2009年01月04日

2008年の3点(映画編)

皆様、明けましておめでとうございます。今年も何とかやっていきますので、どうぞおつきあいよろしくお願いいたします。さて、今年最初のエントリーは、例年通り昨年度の回顧という形でベスト3を選んでみたいと思います。まずは映画から。昨年は前半調子よく本数をこなしていったのですが、後半は失速・・ それでも面白い作品にいくつか巡り会えることができました。昨年何らかの形で発表された作品からベスト3を挙げてみます。


第3位

ダージリン急行(ウェス・アンダーソン)

The-Darjeeling-Ltd1.jpgいつもヘンテコな家族を描いて独特のおかしみを醸し出しているウェス・アンダーソン作品のなかでも、今回はインドという国のなかで仲の悪い3兄弟の強烈なキャラクターがぶつかりあって、ユルいながらもいつになくパワーが感じられました。特に今までシリアスな映画でしか見たことがなかった俳優エイドリアン・ブロディのコメディアン気質が存分に発揮されていて新鮮でした。冒頭に小作品が配置されるなど作品自体のまとまりには欠けるかもしれませんが、この監督の傑作のひとつに入ると思います。映像も凝っていて美しいです。



第2位

パラノイド・パーク(ガス・ヴァン・サント)

paranoid1.jpg若者を主人公をした作品で、常に印象深いものを残しているガス・ヴァン・サント監督。今回もゲイブ・ネヴァンスをはじめとした少年少女たちのキャスティングが冴えていました。一見、かつての作品「エレファント」を思い出させますが、アプローチの仕方がまた違っていて、実験的な姿勢を失わない映画作りへの意欲が感じられます。映画を撮ることと文章を書くことが重ね合わされているのも興味深かったです。クリストファー・ドイルの抑えたカメラワークもすばらしく、スケボー映画としても見応えがあります。



第1位

デス・プルーフ in グラインドハウス(クエンティン・タランティーノ)

deathproof1.jpg実はタランティーノ作品については、サントラの選曲のセンスには感心するけれど、映画自体はこれまであまりピンと来るものがありませんでした。評価の高い「パルプ・フィクション」も、(脱力系が好きなはずなのに)あの独特のテンポになじめず「そんなに面白いかあ??」と密かに思ってたし、「キル・ビル」もそれなりに楽しんだけれど、何かしっくりきませんでした。それが今回、映画が好きで好きでたまらない監督の情熱と、あくまでB級映画にこだわるスタイル、とはいえ単なるレトロ映画回帰にとどまらず2部構成の形で新しい方向性に進もうとする意欲的な姿勢、といったものが全体からひしひしと感じられ、初めて心から面白いなあと思いました。セクシーでカッコイイ女の子たちが暴れ回る図は痛快です。



毎年言ってますが、今年こそはもっと映画を観たい!です。デヴィッド・フィンチャーの新作(ブラピ&ケイト・ブランシェット出演)、コーエン兄弟の新作コメディ(こちらもブラピ出演)など今年公開の映画も楽しそうなものがすでに揃っています。1本でも多く鑑賞してこちらで内容をお伝えできればと思っています。


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2008年12月20日

Musique Pour le Noël クリスマスのための音楽

ライターの方々がクリスマス向けの音楽を選んでおられるので、私もチョイスしてみました。もっともこれらは皆クリスマスや冬自体にはあまり関係ない音楽ばかりなのだけれど、なぜかこの季節に聴くとしっくりくるのです。


lovezombies.jpgザ・モノクローム・セットは以前ご紹介したイギリスのエル・レーベルに所属していたこともあるバンドです。軽快でテンポのよいギターとキャッチーでポップかつときにエキゾティックなメロディ、そしてリーダーでヴォーカルを担当するインド人のビドの甘い声が魅力で、かつてアンディ・ウォホールが彼らについて「ベンチャーズとヴェルヴェット・アンダーグラウンドを足して2で割ったようだ」と述べたのだそう。ダークな色調を帯びた曲もあるけれど、彼らの音楽には常にチープな雰囲気が漂っていて、そのB級感がたまりません。セカンド・アルバム Love Zombies にある "The Man with Black Moustache(黒ひげの男)" という曲のイントロがクリスマスっぽくてこの季節によく聴いていましたが、サンタのことをパロった陽気な曲なのかと思っていたら、どうも物騒な内容の歌みたいです・・ このアルバムは現在廃盤ですが、この曲はこちらで聴くことができます。

The Monochrome Set - Jet Set Junta (彼らの代表曲。ビドが美しい!)


A Broken Frameフランスのファッション雑誌から命名されたデペッシュ・モード Depeche Mode は、それが理由でというわけではないでしょうが、本国イギリスだけでなくフランスでも人気のあるエレクトリック・ポップのグループです。80年結成だからもう30年近く活動してる、ってすごい。最近はハードでソウルフルなイメージが定着しているみたいだけど、結成したてのころは物静かな青年たちが恥ずかしそうにやってる、というような音でした。彼らの2枚目のアルバム A Broken Frame は最も内向的な作品で、ヒット曲 "The Meaning of Love" のようなポップな曲もあるものの、"Leave in Silence" や "My Secret Garden" というその他の曲名が語るように、叙情的で静かな音が中心です。今となっては多少の古臭さはありますが、この柔らかいシンセの音を当時聴いたときは、「電子音ってこんなに温かくて切ないんだ」と驚いたし、デイヴ・ガーンのヴォーカルが前作よりもいっそう厚みと深みを増したことでその感動もなおさらでした。私は冬にエレクトロ系の音楽を特に聴きたくなりますが、発表されて25年以上たつこのアルバムは今でもそのお気に入りのひとつです。しんみりしたい冬の夜におすすめ。

Depeche Mode - My Secret Garden


Come Fly with Me先日、iPod をシャッフルモードにしていたら、思いがけなくフランク・シナトラ Frank Sinatra の "Come Fly With Me" が流れてきて、思わず聞き惚れてしまいました。 ジャズ・オーケストラによるオーソドックスなアレンジにのせて、朗々と歌うシナトラの色気たっぷりの声が何とゴージャスに響くことか。まさにクリスマスの華やかな雰囲気にぴったりの音と言えましょう。これは数年前に知人にすすめられて買った CD からの曲で、自分ではまず手が伸びないジャンル(10代のときだったら絶対聴いてない)の音楽ですが、こういう曲もたまにはいいなあと思えるようになってきました。何でも今公開中の邦画の主題歌にもなってるらしいので、皆さんもどこかで耳にしたことがあるかもしれませんね。シナトラの作品ではずばり「クリスマス・アルバム」というのもあるので、こちらを聴いてもよさそうです。

Frank Sinatra - Come Fly With Me



それでは素敵なクリスマスを!



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2008年12月06日

俺たちフィギュアスケーター フランス編

本格的なウィンタースポーツシーズンとなり、フィギュアスケートの競技会も各地で次々と開かれています。大きな大会としては、目下グランプリ・シリーズが行われ、有力選手の多くが出場しています。人気がある女子シングルはテレビで放映されるのに、私の好きな男子シングルは申し訳程度の放送(それでもどうにか日本の小塚崇彦選手の活躍が見られて嬉しいですが)・・ 今シーズンの男子シングルは、トリノ五輪のメダリスト2人が引退し、残念ながら日本の高橋選手もけがで試合に出場していない一方で、急成長してきた若手も登場し、上位争いが混沌としていて観る側としては面白くなっています。フランス選手もベテラン、若手ともども力のある選手が揃っています。そこで代表的な3選手をご紹介しましょう。


Joubert.jpgブライアン・ジュベール Brian Joubert (24) は、フランス国内でトップのみならず、目下国際スケート連盟による世界ランキング1位という実力者です。その美貌も手伝って母国フランスではアイドル的な扱いをされるほどですが、スケーティングは力強く男性的で、アート嗜好が強かったり中性的なタイプの選手が多い昨今の男子選手の中では逆に目立つ存在です。彼の得意とするのは何よりもジャンプで、4回転ジャンプの成功率の高さは現在1番でしょう(今季はまだ調子が悪いようですが)。昨季の世界選手権では、1つのフリースケーティングのプログラムで4回転ジャンプを3回成功させるという偉業まで成し遂げました。しかしこの話は、快挙を終えて優勝を確信した彼がその後の演技で手を抜きすぎたために、結局2位に終わったという笑えないエピソードのおまけつきです。演技最後のスピンをしている頃には笑いが止まらない感じだった彼が点数を見たときの呆然とした表情は忘れられません。しかし最近の衣装の趣味悪すぎ・・

Brian Joubert - short program 2008


ponsero.jpgヤニック・ポンセロ Yannick Ponsero (22)は、最近力を伸ばしつつある選手。彼もジャンプが得意で、高度なジャンプを決めれば高得点を獲得できる力を持っています。これまではショートプログラムではいつも上位に食い込むものの、フリーでは失敗して総合順位を落としてしまうことがたびたびだったのですが、今季は日本で行われた NHK 杯でもミスの少ない演技で3位に入るなど、調子を上げています。ベートーヴェンの交響曲第5番を現代風にアレンジした音楽に、ストリートダンスを思わせるステップ(おそらく昨季の高橋選手のヒップホップから影響を受けたのでは)を用いた今季の個性的なショートプログラムが印象的でした。タヌキっぽい垢抜けない風貌が何だか可愛らしい要注目のスケーターです。

Yannick Ponsero - short program 2008


preaubert2.jpgジュベールの次の座をそのポンセロと争っているのは、アルバン・プレオベール Alban Préaubert (23)。180センチ以上の長身でダイナミックな演技をする彼も、4回転ジャンプ成功者のひとりです。技術もさることながら、彼の魅力はそのキャラクター。これまで蜂や吸血鬼などに扮してユニークなプログラム(振付は日本でも有名なニコライ・モロゾフ氏)を披露して国内でも人気を博してきましたが、今季のショートプログラムではブラッド・メルドーによるレディオヘッドのカヴァー曲を使うなど、コミカルだけではない彼の新しい一面が見られました。エキシビション用のプログラムでは、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの I put a spell on you(ジャームッシュの映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」で流れる曲です)を使っていて、未見なのですがこちらも楽しそうですね。お茶目な感じのする彼は、実はグランゼコールに通う秀才でもあり、文武両道のアスリートなのです。

Alban Préaubert - short program 2008


こうやって見ると三者三様ですね。現在6カ国で行われていたグランプリ・シリーズの競技会が終わり、その総合成績における上位6選手がもうすぐ韓国で行われるグランプリ・ファイナルで優勝を争うことになるのですが、フランスからはジュベール選手が出場を決めています(日本からは小塚選手が出場。日本女子では浅田真央をはじめ3選手が出場します)。来年3月にロサンゼルスで行われる世界選手権も含めて、日本選手だけでなくフランス選手の活躍にもぜひご注目ください。



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2008年11月22日

2008年のボジョレー・ヌーヴォー

IMG_3300.jpg20日はボジョレー・ヌーヴォーの解禁日でした。普段赤ワインは飲まないし、毎年恒例の恩師 M 先生との試飲会は都合で開かれないし、値段も高いし、今年はやめとこうかなと思っていたのですが、やっぱり売り場でずらりと並んだボトルを眺めているとつい手がのびてしまいました。さんざん吟味したうえで選んだのは、2年前にも買った Beaujolais villages primeur Château du Montceau "Les lapins monopole" でした。


