知り合った男に襲われそうになるシーンで、現れた年下男に救われるのだけれど泣き出した女を「もう大丈夫だって。泣くなよ」と実にぶっきらぼうに抱き寄せる。
こういう不器用さにも時にほろりとさせられる。…秋の夜長にはなかなか向いている大人な作品。
フランス映画にしてはわかりやすいところもとっつきがいい一本です。
リード・マイ・リップス
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実はかなり自分の魅力と、役者としての実力に自信があるからこそのブスオーラで、その点あっぱれですね。