2008年05月19日

新作映画情報「パラノイドパーク」

paranoid_park.jpg昨年のカンヌ映画祭に出品され、特別賞を受賞したガス・ヴァン・サント監督作品、「パラノイドパーク」を観に行きました。


スケボー好きの少年アレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は、友人に連れられて行った通称「パラノイドパーク」と呼ばれるスケボー公園に惹かれ、危険な雰囲気が漂う場所であるにもかかわらず、夜に一人で出かけて行く・・


映画の冒頭は、断片的な映像が並べられたり繰り返されたりで、かなり混乱する編集になっています。しかし、それは作文の苦手なアレックスが、その日の出来事に至るまでを何とか語ろうとする姿と重なり、何度も何度も文章を書いては捨てている状態を思わせます。つまり、アレックスがまとまりのない記憶からひとつの物語を文章化するのと同時に、映画はそれを映像化しているのです。なぜアレックスが文章を書くことにそれほどこだわるのか、彼が体験した事件は何だったのかは最後に明らかになり、物語を完成した彼の虚脱したような姿が映し出されて映画は終幕を迎えます。今回はアレックスの内面に焦点をあてた描写がされており、その点では、2003年にやはりカンヌでパルム・ドールと監督賞を同時受賞した「エレファント」の客観的な描写とは大きく異なっていました。


Paranoidpark1.jpg「エレファント」と異なるもうひとつの大きな要素は、音楽を多用しているということです。今作では多くのシーンに音楽が流れて、新鮮な効果を与えています。特に多く使われているのはフェリーニ作品に使われたニーノ・ロータの音楽。「ほかの選択肢も考えたが、結局この音を使うしかなかった」と監督も語るように、アレックスの姿と重ねられるととても印象的でした。


撮影はウォン・カーウァイ作品でおなじみのクリストファー・ドイル(アレックスのおじさん役で画面にも登場しています)。「花様年華」や「2046」のような官能的な鮮やかさはなく、かなり抑えた色調の映像(カーウァイ作品でいえば、「ブエノスアイレス」に近い)ですが、人物のアップの場面などでは、はっとするような透明感にあふれています。そしてスケボーをする若者たちの映像の何と美しいことか。きめの粗い映像、スローモーション、足だけを映したショットなど、さまざまなやり方で何度もスケボーのシーンが流れますが見飽きることはありません。


paranoidpark5.jpg「エレファント」同様、今回も素人の若者たちが多く起用されました。アレックス役のゲイブ・ネヴァンスもその一人で、彼はほとんど表情を変えることなく演技をしているのですが、ひとたび映画を観終わると、終始無関心を装う彼の本当の気持ちがその大きな目から物語られているように思えてきます。ガス・ヴァン・サントの選ぶ少年少女たちは、すごく整った顔立ちをしているわけではないのに、みんな独特の雰囲気を持っていて印象深く、学校の廊下の向こうからこちらへ彼らがぞろぞろ歩いてくるだけのショットでも、一枚の美しい絵となります。彼らが交わす会話も、たわいのないものだけれど非常にリアルで、スケボー少年たちが一室に集められたときの場面などがそのよい例でしょう。


監督の最新作は暗殺されたゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクを扱った Milk で、主演は今回のカンヌの審査委員長ショーン・ペンです。これまでの作品とはまた違った感じの映画が期待できそうで、公開を楽しみにしています。


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posted by exquise at 07:55| パリ ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | extra ordinary #2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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