ボジョレーの限定された地域で作られたワインのみが名乗ることのできる、ボジョレー・ヴィラージュ。なかでもこの「レ・ラパン・モノポール」は、「天才」と呼ばれる生産者フレデリック・コサール氏が、畑で化学薬品を使わずに昔ながらの方法(馬での耕作など)で生産したブドウを使った無濾過の自然派ワインだそうです。とはいうものの、一昨年飲んだのもそのときは忘れていたし、ワインに関する情報も後で知ったわけで、単純に以前飲んだビオワインのおいしさの記憶と、ラベルのウサギの可愛さで選んだのが「当たり」だったのでした。


早速夜に開けてグラスに注ぐと、ノンフィルターだけあって、うっすらと白い霞がかかったようなにごりのあるワインです。飲んでみると非常にジューシーで、かつ口の中でじゅわ〜と発泡する感触が広がっていきます。とれたてのブドウをぎゅっと絞ってそのまま瓶に詰めたような新鮮さで、渋みもほとんどなく赤ワインが苦手な人でも美味しく飲めそうです。実は最近節酒中だったのですが、飲みやすくてついついボトル半分くらい開けてしまいました・・


不規則な天候のため例年になくブドウの収穫が遅れたうえ量が少なかったので、ワインの生産も遅れたそうで、今年のボジョレー・ヌーヴォーのできばえは、生産者の腕にかかっていると言われています。「レ・ラパン」のほかにもう1本ボジョレー・ヴィラージュを買いましたが、飲んでみると前者のほうがはるかに美味しかったので、コサール氏のワインは成功したボジョレーなのかな、と素人ながらに感じました。


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2008年10月25日

MUSIQUE POUR L'AUTOMNE  秋の音楽 その2

Cyberbloom さんに続いて私も秋に聴きたくなる音楽をご紹介しようと思います。いつにも増して年甲斐もなくアグレッシヴな音ばかり聴いていた夏から一転、このごろはアコースティック・ギターの美しい素朴な曲や正統派のポップスなどに惹かれることが多く、季節が変わるだけでこうも気分が左右されるのが不思議です。


ベスト・オブ・ギルバート・オサリバン子供の頃、テレビのCMでやたら流れている曲があってそれがギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン Alone Again (Naturally)」であったことを知ったのは相当後になってからのことです。ゆっくりとしたリズムと、一度聴いたらすぐに口ずさんでしまえるような親しみやすいメロディのこの曲は、年月を経ても色褪せることのない名曲中の名曲です。品のある優しい声は、どこか乾いていて寂しげ(「アローン・アゲイン」はひとりぼっちになってしまった男の悲しい歌でもあるのです)に聞こえ、それが秋の空気のイメージと重なるのかもしれません。彼のナンバーは、この曲のほかにも "Clair" や "What's in a Kiss" など、CM や映画で多用され、どこかで一度は耳にしたことのある名曲ばかりなので、まずはベスト・アルバムをお聴きすることをおすすめします。ところでその昔、ポール・マッカートニーが彼を自分の後継者として認めたという話ですが、そのポールはいまだ現役・・


Skylarking1970年代にパンクバンドとしてデビューし、次第に凝った音作りをする職人的気質を帯びていったイギリスのバンド XTC が、これまた独創的なソングライターであるトッド・ラングレンによるプロデュースのもとで1986年に制作したアルバム「スカイラーキング」。XTC のフロントマン、アンディ・パートリッジとラングレンの仲が制作中に険悪になり、アンディ自身が「失敗作」であると言い放ったアルバムながら、美しい旋律の曲ぞろいで XTC のアルバムのなかでも大人っぽく落ち着いた作品(その反動か3年後に出た次作 Oranges & Lemons はサイケ色の濃いはじけたアルバムでした)に仕上がっていて、個人的にはいちばん好きです。実はこの作品は夏の一日の時間の移り変わりをテーマにして作られたものだそうですが、一曲目の冒頭に聞こえる虫の声をはじめ、後半に出てくる映画のサントラ風の曲調などがどこか秋をイメージさせます。アルバムとしての統一感もすばらしい(とりわけ前半の流れが絶妙)ので、これはシャッフルではなく一曲目から通して聴いていただきたいです。


geniehumain.jpgCDショップで何の気なしに買ってみたファーストアルバムが予想以上によかったフランスのバンド、オーウェル Orwell。昨年10月にの2枚目のアルバムが発表されていたことをつい最近知り、聴いてみたところこれが前作を上回る秀作でした。ファースト・アルバムでギルバート・オサリバンの "Clair" をカヴァーするなど、ノスタルジックなポップスへの嗜好を示していた彼ら、今作もその路線を変えることなく、さらにソングライティングのセンスに磨きがかかっています。ほとんどの曲はフランス語(アルバム中の1曲Elémentaireをお聴きください)で歌われていますが、実にしっくりと曲にはまっていてフランス語ロックの名作のひとつともいえるでしょう。全体に漂うレトロな雰囲気がこの季節にぴったりです。



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2008年10月11日

新着映画情報「イントゥ・ザ・ワイルド」

into_the_wild4.jpg今年のカンヌ映画祭の審査委員長、ショーン・ペンが、実在した青年クリス・マッキャンドレスを主人公に監督した映画「イントゥ・ザ・ワイルド」を観ました。


大学を優秀な成績で卒業したクリス(エミール・ハーシュ)は、自分の預金のほとんどを慈善団体に寄付し、家族に黙って家を出る。乗っていた車が鉄砲水で駄目になると、ヒッチハイク旅に切り替え、行く先々で様々な人びとと出会う。彼らは皆クリスに好意を持ち自分たちと一緒にいるようにすすめるが、彼はアラスカへ行くと言って、ひとり旅を続ける。最終的に彼が行き着いたのは、荒野に乗り捨てられた「魔法の」バスだった・・


物質至上主義に嫌気がさし、文明的なものから遠ざかり自由に生きるために旅に出たというクリスの物語は70年代頃のことかと思っていたら、90年代初頭という比較的最近の話であって、実は彼と私は同世代であったことがわかりました。彼が思春期を過ごした80年代後半は、日本でバブル経済が全盛であったように、アメリカにおいても物質主義と快楽主義の時代であり、繊細な神経の持ち主であったクリスにはそれが耐えられなかったのかもしれません。しかしながら、どんなに彼がもがいても消費社会や文明から逃れることはできません。それは彼が旅費稼ぎのためにところどころでするアルバイトの風景ー巨大な機械で行う麦の刈り入れや、ハンバーガーのチェーン店での大量生産ーに端的に表れています。彼が最後にたどり着いた場所が洞穴などではなくバスだった、ということも象徴的です。


into-the-wild6jpg.jpg彼と同じ年代のときに、そして90年代にこの映画を観ていたら、クリスの立場で共感を覚えることができたかもしれません。けれども彼よりも相当年上になり、方々で経済破綻のニュースが聞こえる今では、時代に流されまいとするその生き方がうらやましく思える反面、彼が無鉄砲でひとりよがりな考えの持ち主にも見えてしまいます。私には彼よりも彼が旅先で出会う人びとー「家族はこのことを知っているのか」とたずね、つかの間であっても彼の家族たらんとする人びとーのほうに共感を覚えました。そしてそれを証明するかのように、彼がひとりで生きようとする場面よりも、さまざまな人びととの交流のエピソードのほうが心に残りました。


とはいえこれは個人的な一つの見方であって、観る人の年代や立場によって感想はさまざまでしょう。映画はクリスに対して賞賛も批判もせず、一定の距離を置いて客観的にとらえているので、色々解釈が可能な作品だといえます。学生の人たちがこの映画を観てどういう感想を持つのかぜひ聞いてみたいです。


Into_the_Wild5jpg.jpg俳優出身の監督だけあってか、キャスティングはすばらしかったです。クリス役のエミール・ハーシュは清潔感のあるこの若者を爽やかに演じていましたし、また女優陣がことさら魅力的で、母親役のマーシャ・ゲイ・ハーデンをはじめ、雰囲気のある女性たちが次々と登場する映画でした。しかし最も印象的だったのは、アカデミー助演男優賞候補にもなったロン・フランツ役のハル・ホルブルックです。クリスとロンの別れのシーンはこの映画のクライマックスでもあり、老人の流す涙にこちらも涙腺が大いに刺激されました。



「イントゥ・ザ・ワイルド」オフィシャルサイト




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2008年09月28日

Genius

ChangesiPod を使っておられる皆さんは、すなわちパソコンで iTunes をお使いだということになるわけだが、最新バージョンの iTunes に入っている Genius という機能をお試しになられただろうか。これは起動させると、その人のライブラリに入っている曲全体を分析して、その人ごのみだと思われる曲を探し出す、というものである。たとえばある曲を選択すると、その曲に相性がよさそうな曲をライブラリのなかからピックアップして、新しいプレイリストを作成してくれるわけで、自分では思いもつかなかった曲どうしの組み合わせが生まれてくる。


さらにすごいのは、ライブラリにない曲からおすすめの曲を探し出してくる、という機能だ。それらの曲は少しの間だけだが試聴することもでき、気になったアーティストはそこから iTunes Store へ移動してアーティストの情報を得たり他の曲を聴いたりすることもできる。さらに気に入ればダウンロードで曲を購入することもできるのだ。もちろん今までも iTunes Store は存在して曲単位でのダウンロード販売をしていたのだが、今回 Genius が登場したことで、個人のライブラリと無数に存在する世界中の音楽がより接近したといえるだろう。


具体例として私の iTunes のライブラリから Tahiti 80 のChanges を選択してみよう。サイドバーにはまず、Tahiti 80 自身の曲でライブラリに入っていないアルバムや曲が紹介され、その下におすすめとして 10 曲ほど別のアーティストの曲があがっている。

So Light / Benny Sings
Rose / Who Made Who
Skitzo Dancer, Pt.1 / Scenario Rock
Numero 1 / Sourya
Living in a Magazine / Zoot Woman
On My Mind / The Sunday Drivers
  :
  :

I LOVE YOU・・・LIVE AT THE BIMHUIS出てきたのはまったく知らない人ばかり。たまたま2曲分の無料クーポンがあったので、挙げられた曲や、同じアーティストの別の曲をさんざん試聴したあと、興味をもった Benny Sings の Little Donna と Sourya の Sleeping Beauty の2曲を購入してみた。


前者はオランダ出身のシンガーソングライターが歌う、聴きやすいまさに王道のポップスなのだが、決して平凡な音ではなく表情豊かな魅力的な曲だった。タヒチのほかにもギルバート・オサリバンやスティーヴィー・ワンダーが好きな人にもおすすめできる曲だろう。


sourya.jpg後者は2004年にパリでデビューした3人組のインディー・バンドぐらいの情報しかないが、この曲はダウンテンポ系でエールや Zero 7 などのテイストに近い。これは彼らの曲が多く入っている私のライブラリから判断した結果だということか。


