先月7月24日には、「映画の中の夏休み」と題し、エリック・ロメールの「獅子座」を紹介した。そこでは、今ひとつぱっとしない雰囲気の中年男のある夏の物語が描かれていたが、今回も、やはり中年、というより初老の男性のサマー・ストーリーである。
映画は、ヴァカンスの始まり(いざ海辺へ!)から、その終わりまでを描く。
特に物語らしきものはない、コメディー映画である。
とはいえ、そのユーモアはモンティ・パイソンなどに代表される英国人のブラックな「笑い」とも、ウッディ・アレンの映画で描かれるアメリカ東海岸のスノッブな「笑い」とも確実に異なる独特のものだ。
それは、実にゆったりとした「笑い」であり、爆笑が起こるような「笑い」では決してない。
否定的に語るならば「のろくて退屈な映画」と形容することもできるだろう。
しかし、その緩慢なリズムのなか、主人公ユロ氏のパントマイムを思わせる機械的な身振りは、おかしい。
ビーチで、数年前に日本でもかすかに流行したトルコアイスらしきものがねりねりと作られる。
ねりねりとしたトルコアイスはねりねりと延び、砂の上に落ちてしまいそうだ。
ユロ氏は、それが気になって仕方がない。
そこで機械的な動きで、トルコアイスがねりねりと落下してしまうの
を、なんとか阻止しようとする。
そこがおかしいのである。言葉にしてもおかしくはないが、それは筆者の文才の欠如に由来することで、映画とは無関係だと考えていただきたい。
またユロ氏がなかなか紳士であるところも良い。
中年、或は初老の男性、というと人はそれぞれイメージするところのものがあるだろう。
しかし、このユロ氏は、おそらく多くの人の中年像を覆すのではないかと思われる。
それは、あらゆる文脈から逸脱しており、それが「笑い」を生むわけだ。
ひょっとすると、次回最終回を迎えるTBSのドラマ「パパと娘の7日間」の中の館ひろしの仕草に、くすっと笑ってしまうような感覚に近いかもしれない。
もちろん、映画にはテレビドラマの中のようにはっきりとしたドラマは不在ではあるが。
大笑いしたいという気分の時に観る映画ではない。
しかし、くすっと笑いたいときや、緩慢に時間を過ごしたいときには
うってつけの映画である。
映画は、ヴァカンスの終わりと共に結末を迎えるが、そこには夏休みが終わるときに感じる独特の切なさがある。
そうした切なさを、子供が主人公の映画ではなく、初老の男性を主人公とした映画で描いていることが、この映画のオリジナリティーの高さかもしれない。
ちなみにサウンドトラックも、お洒落である。
キャベツ頭の男@どうってことない風景
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