来日も果たしていてある程度の知名度はある Benny Sings はまだしも、4曲入りEPしか発表していない Sourya などは、このシステムがなければ巡り会う機会はほとんどなかっただろう。Genius は個人のライブラリという閉ざされた領域を縦横に広がっている未知の音楽スペースへ開く扉みたいなものに思える(もちろんそこには「ビジネス」が思いっきり絡んでくるのだが)。


Genius が登場したことで、iTunes 上では「アルバム」という概念がさらに崩壊してしまった。10代のときにレコードというメディアが中心だった身としては、このような状況になるとは予想もしていなかったし、いろんな店を渡り歩いて1枚のアルバムを探しまくったり、参加者や曲名、あるいはジャケットのみで中身を予想して買うというギャンブルみたいなことをやったり、という楽しみはもはや失われてしまうのかもしれないと思うと寂しい。しかし一方でCDショップでは手にもとらなかったであろうアーティストの作品と接触するチャンスを家にいながら与えられるこのシステムは、音楽の新しい聴き方を提示してくれてもいる。アーティストの側でも今後このような状況に対応した動きを見せてくるだろうし、音楽を聴くという行為は新しい方向へさらに進んでいくのかもしれない。



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2008年09月14日

Musique pour conduire ドライブのための音楽

自動車の運転免許を取ってはや2年が過ぎようとしている。私の住んでいるところは路地が錯綜する下町でどこから人が飛び出してくるかわからないし、日本で最も運転が荒い地域(教習所で「割り込みするコツは?」と聞くと、「ま、気合いやな」という答えが返ってくるような街なのだ)なので、根が臆病なものだから家のまわりで車を走らせるということはほとんどない。運転はもっぱら遠出した先でのすいている高速道路である。運転中は常に緊張しているため、張りつめた神経をほぐすには音楽は不可欠である。ノリのいい軽快な曲ならドライブ・ミュージックとしてたいてい OK だが、そのなかでも運転に自信のない己に喝を入れてくれる3曲をご紹介しよう。


ラバー・ソウルDrive My Car / The Beatles ( Rubber Soul )

「ラバー・ソウル」はビートルズのアルバムのなかでベスト3に入るくらい好きな作品で、その冒頭を飾るのがこの曲である。タイトルはこうでも別に車の運転についての曲でも何でもないのだが、 "Baby you can drive my car" というフレーズが何度も出てくるので、「アンタはちゃんとクルマの運転できまっせ」と言い聞かせてもらっているような気がして、何となく自信がわいてくるのである。もちろん曲自体もよい。



vibrastone.jpg[ハードコア]憎悪 / Vibrastone ( Smile!! ~It's not the end of the world~ (ベスト1991→1994。→にも収録))

これは免許取得の際に、「これくらいの気持ちで運転しろ」と聴かされた曲である。この曲は題名どおり、曲全体が憎しみと悪意に満ち満ちたものすごい曲なんである。そして「カーチェイス/抜かれたら抜き返してやる」というフレーズがのっけから聞こえてくるのだ・・ いやいやこれはあくまで「気持ち」の上での話ですから、それくらいの心構えで運転してるってことで、実際にはやっておりません。ビブラストーンとは、近田春夫が80年代の終わりに立ち上げたヒップホップグループで、当時まだ浸透していなかったこのジャンルの音楽の先駆的なグループであり、鋭い歌詞は今聴いても新鮮である。


Travelling Without MovingCosmic Girl / Jamiroquai ( Travelling Without Moving )

ジャミロクワイのフロントマン、ジェイ・ケイ氏は熱狂的なスーパーカーマニアで、フェラーリやランボルギーニを何台も所有しているそう(環境問題を扱った曲も作ってるはずだが・・)で、それを拝めるのがこの曲の PV である。誰もいないが結構狭い山道を楽しそうに2台の超高級車でカーチェイスしているのを見ていると、ウチの大衆車などどんな運転でも大丈夫、という妙な安心感が生まれてくる。



ところで、フランス人の運転は概して大胆だと思う。一度レンタカーで南仏を走ったことがある(そのとき私はまだ無免許だったので、運転はもっぱら家人であった)が、見た目はフツーのオバサンが、それほど広くない一般道をビュンビュン飛ばしていて、スピード狂の家人もさすがにビビっていた。学生時代フランスを旅行したとき、一度フランス人のシスターが運転する車に同乗する機会があったのだが、ブルターニュの農道という感じの素朴な道で、4人がギュウギュウに乗っている小型車を時速100キロくらいのまさにブイーンというスピードで終始走らせていたのには驚いた。


車の運転、ということでまた思い出すのはジャン=フィリップ・トゥーサンの小説『カメラ L'appareil Photo 』で、主人公がやがて恋人となる教習所の受付嬢(著者自身が監督した映画ではミレイユ・ペリエが演じていた)の運転する車の助手席で、「彼女をこっそり見て、彼女が運転する驚異的な速さと、今にも心地よく眠ってしまいそうな雰囲気、ドライブ用の眼鏡の奥でまさに閉じようとしている小さな目とのコントラストに、うっとりしていた」という場面である。小説のなかのほんの小さなエピソードなのだが、車を運転するならこんなドライバーになりたいと、ハンドルを握るたびに思い出す1シーンである。


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2008年08月31日

アート遠足 ー 金沢21世紀美術館

ronmueck.jpg室生犀星や泉鏡花も暮らした金沢はしっとりとした情緒があり、落ち着いた雰囲気が素敵な街で、親戚がいることもあってこれまで何度か遊びに行きました。数年前に金沢21世紀美術館がオープンしてからは、ますますその魅力を増したように思います。今回も刺激的な展覧会「ロン・ミュエック展」が開かれているので見に行ってきました。


ロン・ミュエックは1958年オーストラリア生まれで現在はロンドンで活動するアーティストです。もともとテレビや映画用の模型やパペットを作っていた彼は90年代後半から人間の身体を扱った彫刻作品制作を始めました。


展示室に入って実際に見てみると、その驚くべきリアルな表現に目が釘付けに。静脈が透けて見える皮膚、髪の毛や体毛や爪ひとつひとつが、シリコンやファイバーグラスを用いて克明に再現された彫像たちは、今すぐにでも動き出しそうです。モデルになっているのは若さやエネルギーがあふれた青年や娘ではなく、くたびれて皮膚もたるんだ中年の男女や生まれたての赤ん坊であるのも特徴的で、彫刻のモデルになりそうもない人びとが、本物そっくりにほとんど一糸まとわぬ姿で人の目にさらされているわけですから、彼らのプライベートな部分を覗き見しているような困惑を感じました。


ronmueck5.jpg


人体の緻密な再現とは対照的に、彫像の大きさはいわゆる「等身大」のものはひとつもなく、5メートル近い赤ちゃんや普通の人の半分の大きさの男女のように、極端に大きかったり小さかったりします。また上半身と比べて下半身が小さいとか、頭部が妙に大きかったりとか、身体全体のバランスも意識的にゆがめてあるようです。その点で「これは本物の人間ではない」という感覚を与えられるためか、これだけリアルなわりには作品自体はそれほどグロテスクではありません。そういったリアルな部分と非リアルな部分が同時に感じられる彫像は、これまで見たことのないものばかりで、気持ちがよいとは決して言えないけれど、不思議な気分にさせられる展覧会でした。


pool.jpgこの美術館はガラス張りの円筒形の建物そのものも面白い施設で、夏休み期間ということもあってか、平日とはいえ大勢の人でにぎわっていました。レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」やジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」といった、直接そのなかに入り込める常設の作品はいつ見ても新鮮です。ミュエック展のほかにも見学者が参加できる日比野克彦のアート・プロジェクトや、地元のアーティストの作品展などが並行して催されていて、創設からまだ5年も経っていないうちにすでにこの由緒ある街の中に溶け込んでしまっているのだなあという印象を受けました。残念ながらミュエック展は今月末までですが、今後も新鮮な企画を楽しみにしています。


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2008年08月19日

L'été à Pékin  ー オリンピックのフランスチームは

escrime2.jpgチャン・イーモウ監督演出のすばらしい開会式でスタートした北京オリンピックがはやくも後半にさしかかろうとしています。日本選手の活躍は連日連夜メディアで報道されていますが、フランスチームの状況はどうなっているか、あちらのメディアをいろいろ覗いてみました。競技に関するフランス語もついでにチェックしてみましょう。


どこの国でもそうですが、自国選手が活躍する種目の報道が中心となるのが常。ニュースで目立つのは、まずフェンシング escrime 。日本でも太田選手の活躍で試合がたびたびテレビ中継されましたが、近未来チックな雰囲気と、「En garde(構え)..... Allez(始め).....Halte(やめ)」という審判の叫ぶフランス語が印象的でした。この競技はフランスの国技のようなものだそうで、今までエペ団体 épée par équipes、サーブル団体 sabre par équipes で金メダルのほか、銀メダル2個を獲得しているものの、ヨーロッパ以外の国の躍進もあって全体的には苦戦している模様です。


teddy.jpgそれ以上に大苦戦したのは柔道(フランス語でもそのまま judo と表されます)。今や日本の3倍もの競技人口を誇る柔道大国となったにもかかわらず、北京では思うような結果が残せず、女子ー48kg級でフレデリック・ジョシネが初戦で敗退したのをはじめ、期待の選手がなかなか勝ち進めませんでした。頼みの綱の男子100kg超級のテディ・リネール(彼の好きな選手は優勝した石井選手だそうで、決勝でこの2人の対決が見られず残念)も準決勝で敗れ、辛くも銅メダルを獲得したものの、結局銀メダル2、銅メダル2に終わりました。

銀メダルの2人は日本選手(内柴、谷本)に破れたのですが、どちらも2連覇の金メダリストに一本負けという結果だったので、報道の多くに勝者への素直な敬意が感じられました。日本選手への関心もやはり強いようで、特に谷亮子選手は inaltérable(揺るぎない)、archi-favorite(超人気)、icône de la discipline avec sept titres mondiaux (7つの世界タイトルを持つこの種目の象徴)といった形容からわかるように非常に評価が高く、ジョシネ選手に関する記事のほとんどには同じ階級の谷選手への言及があり、彼女の敗戦はフランスの柔道ファンにもショックだったようです。


duboscq.jpgさて、一方で健闘が見られるのは水泳 natation でしょう。日本選手も活躍しているのでレースを見ておられる方も多いと思いますが、フランスってこんなに強かったっけ?と思えるくらい、今回は決勝にフランス選手を多く見かけませんでしたか? 人気の高い女子のロール・マノドゥは、直前にコーチや水着に関するトラブルがあったためか調子が悪かった(それでも彼女に関する記事はダントツで多い)ものの、男子選手がすばらしい結果を残しました。平泳ぎ brasse で北島選手が2つの金メダルを取ったとき、同じく2つの銅メダルを獲得したのはフランスのユーグ・デュボスク選手でした。彼は日本で北島選手とともに練習をしたこともあるそうで、日本の水泳ファンにも嬉しい結果です。

しかし、圧巻は100m 自由形 nage libre のアラン・ベルナール選手でした。自由形はアメリカ、と思っていたら、今や100メートルの世界記録はこのベルナールとオーストラリアのイーモン・サリバンが交互に塗り替えているという状況だそうで、オリンピックの決勝でもこの2人の一騎打ちになり、わずか0秒11の紗でベルナール選手が優勝しました。彼は4×100m リレーで銀、50m 自由形でも銅メダル(同僚のアモリ・ルヴォーは銀メダル)を獲得し、実力を結果として残しました。しかしベルナール選手の上半身はものすごかったなあ・・


このほか、フランスはレスリング lutte で金メダル、自転車 cyclisme のチームスプリント vitesse par équipes、カヌー・カヤック canoë-kayak、重量挙げ haltérophilie、陸上の3000m障害 3.000 steeple、体操 gymnastique の男子種目別跳馬 saut de cheval で銀メダルなど、これまで合計29個のメダルを獲得しています。体操の男子個人総合ではブノワ・カラノブ選手が3位となり、この競技では実に88年ぶりにフランスにメダルをもたらすという大きなサプライズもありました。


今後は陸上競技 athlétisme などがメインとなってきますが、フランスの陸上チームは和歌山県で最終調整していたそうで、それだけでも親近感がわいてきますね。日本選手ともども、フランス選手の活躍も期待したいものです。



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2008年07月26日

Blooming : ブラジルー日本 きみのいるところ

brasil.jpg愛知県の豊田市美術館でまた面白い美術展が催されているので早起きして行ってきました。今回は移民百周年を記念し、「 Blooming : ブラジル ー 日本 きみのいるところ」と題してブラジルの現代美術を紹介した展覧会です。


ブラジルというと、コーヒーとサッカーとボサノヴァといったおきまりのイメージしかわかず、正直アートシーンについては、いくつかの美術館で見たエルネスト・ネトの作品くらいしか知りませんでした。今回はそのネトの名前のほかはほとんど初耳のアーティストばかり参加していたので、「ハズしたらどうしよう」と幾分不安を抱えながら入場したのですが、そんな不安は会場に足を踏み入れたとたん消え失せ、とても楽しい時間を過ごすことができました。


エントランスに登場するキアラ・バンフィやパウロ・クリマシャウスカ/アナスターシャ・ハチステレファチオらの作品は、額縁といった枠組みから飛び出して壁を大きく覆っているものでした。クリマシャウスカ/ハチステレファチオの「フォレスト ー オール 豊田市美術館」はこの企画のために制作され、この美術館を滝や木々と組み合わせて描いた作品ですが、線のように見えるのは引き算の式になっていて、デザインとして見ても美しいものでした。バンフィは壁面を流れるように色彩や素材の違う木材を組み合わせたデザイン感覚豊かな平面作品だけでなく、ハンモックに寝ながら歌うパフォーマンス作品(そのハンモックに実際に私たちも横になることもできるのです!)も展示しており、センスを感じさせるアーティストでした。


展示された作品全体を通して、スケールの大きさと、色使いの美しさが感じられました。また人びとの生活と結びついた作品や、土着的なものや古代文明からヒントを得た作品が多く、私たちが通常「芸術」に対して抱く近づきがたいというイメージを覆し、身近にあって、懐かしさすら覚えるものばかりでした。


natureza_vivajpg.jpg最も印象的だった作品を2点。ラウラ・ベレンによる「生物画 Natureza viva」と題された写真シリーズは、日常的な生活の風景の一部に、紙くずなどを加えて可愛らしい花を生みだしたもの。解説には「『静物画 Natureza morta(フランス語だと Nature morte=「死んだ自然」)』を逆手に取って、死物を組み合わせることで『生』を生み出そうとする試み」とあります。そのアイデアの面白さと使い古された家具やタイルの色合いが新鮮でした。


もうひとつは、日本の島袋道浩がタコを主題に制作したビデオ作品を、ブラジルのヘペンチスタ(もともと文字を読めない人たちの瓦版的な存在だそうで、楽器を手にリズミカルに物語を伝える朗誦者)のペネイラとソンニャドールに歌ってもらった、その名も「ヘペンチスタのペネイラ・エ・ソンニャドールにタコの作品のリミックスをお願いした」。実際の作品と、ヘペンチスタのパフォーマンスが2分割されたスクリーンで同時に映されますが、作品の内容とヘペンチスタが歌う内容が結構食い違っている(島袋さんが漁師、ということになっていたり)のがかえっておかしい。そして何よりもヘペンチスタの二人が、タンバリンだけでこんなにファンキーで楽しいパフォーマンスを行うことに驚かされました。彼らの歌が関西弁で訳されているのも何故か納得。島袋さんは、ほかにもミュージシャンとのコラボ作品も出品していて、こちらもボサノヴァの音が心地よく響く面白い作品でした。


興味深い展覧会は今までにいくつも見ましたが、今回は「愉快だった」と素直に思える企画でした。夏らしい楽しいアートを鑑賞した後で食べたひつまぶし(土用の丑の日の前日だったので)の味も格別でした。



* ヘペンチスタのパフォーマンスはこんな感じです。


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2008年07月12日

夏に聴きたい音楽 Musique pour l'été 08

今年もまた夏におすすめの音楽をご紹介します。涼しげな音楽は他の方が推薦してくださるでしょうから、今回は「アツイ」音を取り上げてみましょう。


insideinout.jpgイギリスでは依然若手バンドの台頭がめざましく、それもなぜか The 〜s という名前の人たちばかり。そのなかでも頭一つ抜きん出ていると思われるのがザ・クークス The Kooks です。歯切れのよいギターとリズム、耳に残る個性的なヴォーカル(好き嫌いはあると思うけれど)、すぐれたソングライティングのセンスが印象深い彼らには、何よりも勢いがあり、その若々しい音を聴いていると元気が出てくるので、夏の暑い朝や仕事前に耳にしたくなります。すでに出ている2枚のアルバムのうち、まずはファースト・アルバムの Inside In Inside Out をおすすめしたいです。どの曲もキャッチーで名曲ぞろいですが、私のいちばんのお気に入りは Sofa Song です。



seeingsounds08.jpgヒップホップ界の人気プロデューサーであるザ・ネプチューンズの別ユニット N.E.R.D が4年ぶりに新しいアルバム Seeing Sounds を発表しました。タトゥーだらけのいかつい兄ちゃんたちの頭の中は実に柔らかく、今回も新鮮な発想に満ちた面白い音が盛りだくさんです。彼らの音楽は、「あ、これどこかで聴いた」と思わせる引用がそこらじゅうに散りばめられているにもかかわらず、独自のスタイルがしっかりと確立されており、1曲のなかに何度もヒネリが加えられていて最後まで凝りに凝った音作りがされているのが魅力。中心人物ファレル・ウィリアムズ( GOYAAKODさんの投稿 にも登場していましたね)の才能が惜しげもなく注ぎ込まれたヴァラエティ豊かな音は夏にピッタリで、激しいビートの曲にホットでイケイケな気分になるのもよし、クラブ風のシブイ曲にクールダウンするのもよし。



tdlsoundtrack.jpg夏は暑い、暑いといえばインド、という単純な発想から思いついたのは、先日観たウェス・アンダーソン監督の映画で、不仲の3兄弟がインドを旅する物語「ダージリン急行」のオリジナルサウンドトラック。シタールが響くいかにもインドな音が収録されているのはもちろんのこと、クラシックからロック、ポップスまで幅広いジャンルから監督のセンスが感じられる味わい深い選曲がされており、とりわけキンクスの曲がカッコイイ。このアルバムの最後と同様、映画の最後ではインドの風景をバックになぜかあの有名な Les Champs-Elysées(「オーシャンゼリゼー」のあの曲です)が流れるのだけれど、聴き慣れたあのメロディーもオリエンタルな色彩に包まれると妙に新鮮でした。これは暑い夏の午後に、冷房も入れずにだらりと怠惰な気分を楽しみながら聴きたい音です。


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2008年06月28日

新作映画情報「イースタン・プロミス」

eastern_promises.jpgカナダ出身で、フランスでも人気のあるデヴィッド・クローネンバーグ監督の新作「イースタン・プロミス」を観に行きました。フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」の読者が選んだ2007年度映画トップ10で第4位になった作品(*)です。


舞台はロンドン。赤ん坊を産んで死んだ身元不明のロシア人少女タチアナの家族を捜す助産師のアンナ(ナオミ・ワッツ)は少女の残したロシア語の日記に挟まっていたロシア料理店のカードを見つけ、その支配人セミオン(アーミン・ミューラー=スタール)に会う。セミオンは家族を捜してやるから日記を渡すようアンナに言うが、実は彼はロシアン・マフィアのボスで、タチアナの日記にはセミオンとその息子キリル(ヴァンサン・カッセル)が彼女に対して行った非道な行為の数々が書き連ねてあったのだった。セミオンの正体を知りつつも、果敢に彼と渡り合おうとするアンナは、交渉の際にキリルの運転手である謎めいた男ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)と関わるようになる・・


eastern1.jpg暗い色調で覆われたロンドンを背景に、この街のダークな部分に焦点をあてた作品で、抑えた演出のもと、派手な抗争が描かれるわけでもなく、静かに物語は進展していきます。アンナと家族との会話から、彼女がなぜ赤ん坊に関心を寄せるのか自然にわかるようになっているなど、いつもながらクローネンバーグ監督の余計な説明を省いた、無駄のない話の進め方には感心させられます。


この監督の特色としてグロテスクな暴力描写があります。今回も冒頭のマフィア・ファミリーの暗殺シーンをはじめ、目を背けたくなるような過激な場面がところどころ出てきますし、生まれたての赤ん坊を長く映しだすなど、人間の体のなまなましさが随所に強調されています。ところでマフィアがらみの暴力シーンが多いとはいえ、拳銃が登場することはなく、使われるのはナイフのみ。しかしながら、この最も単純な凶器は、人間の体が「肉」であってそれが切り裂かれるときの痛みを文字通り痛烈に感じさせる最も効果的な道具となっています。


暗い内容で悲惨な場面も多い一方で、この映画はそれほど重苦しさに支配されてはおらず、どこかふっと気が抜けるような部分も持っています。それは前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」と同じように、物語が常に一定の距離を置いて冷めた目線で見られているからです。そのためか、笑う余地がないはずなのにどこかおかしさが感じられるシーンがいくつかあり、その代表といえるのがクライマックスのサウナでの格闘場面で、タトゥーだらけの全裸のヴィゴ・モーテンセンが奮闘している姿を見ていると何がどうというわけでもないのに笑いがこみ上げてくるのでした。そのような不思議な雰囲気が全体的に漂う作品でした。


eastern3.jpg「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でも主人公を好演していたヴィゴ・モーテンセンが、今回もニコライという謎めいた人物を非常にシブく演じていました。彼はクローネンバーグと相性がよいようで、個人的には「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役よりもクローネンバーグ作品の配役のほうが断然魅力的に感じました。また「ドーベルマン」「オーシャンズ12」などでおなじみのフランス人俳優ヴァンサン・カッセルが、どうしようもないマフィアのドラ息子役で出演しています。酒浸りで、売春婦をモノ扱い、手下のニコライに無理難題を言いつける、ホモと言われて激怒するが多分にその要素を感じさせる、という役どころを実にいやらしく演じていて、こちらも印象的でした。





*ちなみに第1位はジャ・ジャンクーの「長江哀歌」、第2位はガス・ヴァン・サントの「パラノイド・パーク」(批評家による投票では第1位)、第3位はデヴィッド・リンチの「インランド・エンパイア」でした。


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2008年06月13日

カンヌ映画祭 その他の注目作品

映画祭の模様のハイライトを見たなかで、主要な賞にはもれたものの印象に残った作品をいくつかご紹介します。


contedenoel.jpgまずはアルノー・デプレシャンの Un conte de Noël(あるクリスマスの物語)。骨髄移植の適合者が誰一人いなかったために難病の子供を救えなかった家族のその後の不和を描いたもので、マチュー・アマルリック、エマニュエル・ドゥヴォス(あの「ブスオーラ」の方です)といったデプレシャン作品におなじみの俳優のほか、カトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストロヤンニ親娘、メルヴィル・プポー、イポリット・ジラルドなど豪華な面々が出演しています。フランスではとても人気のあるデプレシャン監督(特に男性に人気があるように思います)なのに、カンヌでは今まで無冠で、今回も周囲から高評価を得たにもかかわらず、作品自体は賞を逃しました。それでも家族をテーマにした力作のようですから、公開が待ち遠しい映画であることには間違いありません。


delta.jpg国際批評家賞を受賞したハンガリーの若手コーネル・ムンドルッツォの Delta も印象的でした。20年ぶりに故郷に帰って初めて会った実の妹と恋に落ちた男が、父親が母親とその愛人に殺されたことを知って、復讐にむかうという穏やかならぬ内容ですが、映像だけ見ていると静かな雰囲気で、構図が美しく一部分だけを見ても興味をそそられる作品でした。難しい役どころをこなした俳優の演技も評価が高いようです。


昨年のカンヌの審査員でそのミステリアスな雰囲気が記憶に残っていたアルゼンチンの女性監督ルクレシア・マルテルが今回はコンペティションに La mujer sin cabeza(頭のない女)を出品しました。運転中に何かをはねたヴェロニカは、その後周囲に違和感を感じるようになり、自分がはねたのは人ではないかと思うようになるが、事故現場には犬の死骸しかなかった、というストーリーで、メディアの評価を見ると、かなり難解な作品のようです。どことなくルイス・ブニュエルやデヴィッド・リンチをイメージさせる映像で、個人的にはそのミステリー仕立ての物語ともどもかなり惹かれました。


frontiere.jpg初めてコンペティション対象となったフィリップ・ガレルの La frontière de l'aube(夜明けの境界線)は評価が真っ二つに分かれました。ハリウッドに行った夫がいるスター女優キャロルは、取材に訪れたカメラマンと愛し合うようになり、ホテルで取材を行いながら一緒に暮らすようになる・・という物語です。「ゴダールの再来」と言われるガレルのモノクロームの映像は、新しいというよりも何かノスタルジーを感じさせるものでした。そして何よりも注目を集めるのは、監督の実子であるルイ・ガレルの出演。カンヌでも常にクールだった彼のデカダンな風貌は一見の価値あり。


synecdoche.jpg最後はチャーリー・カウフマン監督の Synecdoche, New York(シネクドキ・ニューヨーク)。『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』、『アダプテーション』などユニークな物語を提供してきた脚本家による初監督作品です。味気ない生活をしている舞台演出家の男が、自分の劇団の場所をそっくりニューヨークへ移動させ・・という物語で、カウフマンのことですからここからひとひねりもふたひねりもある展開をしていることでしょう。実際批評においても「観ていると疲れる」という表現が見られるので相当あれこれ詰め込まれた作品のようです。しかし出演がフィリップ・シーモア・ホフマン、ミシェル・ウィリアムズ、キャスリーン・キーナーですから、俳優を観るだけでも価値がありそうな映画です。


昨年のカンヌでご紹介した映画が今頃公開中であったりするので、一年後このエントリーを見ていただいたほうが実用的かもしれません。ここで取り上げた作品が一つでも多く日本で公開される事を願っています。



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2008年06月01日

カンヌ映画祭受賞結果

palmares0801.jpg第61回カンヌ映画祭の授賞式が最終日5月25日に行われました。すでに多くの報道機関で伝えられているように、主な賞は以下の結果となりました。


カメラ・ドール(新人監督賞):Hunger(スティーヴ・マックイーン)
さらに特別賞として:Everybody Dies But Me(ヴァレリア・ガイア・ゲルマニカ)

最優秀脚本賞:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(作品:Le Silence De Lorna)

最優秀監督賞:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン(作品:Uc Maymun (Three Monkeys))

最優秀男優賞 : ベニチオ・デル・トロ(作品:Che (スティーヴン・ソダーバーグ監督))

最優秀女優賞:サンドラ・コルベローニ(作品:Linha De Passe(ウォルター・サレス&ダニエラ・トマス監督))

審査員賞: Il Divo(パオロ・ソレンティーノ監督)

第61回賞(特別賞):カトリーヌ・ドヌーヴ(作品:Un Conte De Noël(アルノー・デブレシャン監督))、クリント・イーストウッド監督(作品 : Changeling (The Exchange))

グラン・プリ:Gomorra (マッテオ・ガローネ監督)

パルム・ドール:Entre Les Murs (ローラン・カンテ監督)


palmares0802.jpg会場に下馬評の高かったダルデンヌ兄弟の姿を見つけたとき、「ついに史上初三度目のパルム・ドール受賞か!」と思っていたら、彼らは脚本賞。カトリーヌ・ドヌーヴがいたので「ようやくデプレシャン監督が受賞か!」と思えば、特別賞。そしてパルム・ドールはほとんど情報が手元になかったローラン・カンテ監督の Entre Les Murs(「壁の間で」)でした。授賞式前日に上映されたので、教育現場を扱ったものという程度しかわからなかったのですが、式場の舞台に次から次へと現れた若者たちと監督の興奮した姿から、作品のエネルギーが伝わってくるようでした。


後日観たハイライトによると、パリ20区にある ZEP(教育優先地区)政策の学校を舞台に、リベラルな国語教師と彼を挑発する生徒たちを描いた映画で、国語教師役は作品の原作者(実体験をもとにした小説だそう)、生徒役は素人の若者たちが演じている、というものでした。上映後の反応は「ブラヴォー」という声が飛び交い、メディアの評価も高かったものの、パルム・ドールという結果は予想外だったようで、21年ぶりのフランス映画受賞ということもあり、地元は相当盛り上がっているようです。


また今回はイタリア映画2作品が賞に選ばれました。方やこれまでのマフィアを超えた大きな犯罪組織に脅かされる街を描き、方や権力に固執した実在の政治家アンドレオッティの半生を描く、というどちらも硬派な作品です。ダルデンヌ兄弟の脚本賞(ベルギー国籍を取得するために偽装結婚、果ては殺人を企てるアルバニア人女性を描く)も含め、今回はヨーロッパの映画が健闘しました。そして前回に引き続き、社会的・政治的内容の強い映画が注目を集めたコンペティションでした。


palmares0803.jpgパルム・ドールと同じく会場が盛り上がりを見せたのは、男優賞のベニチオ・デル・トロと特別賞のカトリーヌ・ドヌーヴ(残念ながらクリント・イーストウッド監督は欠席)が舞台に上がったときで、やはりスターが登場すると空気が変わりました。貫禄たっぷりのドヌーヴ様のどっしりと落ち着き払った女王オーラと、4時間半にも及ぶ大作の中であこがれの革命家チェ・ゲバラを熱演したデル・トロの感極まった表情が対照的でした。


この他の賞では、黒沢清監督の『トウキョウソナタ』がある視点部門審査員賞を受賞しました。コンペには今回日本作品がなかっただけに嬉しいニュースですね。


惜しくも賞にもれた作品には、ダイジェストを観ただけでもなかなか個性的で面白そうな映画がたくさんありました。次回はそのなかのいくつかをご紹介します。



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2008年05月19日

新作映画情報「パラノイドパーク」

paranoid_park.jpg昨年のカンヌ映画祭に出品され、特別賞を受賞したガス・ヴァン・サント監督作品、「パラノイドパーク」を観に行きました。


スケボー好きの少年アレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は、友人に連れられて行った通称「パラノイドパーク」と呼ばれるスケボー公園に惹かれ、危険な雰囲気が漂う場所であるにもかかわらず、夜に一人で出かけて行く・・


映画の冒頭は、断片的な映像が並べられたり繰り返されたりで、かなり混乱する編集になっています。しかし、それは作文の苦手なアレックスが、その日の出来事に至るまでを何とか語ろうとする姿と重なり、何度も何度も文章を書いては捨てている状態を思わせます。つまり、アレックスがまとまりのない記憶からひとつの物語を文章化するのと同時に、映画はそれを映像化しているのです。なぜアレックスが文章を書くことにそれほどこだわるのか、彼が体験した事件は何だったのかは最後に明らかになり、物語を完成した彼の虚脱したような姿が映し出されて映画は終幕を迎えます。今回はアレックスの内面に焦点をあてた描写がされており、その点では、2003年にやはりカンヌでパルム・ドールと監督賞を同時受賞した「エレファント」の客観的な描写とは大きく異なっていました。


Paranoidpark1.jpg「エレファント」と異なるもうひとつの大きな要素は、音楽を多用しているということです。今作では多くのシーンに音楽が流れて、新鮮な効果を与えています。特に多く使われているのはフェリーニ作品に使われたニーノ・ロータの音楽。「ほかの選択肢も考えたが、結局この音を使うしかなかった」と監督も語るように、アレックスの姿と重ねられるととても印象的でした。


撮影はウォン・カーウァイ作品でおなじみのクリストファー・ドイル(アレックスのおじさん役で画面にも登場しています)。「花様年華」や「2046」のような官能的な鮮やかさはなく、かなり抑えた色調の映像(カーウァイ作品でいえば、「ブエノスアイレス」に近い)ですが、人物のアップの場面などでは、はっとするような透明感にあふれています。そしてスケボーをする若者たちの映像の何と美しいことか。きめの粗い映像、スローモーション、足だけを映したショットなど、さまざまなやり方で何度もスケボーのシーンが流れますが見飽きることはありません。


paranoidpark5.jpg「エレファント」同様、今回も素人の若者たちが多く起用されました。アレックス役のゲイブ・ネヴァンスもその一人で、彼はほとんど表情を変えることなく演技をしているのですが、ひとたび映画を観終わると、終始無関心を装う彼の本当の気持ちがその大きな目から物語られているように思えてきます。ガス・ヴァン・サントの選ぶ少年少女たちは、すごく整った顔立ちをしているわけではないのに、みんな独特の雰囲気を持っていて印象深く、学校の廊下の向こうからこちらへ彼らがぞろぞろ歩いてくるだけのショットでも、一枚の美しい絵となります。彼らが交わす会話も、たわいのないものだけれど非常にリアルで、スケボー少年たちが一室に集められたときの場面などがそのよい例でしょう。


監督の最新作は暗殺されたゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクを扱った Milk で、主演は今回のカンヌの審査委員長ショーン・ペンです。これまでの作品とはまた違った感じの映画が期待できそうで、公開を楽しみにしています。


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2008年05月17日

カンヌ映画祭開幕

cannes0801.jpg第61回カンヌ映画祭が5月14日から開幕し、開会式の模様が日本でも放映されました。


式場へのレッド・カーペットには、ケイト・ブランシェット、デニス・ホッパー、フェイ・ダナウェイなどのハリウッド・スターのほか、オープニング作品に選ばれたフェルナンド・メイレレス監督の Blindness の出演者が現れました。ジュリアン・ムーア、ダニー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナルとともに、日本の伊勢谷友介、木村佳乃らも登場し、一斉にフラッシュを浴びていました。ガエル君と連れ立った木村佳乃さんの美しい着物姿は他の女優たちに負けぬほどの注目を集めたようで、テレビカメラも何度となく彼女をとらえていました。


開会式は脚本家、監督もこなす俳優のエドゥアール・ベールが司会をつとめました。彼のときおりコミカルな調子で軽快に進行されていた式は、審査員の面々が紹介され、最後に審査委員長のショーン・ペンが登場すると、その近付き難いオーラのせいか、会場がぐっと緊張したように見えました。「配給会社の皆さん、作品が賞に選ばれなかったとしても、変わらず支援し続けてください」と強く主張した彼も、サプライズゲストの歌手リッチー・ヘヴンスが39年前にウッドストックで演奏した「フリーダム」を熱唱すると、顔がほころび大きな拍手を送っていました。


cannes0802.jpgすでに4日目に入っている映画祭では、作品が次々と上映されています。開会式でも作品の一部が紹介されましたが、コンペティション対象作品はやはり社会派の作品や、重い内容のものが目立っていたように思います。 Blindness は突然失明するという伝染病に襲われ、病院に隔離された人びとを描いた3カ国合作の映画で、アメリカ、メキシコ、カナダ、日本など多国籍のスタッフが参加しており、さまざまな国の映画を同等に扱うこの映画祭のオープニングにふさわしい作品といえるでしょう。これまで上映されたなかでメディアの評価が高いのは、イスラエルのアリ・フォルマン監督による Waltz With Bashir で、80年代初頭のレバノン戦争の記憶をたどろうとする映画監督を描いたアニメーションで、前年の「ペルセポリス」に続き、アニメーションが賞を受賞する瞬間が見られるかもしれません。


一方、特別招待作品では、スティーヴン・スピルバーグ監督の「インディー・ジョーンズ」最新作をはじめ、ウディ・アレンの Vicky Cristina Barcelona(スカーレット・ヨハンソン、ハビエル・バルデム出演)、ウォン・カーウァイの Ashes Of Time Redux、エミール・クストリッツァがサッカーの神様マラドーナをテーマに撮ったその名も Maradona など話題を呼びそうな映画が盛りだくさんです。15日に上映された マーク・オズボーンとジョン・スティーヴンソンによるアニメ作品 Kung Fu Panda (何とまあ潔いタイトルじゃありませんか)の会場では、声優をつとめるジャック・ブラックのほか、大きなお腹のアンジェリーナ・ジョリーがブラッド・ピットを伴って登場し、ひときわ華やかな雰囲気に包まれました。映画の評判も上々のようで、日本での公開が待ち遠しいところです。


cannes0804.jpgまた前回触れたオムニバス映画 Tôkyô! も上映され、こちらもまずまずの評価を得ています。東京にやってきた映画監督志望の青年とぼんやりした性格の娘をおかしくもリリカルに描く "Interior Design"(監督:ミシェル・ゴンドリー、出演:加瀬亮、藤谷文子、大森南朋、妻夫木聡など)、 Merde (糞)と呼ばれる未知の文明から来た男が東京をパニックに陥れる話 "Merde"(監督:レオス・カラックス、Merde 役はどうやらドニ・ラヴァンらしい)、引きこもりの青年がピザ配達の少女に恋する話 "Shaking Tokyo"(監督:ポン・ジュノ、出演:香川照之、蒼井優など)だそうで、好奇心をそそられる内容と出演者ですね。写真は左からゴンドリー、カラックス、ポン監督ですが、カラックス監督はなんだか人が変わったようだな〜。


次回のエントリーでは授賞結果と注目作品についてお伝えする予定です。


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2008年05月03日

第61回カンヌ映画祭

cannes08.jpg今年もまたカンヌ映画祭の季節になってきました。5月14日からの開催を前に、先月末プレス向けの発表が行われ、審査員や参加作品の全貌が明らかになってきました。ちなみに今年のポスターはデヴィッド・リンチの撮影した写真を使っているそうで、彼の映画作品と同じく怪しげな空気が漂っています。


今回長編作品のコンペティション部門で審査委員長を務めるのはアメリカの男優ショーン・ペンになりました。「ミスティック・リバー」や「アイ・アム・サム」などでの演技が高く評価されている彼は、映画監督としてもすでに数本を制作し、プロデューサーとしての経験も持っており、豊かな視点からの選考が期待されます。とはいうものの、彼の性格からしてまた今回も硬派で堅実な路線の作品が選ばれそうな予感が今からしています。そのほか俳優ではナタリー・ポートマン、フランスのジャンヌ・バリバール、また監督ではアルフォンソ・キュアロンや、昨年「ペルセポリス」で審査員賞を受賞したマルジャン・サトラピなどが名を連ねています。


sean-penn.jpgシネフォンダシオンおよび短編映画部門では、台湾のホウ・シャオシェン、「ある視点」部門ではドイツのファティ・アキン、カメラ・ドール部門ではフランスのブリュノ・デュモンといった監督たちがそれぞれ審査委員長に選ばれました。


さて、今年のコンペ部門参加作品はカンヌ常連組や個性的な監督が多いようです。ラインナップには、ダルデンヌ兄弟、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、スティーヴン・ソダーバーグ、ヴィム・ヴェンダースといった歴代の受賞者、アルノー・デプレシャンやフィリップ・ガレルらフランスの気鋭、アトム・エゴヤンやウォルター・サレスといった実力派、そして発表する作品が世界の映画祭で高く評価されている中国のジャ・ジャンクーの名前などが見られます。


また今回の「大物」はクリント・イーストウッドでしょう。誘拐されて戻った息子が自分の子供ではないと疑う母親を描いた、アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチも出演するミステリーだそうで、非常にそそられます。さらに個人的には、チャーリー・カウフマンの初監督作品 Synecdoche, New York が気になります。「マルコヴィッチの穴」や「アダプテーション」など奇想天外な物語を送り出してきたこの脚本家がついに監督デビューを果たし、おまけに出演がフィリップ・シーモア・ホフマンだということですから、とても面白そう! カメラ・ドールの有力候補となることでしょう。


オープニング作品にはブラジルのフェルナンド・メイレレス監督の Blindness が選ばれました。ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、ダニー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナルといった有名どころに加え、日本の木村佳乃や伊勢谷友介も出演しています。この作品はコンペ部門にもノミネートされていますから、今年のコンペは注目作品が目白押しですね。


このほか日本関係の作品はといえば、「ある視点」部門に黒沢清監督の「東京ソナタ」が選ばれています。またこの部門ではポン・ジュノ、レオス・カラックス、そしてミシェル・ゴンドリーの Tokyo! も選ばれていて、文字通りこの3人の監督が東京を舞台にしたオムニバス映画だそうで、日本でも話題を呼びそうです。


次回のエントリーでは開会式の模様や、参加作品自体についてもっと詳しくお伝えできればと思います。


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2008年04月19日

「ニキータ」

Nikita.jpg先日久しぶりにリュック・ベッソンの「ニキータ」(1990)を観る機会がありました。以前にご紹介した「汚れた血」のレオス・カラックス、そして「ディーバ」、「ベティ・ブルー」のジャン=ジャック・ベネックスとともに、リュック・ベッソンは80年代後半から90年代にかけてフランス映画界に新風を吹き込んだシネアストです。アクション映画という娯楽性の強い内容や派手な映像、エリック・セラの個性的な音楽で、ほかの2監督の作品と比べると、いわゆる「フランス映画好き」からの評価は高くないかもしれませんが、わかりやすく観ていて単純に楽しめるこの作品は、逆にフランス映画を苦手としていた人たちの多くを振り向かせたはずです。


ドラッグ漬けだった野生児のような娘ニキータ(アンヌ・パリロー)が、その素質を見いだされて政府の工作員として養成される、という言ってみれば裏版「マイ・フェア・レディ」的なストーリーや、美しいレストランでのドンパチ(ダストシュートへ飛び込むシーンは見もの)、恋人との幸福な場面が一転して任務遂行の舞台と化すといったメリハリのあるスピーディーな展開はいかにもハリウッド好みで、実際アメリカでは「アサシン」というタイトルでリメイクされ、さらには連続テレビドラマにもなりました。


nikita3.jpgアクションシーンなどの暴力的な部分だけではなく、繊細な面が同時に見られるのもこの映画の魅力のひとつ。ニキータはクレイジーで男性顔負けの強さをもつ一方で、任務の恐ろしさにおびえる弱さや、好きな男に思いっきり甘える可愛らしさも持っています。それは彼女の着こなす両極端なファッションーーハードな革ジャンやパンツといったボーイッシュなスタイルと体にぴったりとしたミニのワンピースやエレガントな帽子、キュートなプリントの下着といった女らしいスタイルーーにも表れています。


また彼女を取り巻く2人の男性も対照的で、方や常に冷静な上司ボブはときに厳しくときに穏やかにニキータを調教し、方や恋人マルコは彼女の過去を問いただすこともせず、ただひたすらに優しく無償の愛を捧げる。この映画は2人の男から全く異なった「愛し方」をされる女性の物語でもあるのです。マルコを演じたジャン=ユーグ・アングラードは当時「様」づけされるくらい日本の女子を魅了した美青年で、そんな人にとことん尽くされるのだから、初めて映画を観た頃は断然マルコのほうがいいよ〜って思っていました。


nikita2.jpgしかし、今回あらためて観たところ、ボブがいいんですよ! ニキータと最初に会話をするシーンで、彼女の名を尋ねて「いい名前だ・・」ともの静かに話すボブに漂う色気・・ あの頃はおじさんに思えたチェッキー・カリョのほうが今ではセクシーなシブい男性として俄然存在感がありました。時を経ると作品の見方もずいぶん変わるものです。


映画はそれまでの派手さとは打って変わってしんみりした雰囲気のなか、ニキータではなく、残された2人の男たちの対話で終わりますが、そのあたりがアメリカではなくやはりフランス映画的で、監督の冴えを感じます。この後ついにハリウッドに進出したリュック・ベッソンは「レオン」「フィフス・エレメント」を発表して知名度をさらに上げましたが、その後はプロデュース業を多く手がけるようになり、近年監督業ではあまりぱっとせず、引退宣言も飛び出す始末。おそらく監督としてやりたいことは、「ニキータ」あたりでほとんどやってしまったのでしょう。


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2008年04月04日

春に聴きたい音楽 〜 MUSIQUE POUR LE PRINTEMPS

4月に入ってますます春めいてきました。桜の花もずいぶん咲いて、今週はお花見に最適でしょう。花粉やら物価やら実のところは浮かれてられないのはわかっているのに、今の穏やかな気候に包まれるとやっぱり楽しい気分になってきます。せめて素敵な音楽でも聴いてその気分を盛り上げたいもの。この季節におすすめしたいCDを3点ほどご紹介します。


lily.jpgオーライ・スティル Alright, still」 (リリー・アレン Lily Allen)

ネットからのダウンロードで一躍有名になったイギリスの女の子、リリー・アレン。ズンチャ、ズンチャというスカのリズムとそれにマッチした彼女の柔らかくて甘い声が、春の陽気になじみます。ヒット曲 "Smile" は、可愛らしいポップ・チューンに聴こえますが、実はひどいフラれ方をした女の子が、その後その元カレに泣きついて来られて「あんたが泣いてる顔を見てたら笑える」って歌っているというねじくれた曲なのです。ちなみにこのアルバムは「夏の音楽」でご紹介した The Bird And The Bee のグレッグ・カースティンがプロデュースしています。



Phoenix_-_Alphabetical.jpgアルファベティカル Alphabetical 」(フェニックス Phoenix)

バンド名、アルバムタイトル、そして歌詞もみんな英語ですが、フランスはヴェルサイユ出身のバンドです。そうなると Tahiti 80 (関係ないけど、本国では「タヒチ・エイティー」というより「タイチ・カトルヴァン」と呼ばれているそうな)が連想されてきますが、音も Tahiti 80 をさらにほんわかとポップにした感じで、とても聴きやすいです。このアルバムはとりわけエレクトロ・ポップ寄りの音で、ちょっと懐かしい感じのメロディーやぽわんとした電子音が春らしく思えます。




thela's.jpgザ・ラーズ The La's」 (ザ・ラーズ The La's)

1990年にたった1枚のアルバムを残して分裂してしまった伝説のバンド、ザ・ラーズ(数年前再結成したらしいけれど、新しいアルバムは出ていません)。メンバーはその出来に満足してなかったそうですが、ギター・ポップの名盤として語り継がれ、その後も再発されたり、さまざまなコンピレーションアルバムで曲が取り上げられたりしてきました。最も有名な "There She Goes" をはじめ、アコースティック・ギターの澄んだ音色と、ときにビートを効かせた美しいメロディーの曲が揃っています。自分が学生時代にヘビロテで聴いていたこのアルバムを、先日遊びにきた大学生の甥が中古CD店で買い求めているのを見て、何だか感慨深かったです・・




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2008年03月21日

アート遠足 室生山上公園 芸術の森

IMG_1969.jpgにわかに春めいて気持ちのよい気候になってきたので、前から気になっていた奈良の「室生山上公園 芸術の森」へ行ってきました。のどかな山道を車で上っていくと、「え、こんなところに?」という感じの場所に入口が見えてきます。私たちは南入口から入りましたが、そこには「ビジターセンター」と称する非常に現代的な建物がありました。最初そこには人の姿が見当たらず、おやと周囲を見渡すと横手から作業着姿の管理員さんが「このごろシカの害がひどくて、植え込みを全部刈ってたんですよ」という言葉とともに現れました。「草のなかにうっすらとすじになって見えるのがけものみちですよ」という言葉に、もしかしたら野生のシカにもお目にかかれるのかなと思いつつ入場。


小道を下ると湖と橋でつながった3つの島が見えてきました。まんなかの島にはピラミッドのようなモニュメントがそびえています。橋を渡って島に立ってみると、円形のステージのまわりに細かな石がびっしり敷き詰めてあります。島の縁のエッジをきかせた始末といい、とても綿密な指示のもとで作られているようです。ピラミッドの島を囲むように湖岸には階段状の観覧席が配置され、ここでコンサートやファッションショーを行ったらいいだろうなあという設計でした。


IMG_1972.jpg湖を通り過ぎて小さな棚田を横に見ながら道を下って行くと、今度は小さな湖が見えてきました。ここにも「天文の塔」と呼ばれるモニュメントを備えた島があり、四角いアーチが連続する「太陽の道」に貫かれています。塔の上まで登ってみると意外と高く、春の陽気のもと公園全体が見渡せて気持ちがいい。



IMG_1997.jpg湖の向こうに螺旋状の白い道がありました。道の一端は渦巻き状になっており、もう一端には美しい木がそびえています。道の途中には日時計があり、正確な時間を教えてくれます。道の向こうには竹が螺旋状に植えられていて、モニュメントやアーチの直線や強調されたエッジに対して円や螺旋の曲線がやわらかみを添えていることがわかります。



もう一方の入口である北入口もガラス張りのロッジのような美しい建物で一休み。置いてあった資料から、この公園は、イスラエル生まれの彫刻家、ダニ・カラヴァンが設計したもので、芸術作品である一方で、地滑り対策のための施設でもあることなどを知りました。しばらくしてから再出発。この日は少々肌寒かったのですが、晴れわたった空の下景色を見ながらてくてく歩いていくと大変心地よく申し分のない気候でした。思いっきり全身に花粉も浴びた気もするけれど。


再びビジターセンターに戻ると先ほどの管理員さんが「いかがでしたか」と出迎えてくれ、「太陽の道」は北緯34度32分の軸線上にあり、この線は何と室生寺、長谷寺、伊勢斎宮跡といった歴史的な建築物を結んでいるということ、棚田は昔の原風景を表現したものであること、など公園について丁寧に説明してくださいました。「夏の季節には植物の様々な緑の色にモニュメントの赤が映えてきれいですよ」とも教えてくださったので、また違う季節に訪れてみたくなりました。


ところで公園は年末から2月末まで閉められており、私たちは再び開園してまもない頃に行ったことがわかりました。そのためか散策中公園にいたのは私たちだけで、貸し切り状態の贅沢な気分をぞんぶんに味わうことができたのでした。残念ながら野生のシカにはお目にかかれなかったけれど、彼らの「置きみやげ」はいたるところに発見できました・・・


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2008年03月08日

音楽で観るフィギュアスケート男子

トリノオリンピックの興奮が今では遠い昔のようですが、皆さんはフィギュアスケートへの関心はまだお持ちでしょうか? 私はオリンピック以前にも増して興味津々で毎冬行われるさまざまな競技会を観戦しています。日本ではもっぱら女子のほうが人気が高いようですが、個人的には高い技術とユニークな個性がぶつかりあう男子シングルのほうが見応えがあって楽しいです(あっ、ルックス重視ってわけじゃないですよ!)。

そこで18日からスウェーデンのイエテボリで世界選手権が開催されるにあたって、注目すべき選手を何人か挙げて・・・と行きたいところ、そういう企画はいろんなところでされているでしょうから、ここでは今季使用されている音楽に着目してみたいと思います。フィギュアスケートの音楽、というとチャイコフスキーやラフマニノフといったクラシックの名曲や、「タイタニック」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のようなドラマ性のある大ヒット映画のサントラが定番なのですが、ここではそういった路線からちょっとはずれた音楽を取り上げてみましょう。


まずは最初に行われるショート・プログラムから。

使用曲(選手名、国籍)

"Mélodie en Crépuscule" and "Gypsy Swing" by Django Reinhardt (Tomas VERNER, CZE)VERNER.jpg

昨年あたりから急速に成長してきたチェコの若手トマシュ・ベルネルが選んだのは、何とジャンゴ・ラインハルトの「たそがれのメロディー」と「ジプシー・スウィング」です。ジャンゴ・ラインハルトのギターはルイ・マルの「ルシアンの青春」の冒頭に流れる「マイナー・スウィング」が有名ですが、ほかにも多くの映画に使われていて、この曲は「革命の子供たち」という映画のサントラから、ということになっています。振付も個性的で、軽快なギターにのって繰り出される力強いジャンプと陽気なスケーティングは見ていてとても楽しい。あの渋いジャズの名曲が若々しい彼にピッタリというのは意外な発見です。


"La Valse D'Amélie" by Yann Tiersen
"Belleville Rendez-Vous" by Ben Charest (Kristoffer BERNTSSON, SWE)

映画「アメリ」と「ベルヴィル・ランデヴー」というフランス映画のサントラを選んだのはスウェーデンのクリストファー・ベルントソン。あのおなじみのワルツに合わせて寸劇を演じているかのような楽しいプログラムを披露してくれます。彼はフリー・プログラムでは「サタデー・ナイト・フィーバー」を選ぶなど、エンターテインメント性の強い内容が好きなようです。


"Stairway to Heaven" by Led Zeppelin (Stephen CARRIERE, USA)

弱冠18歳の昨年度世界ジュニアチャンピオン、スティーヴン・キャリエールは彼が生まれる前に作曲されたロックの名曲、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」を選択(ただし、オリジナルではなく Rodrigo y Gabriela という人がスパニッシュ・ギターでカヴァーしたもの)。美しいギターの旋律をそのままをスケーティングに置き換えたかのような繊細な演技が見ものです。彼はアメリカではまだ3番手あたりの選手ですが、スケート技術もすばらしいので2年後のオリンピックでは上位に来そうです。


そして忘れてはならないのが、日本の高橋大輔選手。チャイコフスキーの「白鳥の湖」という王道中の王道の音楽をヒップホップ調にアレンジしたもの(クラシックの名曲を現代的に味つけする趣向だとか、あのベースラインを聞いているとどうしてもセルジュ・ゲンズブールを思い出してしまいます)で、振付も非常に大胆。今季のベスト・ショート・プログラムだと思います。高橋選手はエキシビションでもビヨークの曲を使うなど、先鋭的な志向が感じられますね。


さてお次はフリー・プログラムから。

"Moments in Love" by Art of Noise (Shawn SAWYER, CAN)

SAWYER2.jpgアート・オブ・ノイズは、今から20年ほど前、当時売れっ子だった音楽プロデューサー、トレヴァー・ホーンの仕掛けたテクノ系のグループ。日本ではMr.マリックのBGMに使われているので、聞き覚えのある人も多いのではないでしょうか。ビートのきいた音楽を背景にカナダのショーン・ソーヤーが、非常に柔軟性のあるスケートを見せてくれます。男子ではあまり見られない I 字スパイラルやスピンはお見逃しなく。彼はショート・プログラムではピンク・フロイドの "Another Brick in the Wall" を使うなど面白い選曲をしています。




"Ararat (soundtrack)" by Michael Danna (Jeffrey BUTTLE, CAN)

その甘いマスクで女子に人気のジェフリー・バトルが昨季から使用しているのが、アトム・エゴヤン監督の映画「アララトの聖母」のサウンドトラック。アルメニアの歴史的悲劇を主題にした映画だけあって、音楽もオリエンタルかつ荘厳。抽象的ともいえる難解なこの曲を定評あるスケーティングで美しく表現しています。


LAMBIEL.jpg"Poeta (Flamenco)" by Vicente Amigo (Stephane LAMBIEL, SUI)

最後は実力者スイスのステファン・ランビエールがこれも昨季から用いているフラメンコ曲。トリノ・オリンピック以降不調だった彼が、昨年この曲で復帰してきたとき、ジャンプの失敗があったにもかかわらず会場はその熱い演技に魅了されました。だんだんと盛り上がっていく音楽と並行して彼のスケートも次第に激しくなっていき、終盤の情熱的なステップへとつながる構成もすばらしく、音楽がうまく活かされたプログラムだと思います。


男子シングルは21日(ショート)、22日(フリー)に行われる予定。ここでご紹介した選手の演技が地上波で全員放送されればいいなあと思っています(日本のテレビはどうしても日本選手中心の放送になってしまうのが残念・・)。ほかの種目や選手についても、演技とともに音楽にもぜひご注目ください。



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2008年02月23日

アート遠足 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

IMG_1747.jpg香川県は、私にとって大変魅力的な県です。まわりに広がる美しい海の景色や壮大な瀬戸大橋、のんびりしてちょっとひなびた感じの山道、いたる所にある安くておいしい讃岐うどんの店・・・すべてがツボです。それに加えて、香川県は現代アート作品の宝庫でもあります。公立の美術館をはじめ、イサム・ノグチ庭園美術館、瀬戸内海に浮かぶベネッセアートサイト直島など見どころがたくさん。おまけに県庁舎は丹下健三設計です。先日もまた行きたい病に取り憑かれ、今年いちばんの寒波のなか早起きして行ってきました。これまで4回訪れたのですが、行くと必ず足を運ぶのが丸亀市猪熊弦一郎現代美術館です。


この美術館はその名の通り、香川県出身の画家猪熊弦一郎の協力で作られたもので、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の新館も担当した谷口吉生による設計です。JR丸亀駅の前にそびえたつスタイリッシュな建物の入り口には猪熊氏の壁画やオブジェが配置されていて、建物自体がひとつの作品のようです。駅前にこんなカッコイイ美術館があるなんて、本当にうらやましい。


IMG_1772.jpg内部の空間設計もすばらしく、それほど大きな美術館ではないのにゆったり落ち着いた気分になれます。もちろん猪熊氏の作品は常設展示で見ることができ、おそらくマティスやピカソに影響を受けた若かりし頃の作品から、抽象絵画へ移行した円熟期、シンプルで素朴なタッチが何だか愛らしい晩年の作品までじっくり見ることができます。作品は定期的に入れ替えているようで、行くたびに新鮮な気分で鑑賞することができました。


並行して行われている企画展も見逃せません。今回はフィンランド出身の女性アーティストで、写真やヴィデオ・アートを中心に表現活動しているエイヤ=リーサ・アハティラの個展が催されていました。2つの写真を並列させて、見る側にそれらの関係性を探らせる「セノグラファーズ・マインド Scenographer's Mind 」シリーズがまず興味深かったです。おしゃべりをしている2人の少女とターミナルに横付けされた飛行機、という言ってみればそれぞれ何でもないような写真が、ひとたび並べられると、私たちはどうしてもその2つを関連づけてひとつの「物語」を考え出そうとしてしまいますし、それが作品のねらいでもあるように思えます。


eija-liisa A.jpg

彼女の特徴であるという「物語性」を最も感じることができるのは、今回いちばん大きな作品である「祈りのとき The Hour of Prayer 」で、4つのスクリーンに映し出される映像と彼女自身によるナレーションによるものです。最愛の犬をガンで亡くした体験と、遠く離れた地で早朝に聞いた犬の合唱の話が、彼女の口から語られてひとつになることで高揚感が生まれ、そして最後に高らかに歌う彼女が何と力強く美しいことか。静かに心を揺さぶられる作品でした。


残念なことに、このアハティラ展で目にすることができるのは5作品のみ。彼女に興味をもって調べてみたところ、何と今パリのジュ・ドゥ・ポムで大きな回顧展が開かれているそうで、こちらでは彼女の作品の大半を鑑賞することができるようです。パリへひとっ飛びして、という希望はとうていかないそうにないので、せめてこの展覧会のカタログをアマゾンで取り寄せてその雰囲気を少しでも味わいたいと思っています。



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2008年02月08日

今年のアカデミー賞

NO-COUNTRY-FOR-OLD-MEN2.jpgアカデミー賞授賞式がいよいよ24日(日本時間では25日)に迫ってきました。今回は第80回という節目をむかえ、ハリウッドはいつになく盛り上がりを見せるかと思いきや、昨年秋から続いている米脚本家組合のストライキ(インターネットなどで作品が流れた場合に対する補償などを求めたもの)がなかなか終結せず、これに賛同する俳優たちが多数欠席するという、最悪の事態の可能性まで考えられています。前哨戦となる1月13日のゴールデングローブ賞は、各賞の発表のみがそそくさと行われ、何とも味気ない式典だったという事実を考えると笑い事とも言えません。


ところで今年のアカデミー賞について今回特にエントリーで取り上げたのは、上記の事情のためではなく、カンヌ映画祭出品作をはじめフランス関係の作品や俳優が大きな賞にノミネートされているからなのです。まずは今年最多8部門にノミネートされ、作品賞最有力候補とされている「ノーカントリー」。ユニークな視点で犯罪を描くのがお得意のジョエル&イーサン・コーエン兄弟の最高傑作とされ、昨年のカンヌ映画祭にも出品された作品です。80年代のテキサスで麻薬がらみの大金を持ち逃げしたために追われる男の物語で、追う男を演ずるハビエル・バルデムも助演男優賞にノミネートされています。なお保安官役のトミー・リー・ジョーンズ(警察関係の役がホントに多い人です・・日本では某缶コーヒーのCMで宇宙人役をされてますけど)は、こちらの作品ではなく別作品で主演男優賞候補となっています。


scaphandre.jpgさて、コーエン兄弟と同じく監督賞にノミネートされているジュリアン・シュナーベル監督。ニューヨーク出身の彼が、今回フランスを舞台にし、フランスの俳優を使って撮った「潜水服は蝶の夢を見る」は、脳梗塞に襲われて突然手足の自由を奪われた雑誌 ELLE の編集長ジャン=ドミニク・ボビーが、唯一動く左目を用いて語った自伝を映画化したもので、こちらも昨年のカンヌ映画祭に出品されて監督賞を受賞しています。ジャン=ドミニクを演ずるのは、最近注目度が高まりつつあるマチュー・アマルリック。彼は「そして僕は恋をする」などで有名なアルノー・デプレシャン監督の作品でおなじみの俳優ですが、2005年にスティーヴン・スピルバーグの「ミュンヘン」に謎の情報屋として出演した後、ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」、そして次回の007シリーズと、ハリウッド映画でも名前が見かけられるようになりました。「ねずみ男」を思わせるその風貌(失礼かな)も忘れがたい彼は、残念ながらアカデミー賞のノミネートはなりませんでしたが、母国フランスのセザール賞(こちらは22日発表)の主演男優賞候補となっています。


marion-piaf.jpg一方主演女優賞ではなんとフランスからマリオン・コティヤールがノミネートされました。彼女がフランスで有名になったのは、マチュー・アマルリックも出演していた「そして僕は恋をする」(つまりデプレシャン監督に見る目がある、ということでしょうか)で、以後「TAXI」シリーズや「ロング・エンゲージメント」、また以前取り上げられていた「エコール」などに出演しており、若手実力派女優のひとりといえるでしょう。彼女はハリウッド映画にも出演経験がありますが、今回はフランス/イギリス/チェコ合作映画「エディット・ピアフ〜愛の讃歌」からのノミネートで、この実在したスター歌手を力演して国内外で大きな評価を得ました。もちろんセザール賞でも主演女優賞候補に名を連ねています。


フランス映画関係以外にも、主演男優賞にイギリス俳優のダニエル・デイ=ルイス(最有力候補とも言われています)、助演男優賞に同じくイギリス生まれのトム・ウィルキンソン、助演女優賞にこれまたイギリスからティルダ・スウィントン(同じく候補となっているオーストラリア出身のケイト・ブランシェットともども大好きな女優さんです)、アイルランド若手のシアーシャ・ローナン、そしてそして外国語映画賞には日本の浅野忠信主演のカザフスタン映画「モンゴル」がノミネートされるなど、ハリウッド嫌いさんでもちょっと覗いてみたくなるような内容です。だからこそいつもながらの授賞式をぜひ実現してもらいたいもの。年に一度のお祭りなんだから、ね。


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2008年01月25日

「恋愛睡眠のすすめ」

science_of_sleep_ver2.jpg映画のなかでは、夢の世界の表現はさまざまなかたちで行われてきましたが、最近観たミシェル・ゴンドリーの「恋愛睡眠のすすめ」は、そのなかでもかなりユニークな作品でした。


メキシコから母親(ミュウ=ミュウ)の住むパリへやってきたステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、ときどき夢と現実の区別がつかなくなる青年。母親が大家をしているアパルトマンに落ち着き、これまた母親が探してきた職場で、つまらぬ仕事を始めた彼は、隣に越してきたステファニー(シャルロット・ゲンズブール)が次第に気になり、夢の世界で彼女との恋を楽しむが、現実ではそううまくいかない・・


シックなパリの街並、いかにもパリジャンたちの生活に登場しそうなアパルトマンやカフェの映像と交互に描かれるステファンの夢は、ダンボール、色紙、セロファン、布や毛糸などを用いた「手作り」感あふれる装飾にかこまれた世界。それらがアニメーションで動くなかを、ヒーローとなったステファンが繰り広げるドラマチックな恋愛劇がとても楽しい。


science1.jpgしかしながら、正直言ってこの映画は万人におすすめできるものではありません。ステファンの夢はとりとめなく続く、しだいに現実との境界があいまいになってよくわからなくなる、だらだらした物語の先がまったく読めない、そしてステファンその人の性格がウジウジして情けない。これはガエル・ガルシア・ベルナルが演じているからキュートに見えるのであって、実際にこんな人がいたらアブナすぎる・・ 好きな人と嫌いな人とにはっきりと分かれる作品だと思います。最初このウダウダ感に戸惑ったものの、もともと脱力系が好きなものですから、私は結構面白く観ました。


ガエル&シャルロット、というありそうでなかったキャスティングもナイスで、とにかく2人が楽しそうに演じているのが、観ていて気持ちがよかったです。やたらエロトークを連発する上司役のアラン・シャバをはじめ、彼らをとりまく一風変わった人々もいい味出してました。


science3.jpg監督のミシェル・ゴンドリーは、もともとビヨークなどのミュージック・ヴィデオを手がけ、映画監督としては、これまで「ヒューマン・ネイチュア」や「エターナル・サンシャイン」などヘンテコでユーモアあふれる映画をハリウッドで発表してきました。今回母国フランスへ戻って制作した「恋愛睡眠・・」は、前2作品をさらに純化させ、コンパクトにしたような作品で、いろいろなアイディアを好き放題に詰め込んだという感じです。それを象徴するのがステファンのさまざまな珍発明で、極めつけは「1秒タイムマシン」。名前の通り1秒だけ未来と過去に移動できる、というものでその実際の効果はぜひ映画でご覧ください。


MTV畑出身ということもあるのか、サウンドトラックも秀逸で、映像と音楽が重なるシーンはどれも見事にマッチしていました。ステファンが夢のなかでステファニーに捧げる曲も、彼の着ぐるみ姿ともどもチャーミングで好きなシーンのひとつです。






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